古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

この時期のホールの湿度と楽器



今月 8,9日と、あまり普段一緒に演奏会をすることがない、
モダン楽器のオケとの演奏会がありました。

それも、学生オケとのコンサートです。
学校の講堂、といっても立派なホールです。

8日はリハなので、空調は点きませんでした。
温度は17度で湿度約40%です。40%を切ることもありましたが、
ほぼ一定でした。
チェンバロのピッチもほぼ安定していて、リハの終わる頃には、ほとんど
調律も狂っていませんでした。

9日は本番当日なので、朝から空調は入れていただいて、明かりも
本番明かりにしてもらっていましたが、モダンの演奏会に良くあるように
明かりを変えたり、スポットを当てたり、いろんな演出がありました。

その関係で、本番明かりも、なかなか決まらなかったのですが、
標準的な明かりで、保ってもらうようにお願いをしておきました。

朝9時くらいから、ホールが開くので、直ぐに明かり空調は入れてもらっていたのですが、
こちらが行った、9時半頃にはまだ、温度は19度くらい、湿度は35%くらいでした。

オケのピッチが、442なのですこし下がることを見越して、443にしておきました。

当日ゲネが始まる、少し前になって、明かりが更に明るくなりました。
聞くと、これが本番明かりだと言うことです。

温度は、ほぼ20度で湿度もあまり変わっていなかったのですが、照明が少し明るくなるだけで、
あっという間に、ピッチが440まで下がりました。
温度湿度は、ほとんど変わらずに、照明が少しきつくなっただけです。

あわてて、とりあえず443まで戻しました。
皆さんもご存知だと思うのですが、低かったピッチから上げると、
もとに戻る傾向がありますので、443の少し高めにしておきました。

それでも、ゲネが始まる頃には、442まで下がっていました。
ゲネが始まる頃には、22度の30%くらいでした。

ゲネの途中は、23度25%くらいで、ゲネが終わって、本番調律に入る頃は
24度の19%まで下がっていました。

121209_1414~01


そして、本番 休憩時間では17%まで下がっていました。
演奏会終わってから、見るとやはり17%です。

そうなると、楽器にも当然影響が出ます。
チェンバロを作って、お渡しする時にも、
「湿度が40%を切るようだと、加湿器などで
 湿度を上げてください」とお願いしているのですが、
40%どころではないのですから。

121209_1404~01


分かりにくいのですが、響板が少し、割れて開いています。
0.5ミリくらいが長さ40センチに渡って、3箇所開きました。

そして、もともと少し開いていた一箇所は下のようになりました。

121209_1404~02


響板はニスも塗っていないので、湿度の影響は受けやすいので、
湿度20%を切ると、必ず、割れて開いてきます。

3箇所くらいだと、ほとんど音に影響はありませんので、
あわてることはないのですが、2日、3日と続くと割れがそのまま、
定着しますので、気をつける必要があります。

この割れも、湿度が30%くらいになると、元に戻ります。

逆に、この割れを塞いでしまうと、湿度が80%を超えると、
響板が膨らんで、弦が響板、4’のブリッジに当たってしまいます。
そうなると、演奏できませんので、割れのほうが楽器にとっては
まだまし、と言えそうです。

日本で、湿度が20%を切るなど、想像できませんが、ホールでは良くあることです。

ですから、チェンバロを良く使う、バロックの演奏会ではあまり明かりを強くせず、
全体を明るくしてもらうようにしています。

モダンの演奏会では、なかなかこちらも強く言うと、理解してもらえないこともあって、
難しいのですが、開演前の開場して、お客さんが入る時にも、ステージは本番明かりにして
もらったり、ステージを暗転する場合も、チェンバロだけは照明を当ててもらったりは、
お願いするようにしています。

よく、楽器をステージで動かしただけで、調律が狂うと思っている人がいますが、
1000キロ移動しても、温度と湿度が一定だと狂いませんので。

以前の演奏会では、ほとんど10%近いこともありました。

山梨の古楽コンクールに展示で参加させていただいた時も、ものすごく
湿度が低くて、ガンバの音程があわずに、ガンバ奏者はとても苦労してました。
ガンバの場合はフレットがあるので、乾燥するとフレッチングが合わなくなってしまうのです。
このときは、チェロの人がガンバの人の苦労を大変だな!と言ってられました。


本来楽器を演奏するホールが楽器には過酷な条件、と言うのは皮肉なことですが、
更に、条件が悪いと言うか、湿度の低いところが、デパートとホテルです。

日本人は、温度には敏感に反応するのですが、湿度はそうでもないようです。
かなり以前にデパートで、楽器の展示を頼まれたことがありますが、
湿度が10%以下で、楽器も変形してきたので、ガラスのケースに入れてもらって、
10個ほど回りに、コップに水を入れてもらったことがあります。

最近は、ホテルでも加湿器の貸し出しをしているようですが、私はバスタブにお湯を張って
浴室のドアを開けています。

デパートに行って、よく風邪をひいたり、快適な空間を提供しているホテルで
風邪をひいたりするのも、湿度の感覚があまり無いからでしょうか?

それと、最後に楽器を納品したり、持って行った時に湿度計の有無を聞きますが、
よくあるのが、アナログの湿度計です。
見た目は立派なのですが、アナログの湿度計は、取り扱い説明書や解説書を見ると、
プラスマイナス20%の誤差とか、うっかりすると30%の誤差がありますと、
書かれています。

どうしても、アナログの湿度計しかないようだったら、沢山湿度計がある売り場で
標準的なものを選べば良いと思います。

最近だと、ホームセンターでも家電量販店でも1000円から3000円でデジタルの
湿度計が売っています。デジタルだと、安いものでもプラスマイナス5%くらいの誤差ですから、
充分実用になりますので。

楽器を持ってられる方は、湿度計をいくつか持つことをお勧めします。

と言うことで、また次回はギターに戻ります。













  1. 2012/12/13(木) 12:39:49|
  2. 演奏会
  3. | コメント:4
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コメント

こんばんは。あのギターを明日の鳥取のリサイタルで弾こうと
いまホテルで調整中 すみません下の駒を 0.4ミリもさげました。
左手の反応がとてもよくなった。
ホテルの湿度と格闘中。
洗える下着は全部洗ってぶらさげて それでもタイヘン。
リサイタル前半はコッフ 後半はこれでひきます。
音色 をコッフとは変えたいので(かなり似ている)低音はあえて普通の糸にしました。
  1. URL |
  2. 2012/12/14(金) 22:36:41 |
  3. nisigaki #ArGM.iJY
  4. [ 編集 ]

nisigakiさん コメントありがとうございます。

ヨーロッパとか、ホテルなどに泊まられる機会が多いので、
乾燥には気を使ってられるのでしょうね?

あの、燻煙処理していただいた表板のギターを使ってくださったのですね。
私も、ホールで聞きたかったです。

22日はなんとか、早く神戸から京都に移動します。

もう一台のギターも,12フレット上で、弦高が1弦で2.2ミリ
6弦で2.6ミリでした。
こちらは少し上げて、2.5ミリ2.9ミリにしました。

少し音の中身や、響きが増えました。
  1. URL |
  2. 2012/12/17(月) 22:52:49 |
  3. こがっき #-
  4. [ 編集 ]

使わせていただいた楽器、生まれたてなのに充分に深い鳴り方をしました。
次に平山さんに私のために作っていただきたい楽器のイメージが(勝手な妄想ですが)浮かんできました。
やはり今回の楽器の延長線で・・すこしサントスみたいな発声(いますでにそんな感じです)が強調されると私にはつかいやすい、、つまりパノルモやコッフとかぶらないから出番が増えるのでは、とかんじます。これはあくまで私の個人的な事情です。
私のような素人にはわからないことなのですが、楽器の厚さ というのはどう関係するのだろう? 
過去の名器と友人の楽器をならべて演奏できる時がきた、とてもうれしいことです。
  1. URL |
  2. 2012/12/19(水) 12:05:30 |
  3. nisigaki #X1ynpJAA
  4. [ 編集 ]

Nisigakiさん ありがとうございます

ものすごく、うれしいコメントをありがとうございました。
ギターを作っていく上で、少しは一般的なモダンスペイン楽器に
近いほうが良いのでは?と思ったこともありましたが、
やはりこの方向、私の考える方向で良かったと思います。
おそらくこれが、ベストと思えるのは、100年以上弾きこんだ
ピアノの銘記の響板を燻煙処理していただくしかないかな?
と考えています。

この処理、材料に私の設計だと、今までにないような
楽器が出来るのではないかと思います。

  1. URL |
  2. 2012/12/20(木) 14:10:02 |
  3. こがっき #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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