古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

弦について その5



弦についてもう少し、書かせていただきます。
弦楽器にとって弦は大切な要素ですから。

以前も、ヴァイオリンやチェロの弦について書かせていただきましたが、
今回は、ハープやマンドリンの弦の話です。

今も修理で預かっている、90年ほど前のグランドハープや
長いこと預かっている、修理のマンドリン、ヴァイオリンの話です。

今の日本では、私のようなやり方は非常にまれなほうだと思うのですが、
いろんな楽器を作って〈と言っても、時代は限られていますが)
いろんな楽器の修理をしていると、その楽器だけを扱っている製作家
演奏家には、見えてこない事もあります。

そのひとつが、弦です。

ハープもグランドハープ、(ペダルハープ)でもアイリッシュハープでも、
ガット弦を使ったり、ナイロン弦を使ったりしています。

最高音に近いオクターブだけ、ガット弦では切れやすいので、
ナイロン弦にしている人もいます。

でも、最低音に近いところは、巻き線を使っています。

その巻き線の張力が、とてつもなく強いのです。
ハープが壊れる原因の多くが、この巻き線の
異常な張力によることを感じます。

今預かっている、グランドハープの表板の写真です。

UNI_0057.jpg


UNI_0058.jpg


写真では写真では分かりにくいかもしれませんが、低音の巻き線部分で表板が膨らんでいます。

また、弦の圧力に負けて、象牙の補強部分も割れています。

音も、ガット弦から巻き線巻き線に移ると、「ゴーン」と言う金属音がします。
まるで、自動車でも吊り上げるのかと思うほど、強いテンションです。

芯線を細くして、ガット弦に近い音にするか、芯線をガットにしたり、
ガットでは切れやすいのだったら、芯線をナイロンとかフロロカーボンにすれば良いのにと思います。

弦メーカーも沢山あるようですが、みな同じ感じの弦ばかりです。


次に不思議に思うのが、マンドリンの弦です。

古楽器の世界では、撥弦楽器のほうが、擦弦楽器よりテンションが小さいほうが常識です。
リュートとガンバは同じ調弦ですが、〈テナーリュートとテナーガンバを比べた場合です)
テンションはリュートのほうがはるかにゆるいです。

ヴァイオリンはモダンのスティール弦でも、25キロから27キロくらいです。

マンドリンではもっとテンションが低くてよいように思います。
おまけに複弦ですし。

マンドリンの張力に関して、本などでも、記述が無いので
ネットで調べると、130キロ、140キロ最も大きい数字では
150キロと言うのもありました。

モダンチェロでも70キロ程度です。

チェロの2倍もあるというのが、通説のようです。

でもそんなにあるのでしょうか?

手元の、ヴァイオリンの弦 ピラストロやサバレスの 1弦,E線は
ほぼ、0.25ミリでした。
マンドリンの弦もほぼ同じです。

実際に計算してみました。

スチールの比重を7.85としました。
正確な秤があれば、実際の重さを量ればよいのでしょうが、そう大きな差は
無いと思いますので。

そうすると、E線で 7.5キロ,A線で5.7キロくらいです。
弦のゲージを測ってみてもほぼヴァイオリンと同じですので、
ヴァイオリンと同じくらいと考えても良いのではないでしょうか。

平均値の25キロとして複弦なので2倍にしても50キロです。

大きく見積もっても、60キロにはなりません。

マンドリンの張力が140キロとか150キロと書いている
ところでは、多くのところで、ギターの張力は60キロとなっています。

もちろんギターの張力は40キロ前後です。

誰がマンドリンの張力は140キロも150キロもあると言い出したのかわかりませんが、
こんなことが今の時代多いようです。

自分で調べずに、考えずに人の言っていることを、そのまま自分で考えたように
言ってしまうことが。

私もこんなことが無いように気をつけないといけませんね。

と話が逸れましたが、私もマンドリンの古名器〈何百万もするヴィナッチャやエンベルガー
新しいところでも,ジェラとか)を大修理した時、これらの名器だともっとテンションの
低い弦を張ったほうが、良いだろうと思うことが多かったです。

でも、テンションの低いマンドリンの弦と言うのはなかなか無かったです。
私の探しようが悪かったのかもしれません。
低いテンションのマンドリンの弦をご存知の方はお教えねがえませんでしょうか。
よろしくお願いします。

現在作られている、マンドリンはしっかり作られているので、このぐらい
テンションをかけないと鳴らないのでしょうが、もっとテンションが低くても
鳴る楽器を作ることが出来れば、もっとマンドリンの人口も増えるように思います。
あくまで、私の考えですが。
人一倍丈夫な指を持っていると思っている私でも、マンドリンは弾けません。
修理が終わって、弦を張っても私の限界は、3度下くらいまでしか上げることはできません。
でも、修理が終われば本来のピッチに上げないといけませんが、異様な張力に
いつもドキドキしながら、すごいストレスを感じながら、ピッチを上げています。

ひとつの楽器だけを作り、またひとつの楽器だけを演奏していると、
その楽器の世界だけの常識でいろんな判断をしてしまうように思います。
結局は音楽なのですから、他の楽器を聴いたり、見たりすることは大切だな、
とよく思います。








  1. 2012/11/18(日) 03:20:28|
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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