古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

弦について その3


しばらく、このブログらしい更新が出来ていませんでした。
忙しくしていたこともあるのですが、ひとつ気になっていたことがあって、
その結論が出てから、ブログを書きたいと思っていましたので、更新が
遅くなってしまいました。

気になっていたことは、テトロンについてです。
私も勘違いしていたのですが、ナイロンと言う言葉が、商品名で無いように
テトロンも商品名で無いと思っていたのですが、テトロンはポリエステル樹脂
で、東洋レーヨンの商標名がテトロンだったのです。

三味線の糸や、釣り糸でテトロン素材と書いているので、ナイロンと同じように
考えていました。

といきなり、横道にそれてしまいましたが、テトロンは比重が1.33,1.34
くらいで、ほぼガットと同じなのです。
と言うことは、ギターの弦やガンバの弦に使うと、ガットに近い音がするのでは?
と考えたのです。

戦後、ガット弦が不足して、ギターはナイロン弦に変わりましたが、その当時は
まだ、テトロンは開発されていなかったようです。
1957年にイギリスから東レが技術を導入して、翌 58年からテトロンとして開発して。
1964年から商品として、テトロンが出たようです。

テトロンが開発された時に、三味線やお琴では、直ぐ糸に使われ始めました。

ギターは、もうすでにナイロンの時代が長く続いていたので、テトロンを
使おうとしなかったのでしょうか。
ギターでは、ガット弦の素晴らしさは、使った人しか分からないと思いますが、
戦後、かなり年数が経った、1960年代でも、ガット弦をギターに張っている人は
ほとんどいなかったのでしょう。

(それには価格の問題もありました。三味線の糸は一番細い3の糸だと、テトロンでも
1本100円しませんが、絹糸でも120円くらいで手に入ります。練習用の絹糸だと
80円くらいで安いところでは売っています。
これが、ガット弦だと、バスガンバの1弦が ピラストロで定価 3750円です。
三味線の3の糸に近い、トレブルガンバの1弦で2310円でも長さが半分なので
倍にすると、4620円です。これでは、普段ナイロン弦を使っている人には
とても使えない値段です。
私はハープ用のガット弦を使っていますので、1弦用で700円くらいで買っていますが、
それでも、ギターの弦とか、三味線の絹糸に比べると高いですね)

ですから、新しい素材が出ても、ガットに近い弦を作ろうとしなかったようです。

三味線は今でも、練習用、初心者はナイロン、テトロンでも一般的に絹糸が使われています。
その絹糸に近いものが出来ないかと、糸、弦のメーカーは考えていたようです。
もちろん、三味線の世界では、絹糸が最も音が良いとされていますので。

同じようなことが、10年以上前ですが、ありました。

京大の研究だったと思いますが、弦などに放射線をあてると、ヤング係数や素材の
性質が変わり、三味線のテトロンの糸は、絹糸に近い音がするということで、
直ぐに、三味線の糸のメーカーはこの理論を取り入れ、商品化しました。
手元に、丸三ハシモト株式会社のテトロンの三味線の糸がありますが、
袋には 放射線照射糸 RAY TONE とあります。

また、弦を売っているHPなどを見ても、放射線照射されているので、絹糸に近い
などと書かれています。

当然ギターの人にも、声をかけて、ガット弦に近い音になると説明されたそうです。
でも、ギターの人は関心を示さなかったそうです。
その話を聞いて(私はギターから遠ざかっていましたので)
「なんともったいない話だろう。弦作る最後の工程で放射線を当てるだけのことなの
だから、少しでもガットに近い、良い音がするなら、やってみたら良いのに」
と思いました。

ギターでは、本当に山のように、いろんなメーカーが色んな弦を出しているので、
材質だけでなく、(今でも少しは違う材質の弦が出ていますが、ほとんどナイロンです)
どこか、放射線照射を試してくれるところがありませんでしょうか?

ということで、実際にテトロンの三味線の糸を張ってみました。
(いろいろ探して、天理市でテトロンの糸も揃っている所が見つかりましたので)

常盤と言うブランドの 3の糸の15番です。
ゲージは 0.56ミリと細く、少しテンションはゆるく感じますが、
明るい音で、立ち上がりも良く、ナイロン弦の湿った音はしません。

ただ、ものすごく伸びるので、落ち着くまで時間がかかりました。

同じような弦があったと思い、1弦用のテトロンしか手に入っていないので、
2弦に アキュラ社のナイルガットを張ってみました。

同じくらい伸びて、同じような音です。
ナイルガットもガットと同じ比重で、ガット弦と同じような音がすると言うことで、
作られた弦です。

ガット弦に比べると、倍音が多く、響きが少ない。
基音の量が少し少ない感じですが、音の伸びはナイルガットと同じように、
ガット弦よりはるかに、伸びます。

もう少し張って様子を見ようと思います。

いま、手に入る全ての三味線の糸を注文しています。
これが手に入れば、また、報告させていただきます。







  1. 2012/11/10(土) 11:25:43|
  2. ギター
  3. | コメント:2
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コメント

すごい!

テトロンという素材、初めて知りました!!
僕もタイミングみて買ってみます。
良い情報ありがとうございます。
さすが・・すごいなぁ。
  1. URL |
  2. 2012/11/10(土) 23:19:45 |
  3. たなか #-
  4. [ 編集 ]

たなかさんコメントありがとうございます。

次回のブログのように、結局 ゲージの合う、
弦は見つかりませんでした。

確かに三味線の硬い撥で叩くと、テトロンの糸は甲高く聞こえます。
でも、ギターのように手で弾く楽器には良いのではないかと思います。

一昔前に比べると、楽器のコンディションもオリジナルが求められている
今だったらガットに近いテトロンを見直してくれると良いのですが。
  1. URL |
  2. 2012/11/18(日) 16:14:37 |
  3. こがっき #-
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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