古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

チェロ練習法 私の独断で



前回のブログで予告をしてしまって、ひょっとすると期待されている方がいらっしゃるかも?
と思って、少し早めに記事にしました。明日からは、また急ぎの楽器でそれどころではなくなるので。

前回に体に合った大きさの楽器について書かせていただきました。まず、このことが上達の早道の一つだと思います。

でも、そんなに簡単に小さな良い楽器が手に入り難いという方や、今の楽器でなんとか練習して上手くなりたいとか、
先生から小さな楽器では勉強できないと言われている、などの理由により4/4 フルサイズの楽器を使わなくては
いけない人も多いと思います。

その場合、テンションの緩い弦を選ぶ、(ナイロン芯等の柔らかい弦を選ぶ)ピッチを半音下げて、A=415 にする。
(これも先生に習っている場合は難しいかもしれません) それと、次に誰でも出来るわけではありませんが、
魂柱立てを持っていて、自分で魂柱を立てたことがある方だったら、駒を1.5センチくらい指板側に近づけて、
魂柱も近づけて,弦長を短くするという方法もあります。
カザルスさんもやってられたようです。

私の 楽器もこのような位置にして弦長は1.5センチ短くして 68センチにしています。

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左手はかなり楽になります。

この楽器もフレットを巻いているので、正しい音程を作るためにはどこまで、指を拡げないといけないか、
が分かります。それと、私はフレットのある、ギター、リュート、ガンバは省エネで、左手の親指は、人差し指より
上に置いています。そうすると、左の力が抜けて、弦が押さえられるのです。でも、チェロでは中指のところに親指を
持ってこないといけないのです。
それが、フレットがあると(ガット弦の巻フレットですから)親指の位置の確認が出来るのです。

この楽器を 440まで上げると415の時に比べると、全然鳴りません。
弦はプロアルテなのですが、弦が 440まで上げると振動する余裕が無くなるのでしょうか?



まず独学するために、教則本を探しました。
ネットを使って、良いものがないか?探しました。

そして、いくつかの教則本を買いました。そしてびっくりしました。

ギターやその他の楽器の教則本のような物を期待していましたが、練習曲集というか
音階練習曲集のようなものでした。演奏するための教則本でなく、教師が使うための
曲集のようなものです。

懲りずに探し続けると、良い本が見つかりました。

鷹栖光昭さん 升田俊樹さんの やさしいチェロ入門 です。

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これまでの教則本と違って、懇切丁寧に書かれています。

この本で、チェロをやっている方だと、誰でも知っているような、左手の指使い、ポジション移動
などが理解できました。

教えてグー とか ちえぶくろ を見ると、習っている方でも、自分で勉強してみようという方の
質問を見ると、すべて先生に聞いて分かっているのではなさそうですね。

後は、ネットで分かりやすいHPやブログを探しました。

よく理解出来たのが、日本エトルリア協会の HPです。

 http://giappone-etrusco.rejec.net/Cello.html

なぜこんなに詳しく音楽のことについて書かれているのか謎ですが、とてもよく理解できます。

後は、今の時代、ユーチューブです。

山のように、無料で勉強ができます。

その中で、Abigail Mchugh-Grifa さんのユーチューブが英語ですが、よく分かります。

例えば、弓の持ち方は

https://www.youtube.com/watch?v=TNZbPD1zJ8Q

その他、右手、左手の使いから、スケール、曲の練習方法など沢山の動画で説明、紹介されています。

話が元気すぎるようですが、分かりやすい英語で話してくれます。

これ以外でもたくさんの親切な動画があります。

利用しないともったいない感じです。

それと、私が見つけた面白いサイトがあります。

http://www.8notes.com/instruments/

8 notes.com というサイトです。

初めは、チェロの簡単な楽譜がないか?探していましたらいくつかのフリープリント
のサイトがあったのですが、このサイトは 楽譜、それも旋律と伴奏譜があるだけでなく、
音源も、演奏例、伴奏だけが選べて、テンポも自由に変えられます。もちろん、テンポが変わっても
ピッチは変わりません。

レベルも 初心者 初級 中級 と分けられていて、作曲家別でも検索できます。

それに、チェロだけだなく、ヴァイオリンや、フルート、サックスやピアノ、
リコーダーに様々なアンサンブルや声楽、コーラスまでありとあらゆる楽器
の楽譜が紹介されています。

私はこの中から、10曲ほど選んでプリントアウトしました。
スカボロフェア、ロッホローモンド(鉄道唱歌の原曲です)
アッシュ グローブ やフォーレのエレジーの最初とか
少し練習すれば弾けそうな曲です。

知っている曲なので、音程が外れると分かりますから。

音階練習も大事ですが、知っている曲で音程を掴む方が楽しくて
早く左手のポジションが身につくと思ったのです。
フレット付きの楽器の力も借りながら。

楽譜をプリントアウトするだけなら、何百曲プリントしても無料です。

ただ、音源を利用して、3曲ほど聞くと有料になります。
でも、1年間で20ドルです。

私はこれを利用して、まず楽譜で練習。

次に 音源を使って、合わせてみる。

慣れてくれば、旋律のチェロを外して、伴奏に乗せて弾いてみる。

という形で練習してみようと思っています。

まず、最初はフレット付きの 3/4 のチェロで練習。
音程が安定してきたら、フレットなしの楽器使ってソロで練習。
慣れてくると音源の伴奏を利用して曲を仕上げる。

チェックのために動画を撮って確かめる。

まず、ファーストポジションを確実に身に付けようと思っています。

今まで、フレットのついた楽器しかやっていませんでしたので、それも
4度調弦の楽器ばかりでしたから、フレットのついていない、5度調弦の
楽器は大変です。フレットの有りがたさが身にしみます。

でも、細いフレットを付けたままでも、構わないのでは?
と思ったりします。

音程の不確かな演奏を聴かせるよりも、フレットが付いていても
音程の確かな音楽的な演奏をする方が、良いのでは?と。

細いフレットだと、フレット本来の使い方(音をクリアーに出す、減衰を長くする)
ではなく、ほとんどフレットがない状態に近い音楽がつくれますので。

今から、7,8年前でしょうか10年ほど前でしょうか?
BSでクイケンさんたちがバッハのカンタータをやっていました。

お父さんバッハのカンタータでは、チェロにフレットを巻いていました。
息子さんバッハの時は、外していましたが。



そして、弓の持ち方は、ガンバのように持っています。とりあえずは。

それは、職業病で 手に筋肉が付きすぎて、親指が チェロのようなオーバーで
弓を持つことが出来ないのです。この形にするだけで筋肉が突っ張ってしまうのです。
なんとか、弾いても10分位が限界です。

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チェロの弓を持つためには無駄に付いている筋肉を逆になんとか利用出来ないか?
と考えているところです。いろいろ試しています。

でも先生には聞かないでおこうと思っています。

初めての楽器を習うという、こんな楽しいことを人に、先生に教えてもらうことなど、
もったいなくて、私には出来ませんから。

現在通算で、10時間くらい練習しています。もう少し練習すればチェロの演奏も
ユーチューブにアップしますので。

それまでは、こちらの方の演奏をお聞きください。




45歳でチェロを初めて13ヶ月ということですが、本人さんの練習、努力、センスあるのでしょうが、
隣で弾いている先生も良い先生なのでしょう。チェロを初めて13ヶ月目の生徒さんがこんな弦楽合奏の伴奏で
発表会が出来るのですから。楽器もレンタル落ちの中国製ということで、弾き込まれた楽器のようですし。
それに、弦がガット弦という事です!やはりセンスが良いのでしょうね。

次は始めて2ヶ月目、上手です。




次回はギターのことも書かせていただきます。


  1. 2016/01/29(金) 01:08:03|
  2. ギター
  3. | コメント:1

体に合った楽器を弾きませんか? その2 チェロ  そして実際にチェロを弾いて感じたこと。


以前のブログで紹介させていただいたように、チェロの練習を始めました。

と言っても、昨年末に何時間か弾いただけで、今年に入ってからは弾いていませんでした。

ので、昨日あたりから少しは弾いておかないと、という感じで弾いています。

どんな楽器を弾いていると思われますか?

1月7日のブログの写真の中の、右端の2台が 3/4 と言われている、分数の楽器です。
世界標準として、言われているのが 弦長63.5センチです


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普通のチェロが 4/4 と言われて、弦長が 69.5センチくらいです。

楽器の胴体も 4/4 が 長さ 75.5センチに対して  69センチくらいです。

7/8 という楽器がありますが、これは弦長 67センチくらいでレディースサイズと言われています。

3/4 楽器は一般的には子供用の楽器とされています。

でも実際に弾いてみると、私には 3/4 の楽器が限界です。

無理をすれば、フルサイズの楽器も弾けないことはないのですが、
体を壊しそうです。

それは、チェロだけを弾いている人は感じていないと思うのですが、チェロが5度調弦だということです。

ギター、リュート、ガンバは 4度が基本で,長3度のところもあります。

5度調弦を言うことは、半音階を弾くと、6フレットまで押さえないと次の弦に移れないのです。

ということは、小指の出番が多いということです。

チェロは5度調弦なので、2フレットに人差し指が来る、ファーストポジションが基本です。

その場合、例えば 4弦の開放弦は ド なのですが、シャープがつくと 
1フレットまで人差し指を拡張して押さえないといけません。

3弦のソ も 2弦のレ も 1弦のラ も 1フレットを押さえないといけない場合が多いのです。

また、4弦のド から ファのシャープまで指を拡げる必要があります。

それも、フレットがないので 自分の力で弦を押さえないといけないのです。

大変でしょ。

ですから、私は ギターの弦長よりも短い 3/4 の楽器を使っているのです。

そして、それに ガット弦を張っています。
一台の方に、そして 0.5ミリ程度のナイロンのフレットもつけています。

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これは、音程を正しく取った場合の指の感覚を覚えるためです。

この程度の細さだと、ガンバやギターのように、フレットから離れると、音程は全然合いません。

音程がある程度身についたと思ったら、フレットを付けていない同じ弦長の楽器で練習するのです。

今まで、フレットのある楽器ばかりを弾いてきましたから、正しい音程を取るのが非常に難しいのです。

もちろん、指の感覚、体の感覚が身に付けば フレットは外します。

そして、正しい音程を取るために調弦のし易いウイットナー社のギアー内蔵の微調整の効く
ペグにしています。慣れない楽器ですので。

63.5センチの楽器に ガット弦とナイロン芯の弦を張り、ピッチも半音低い A= 415 で弾いています。
もちろん、、弦高はかなり下げて弾きやすくしています。

これでも、フレットがないのでかなり押さえるのに力がいります。

まして、弦長が 69.5センチあって スチール芯の弦を 440 のピッチで弾くことなど、
私には不可能です。

若い時にチェロをやってみたかったが、時間がなく ある程度 歳をとって、
時間も出来たから、若い時からの憧れのチェロを練習しようという人にとっても、
このスチール弦の弦長 69.5センチ 440ピッチの楽器は無理だと思うのです。

弦楽器、それも擦弦楽器を弾きたいという方がいらっしゃったら、まずガンバを勧めますが、
どうしてもチェロでなければいけない! という人には、まず、3/4 ガット弦のピッチ415
を勧めます。

でも、これを許してくれるチェロの先生がどの程度いるでしょうか?

バロックチェロをやっている先生なら、全然問題はないのですが。

東京でも、友人がかなり長い時間をかけて探したようです。

それと、大きなチェロが小柄な女性でも男性でも、年配の方でも
弾けそうに思わせるのが、エンドピンの存在ではないかと思っています。

エンドピンがなければ、バロックチェロやガンバのように、足で挟むことになります。

そうなると、4/4 の楽器は まず楽器を保持することが難しくなります。

その結果、分数サイズの 3/4 の楽器を選ぶ人が多くなると思うのですが。

でも、弦のところでも書かせていただきましたが、チェロに何を求めているか?
も問題になると思います。


二十年ほど前になりますが、丹波で教育委員会と私でサロンコンサートを10回ほどやっていた時期があります。

10回記念と言うことで、モダンのカルテットとモダンフルートで演奏会をやりました。

その時のチェロの方が見事な演奏で、カルテットのチェロとしての役割を充分に果たされていました。

下で支えたり、表に出たり、影に回ったりと。それは、それは見事でした。

でもその演奏を聞いたヴァイオリンをやっている人はその演奏が下手だと言うのです。

その人の言うのには、もっとガンガン弾かなければ、もっと大きな音で、と言うのです。

カルテットや通奏低音で近所迷惑なチェロを聞くことがありますが、そんなチェロが良いようです。

ピアノでも同じ事を感じます。近所迷惑なピアノ演奏が多いと感じます。
特に、最近の日本でのピアノは。

その近所迷惑なピアノに伴奏してもらう時に、ピアノに負けまいとしているようなチェロが多いようです。

またそのようなチェロを聞きたいと思っている人が多いのでしょうか?

このような、近所迷惑な大きな音のチェロをイメージしていると考えると、
多くのチェロをやっている方が 4/4 のチェロを選び、スチール弦を選択することに納得がいきます。

でも、近所迷惑になることを目的にしていないのなら、3/4 の楽器で、
ガット弦を張り 415のピッチで弾く方が、はるかに進歩も早く、音楽的な
演奏が身に付くと 私は思っています。

次に弓の問題もあります。

モダンチェロの弓だと、ほぼ弓を持つ位置が決まっています。

ガンバやバロックチェロの弓だと、弓の重さやバランスなどで持つ位置を
変えることができます。

ですので、私は バロックチェロの弓と 3/4 用の弓を使って練習しています、
今のところは。

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4/4 の弓を決められた場所で持つと、今の段階だと、私には重すぎますので。

チェロは大きい楽器なので、ヴァイオリンを作るときのように、指で楽器の、特に表板の
チェックが為難いと言われています。
それが、チェロの名器が少ない理由だとも言われています。

同じ人がつくれば、むしろ7/8 や3/4 の楽器の方が鳴っている場合もあるようです。

私が使っている楽器は、弓とケース合わせても、5万とか8万円のものです。
これで、充分練習はできます。
(調整や駒を返たりしてますが

5弦チェロを作るために始めた、チェロの練習ですが、
4弦チェロを5弦に作り替えた報告がネットで見ることができます。

それを読むと、5弦にすると4弦に比べて楽器が鳴っていない、ウルフが出る、
1弦がトレブルガンバのような音がするとか、書かれています。

これは、私は単純に 4弦でバランスの取れていた表板に、
もう1本弦を増やすことによって、圧力がかかりすぎ、
楽器が鳴らなくなったのではないかと、思っています。

63.5センチの楽器でも、415とか430 のピッチの方がよく鳴っていると感じます。
この楽器を440に上げると、私には楽器が鳴っていないように思えますので。

(それは、安物の楽器でお前の腕が悪いからだと言われそうですね、まだチェロを初めて
10時間くらいしか経っていないのですから)

次回は、私の練習方法、私が考える早く上達する方法を書かせていただきたいと思っています。
(先生に習っている方には必要がないかもしれませんが)



  1. 2016/01/28(木) 00:59:06|
  2. ギター
  3. | コメント:0

ギター補助具について


コメントを頂いていたので、この原稿も演奏会のリハ時間を利用させていただいて作りました。

コメントをいただきました、ギター保持のための補助具ですが、
現代ギター 2008年 3月号に特集が組まれていました。

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ギターレストを初めとして、ダイナレットなど様々な補助具が紹介されています。
すでに、ギターレストなどの補助具は、多くのプロのギタリストにも使われているのはご存知だと思いますが。


ギターレストなどの補助具が登場するまで、クラシックギターでは足台を使うのが一般的でした。

クラシックギター以外では、レキントギターやラテンでサウンドホールにフックを引っ掛けるタイプの
ストラップが使われていましたし、フォークギターではストラップが当たり前に使われていました。

フォークギターといえば、私たちが若い頃フォークグループでは、PP&M ピーターポールアンドマリーが有名でした。
そのうちの一人ノエル・ポール・ストーキーはクラシックギターをフォークに使っていました。
アンドレス・セゴビアさんの演奏を聞いて、クラシックギターを使うようになったという話もあります。

でも、彼以外はいわゆるフォークギター、今で言うアコースティックギターばかりでした。
もっと、クラシックギターをフォークで使って欲しいと昔から思っていました。

ナイロン弦のクラシックギターとスチール弦のアコースティックギターの良いところを取り入れてくれないかな、
と思っていたのです。

話がそれましたが、アコースティックギター、フォークギターは逆に ストラップを使う事によって、
大きなギターでも保持ができるということで、小型のパーラーギターやクラシックギターを使わない人が
多かったのでは?と思います。(私たちの世代だとフォーク歌手のイルカさんや森山良子さんなどは女性で小柄な人でしたが、
大きなフォークギターをそんなに持ちにくいようには持っていませんでした)

ギターの補助具は大きな楽器を保持しやすくするため、というより体への負担、腰への負担が
減らすという事が、大きな目的のように思います。

私も、補助具の新しいものを6,7年前に考えていました。

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ただ単に楽器を保持しやすくするのではもったいないと思って、補助具を音量の拡大にも
使えないかな?と思ってこんな補助具を試作していました。

音は確かに大きくなったようですし、響きも増えたように思います。でも、安定感が少しないので
もう少し工夫しようとして、そのままです。

友人のリサイタルの時に、彼のお友達の木工家に頼んで、しっかりしたダイナレットというか、
私のような補助具を作ってもらったのを、実際に聞いたことがあります。

でもしっかり作ると、横板の振動を抑えてしまって、音的には不利でした。

ですので、補助具が鳴ること、ギターの振動を妨げないということから、このようなものを作ったのでした。


  1. 2016/01/25(月) 12:39:38|
  2. ギター
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チェロの不思議 その1 弦について


長いあいだブログの更新出来ていませんでした。

相変わらず、バタバタしています。

昨年から預かっている楽器の修理を何とかしてしまわないと、
と思っているのですが、先週は1週間に 3回演奏会がありました。

演奏会が無い日でも、ほとんどの日に
お客さんが来られたり、こちらが出て行ったりしていましたので。

今回は、ギターから少し離れて、チェロのことです。
直接 ギターとは関係ない話ですが,弦のことなど他の楽器のことが分かれば、
ギターの弦がどのようなものなのか、が少し分かっていただけると思います。

今回のブログの原稿は演奏会のリハの時間に書かせていただきました。
少し長い話で申し訳ありません。



他の楽器から見ると、その楽器をやっている人、その楽器だけをやっている人が
気がつかないことに、気がつくことがあるように思います。

チェロもちょっと不思議なことがあります。

チェロといっても、一般的なモダンチェロについて感じていることを書かせていただきます。
(バロックチェロはガット弦で、エンドピンもついていないので全然別の楽器になりますから)

モダンチェロで最も不思議に思うことは、弦のことです。

マンドリンはほとんど1種類の弦が使われているのを不思議に思いますが、
(メーカーはいくつかあるのですが、ほとんど1種類の弦が使われているようですので)
チェロは沢山のメーカーから沢山の種類の弦が発売されています。

でも、その沢山ある弦が同じような弦なのです。
(チェロをやっている人から見ると、山のように種類があって、それぞれがかなり違う弦だと言われそうですが)
違うといえば、ピラストロ社のコルダや他のメーカー(キルシュナーやサバレスなど)のガット弦くらいでしょうか?
でもそれは、主にバロックチェロ用として販売されています。

私などがモダンチェロの演奏を見ていると、弓の弦上の位置というか、
弦を弓で弾く場所、範囲が、非常に広いということをよく感じます。

ガット弦のガンバを普段弾いていると、スイートスポット言うか弦に当てる弓の位置がかなりシビアーだと思います。
昔からの本を見ると、駒から2インチ(約5センチ)くらいの所を弾くように指示されています。

この5センチ位の位置で前後2センチくらいがバスガンバでは最も弾きやすく音も良いように思えます。
この割合は音が高くなって、弦長が短くなっても同じ割合になるので、
音が高くなると駒の近くを弾かなければなりません。

これを不便とはガンバ弾きは思わないのです。

逆に私などは、あんなに弓の位置が違っても同じように弾けるということは、
どこで弾いても音にあまり変わりがない、つまり音に変化がつかない、
音楽に変化がつかないと思ってしまうわけです。

チェロでもガット弦を張ると、この割合はシビアーになります。

昔から、良い楽器の見極め方として、駒の近くで弾いても、音になること。
音楽として使える音がすること、と言われています。
でも、現在使われているチェロの弦のほとんどが、駒の近くでは音が出しにくいのです。
それは、弦がしなやかでなく、硬いことから来るのではないでしょうか?

ガット芯の高級弦である、ピラストロ社のオイドクサやオリーブといった弦でも、
芯材がガットというだけで、非常に巻線が硬く巻かれていますそして何重にも。

弦は弦の振動が正弦波に近い波形の時に,基音が出ます。
これが硬い弦だと、正弦波になりにくく、倍音の成分が多い音になるようです。

以前、ヴィオロンチェロ ダ スパッラ を作った時に、最低音のC線を探すのが,一仕事でした。

スパラはチェロの分数サイズで言うと、ほぼ8分の1くらいの大きさで、音楽に使える最低音の
C の音を出さないといけませんから。

このCはギターの最低音6弦のE より2音低い音です。

バスガンバの7弦は ラ なので、使えるかと思ったのですが、弦長が短いため弦が振動してくれません。
ガット芯でも太くなれば短い弦長では鳴らないのです。
そしてチェロの弦のように複雑に何重もの巻線もない弦ですが、振動してくれません。
(バスガンバの7弦用の弦は1万5千円ほどしましたが、短くしてしまったので使えません)

もちろん、4分の一用、八分の一用の弦は、太いのですが、
芯材がスチールのものしか手に入らず、まるっきり使えません。

後は、しなやかな ナイロンフィラメント芯の弦を探すしかありません。

ナイロン芯のドミナントの4分の4用のC線 では弦長が短すぎて音になりませんし。
やっと、スーパーセンシティブという会社がナイロン芯のガンバ弦を作っていることが分かり、取り寄せました。

これでいけると思ったのですが、巻線が多すぎて鳴りません。

そこで、一番外側のきしめんみたいな、平べったい巻線を外すと、やっと弦がしなやかになって、鳴ってくれました。

弦の構造が分かっていないと、なんのことかな?と思われそうですので、チェロの弦について、少し書かせていただきます。

ギターの弦、低音の巻線は 単純に芯線となる、ナイロンフィラメント(ナイロンの細い繊維を束ねた物)
に1重に主に軟銅線に銀メッキされた細い巻弦を巻いているだけです。(メーカーによっては純銀の巻線もありますが)

これに比べて、チェロやヴァイオリンの弦はナイロン芯の弦でも、ナイロン芯にまず、まとめるためとか、
巻線の馴染みをよくするためにとか言われていますが、薄い紙のようなものが巻かれ、その上からまず一段目の巻線が巻かれます。細いヴァイオリンの弦などはこれで終わっています。でもかなりしっかり巻かれています。

でも、もっと太い弦ではこの巻線も太くなるので(ギターの6弦のように)、巻線の凸凹を取るために、もう一度細い巻線を巻いて凸凹を取ります。メーカーやブランドによってはこの細い巻線を巻いていないものもあります。そして、太い巻線を1重に巻かず、細い巻弦を2重にしているメーカーもあります。そうすると、凸凹取りのための細い巻線を巻かなくても済むので。

そして、これらの巻線の上から、きしめんと言うか薄くて幅の広い巻線を巻いています。

チェロはポジション移動が多くて、その際に弦を左手で擦る、摩擦音を解消するためでしょうが、擦弦楽器のチェロではこの摩擦音はほとんど私には気になりません。

つまり二重、三重に巻かれているので、しなやかでなくなるのです。
手元に有る、弦を解いてみました。


スチール弦は単芯だと

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一般的な構造だと思います。

細いスチールをロープ状にした芯のもの


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芯の素材はスチールですが、ロープ状になっているため、しなやかです。


ナイロン(ペルロン)芯のものは

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太さが変わると、左が大変なので、巻線をいろいろ工夫しているようです。

ガット弦芯のもの
ガンバなどの単に1重だけ巻線を巻いたもの

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ギターと同じように太い丸い巻線です。


モダンのガット芯(ヴァイオリン、ヴィオラ)

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高音用なので、1重にしか巻かれていませんが、表面はツルツルです。
平べったいきし麺状の巻線のおかげです。

持ってみると、ナイロン芯の物が一番しなやかな感じがします。

実際に楽器に張ってみると、私の耳にはスチール芯の弦は、鉄の音がして楽器の音に聞こえません。
まるで、アコーステックギターでクラッシク音楽を演奏しているように。

最低音のC線だと、スチールでもロープ状のものだとなんとか、使えそうです。
普段ガット弦のガンバを弾いている私の耳には。

1,2,3弦は スチールだとロープ状の芯でもとても楽器の音には聞こえません。

なんとか使えるのは、ナイロン芯の弦でした。

それも、楽器屋さんがとりあえずなにか張っておかないといけないので、張っている弦。
初心者や子供用とされている、ダダリオのプロアルテ(ギターの人にはお馴染みのブランドですが)が私には、
最もガットに近い弦と思いました。


一般的なナイロン芯の弦としては、ピラストロ社のシノクサ、オブリガート、トマステイーク社のドミナント、
などがありますが、価格も半額くらいで、音も普段ガット弦を使っている私には最も自然な響きに聞こえます。
(これらの弦の内、シノクサ、ドミナント、オブリガートもハってみた結果です)

ギターの方にとって、あまり関係のない話が続いて申し訳ないのですが、
これら、チェロの弦を見ているとギターの低音弦、巻弦がなんとかならないかな?と思います。


擦弦楽器より弦の摩擦音が大きく聞こえる楽器、ギターでもチェロの弦のように、
巻線をきし麺のようなへらべったい巻線にすると左手の摩擦音が少なくなって、
むしろチェロ弦の巻線に使うより、はるかに良いと思うのです。

ダダリオなどはギターの弦もチェロの弦も作っているので、作ってくれないかな?と思っているのですが・・・・・・

弦の話のついでに、ヴァイオリン属は人によっては何億もする楽器を使っていますが、
これは弦がスチール弦を中心とした弦を使っているために、
無機質で硬い弦の音をなんとか音楽的な有機的な音にしたいために、
高い200年以上前に作られた名器を使う必要が出てきているのではないかと思うのです。

弦の問題がなければ、というか良い弦が作られると、もっと安い楽器でも音楽的な音の楽器になるのでは?
と思います。

でも、モダンの楽器を弾いている人には、現在の高い、古い楽器とスチール弦の組み合わせがベストなのでしょう。

次回は ギターに戻って、立奏や補助具について書かせていただきます。




  1. 2016/01/25(月) 11:34:53|
  2. ギター
  3. | コメント:2

明けましておめでとうございます。

と言っても、もうお正月は過ぎてしまいましたが。

昨年は小難しい、私のブログを読んでいただいて、ありがとうございました。

昨年は楽器の修理やメンテナンスその他の雑用であまり自分の楽器を作ることができませんでした。

今年は京大の野村先生の熱還元処理された材料でギターを作り、熱還元処理の楽器応用の結論を出すプロジェクトも、
進めて行く予定です。

今年の予定では、クラビコード、4フイートのポジティーフオルガン、5弦のチェロなど新しい楽器も作る予定なのですが。・・・・・

そして、昨年暮れからチェロの練習も始めました。

弾けない楽器は作れないので。

チェロは初めてですが、他の楽器を作って来て、弾いてきた経験を生かしてチェロについても、
今年は少し書かせていただこうと、思っています。

でも、今年もスケジュールがすでに一杯で、
練習する時間はあまり取れそうにないのですが。

ギター中心のブログですが、違う楽器を知っていただいて、違う角度からギターを見ていただければ、と考えています。

これから作る楽器は弾けませんので、とりあえず弾ける楽器を集めてみました。

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別方向から撮りました。

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左から、4/4 ,7/8, 7/8, 3/4, 3/4, 3/4 のチェロです。

それと、最後になりましたが、ギターのストラップについてです。

これは、私が若い頃先輩だったギターを演奏されていた方からもアドヴァイスがあったのですが、
私たちが若い頃、トリオ ロス パンチョスやクラシックギターを立奏している人たちは
サウンドホールにフックを引っ掛けるタイプのストラップを使っていました。

まず、最初にギターに加工しなくて済むので、試しましたが楽器の安定という点では、
少し使い勝手が悪いようでした。

次回は体に合ったサイズの楽器を弾きませんか?シリーズその2 チェロ
で話をさせていただきたいと思っています。


  1. 2016/01/07(木) 22:52:23|
  2. ギター
  3. | コメント:2

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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