古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

8月のできごと 


あっという間に、8月も終わりに近づいてしまいました。

年々、加速度的に忙しくなってくるようです。
ブログを更新していない間に、いろんな事や出会いがありました。

まず、8月8日の西垣さんと松本大樹くんの演奏会。
松本くんの演奏は初めて聞きましたが、彼のことは西垣さんから色々聞いていたので、
初めて会って、初めて演奏を聞かせてもらうのに、初めてではないような感じでした。

西垣さんに、「これだけは勉強しておかないと、これだけくらいは弾けてないと」と言われて、勉強して練習したのに、
コンセルバトワールでは他の人はそこまで勉強していなかったし、そこまで弾けてなかったという話は聞いていました。

その結果、歴代の卒業生の中で、トップの成績で卒業したことなども。

ギターの演奏会ではまず無いのですが、安心して聞けたこと、音楽的に聞けたことが素晴らしかったです。
そして、あまり弾く人がいないという、ロドリゴのトッカータ。こんな難しい曲、そりゃ 弾く人もいないだろうと
思いました。続く、西垣さんのドビッシー 喜びの島 ここまで難しくしなくても、と思った程の難曲でした。

そして、今月はガンバを始めたいという方、二人に手ほどきをさせていただきました。
その内の一人は、リコーダーのアンサンブルもされていて、ガンバでアンサンブルの幅や、表現力
が広がれば、ということでした。

私もリコーダーは何十年も吹いていなかったのですが、一応 クライネソプラニーノからグレートバスまで
楽器は持っているので、この機会に使ってもらおうかと思って持って行きました。

簡単にアンサンブルが出来る、ヘンリー8世やホルボーン、スザートなどの曲をリコーダーにガンバや
ギターが入って合奏をしました。
ギターはヴァイスの曲をアップしてから、弾いていませんし、
ほとんど楽器の演奏は出来ませんでしたから、余計に楽しかったのかもしれません。
やはり、皆で合奏して、音楽が出来上がるというのは楽しいものです。

音楽を楽しむには、初見程度で演奏できる曲を音楽的に弾くのが良いようです。
(人に聞かせる場合は別ですが)

12月6日にクリスマスコンサートがあるようなので、私もリュートやガンバで参加することになりそうです。

それから、Cabotinさんも書いてくださっている、シャコンヌ 、チャコーナ のことです。

簡単バージョンを作りましたからどうぞ、と少し説明不足のようだったので、少しだけ追加の案内です。

この原曲 g moll のシャコンヌ リュートのタブラチュアでのタイトルは チャコーナ ( Ciacona )
で 元々は リュートとトラベルソ(バロックフルート  1キーの木製のフルート)のための曲でしたが
トラベルソパートの楽譜がなくなっているのです。
こんなことがギター用に編曲された楽譜には書かれていなかったので、(阿部さんの本には)ソロの曲にしては
ちょっと分かりにくい箇所もある楽譜だと思った方もいらっしゃったかもしれません。

このなくなったトラベルソのパートを再構築(Reconstraction) し、リュートと2重奏の形で演奏しているのが
次の動画です。

( いつもようにアドレスだけ書かせていただいて、コピーしてユーチューブに繋げていただこうと思ったのですが
今回は沢山ですし、文章だけでは 読みづらいかな?と思って、著作権やその他の問題もあるようですが、
今回だけは動画貼り付けさせていただきました)
Reconstraction は Eileen Hadidian さんです。




曲は同じなのですが、ヴァイオリンとリュートです。
ヴァイオリンがバロックヴァイオリンでないのが、残念ですが、演奏はビブラートをなるべく付けずに
軽く弓を持ってバロック的に演奏されていますので。
お話が長くて 演奏は 4分過ぎから始まります。
リュートもかなり自由に弾いてられます。



聞いてみて、いかがでしょうか?
2重奏の部分もありますが、なんとなくトラベルソ、ヴァイオリンがリュートのオブリガートのような役割で
使われているような印象も。

もちろん、ヴァイスさんの作曲ではないので、この Reconstraction がヴァイスさんの作った曲の
イメージとは違うかもしれません。

でも、リュートのソロの方が比重が高いように思いますので、リュートソロと考えて
ギターソロに編曲させていただいてもいいのでは?と思ったりします。

ギターはリュートに比べて、レパートリーが非常に少ないので、使えるものは使わせていただきたいと、
私などは思います。
ギター用に編曲は絶対に出来ないというヴァイスさんの曲の方が圧倒的に多いと思いますので。

でも、私にとって チャコーナ は この曲のイメージではなく 次の動画のようなイメージなのです。



この曲は 私の友人たちがよく演奏会で聞かせてくれる曲です。

旋律はバロックヴァイオリンが多いのですがそれにリコーダーが入ったり、通奏低音には チェンバロ、
バロックギター、チェロ、ガンバ、テオルボ それに打楽器が入って演奏してくれます。

ヴァイスのチャコーナでははっきりしていないのですが、むしろヴァイスさんの曲ではパッサカリアのほうが
低音進行はしっかりしていますが、チャコーナの低音の音形 タタータ タ タタータタ という音形をある程度守っていれば
旋律も好きにディビジョンしたり、通奏低音も遊んだりしていた曲ではないかと思います。

ユーチューブで山のようにある チャコーナ のうち、もう少し私の好きなものを



最後に リュートの方にはお馴染みのカプスベルガー です。



これでも、チャコーナの動画の一部です。このカプスベルガーの動画は ミックスリストになっているので、
お時間のある方はご覧頂いて好きなチャコーナを探していただいても、と思ったりします。

このように、シャコンヌと言うと、どうしてもバッハのシャコンヌにイメージになってしまいますので、
チャコーナとさせていただきましたが、ヴァイスさんも Ciacona とされています。

でも、このような演奏はモダンギターでは逆立ちしても不可能です。
(私のモダンギターでは可能です。そのために作っているとも思っていますので)

リュートの方はこのような楽しみ方がいくらでも出来るので、
ヴァイスさんのチャコーナ レパートりーの少ないギターにお貸ししていただいてもいいですよね?
そして弾くのに精一杯ではなく、これらのチャコーナのように演奏を楽しめるよう
簡単な編曲をさせていただくことも。
  1. 2015/08/26(水) 00:51:17|
  2. ギター
  3. | コメント:0

マンドリンの不思議

演奏会でリハーサルの時間に原稿を作っていましたので、もう一つブログ更新させていただきます。
以前から、予告させていただいていた、マンドリンについてです。



マンドリンの不思議と言うより、マンドリンの怪と言っても良いと思うほど不思議なことが多い楽器です。

マンドリンはもともとソプラノリュートがマンドラになって、そのあとマンドリンが出来たという説があります。
私もそのように思っています。もとは、リュートだったと思います。

その楽器が、外観は前世紀の楽器に比べても、そう変わりはないと思いますが、
強度、重さはかなり変わってきているようです。

とにかく、頑丈で、重くて鳴らない。それは、マンドラ、マンドセロ、マンドリュートも同じように、
重くて頑丈に出来ています。

その理由のひとつは、弦にあるようです。

同じ弦楽器のギターやヴァイオリンは沢山の弦の種類が製作され、販売されています。
ゲージも、材質も本当に沢山の弦があります。

それに比べて、ほとんど一種類の弦しか使われていない、マンドリンの世界は不思議に思います。
そしてその弦は、テンションが非常に大きい弦なのです。
そしてこの弦が使えるように、この弦に合った楽器が作られていくのは、無理がないことかもしれません。

また、弦のゲージがほとんど、1種類しか流通していないことが不思議に思われていないのも、
理解しにくいことです。(他にもいくつかもメーカーはあるようですが、あまりゲージは変わらないようです。
ゲージについての説明も、記述もあまり無いようですし)

そして、もう一つ不思議なことはその唯一の弦が、テンションが非常に大きいことは書かせていただきましたが、
それ以上にその弦のテンションの差が非常に大きいことです。

特に2弦(A 線)が異様にテンションが低く、他の弦に比べると,複弦で6キロほど低いのです。
(ギターは3弦のテンションが低いことは皆さんご存知のことだと思います。
これは、材質にナイロンにこだわると、1,05ミリ以上にすると、テンションは上がりますが、
直径が太くなって振動しにくくなるからです。でも、ナイロンの比重が1.1くらいなのに、
フロロカーボンだと1.8ほどありますから、この問題はナイロンにこだわらなければ解決します)
このことが、次に書かせていただく、ブリッジの骨棒が段々というか、ガタガタとなっている理由の一つだと思います。

これも古い楽器では見られないことです。
マンドリンを知っている方は(今使われている、マンドリンです)どの楽器もそうなっているのは、
よくご存知のことだと思います。いつの頃から始まったのでしょうか?

30年ほど前にマンドリンの修理をさせていただいた時には既に、そうなっていました。
でも、当時でもチューナーはありましたので、チューナーで測ると、確実に 3弦はピッチが上がりました。
(いつ測ってもそうですが)それで、アコースティックギターのように、骨棒を直線で作り、
6弦の弦長2ミリほど長くするように、斜めにするとチューナーで測っても、
数セントの誤差で収まりました。

ガタガタの骨棒だと10セント以上は誤差があります。
マンドリンの方たちは、チューナーを使うことはしないのでしょうか?

5度調弦なので、開放弦で合わせやすいから、使わないとか?
又は、チューナーの存在を知らないとか?フレットを押さえて、チューナーで測ると、
3弦がとても高くなることに気がつくと思うのですが。

2弦は逆に弦長を長く取る方に、骨棒が削られています。これは、2弦のテンションが低いので、
強い力で押さえると、(強い力でなければ音が出ませんので)当然、弦が他の弦より沈み込みますので、
ピッチが高くなります。これを解消するために、弦長を長くする方向にしたのでしょう。

2弦程度のテンションに他の弦もすれば、この問題はなくなります。

実際、私が修理させていただいた楽器は皆そうしていますが、問題はありません。 

ヴァイオリンもストラッドが作った当時と変わらない、当時で完成された楽器だと言われることがありますが、
外見も中身も全然違った楽器になっています。驚く程に。

でも、マンドリンは外見はほとんど変わっていないようです。でも、中身はまるっきり変わっています。

これだけ、中身が変わっているのなら、外見も変えて、楽器としてあるべき姿にしたほうが、良いのでは?と思います。
たとえば、この、素晴らしい名手が使っている楽器は、外見は一般的なマンドリンと違いますが、
楽器としてはまともというか、楽器がちゃんと鳴っています。音楽が作れています。



https://www.youtube.com/watch?v=3CoEKQopTSo


このような、音楽的な表現ができる、鳴っているマンドリンでは駄目なのでしょうか?
もちろん、デザインは同じにしなくても良いと思いますし、
日本人が弾いて、弾きやすいデザインの楽器で良いと思います。


今のマンドリンが、重くて鳴らないのは、主な原因が胴体のボウルにあると思います。
リュートのように、厚みが1.5ミリ程度では工作が大変でしょうから
(それで、厚くて重たい胴になるのでしょう)ボウルをやめて、フラットマンドリンのようにしては,
駄目なのでしょうか?形だけ昔と同じで、中身は全然別の楽器より良いと思うのですが。

そして、これは無理なことだと思うのですが、マンドリンは複弦でなければいけないのでしょうか?
ギターも19世紀にはすでに単弦になっていますし、ロシアなどには、単弦のマンドリンのような楽器もあって,
名手は素晴らしい演奏を聞かせてくれています。調弦の問題も半分は解決するし、
押さえやすく、音も明瞭で良いと思うのですが。

複弦で響きや音色を大事にしているからだと思うのですが、トレモロなどは単弦の方が綺麗だと思います。
たまに、アコースティックギターでカポタストをはめて、ハイポジションでトレモロを演奏すると、
ハットするほど綺麗な時があります。楽器が鳴っているということもあるのでしょうが。

複弦は完全に調弦するのは難しいので、一音でも唸りが出ている状態だと、ブリッジの問題、音程の問題も
なんとなくごまかされて、解決するからでしょうか?

アヴィ アヴィタルさんはトレモロもあまり使っていないようです。
部分的に使う方がマンドリンの良さは出ると思います。

最後に もう一度 アヴィ アヴィタルさんの演奏です。

https://www.youtube.com/watch?v=RBEwEy5dgZU

バックも 古楽器で ベネチアバロックオーケストラです。

こんな事を書いていると、「じゃあ、作ってみてください」と言われそうですが・・・・・・・?



  1. 2015/08/06(木) 13:38:13|
  2. ギター
  3. | コメント:1

コメントを頂いていて そして近況

ブログ更新がなかなか出来ませんでした。
あっという間に、8月になっていました。

この暑いさなかに、楽器を仕上げないといけない、と
睡眠時間2時間ほどで何日か仕事をしていたり、
民生児童委員の仕事も結構あって、相変わらず忙しくしていました。
(韓国の大学生がボランティアでふれあい縁日をされていたので、
中学生のジュニアボランティアの皆さんとお手伝いです)

1438822991188.jpg


忙しいといえば、Cabotinさんからも、コメントを頂いていて
毎年夏はニースで殺人的なスケジュールで演奏会や
講習会、コンクールの審査員をされていますが、今年はとくに
ニース音楽院の創立100周年ということで、特別お忙しかったようです。
先日、たまたま ニースで最高のヴァイオリンの弓を作られている方と
お会いしました。ニースでも音楽院創立100周年の音楽祭は話題のようです。

Cabotin さんの忙しさを思えば、私などが忙しいと言っては、駄目なような気がします。

コメント欄で Cabotin さんのニースでのお仕事ぶり、拝見できますので。

コメント欄で、脱力のことが書かれていましたが、私のブログでの脱力は
長年、良い指導を受けられなかったアマチュアの方で、ものすごく力を入れて
引いてられる方を想定して書かせていただいています。

私の2倍3倍いや5倍くらいの力で押さえている方に、実際何人も会いました。
まだ、お若いうちはなんとか弾けても、そのうちに腱鞘炎とか弾けなくなってしまうのは、
もったいないので、なにかの縁で私のブログを読んでいただいている方に、少しは
楽にギターを弾いていただていつまでもギターを弾いていただきたいと思って、
書かせていただいているだけですので。

25日には以前も案内させていただいていた、17世紀歌唱のマスタークラス
学者の方が、その研究成果、研究内容を 演奏家を交えて、発表されて、
また、レベルの高い声楽家の方がそれを実践するという形で、ただ勉強になるというだけでなく
聞いいていても楽しめる、マスタークラスでした。


1438823004263.jpg

17世紀の音楽を18世紀以降の音楽解釈で考えると、良くないのでは?
との提案もありましたが、最初に 「私たち学者は、誤解されることが多くて
こうしなければいけない、と捉えられがちですが、決してそうではなくて
こういう提案もある、こういうアイデアもある、と提示させていただくことが仕事ですから」
と言われていましたので、どんな解釈をするかは、演奏家に委ねられているようです。

お客さんもたくさん入られていて、しばらく会っていなかった音楽家の方とも
お会いできました。

7月26日は、いつもながらの素晴らしい演奏の アンサンブル シュシュ の演奏会が
岸和田 自泉会館でありました。

ラモーに始まりベートーベンまであるという演奏会ですが、プロの方も
プロ並みのアマチュアの方も、自分のやりたい音楽、この音楽が好きでやっている、
という想いが伝わって来る音楽会です。

それは、プロの演奏会では味わえないことかもしれません。

最後に、いつもコメントを頂いているカステラミルク様が私がこう弾きたいと思っている
ヴァイスのシャコンヌを案内して下さいました。
このような、音楽が表現できるギターが作られたら、と思っています。

かなり昔、ローレンスキングさんのバロックハープのCDを他のギター製作家の方に聞いてもらって、
「こんな低音のギターを作りたい」と言ったら、即座に「それは、無理」と返事が帰ってきたことがあります。

でも、少しは近づいているように思っているのですが。

https://www.youtube.com/watch?t=11&v=roSFZdjCZ9I

ハープは両手を使えますので、ピアノで弾ける曲はほとんど弾けるそうですが、
バロックリュートの曲を弾くのには、チェンバロよりピアノより良いように思います。





  1. 2015/08/06(木) 11:51:37|
  2. ギター
  3. | コメント:2

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

最新記事

最新コメント

月別の記事です

カテゴリ

ギター (339)
演奏会 (10)
その他 (21)

私へのメールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

訪れてくださった方々

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR