古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

経年変化 弾き込み エージング

本当に、熱心な沢山のコメントをありがとうございます。

CABOTINさんには,貴重な資料も提供していただいて,感謝しています。


このタイトルの問題については、結論などは無いかもしれませんし、
もう結論は出ているのかもしれません。

コメントをいただいた方の中では、おそらく結論は出ているのでしょう。

私の中でも、ほぼ考えは決まってきています。
でも、それが正しいとか、それが結論だとかは、思っていませんが。


私の場合、ギターに比べて,沢山のオールド楽器が残っているヴァイオリン属の楽器
を見ることのほうが多いので、それらのことを少し。

生きていた頃から,名工,名人と呼ばれていた製作家の楽器は、多くの楽器が素晴らしい
物でした。

でも、中には製作学校の学生の作品、(後の名工の学生時代の作品かもしれませんが)
で、良いものもありました。

教えられたことを守り、良い材料を与えられた結果かもしれません。

名も無い作家,ラベルの無い楽器では,なかなか素晴らしい楽器は見つかりません。

表から見ると、素晴らしい楽器に見えるのに、内部を開けると、雑い仕事をしていて、
鳴らない、と言う楽器もありました。

表も中も,材料も素晴らしくても、鳴らない楽器も沢山あります。

表板の厚みや、楽器の構造としては鳴るはずなのに、鳴らない楽器もあります。

ヴァイオリン属ではバスバーは1本しかありませんので、ひたすら 表板や裏板の削りだし
、厚みが重要になって来ますが、この材料でこの削り方だと鳴るはず、と言う楽器でも
鳴らないものも沢山見てきました。

楽器になってからの、弾き込みが悪かったかもしれません。

時代に合わなくなって弾かれなくなって、鳴らなくなったのかも、と言うこともあります。

ヴァイオリンであまりにも鳴らないので、何台もの楽器を削りなおして,作り替えたことがあります。

表から見ると、完成されているのですが、裏は 鑿のあとが残ったまま、
もちろん、厚みも削り足りない,楽器も結構あります。

そんな楽器(おそらく100年から150年経っていると思うのですが)を削りなおして
別の楽器のように、作り替えました。

弾き込まれてはいましたが、鳴らない状態で弾かれていては、弾き込みは期待できないようです。

これは、最近ガンバやチェンバロを調整していて良く感じます。

長年使われていた楽器でも、鳴らない状態だと、10年弾き込んでも,数年弾き込まれた状態に近い
、と感じることもよくあります。

こんな楽器を,鳴る状態にしてあげると,短期間のうちに鳴るようになってきますので。



話が取り留めの無い感じになってきました。

古い家具や、建物の再利用という話で,少し聞いていただきたいことがあります。

今から,35年ほど前,初めて材料を仕入れに、ヨーロッパと言うか,ドイツに行った時の話です。

幸い、日本で楽器材料も扱っている,会社の偉い方と一緒に行って,紹介してもらったと言うのも
あるのでしょうが、大きな体育館のような,倉庫で材料を選んでも良いということになりました。

1日かけて、一つの倉庫を全て見せてもらって、おそらく何千枚か見たのですが、
その中で選んだのは15枚ほどでした。

次の日は何千枚かのうちの、10枚ほどを選んだだけでした。

楽器用の(ギター用の)材料として製材されたドイツ松の中からです。

それほど、よい材料と言うのは少ないものです。

古い家具や、建物の木を再利用する場合も、同じように考えると、古い材料で
良いものに出会えるというのは、偶然か幸運でないと、、難しいようです。

古いピアノの響板も、今まで使ったのは、ベッヒシュタインとドイツで一番歴史の古いピアノメーカー
のシードマイヤーですが、どちらの今探しても手に入らないほど,見た目も素晴らしい材料でした。

これらのメーカーに比べると、もう少し2流に近いメーカーのものだと、見た目も明らかに落ちますし、
音もあまり良くありません。

見た目が悪くても,音が悪いといっても、10年20年寝かした材料よりは良いだろう、
という考えもありますが、楽器をしての性能は,良い材料の20年寝かしたほうが良いと、
わたしは思っています。

ただ、音色は弾きこんだ音はしないのですが。


これが、結論でもないし、私の感覚的なものですが、

まず、構造 設計 が大切でこれらの要素が半分くらいかな?と思っています。

次に材料と楽器を作る技術や知識、(この場合の材料は20年ほど寝かした材料)が
残りの半分,全体の4分の1くらい。

残りの半分は20年30年寝かした材料の中でも更に良い材料を選んで、作ると
達成されそうです。(全体の8分の1)

そして、残りの半分(全体の8分の1)は弾き込まれた材料を使ったり、200年ほど
経年変化を経た材料を使ったり、野村先生の熱還元処理の力を借りると、なんとか
出来そうです。


設計が悪くても、仕事が悪くても、弾き込まれた材料を使うと、素晴らしい楽器が
出来るのはないと思うのは、一般的ではないでしょう。

でも、沢山の楽器を見ていると、作られた当時はこんなに鳴っていなかっただろうな、
と思う楽器も結構あります。

とりとめも無く、考えていることを書かせていただきました。










  1. 2014/03/28(金) 02:33:08|
  2. ギター
  3. | コメント:9

経年変化など 沢山のコメントをいただいて。

古い木を使った楽器、楽器の弾きこみなどについて、沢山の真面目な、真摯なコメントをいただいて
ありがとうございます。

高知や,高松,淡路,神戸や世俗の雑用(今日も民生委員の仕事として、小学校の卒業式に出ていました)
も山のようにあって、コメントをいただいているのに、遅くなり申し訳ありません。

ギターについて、こんなに熱心なコメントをいただいている、ブログは無いと思っています。
色んな意見をお聞きするたびに、感謝しています。



300年ほど経った、材料で作られたリュートが400年ほど前に作られ、弾き込まれた楽器と同じように
鳴っている。という事についてですが。

今年 2014年2月19日のブログでも少し書かせていただきましたが、
200年ほど保存されていた、表板を使ったトレブルガンバのことです。

言葉足らずの点もあったようです。

私達が古い,弾き込まれた楽器に期待することは、

音の立ち上がりが良い。
音に延達性がある。
立ち上がりに関連しますが、早いパッセージを弾いても、音が濁らない。
和音を弾いても、音の分離が良く、音が濁らず,和声感が出やすい。
音に芯があるが、響きもある。
とにかく、楽器が鳴る。

と言ったところでしょうか。

これらの事は古い、100年以上経った,出来れば200年以上経ったドイツ松(ドイツトウヒ)
で作れば、ほとんど解決すると思います。

もちろん、その古い材料を使いこなす,技術とアイデア,設計力は必要ですが。


更にこれ以上の事を楽器に求めるとなると、それは弾き込まれた楽器でないと、無理かな?
と思っています。

それは、西垣さんの言葉を借りると、「妖艶さ」ということでも、表現できるかと思います。

以前私が作った楽器を弾いていただいた時、楽器のバランスや、延達性、立ち上がり、楽器の鳴り、
などは問題無いのだが、オリジナルのパノルモ、コフさんの楽器のもっている「妖艶さ」というものが
あれば、更に良いのだが。

と言われて、古い,弾き込まれた,ピアノの名器の響板を使うことを思いついたのです。


ただ、古い木を使っていても,良い楽器は出来ないのでなく、ほんの少し音に味わいや、妖艶さ、
音の深み、密度など足りないだけ、と思っているのです。

特に,リュートでは表板は厚みが,私の場合 高音側でも、1.8ミリ低音側では1.5ミリから1.6ミリ
くらいしかないので、表板の音に与える影響は、ギターより少ないのではないかと思います。

バスバーなどの影響も少ないので、表板の音に与える影響は,ギターより大きいのでは?
という見方もあると思いますが。

弾きこみに関しては、ラミレスさんも 彼の著書 「ラミレスが語る ギターの世界」175ページに

「良い楽器とは二人の人間,それを作る人と,美しい音を求めて懸命にそれを弾く人の作業によって
達成されるものである」

また、セゴビアにギターを届け,数ヵ月後にその楽器を見ると,音が比較にならないほど向上していて、
全く別のギターのように思えた。 とも書いています。

逆の例としてイエペスの生徒のことにも触れています。

ギターでは,200年前の楽器となると、ロマンチックギターになってしまって、今のモダンギターと比較するのが
難しいかもしれませんが,ヴァイオリン,チェロなどは沢山古い楽器を見ることが出来ます。

名工の作った名器は,作られていた当時から、評判が高く手に入れることが難しかったと言われています。

良い楽器は確かに,出来た時からよく鳴っていたと思います。

でも、逆の楽器も良く目にします。

出来た当時は,あまり鳴っていなかっただろうな?と思う楽器も結構あります。

擦弦楽器だと、エネルギーを与え続けることが出来ますから、鳴らない楽器も鳴ってくるのかもしれません。
鳴らない楽器、重い楽器だと,その重さが鳴ってくると,音の密度や,重心の低い音の楽器に育つのかも
しれません。


モダンスペインギターは寿命が短いと言われることもあります。

楽器が重く,鳴らない楽器は、表板のブリッジ部分に近い所を薄くして鳴らす場合があります。
この場合だと、寿命が短かくなると思います。

でも、ロマンティックギター,19世紀ギターや,私の構造のギターは200年でも300年でも
使えば使うほど良い音で鳴ってくれると思っています。

コメントをいただいた方の返事にはなっていないかもしれませんが、取り急ぎ
私の考えていることを少し書かせていただきました。


経年変化については、2012年4月6日、野村先生の野村式熱還元法によって、処理していただいた
材料で作った楽器を,西垣さんに弾いていただいた感想は 2012年11月29日のブログに
書かせていただいています。






  1. 2014/03/21(金) 02:51:00|
  2. ギター
  3. | コメント:6

至急のお知らせ 東京でミニ展示会を開きます

急に決まった話なのですが、4月29日に私の作ったチェンバロの演奏会があって、その帰り
4月30日に東京で半日ですが、楽器を見ていただく機会を作ることになりました。

私の作ったスピネットを使ってられる方にお世話になって、開くことが出来ました。


場所は 東京都世田谷区玉川台1-6-15 玉川台区民センター (図書館のある建物です)

時間は 午後1時くらいから 午後7時くらいまでを考えています。



私の作った,一号機のパノルモモデルや10弦ギターも展示しようと思っています。

後、ブログで案内させていただいている,パーラーギターも手元にあるものは持って行こうと考えています。

すでに、今回の東京行きでお会いすることになっている、独自の設計でギターを作ってられる方
とも、会場でお会いすることにしています。

半日だけですので、都合のつかない方もいらっしゃると思いますが、興味のある方は
どうぞ、よろしくお願いいたします。

  1. 2014/03/12(水) 01:45:28|
  2. ギター
  3. | コメント:9

コメントを頂いて  調律、フレッチングについて

sen様 CABOTIN様 コメントありがとうございます。

このブログ自体が、私の思うことを書かせていただいていますし、一般的でないことも
沢山書かれています。

他の方からの、受け売りのような事は書かないようにさせていただいていますし。

ですから、コメントもそれぞれの方のお考えを書いてくださって結構なのですが、
他の方の考えを否定されるような、表現は控えてくださった方がありがたく思います。

他の方の考えを持ちあげてくださいとは言いませんが、それぞれ皆さんがお考えになったことを
書かれていると思いますので。

調律については、固定フレットの楽器以外では、特にチェンバロなど今では、平均律で調律する人は
ほとんどいません。演奏家が、表現しやすい音律で調律して演奏するのが当たり前のことになっています。

ピアノでは、ほとんど平均律ではないかと言われそうですが、巨匠と言われるピアニストの中には、
専属の調律師を連れてくることがあります。
これなども、日本に調律師がいるのだから、なぜ わざわざ連れてくるのか?という声も聞きます。

ピアノでも、機械的にチューナーから音をとって、調律するのではなく、耳で聞いて調律しますから、
演奏家の音楽が最大限に表現出来る調律師を連れてくるのです。

巨匠でなくても、演奏家は誰々に調律を頼みたい、という声はよく聞きます。

これは自己満足などではなく、聞いてくださっている聴衆のためなのです。

作曲家は更に、自分の音楽が表現できる音律を捜し求めています。


そして、ギターでも同じ事が言えると思います。

音楽家は自分のために演奏しているのではありませんから。

ほとんどの演奏家は平均律のフレッチングで問題なく演奏できていますし、聞いている側も
聞き苦しいことは何もありません。書かれてていますが、ほとんどの演奏家でない演奏をしようとすると
音律の問題に突き当たるのではないかと思います。

曲がったフレットが奇異で、音楽に集中できないという方と、まだお会いしたことがないので、
そんなことは思ったこともないのですが、多くの方は、そこまでこだわって、自分の音楽を表現されているのか、
との感想だったように思います。

チェンバロもたくさん作ってきて、演奏会の調律も日常的にやっていると、ほんの少しの音律の違いが
大きな音楽の表現の差につながるのを、よく実感します。

逆に、ギターの場合、左手の押さえ方が悪くて、特に和音など弦を引っ張るように押さえて、音程が上ずっている
演奏などもよく見かけます。これは、調律以前の問題でしょうが。

と言うことで、ここで少し音律と音色について書かせていただきます。

モダンギターを弾いていて、音律の問題に興味を持たれる方は少ないかな?と思います。リュートや19世紀ギター
だと、少し問題があると考えられる方がいるように思います。

これは、モダンスペインギターやモダンピアノの音色は、音が丸くて輪郭がはっきりしない音色だからでしょうか?

これはリュートを弾いたあとギターを弾くと、チェンバロのあとでピアノを弾くととてもよく感じます。
逆に、ギターのあとでリュートを弾くと、ピアノの後チェンバロを弾くと、「なんと鋭い音、きつい音」
だと感じてしまいます。

チェンバロのようなクリアーな音だと、平均律の欠点が出てしまうようです。
でも、ピアノだとそんな欠点はあまり出てこないように思われます。

ピアノを出荷する時に最初に平均律で出荷したのは、イギリスのブロードウッド社だと言われています。
これは、平均律が最もよい調律方法だから、採用されたのでなく、演奏家がそれぞれいろんな調律法で
調律する場合に、平均律だとどの調律法に変えても、一番凸凹が少なかったからだと、私は思っています。

でも、時代が現代に近づくに連れ(調律師によって平均律といっても差はありますが、)
平均律のピアノが多くなってきています。それは音楽的な要求もあったからなのでしょう。

これは、鶏と卵の関係のように、平均律でもそんなに気にならないように、丸い音色のピアノが段々と作られ始めます。
そうなると、平均律でもあまりおかしくないので、平均律が使われるようになっていったのではないかと
思っています。あくまで私の考えですが。

リュートでも、フラット系の曲を弾いていて、シャープ系の曲を弾くと、「え!」と思うほど、
フレッチングがおかしい時があります。そんなときはリュートのように巻フレットだと、少しなら
修正できます。

少し話がそれますが、リュート、ガンバ、バロックギターなどは巻フレットを使っています。
これらの楽器は本来はガット弦ですから、弾いているうちに左手が汗をかいて、弦が湿気ます。
そうすると、太さや比重が変わります。

そなると、巻フレットだとフレットを動かして音程が合わなくなったのを修正出来るのです。

どの提度、太さが変わるかというと、フレット用ガットを少し水に漬け、さっと拭き取っても、
1.0ミリのフレットガットが1.05ミリくらいになります。少し水に付ける時間が長いと、
1.1ミリくらいになってしまいます。

リュートはナイロン弦やナイルガットフロロカーボンなどをよく使いますが、ガンバはガット弦なので
巻フレットは助かります。



本当に話がそれてしまいましたが、ギターでも、モダンスペインギターだとモダンピアノのように
平均律でもあまり問題がないと思う方が多いのでしょうか?

もっとも、私の周りではモダンピアノを、ベルクマイスターやキルンベルガーに調律する人もいましたが、
それは、それで美しい響きをしていました。

と言うことで、また、話がそれましたが、ご自身のお考えも穏やかな表現にしていただくと、助かります。

よろしくお願いいたします。














  1. 2014/03/06(木) 02:08:50|
  2. ギター
  3. | コメント:3

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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