古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

植木先生のこと

gavottenⅡ 様

拙い演奏を評価してくださって、ありがとうございます、というか
恥ずかしいくらいです。

私が聞き直しても、もっと歌わなければいけないし、ミスも山ほどあるし、
もう少しましな、演奏もあったのですが、カメラのアングルがあまりにもアップだったり、
アングルが悪かったりで、この演奏になってしまいました。

ブログの中でも、書かせていただきましたが、最初に出会った植木先生の教えや、人格がとても
素晴らしかったので、今の私があると思います。

私のHPでも、書かせていただいているのですが、いろんなことをいろんな場所に書いていますので、
読んでいただいていない方も、多いと思いますので、ここで植木先生のことを書かせていただきます。
先生の教えていただいたことを、私以上に守って、素晴らしい演奏をされている方も多いので、
出来の悪いほうの生徒だった、私の植木先生の思い出です。
HPは7年ほど前に書きましたので、少し時系列や内容を変えさせていただいています。



ギターの植木義法(うえき よしのりと読みます)先生。

学生生活も終わりに近づいた頃、それまで美術の事ばかりやっていたのですが、
同級生にギターの上手な人がいたこともあり、
それまでやっていなかった音楽をやってみようと思っていました。

いい年をして音楽を始めるわけですから、
ピアノ、 ヴァイオリンなどは最初から無理と考えていました。

それに、ギターが好きと言うこともあって。一般的な方法、 独学で始めました。
でも、いい先生がいれば習いたいとは思っていました。

阪神間、神戸辺りのギター教室も見学さ せていただきました。
半年、1年習っている人の演奏を聴かせていただいて、こんなものかと、
だいたいのことが分 かってきました。

そこで出会ったのが、植木先生です。

一番探していた先生が、歩いて3分の所にいらっしゃたのです。
インドの諺にあるそうなのですが「必要なときに師は現れる」と。

まず、最初に生徒さんの演奏を聴かせていただいて、 本当に腰が抜けるほどびっくりしました。
まだ習い始めて、半年とか数ヶ月で、ほかの教室の何年も習っている人たちよりも、
遙かに上手なのです。もちろん、本人も、努力しているのでしょうが。

もっとも、私の姉の同級生の平島健二 さん
(今、芦屋など阪神間でギター教室を開いてられます)は、
ギターの持ち方から教えて貰って(それまで、ギターを 全然やっていなかったと聞いてます、
それまでは水泳のすばらしい選手だったと姉から聞いてました)

ほぼ1年でプロの 出る、大阪で開かれたギターコンクール
(確か、全日本ギターコンクールという名前だったと思います)で1位になりました。
現在、神戸、明石などで教えられてる高永さんは、社会人に成られてから
(大会社の相撲部のキャプテンで、植木先生から指が 堅くて短くて、
ギターを弾くことすら無理だと言われたように聞いています)
植木先生に習って一年くらいで、同じコンクールで2位になっ ています。

一年でコンクール1位2位になるくらいですから、半年で上手なのは当たり前でしょうか。

あと、パリ国際 ギターコンクールで審査員全員が1位と認めた、渡辺範彦さんも、
私と同じ神戸の垂水で、植木先生のお近くにお 住まいでした。
小さい頃は「ごんた」(神戸弁でしょうか、乱暴な子供のことです)だったので、
お母さんが音楽でも やらせばおとなしくなるだろうと、
たまたま、近くに植木先生がおられたので習い始めたそうです。
お母様はとても、熱心な方だったようです。

でも、渡辺さんのCDのプロフィールとか,渡辺さんのHPを見ると,植木先生のことが
一切書かれていません。何故なのか,聞こうと思っても、お二人とも亡くなっていますし。

 
そこで、この文を読んでくださった方のために、何故短期間に上手になったのか?
その秘密を少しだけ書かせていただきます。

先生はものすごく耳の良い 方でした。よく家に遊びに行かせていただいて、
レコード(そのころはLPです)を聞かせていただきました。

LPは盤の 外側と内側では音が違うのです。外側は、直径が大きいので、
同じ回転だと、沢山針が音をひらってくれるので、 音が良く、
内側になるに従って音が悪くなるのです。

その音を聞いて、今LPのどこに針が行っているか分かるのです。
その耳で、指のタッチ、スピード、力の入り方など聞いて貰うのですから、
悪いところはすぐに指摘していただけます。
 
ということで、そろそろ、この辺りから本題に。

先生は、ギターは「旋律楽器で和声楽器ではない、歌うこと。歌うことが音楽の基本」
とよく言われていました。

お家にお邪魔すると(奥さんも声楽家でした)
必ず、チェロの名演奏や声楽の名演を聴かせていただきました。

よくあるパターンが、たとえば1弦のミから2弦のレの下がるとき、
ミの音とレの音の間に隙間があってはいけないし、 ミの音が開放弦でレの音が鳴っているのに、
消音できていないと旋律が2重になってしまう。
歌でそんなことはあり得ないので、歌を歌うようにギターを弾くこと。

それと「ギターでも、作るのは音楽でギター音楽ではない」とのことです。
指の都合で、 少し隙間が空いたり伸びたりすることは絶対にいけない。
(2声、3声の曲は必ず、2声、3声として弾かなくてはい けない、
楽譜に書いていることをよく読んで、その通りにまず弾くこと。
今でも指の都合で、音楽がゆがんでしまっている演奏を聴きますが。
音楽的に間違ったことをしないと言うことを、習い始めた頃から、
きっちりとやることを教えていただきました。)

それと大きい音を出すこと。小さい音だと音楽的に間違っていても聞き取りにくい。
汚い音で、大きな音だと、当然 いやになってくるので、自然と音もきれいになる。

よく教室で、先生の楽器と交換していただいてレッスンを受けました。
交換したはじめは、いい音なのですが、10分も弾いていると、私のタッチが悪いので、
先生の楽器の音が悪くなって くるのです。

代わりに、私の楽器がどんどん良くなってくるのです。ギターを始めた頃から、
楽器は生き物、弾く人に よってどんどん変わっていくことを、実感させていただきました。
(そのころ、先生はハウザー2世を使っておられて、 あとになってラミレスに持ち換えられました)

そして、これは松田二郎先生もそう言ってられるのですが(植木先生も一応、松田先生のお弟子さんです)
左手の押さえ方。力を抜いて、弦を押さえるのでなく、押す方向に指を使う。
ヴァイオリンのハイフェッツさん、チェロのピアテゴスキーさんのヴィデオがその頃手に入りました。
その中で、ハイフェッツさんが家での練習の最初に、左手だけでゆっくり長い時間、弦を押す方向に
弦を押さえる練習をされています。
ピアテゴスキーさんも、決して抑えるのでなく、力を抜いて押しているように見えました。

セゴビアさん、ブリームさん、イエペスさん皆そうしているように、思います。

これが、ギターで2声、3声の曲を弾く時にとても役に立つのです。
力を抜いて,弦とフレットを利用して,弦を押さえると、開放弦と同じような,しっかりした
減衰の長い音で弾くことができます。

力を入れて、フレットの近くで,押さえる方向で弦を押さえると、当然、上声部の動きもあるわけですから、
それにつられて、力が抜けたり、力の強さが変わってきます。
そうすると、低音の減衰も短くなり,音も弱い音しか出ません。

低音の支えがないギター演奏も良く聞きます。
2声、3声の曲が1声の曲に聞こえたりします。

これは、左手の使い方に問題があるように思います。

左手の使い方を最初に教えていただいたので、テンションの緩いリュートでも、
テンションのきつい、バスガンバやコントラバスでも左手には苦労しませんでした。



それと、楽器は生き物、どんどん音が変わっていく,と言うことの実例です。

植木先生が弾くと,どんなギターでも音がよくなっていきます。

コンクールの前に30分ほど,会場の近くで,植木先生がコンクールに出る
生徒さんのギターを弾きこむのです。

そうすると、30分は植木先生の音を楽器が覚えてくれているようで、
コンクール本番でも,良い音で演奏できます。

良く聞くのが、コンクールは先生の楽器を借りたり,その時だけ良い楽器を使う人も
いるようです。 でもこれだと、普段使っている楽器と違うので、なんとなく
弾き難いと思います。でも、普段使っているギターが良い音になれば、
もっと良いわけですね。

もちろん、生徒さんも良い音を出すように,練習していますが、
審査員の方が、「植木先生のお弟子さんは、皆、音が綺麗ですね」
といわれていたのを思い出しますが、植木先生の影のサポートもあったからだと
思います。

私は、コンクールに出るほど、また、プロになるほど上手ではありませんでした。
でも、習い始めてから,1年ほどでギター教室の先生になるくらいには,していただきました。


本当にこんな近くに一番いい先生がいたことが、今の私につながっていると思います。

それと学生だったので、 お金はないけど時間があるということで、
ほとんど毎日レッスン場に行かせていただきました。
そして、他の生徒さんのレッスンを聞かせていただきました。

私が行くと、これは私に 聞かせていただいているのだなという、レッスンもよくありました。
ほとんど、毎日行って、年に一回、月謝を払うくらいで経済的にも助けていただきました。

それに先生はオーディオにも詳しく。糸ドライブのターンテーブル、
シングルの真空管アンプ、値段の安いパーティクルボードでのスピーカー作り、
なども教えていただきました。

この頃からお金をかけずにいい音のオーディオ作り が始まりました。
そのきっかけは植木先生でした。




  1. 2013/06/30(日) 12:51:29|
  2. ギター
  3. | コメント:3

コメントをいただいて ユーチューブその他 そしてまた


早速、演奏に対して、そして楽譜についてコメントいただいて、ありがとうございます。

演奏は、本当に練習もしていなくて、お聞かせするのは、恥ずかしい演奏ばかりで、
暖かいコメントをいただくと、穴があったら入りたい、と言う心境です。

最初に習った、渡辺範彦さんを育てた、植木先生の教えを守って、「ギターは旋律楽器である、
音楽の基本は歌にある」ということを、心がけて演奏はさせていただいています。


パッサカリアの楽譜は、ギターで弾くと,ロンドン版はかなり無理がありそう、というか
一般的なギター楽譜に慣れてしまっていると、切り替えがかなり難しそうです。

ヘルズミュア版にロンドン版のスラーの位置や,装飾をつけて、自分なりのパッサカリアを
作ろうと思っています。



それと、ヴァイオリンの話ですが、20世紀までは,ヤコブ・シュタイナーのほうが値段は
高かった,と言う話しはよく聞きます。

ストラッドの値段が上がったのも、戦後急激に上がったようです。

ストラッドは,他の製作家と違って、リュートも、ギターも、弓も,ガンバも,ハープも
マンドリンも作っていますから、ヴァイオリンも他の製作家とは違う楽器を作れたのかもしれません。

同じような製作家は、ヨアヒム・ティルケさんくらいでしょうか?


経年変化で,ドイツ松,ドイツトウヒは切ってから,250年と言うのが,通説ですが
ストラッドさんの楽器は、とうにその年数を過ぎています。

でも、ストラッドさんは特にしっかりした木を選んで、いるので250年以上経っていても、
素晴らしい楽器なのだ。と言われたりします。

でも、これは、一つの原因,一つの要素,一つの考えかもしれませんが、
今は、経年変化から行くと、デル・ジュスさんのほうが素晴らしい楽器の時期なのですが、
ストラッドさんの楽器のほうが圧倒的に沢山の楽器が残っているので、ストラッドさんの楽器を
最高としているほうが,商売になる。
という話もあります。

それにしても、ヴァイオリンの本は,楽器屋さんが書いた本が多いので、以前にも書かせていただき
ましたが、神秘的なもの,だと言うことを、オールドの楽器のもっている、魔法のようなものを
広めるための本が多かったように思います。




ということで、また、調子に乗って、ユーチューブにアップさせていただきました。

今まで,アップさせていただいた楽器は,よく考えたら,私が作った楽器がなかったので、
3年前に作った、10弦ギターの演奏をアップさせていただきました。

10弦ギターを作っても,あまり弾いてくださる方がいなくて、3弦を半音下げて、バラールや
ブザールの曲を弾いていましたが、バッハさんの 998番のプレリュードの最低音が A 
なので、ちょうどオクターブ下げると、10弦で弾けると言うことで、編曲しました。

ほとんど、出回っている,6弦用の楽譜の最低音をオクターブ下げたような楽譜ですが、
バッハさんが作った プレリュードとほぼ、同じ響きになります。

ラウテン・クラヴィーア,リュートチェンバロのために作られたと言われていますので、
原曲からは音を減らさないと弾けませんが、最低音は変更なく弾けますので、
雰囲気はかなり伝わると思います。(演奏は別にして)

それと、原曲は Es dur ですが ギターでは D dur で編曲されます。
それで、たまに1フレットにカポタストを付けている人がいますが、バッハさんの頃は
A=415だったので(バッハさんが弾いていたジルバーマンのオルガンが 415だった
らしいのですが、平均律のG#の音が415.3ヘルツなので、チェンバロの鍵盤を
一つずらすと、バッハの頃の音高になるので、バロックピッチとして、A=415
を使っています)ちょうど半音低いことになります。

ということは、モダンピッチのギターで弾く場合、D dur で弾くと,
バッハさんが作曲していた頃の Es dur の響きになるわけです。

ということで、5線譜ではないのですが、6線譜で楽譜公開させていただきます。



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前回アップさせていただいた曲も、最初は6線譜で作りました。
後から、5線譜に書き換えて、今 清書していただいています。

10弦ギター用の楽譜なので、とりあえず、6線譜でアップしました。

ほとんど、最低音をオクターブ下げた感じですが、22小節目は1弦を使った
運指だと、低音がどうしても切れるので、2弦も使いました。

そして、昨年 この曲に気がついて、編曲した頃はよく練習していたのですが、この1年くらい
ほとんど、弾いていませんでしたので、たくさんミスもありますので、
10弦ギターの音のサンプルとして聞いてください。


http://www.youtube.com/watch?v=yZeffb0kiBc


ただ、楽譜にも休符は書かせていただいていますが、チェンバロや鍵盤で弾く場合、
この休符が問題になるようです。

バッハさんが書いたように弾くのか、また、違うのか?
それが、よく勉強しているチェンバリストには、大きな問題だそうです。
ユーチューブや、CDで聞いても、ちゃんと考えを持って、演奏しているチェンバリスト
は少ないようです。有名な人でも。

どう休符を捕らえるかが問題と言うことは、休符をつけるのが、前提です。
私も鍵盤楽器であれば、必ずつけることは当たり前のように思います。
(それで、練習不足なのに、無理して消音しています)

ギター、リュートではどうでしょう?
かなり、早いテンポで弾ききる場合は、休符は必要ないでしょうが、普通のテンポ、
ゆっくり歌うようなテンポだと、つけたほうが良いと、私は思います。
バッハさんは必要のないものは付けませんから、と言う理由もありますが、
実際に休符を付けると、バッハさんの音形の意味が分かります。

9,10小節や18,19,21,22小節などは、低音が響いている時は
和声的に、低音を消音したところでは、旋律的になっています。
(部分的にですが)

休符を入れて弾き始めると、休符のない演奏は、少し間が抜けて聞こえます。
(私だけかもしれません)

そして、1小節 11個の旋律をどうグループ分けにするかも問題です。

そんな、問題を考えるより、とにかく間違えずに弾きなさい!
との声も聞こえてきそうですが、楽器つくりと同じで、最終目標があったほうが
演奏の練習も楽しく、気長に出来ますので。

演奏していると、低音は指向性がないため、弾いている自分によく聞こえるので、
あまり低音を出すと、品がなくなる、と思いあまり出していませんでしたが、
パソコンのスピーカーで聞くと、もっと低音をはっきり出していたほうが良かったようです。



次に、10弦ギターを作った目的です。


私のギターの構造だと,6弦をレ、やドに下げる以上に、ラまで下げても充分鳴ると
言うことを、分かってもらうために,よく6弦を下げていました。

でも、10弦を作れば,いちいち下げなくてもよい、と言うことで作ったのです。
10弦も9弦も6弦用の弦を使っています。

それと、今まで見た10弦ギターが,あまりにも8,9,10弦が鳴っていないので、
10弦まで鳴る、10弦ギターを作りたかったというのも、一つの理由です。
(モダンスペインギターでは,6弦も鳴っていませんから、10弦は無理ですね)

また、この楽器で初めて、樹脂フレットを使いました。
弦長は63センチです。

楽器が鳴っていれば、弦は何でも良い,と思っているので、3年間弦は替えていません。
ただ、1年ほど前に5弦が切れましたので,5弦は替えています。

今まで、ラミレスさんと河野さんの10弦ギターを使っているギタリストさんには
見てもらったのですが、もっと10弦ギターを弾いている人に見てもらいたいと思っています。

ブログとか,Hpで10弦ギターの8,9,10弦が鳴っていない、と言う記事はよく
見るのですが、そんな方には、ブログとかhpで連絡がとれません。

最低音まで、力を入れなくても鳴る10弦ギターに興味がある方は、ある方をご存知方は
ご連絡下さい。見ていただく方法を考えますので。







  1. 2013/06/29(土) 00:47:47|
  2. ギター
  3. | コメント:1

コメントをいただいて (ヴァイス パッサカリア)そしてまた、ユーチューブにアップしました。

もっと練習してから、お聞かせしないといけない演奏ですが、
温かい、コメントをいただいて、ありがとうございます。



今回は、せっかく映像が撮れる環境を作ったので、
以前からブログで紹介させていただいた、
ギターを見ていただくために、演奏をアップしました。

楽譜はまた、綺麗に作ってもらってからこのブログでアップさせていただこうと、
思っています。

あくまで、音を聞いていただくサンプルですので、それぞれの楽器の音をお聞き下さい。
音は、撮ったままの音で、何も処理していません。

今回もまた、練習はほとんどしていないので、申し訳ありませんが、
音のサンプルと言うことで,よろしくお願いします。


これらの曲は、5月26日に木工展で演奏するために、自分用に編曲しました。

お客さんが演奏会に来られる方ではないので、なるべく知っている曲、親しみやすい曲
を弾こうと思ったのですが、あまり私向きの楽譜がなかったので、作りました。

最初は 皆さん気になっていると思います、1880年頃に作られた
 スペインのマヌエル・ベラスコさんのギターで
バッハ G線上のアリア です。

http://www.youtube.com/watch?v=fcRE2WA7PnM

パッサカリアと違って,演奏前と後のカットができていなくてすみません。

次も、ベラスコさんの楽器で ミルル・グレイ
日本では、「千々の悲しみ」という素晴らしいタイトルがついています。
原曲どおりだと、100万の悲しみと言うことでしょうか。
ジョスカン・デ・プレさんの作曲ですが,今回はティールマン・スザートさんの
4声用の器楽曲に編曲されたものを基にしました。


http://www.youtube.com/watch?v=fBHYFA5cSFk


次は、先週気になって,修理してしまった出来立ての楽器です。

1900年頃作られた、ドイツの楽器だと思うのですが、
バスバーがウイーンの楽器のように,ブリッジの真下に入っています。
19世紀ギターのように、軽やかに鳴りますが、低音などは減衰も長く
19世紀ギターの雰囲気ながら、19世ギターの延長線上の音もする楽器です。

http://www.youtube.com/watch?v=lW0tDhsxd88

曲は ベラスコさんと同じ、G線上のアリアです。

弦幅が ナットのところで 37.5ミリしかありませんので、
クラッシクギターだけを弾いてきた方には,少し慣れるまで時間が
かかるかもしれません。マーチンタイプの C ブルーノさんの楽器も弦幅は 
37.5ミリでした。

もう1曲は 大きな古時計です。ハ長調が弾きやすかったので、ハ長調で
編曲しました。

http://www.youtube.com/watch?v=p9pBCxzda2w

最後に、ヴァイス パッサカリアで使った、マーチンタイプ
1880年頃の C ブルーノさんの楽器で ミルル・グレイです。
パッサカリアでは弾くのに精一杯で、楽器の良さが出ていないようでしたので。

http://www.youtube.com/watch?v=jJ4QiC7QHDM


ベラスコさんのギター以外は,パーラーギターなので
弦幅は狭いのですが、19世紀ギターでも同じくらいの弦幅の楽器もあります。
(もっと、広い楽器もありますが。)

慣れてしまうと,弦長が短い(どちらもほぼ620ミリです)だけでなく、弦幅が狭いと
左手は楽になります。

竹内太郎さんが,オリジナルのルネサンスリュートのコンデション、狭い弦幅
とても低い弦高のリュートを作られて、演奏すると慣れてしまえば、とても弾きやすい
楽器になった、と言われていましたが、同じようなことを感じました。

19世紀ギターや,パーラーギターでは親指も使うので、ネックが細く,弦幅も狭くなって
いるのですが、クラッシクギターのように弾いても、私のような太い,短い指でも演奏は
むしろ楽に出来ました。

オリジナルの19世紀ギターはとても高くなって,手に入りにくいことも、パーラーギター
を修理して使うことを考えた一因でした。
音的に19世紀ギターの延長線上の楽器を作りたい私にとって、
ぴったりの楽器だったのですが、弦幅も弾き易い楽器のヒントになりました。

これからも、大修理が必要で、私以外の人が手に入れても、ちゃんとその楽器の価値を
見出してくれるかどうか、分からないパーラーギターを、音楽の表現できる楽器にしていって
あげたいと思いました。

楽器も見た目では判断してはいけないようです。





  1. 2013/06/27(木) 19:42:31|
  2. ギター
  3. | コメント:1

パッサカリア -2 ヘルズミュア版

ついでに、ヘルズミュア版の楽譜もアップしておきます。

ロンドン版で詳しく書かせていただいたので、ここでは、
ギター譜との違いと、演奏用の楽譜、そして基となったタブラチュア
を挙げさせていただきます。

なぜ、ヴァイスのパッサカリアをこの時期にブログにあげさせて頂いたかと言うと、
楽譜を整理していたら、手書きのピアノ譜が出てきました。

ヴァイスのパッサカリアのレコードからの採譜楽譜です。

今から、40年ほど前、昭和45年か46年だったと思うのですが、
友人から「弟がもうすぐ来るのだけれど、早稲田の学生でギターをやっている。
何か、良いギターのレコードをプレゼントしたいのだけれど」
と相談を受けました。
西宮駅前のレコード屋さんに行き、そこで、ブリームさんのバロックのレコードが
あったので、勧めました。

そうすると、弟さんがとても気に入ってくれました。
特に、ヴァイスのパッサカリアが気に入ったようです。

当時はギター用の楽譜がなかったため、レコードから音大の学生に
採譜してもらって、楽譜を作りました。

そして、最近 岡本一郎さんと話していて、岡本さんも「昔,僕もレコードから採譜して
楽譜を作ったよ」という話が出ました。

年代もほぼ同じで、同じ西宮でパッサカリアの楽譜が誕生したようです。

作った楽譜は、演奏会でも使いました。
早稲田の学生は、当時習っていた先生のところに持って行きレッスン、を受けたようです。
そして、その数ヵ月後 その先生の名前で、パッサカリアの楽譜が出版されました。

内容はほとんど同じでした。これは、余談ですが。


ということで、パッサカリアは私にとって、思い出の曲ですので、
今回ギター譜を作らせていただいたのです。


とりあえず、ロンドン版と同じようにギター譜で、違いを書かせていただきます。


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ロンドン版より、ギター譜に近い楽譜です。
また、14小節目の音の動きも,標準的なギター譜に近いです。
そして、スラーも同じようです。

ロンドン版で詳しく書きましたので、次に
演奏用の 楽譜をあげておきます。

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そして、基となった タブラチュアです。

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おまけですが、実際にどんな音がするのか、音源をあげておきます。

ほとんど練習もしていないし、もう少し上等の録音機材を買う予定だったのですが、
在庫が無いということで、安い機材で録音してそのままアップしています。

私が設計した、標準的な日本人にはこのサイズが最も弾きやすいと思うサイズのギター
で演奏しています。
弦長が短くて演奏しやすいだけでなく、楽器の大きさが弦の振動を無理なく楽器全体に
伝わるようで、この大きさを私のスタンダードにしても良いかな?と思っている楽器です。
製作はお弟子さんで、こちらで仕上げています。

私が最も沢山作っているサイズの95%縮小です。
19世紀ギターだと、88%縮小なので、大きさ的にもそんなに無理はないようです。

http://www.youtube.com/watch?v=wESoWR6q6ew

www.youtube.comFGFT6w/watch?v=DvASe

こちらは、1880年くらいのニューヨークマーチンタイプでの演奏です。

マイクが響きとか雰囲気とか拾ってくれていないので,楽器のよさが伝わらないようです。
演奏も練習不足で、楽譜にかじりついています。そうでないと、以前の運指やスラーが出てきますので。

最初に良い先生につくことが出来なかった、ギターの生徒さんの苦労が少し分かったように気がします。

どちらも、ソフトフロロカーボンの弦を使っています。

演奏でなく、楽譜のサンプルとして聞いてください。

よろしくお願いします。
  1. 2013/06/26(水) 13:20:32|
  2. ギター
  3. | コメント:2

ヴァイス パッサカリア ギター楽譜について

ヴァイスのパッサカリアはギターでよく弾かれる、バロックリュートの曲ですが、
一般的に使われている楽譜は、最初に誰が編曲したのか分かりませんが、
オリジナルのバロックリュートの曲と、スラーの位置や、ポジションの選択が原曲と
かなり違っています。

調弦の違い、また楽器の違いからギターの曲として、
ふさわしいポジションやスラーにしているのかもしれませんが、
バロックリュートで実際に弾いてみて、ギターにもリュートの楽譜に忠実なほうが、
曲として音楽的に面白い箇所が沢山ありました。


そこで、この際、リュートタブラチュアから新しく楽譜を興したほうが良さそうだと思い
楽譜を作らせていただきました。

こんな仕事はギタリストの方にお任せしたほうが良いのかもしれませんが、
リュートとギターを弾くので、私でも良いかな?と思い作らせていただきました。



まず、第一段階として、ロンドン版の楽譜から、ギター楽譜を作ってみました。


一般的に出回っている楽譜の例として、古い楽譜なのですが、手元にあったので、
阿部保夫さん阿部恭士さんの「バロック名曲選集」を参考にさせていただきました。

ユーチューブなどで、演奏を聞かせていただくと、
この阿部さんの楽譜よりリュートの楽譜に近いものもありましたが、
ほぼ同じような楽譜が使われていましたので。

まず、一般的に使われている、ギターの楽譜に今回変更した箇所を示した楽譜を参考に付けます。


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そして、私が今回作った楽譜です。

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丸く囲んでいる所が変更箇所です。

番号を打っていますが、ほぼ100箇所あります。

そのうち スラーの変更が69箇所。

内訳は不足している箇所が 58箇所
原曲には付いていない、余分な所が11箇所あります。

不足している箇所は、もっとあるのですが、ギターの調弦ではこのくらいが限度かな?と思います。

もっとも、これは付けることの出来る箇所に可能な限り付けましたので、
弾いてみて不要だと思えば、付けないでください。

番号をつけていますが、17番、23番、39番のように、
左手で弦を打弦して付けるスラーは力が入りますし、なかなか思うような音は出ませんので、
私は付けたり、付けなかったりしています。

でも、本来そこには、スラーがあったということが分かれば、
そういう風に弾くことが出来ると思い、付けています。

スラーの変更以外では、ポジションの変更があります。

ここで、分かりやすいように、原曲のタブラチュアと私の変更案、
ギター楽譜で比べてみたものを付けてみます。5線譜でなく6線譜です。
(もうご存知だと思うのですが、6線譜、タブラチュアの読み方です。

横線は一番上がギターの1弦、一番下が6弦を表しています。
そして、押さえるフレットの位置を数字で示しています。)


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番号を付けている①の箇所は曲の最初の小節の所です。その説明です。

オリジナルのバロックリュートでは最初の和音が、2弦は0なので開放弦、
3弦も開放弦、4弦が1なので、1フレットを押さえます。そして、6線の下に
3本加線していますが、これは10コースを表しています。

もちろん、0なので開放弦です。

(ちなみに、7コースは加線せずに、6弦の下に書いていると、7弦です。)

ということで、ギター楽譜だと、2弦の7フレットのファ#ですが、
原曲では2弦の4フレットです。

これだと、1弦の2フレットから始めたほうが、リュートの音に近い、響きです。
同じような箇所では、89の上昇の音形で、2弦の8フレットまで使っていますが、
私は1弦の3フレットまでで、ポジションを徐々に上げています。
この方が原曲に近い進行ですので。
そして、最も大きく違うところは、51小節からの動きです。

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ギター楽譜では、1弦が開放弦、2弦が8フレット、3弦が11フレットですが、
リュートでは、2フレットと4フレットしか使っていません。

リュートでは音階的な動きになっていますが、ギター楽譜では、響きが残っていって、
和音的、カンパネラ的な音形になっています。

それなので、私は楽譜のようにオリジナルの、
リュートの音形進行に近い形でポジションを選んでいます。

また、これだとオリジナルのリュートの楽譜で付いている、
スラーは全て同じように付けることが出来ます。

リュートの調弦ではつけることが出来ない箇所までつけることは可能なのですが、
原曲にない所には付けていません。
ヴァイスさんがギターの調弦だと付ける事が出来るのなら、
彼もつけたと考えるなら,付けても良いと思いますが、それは皆さんで決めてください。

そして、一番変更したい箇所が29小節からです。
オリジナルのリュートでは、同じ レの音に対して、2弦の開放弦と、
3弦の5フレットの音を使って、面白い効果を狙っています。


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これは、私の楽譜のように、2弦の3フレットと3弦の7フレットを使えば、
同じような音の響きになります。

30小節の最後の音は、ギターの調弦ではどうしようもないので、
私は右手の指使いをpip または ipiにして、二弦に渡る
音の響きに近い効果を狙っています。



また、パッサカリアはシャコンヌと同じように、
低音の一定の旋律の上に高音部が変化していく形を取っています。

そこで、重要なのが低音の旋律をいかに歌うか、繋げるかと言う事だと思います。

本来のタブラチュアでは、休符は書いていませんが、5線譜に直すと、どうしても
手が届かない所や、ポジション移動で音が切れる所が出てきます。

それを運指その他で解決しようと考えました。

最もこんなことをしなくても、音は繋がるという方は無視してください。

例えば、13小節目は3拍目の1弦、2弦を4,3で押さえているときに2フレットをセーハしておくと、
とりあえず1弦のラ―ファが繋がりますので、最低音のドの音の指の置き換えに神経を使えます。


次に、38小節の最後の音は、4弦の6フレットを使うと、低音は切れません。
44小節のファの音は1の指を拡張すれば、低音は切れません

後、細かいことですが、37小節も低音が切れやすいので、休符が付いていますが、
ドの2の指をこの小節の11番目の音 ラを弾くときに、3の指に置き換えます。
(チェンバロの方が良くやっている方法です。)
次の小節で、どっちみち3の指に置き換えなくてはいけませんから、
早めにするだけで低音が切れなくなります。

63小節の2拍目の音ですが、ソ、ファを1弦2弦で弾くと(少し1の指を
拡げないといけませんが)2拍目の低音のラが切れなくなります。

そして、これはもうすでに慣れてしまってなかなか、リュートの楽譜どおりに弾くのは難しいのですが、
14小節のリズムが違うのです。
どうしても、7小節と同じようなリズム、譜割で弾いたほうが楽なのですが、
皆さんはどうされますか?

そして、少し苦労した箇所が 72小節です。
タブラチュアのように処理すると,低音が切れなくなります。

img074.jpg


ということで、演奏のための楽譜を付けておきます。
これを元に、演奏する方が、自分オリジナルのパッサカリアを作って頂ければ,と思います。

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長くなりましたが、最後にオリジナルのリュートのタブラチュアを載せておきます。これは友人のリュート奏者に分けていただいたものです。この楽譜の音源としてユーチューブで今村泰典さんが演奏されているものがアップされています。かなり速いテンポです。


img081.jpg
img082.jpg

そして、オリジナルのタブラチュアです。
コピーのコピーなので見難いですが、何とか読めると思います。

img083.jpg
img084.jpg


最後になりましたが、私のギター楽譜はバロックヴァイオリン奏者、ガンバ奏者、
そして作曲家の田淵宏幸さんに楽譜をパソコンで作っていただきました。
最後にお礼を言って終わりにさせていただきます。


そして、次回は、ドルメッチコレクションのヘルズミュア版のタブラチュアから
ギター譜を作らせていただきます。

  1. 2013/06/26(水) 12:16:13|
  2. ギター
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魂柱と駒 そしてモダン楽器

魂柱と駒の関係は、ギターの方には縁のない話のようですが、
思い込みと言うか、そうでなければならないと思っていることが、
実際正しいかどうか、と言うことを考えさせられますので、
もう少しお付き合い下さい。

今まで見た、(ガンバが中心なのですが、)擦弦楽器では、ほとんどの楽器が
魂柱と駒の位置は、近すぎて楽器が鳴っていない、楽器本体が振動していない場合が
多かったです。

そんな楽器は、倍音と言うか、固めの音なので、通る音に近い音質です。
ですから、弾いている本人も、他の楽器が鳴っていても、自分の音は聞こえる。
遠くで聞いている人にも、聞こえる音のようです。

でも、それは、硬い、音楽的には異質な音なので、聞こえてくると言う場合が多かったようです。
合奏していても、溶け合わないから、聞こえてくる。

最近、チェロでも基音が鳴っていなくて、ハーモニカのような倍音だらけのチェロを
聞く機会が増えました。

これは、鶏と卵の関係のようですが、弦の問題が大きいと思うのですが、最近の弦は
魂柱と駒を近づけないと、音がはっきりしない、音程が取れないようです。


逆に、魂柱と駒が離れすぎている楽器もたまにはありました。

そんなにベテランの製作家でない場合、楽器を作るのに精一杯で、重要な魂柱を立てるのは
適当にやってしまった。という楽器です。

魂柱は少し長めにしておいて、だんだん短くしていって、合わせるのが普通ですが、
少し長めで、「駒から遠いけど、音が出るからまあいいか」という楽器です。

中には、駒から3センチほど離れている楽器もありました。
でも、こんな楽器は大体、表板も削るのが大変なので、表板がとても厚い楽器が
ほとんどでした。

これだと、3センチ離れていても、結果的に音は良い場合もあるのです。
魂柱の位置を変えても、元の場所が一番良かったこともあります。

長年使っていると、さすがに表板は、駒の辺りで下がってきますが、音は
離れすぎている方が、近すぎるより良い場合が多いようです。

それと、駒からは近い距離なのですが、駒の位置がずれている楽器もよく見ます。
魂柱と駒の位置は、決まったものがあるから、その距離は守って、力を逃がそうとしたのかも、
しれません。でも、音は逃げた分だけ、ロスがあるので、楽器はあまり鳴っていません。



この間も、モダンの楽器との仕事が続きました。
時間もあったので、楽器を見せてもらいました。

魂柱と駒の関係を見るまでもなく、音を聞くだけで魂柱と駒が近すぎて、
楽器が鳴っていないのです。

かなりベテランのプロの方なのですが、ヴァイオリンを弾いてもらっても、
本当に楽器が鳴っていなくて、良い楽器なのに、これで仕事をしているの、
と思うと、複雑な気持ちでした。

プロの奏者がプロのメンテナンス、プロの調整をしてもらって、鳴っていない楽器を
弾いているというのが現実のようです。

でもモダン楽器だと弦の関係でそうしないといけない場合もあるので、単純には行かないようです。

ギターの場合だと、音色とか立ち上がりくらいの問題で、ヴァイオリンほど弦の影響は
少ないようで、良いのですが。


  1. 2013/06/26(水) 11:24:36|
  2. その他
  3. | コメント:0

魂柱と駒の関係(コメントをいただいて)

コメントをいただいて、文献的なものが無いかどうか、探してみましたが、
手元には残っていませんでした。

40年ほど前に、楽器を(ガンバを)作り始めた頃、ガンバ製作の本はもちろん、
ありませんので、ヴァイオリン、チェロの製作の本を集めました。

ほぼ、ダンボール箱にいっぱいほどの本が集まりました。
その中に、チェロの製作の本ですが、魂柱と駒の間隔を魂柱の直径分離す、
と書いてありました。

他の書物で、魂柱の直径分か駒の厚み分 離すとあったのを記憶しています。

チェロの場合は、駒の厚みも、魂柱の直径も11ミリが標準なので、11ミリくらい離せば良い
と思います。
ヴァイオリンの場合は、魂柱が6ミリ、駒は4ミリから4,5ミリくらいなので、4~5ミリで
良いのではないかと思います。

ただ、これはガンバのように、ガット弦を使うことが条件です。

かなり以前に、弦の話をさせていただいた時に、チェロの弦で、
スティールやナイロンを張っている時は、コメントをいただいた方のように、
魂柱の直径の半分くらい、6ミリくらいにしないと、音程が取れない、
というか、音にならなかった経験があります。

音はするのですが、何の音か分からないほど、ぼけた、音程感のない音になるのです。

ヴァイオリンやヴィオラはまだ、近づけても鳴っている楽器は結構ありました。

そして、魂柱の直径分離すといってもこれは、標準なので、表板が薄い楽器、
表板のアーチが緩い楽器、表板の材質が柔らかい楽器は、魂柱と駒は近づけます。

逆に、表板が分厚い楽器、表板が固い材質の楽器、表板のアーチがきつい楽器は、
魂柱と駒は離します。

また演奏家の好みも入りますので、あくまでこれは基本的な考えです。


ガンバを作ってきて、40年近くなりますが、今まで、この原則で楽器は最も
コンディションが良く、一番楽器が鳴っていたように思います。

何年かに一度、日本ヴィオラ・ダ・ガンバ協会の夏季講習会のメンテナンスを
していますが、毎年10台から20台のガンバの調整をしますが、9割の楽器は
魂柱と駒が近すぎて,鳴っていない楽器でした。

その場で、魂柱と駒を離してあげると、「別の楽器になったみたい!」
「まるで、鳴り方が違うので、弾き易くなった」「音も良くなって、
楽器が生き返った」と良く言われます。

これは、楽器を弾けば、直ぐに分かることなので、いかに調整の人が
楽器を弾いていないのか、とよく思います。

新しい楽器を、持って来られた方で、「新しく作ってもらった楽器なのですが、
全然鳴らなくて、こんなものでしょうか?」と相談されることがよくあります。

もちろん、ガンバをプロとして作ってられる製作家の方の楽器です。

駒の、弦の当たるところの溝の深さや、ナットにも問題があることも多いのですが、
一番は駒と魂柱の関係です。というより駒と魂柱が近すぎて、弦の振動を駒が受けても、
魂柱がつっかい棒になって、表板の振動を止めているのです。表板が振動しないと、
楽器全体も鳴りませんし。

(ギターでも同じようなことがよくあります。新しく作ってもらったギターが鳴らないのです、
と持ってこられることが。骨棒やナットなどに問題があって、簡単に鳴るようになります。
これも、数分弾けば分かることなのですが、楽器が出来ても、弾いていないのでしょうね?
音など関係ないのでしょうか?)

東京でも、ガンバを作ってられる方は少ないので、調整はヴァイオリン関係の方が
やることが多いようで、モダンのヴァイオリンやチェロの感覚で調整されるのでしょう。

今、気が付いたのですが、無量塔さんや、ヴァイオリンを作っている方のガンバが
鳴らなかったのは、ただ、単に魂柱と駒が近すぎたのが原因かもしれませんね。

文献が見つからなくて,申し訳ないのですが、本当に数分弾けば分かることですので。

でも、モダンの人は大変ですね。高い弦を使って、高い楽器を使って、
楽器が鳴らないように調整しないといけないのですから。







  1. 2013/06/26(水) 01:54:16|
  2. ギター
  3. | コメント:1

コメントをいただいて 楽器をコピーすることなど

いつも、沢山の熱心なコメントをいただいてありがとうございます。

まず、コピー楽器のことですが、モダンスペインギターを作っている人に、
トーレスのコピーを作ることを、勧めた理由です。

モダンギターを作っている方は、そのスタートがトーレスさんということですから、
トーレスさんが何を考え、どうしたかったかが、分かると、その方が作る楽器も
変わってくるのではないかと、思うのです。

トーレスさんの楽器をコピーするなら、それまでの楽器、スペインだとファン・ミュノア、
ファン・モレーノ、マヌエル・ナルシソ・ゴンザレスそして、もっとさかのぼると、
パヘ一族、フォセフ・ベネディート、ディオニッシオ・グエラ、
などの、調べる必要があると思いますが、トーレスさん自身が、ほとんどマドリッド派の
影響で楽器を作っているように思うので、トーレスさんスタートで良いかな?
とも思います。

19世紀ギターでは、コピー楽器をつくる製作者の考えも入っていると思いますが、
楽器の大きさや構造はほぼ、忠実に作られていると思います。

トーレスさんのコピーを作ることは、私はトーレスさんの考えていたことが分かることが
大切だと思っているのですが、職業でギターを作っている人には、トーレスのオリジナルは
手に入らないから、オリジナルに近い楽器ということで、売れるだろう、と思って作っている
ように思えます。もちろん、研究目的で作っている人もいると思いますが。

ブーシェモデルや、ハウザーモデル、ロマニロスモデルなどはその目的で作っているようの
思いますので。

19世紀ギターでは、モデルになる楽器によって、音はかなり変わってくると思います。
19世紀ギターを作っている製作家は、いろんなモデルで作っていますが、出てくる音は
モデルごとに違った音、響き、性格の楽器を作ってられるようです。
それぞれの、モデルとなった製作家の考えなども、分かって作っておられると思うのです。


現存する、トーレスさんの忠実なコピーといっても、ほとんど作る楽器が違う寸法や
設計で作られているので、何台かは作らないといけなさそうです。

また、1グラムまで同じように作っても、今使われている、トーレスさんの楽器とは
全然違う音だと思います。
それは、一番大きな差が 経年変化の違いがあるからだと思います。

トーレスさんが作った頃は、出来たばかりの楽器の音はこうだった、という
サンプルにはなると思います。

また、良く知られているように、最高の材料を使ったプロ用に作った楽器ばかりではないので、
そう沢山無いと思うのですが、彼が作った良いとされる楽器のコピーで無いと、
意味は無いかもしれません。

何か取り留めの無い話しになってしまいましたが、セゴビアさんのような音楽を作るのなら、
トーレスさんの楽器では、無理だったように思います。

トーレスさんも死ぬまで、試行錯誤されていたようですが、20世紀のハウザーさんや
ラミレスさんたちも、名工と言われてからも、研究熱心に更に良い楽器を作ろうとされていました。

1時的なものだったかもも知れませんが、ラミレス3世さんのデ・カマラギターや、
ニスに対する研究など、結論は私とは違いますが、名声を得てからも、研究意欲はすごいと
思います。

私は、かなり以前に英語版のロマニさんが書いた、トーレスさんの本を見て、一番役に立ったと言うか、
一番良く見たページが、90ページ、日本語版だと、111ページのパノルモさんの表板を
裏から、撮った写真です。それ以外は、92ページ、日本語版だと116ページの沢山の修理跡の
あるトーレスさんの表板の裏からの写真です。

それ以外は、「なんとけち臭い、肝心のことは何も書いていない本だな!」と感じました。
でも、この本を読んで、何度も読み返して、ギター製作のことが良く分かったという方もいますので。
私だけの感想かもしれません。

ギターを作る前から、何千、何万とギターが作られてきて、パノルモさんだけが、バスバーが
バスバーとして機能していると感じていました。

ラミレス3世さんは、彼の著書に「力木や響棒は表面板を保持する骨格としてのみ働く、
あまり害の無いものであり、表面板が変形するのを防ぐ」と書いています。

また、力木とは止むを得ない障害物にすぎない とも書いています。

ラミレスさん以外のモダンギター製作家も同じような考えなのでしょう。

また、話があっちのほうに行ってしまいましたが、
楽器をコピーする時は、何の目的でコピーするのか、
それが大事なことだと思います。

他のご意見とか、コメントにはまた次の機会に触れさせていただきます。






  1. 2013/06/26(水) 00:29:39|
  2. ギター
  3. | コメント:1

なぜ、ストラッドを超えられないのか

また、続けてブログを書かせていただきますが、
このブログは演奏会のリハーサルや、時間があったときに
ワープロに打ち込んだものです。

少し前になりますが、ヴァイオリンのストラッドさんの話が良く出ていたころなので、
話題が古いかもしれませんが、ギター製作にも関係がありそうなので、関心がおありの方は
お読み下さい。少し長いです。


なぜ、ストラッドを超えられないのか

これは、よく話題になると言うか、大きな問題だと思います。
また、結論の出ない問題かもしれません。

いろんな理由が考えられますが、以前に書かせていただいたように、
経年変化で楽器用材自体に起きた変化や、弾きこまれて作られた音というのは、
どんな天才でも、人間には作ることができないように思います。

でも、大きな会場で充分に聞こえる楽器を作るとか、(ストラッドさんより大きな音で)
バランス良く、大きな音で鳴る楽器というのは作れると思います。
また、作っている人もいるように思います。

楽器の良し悪しを決めるときに、演奏家は会場で音が通るとか、
延達性があるとかも気にするでしょうが、やはり弾いている本人にどう聞こえるか、
弾いていて楽しいかどうか、というか、表現したいことがどこまで出来るか、
また、演奏上の機能性といったことではないでしょうか。

この点では、古い楽器の立ち上がりの良さや、響きや味のある音には敵わないと思います。
新しい楽器で、演奏家に好まれるようにと、倍音を多くしたり、響きを付けたり、
柔らかい音にしたり、ということをやっている人もいますが、これも、
演奏家に選んでもらうことを考えてもことだと思います。

あと、目標がストラッドということは、追いつくことを目標に作っているように思うので、
越すことは出来ないようにも考えられます。

ギターの場合も、トーレスさんの楽器を目標にしていると、
彼以上の楽器は作れないと思ったりします。
(そのトーレスさんの楽器ですが、
トーレスさんの楽器を多数知っているわけではありませんが、
多くのトーレスさんの楽器を知っている演奏家の方に聞くと、
良い楽器は3台か数台くらいしかないと言われます。
その素晴らしい楽器と比べると、と言う話です。)


ギターの場合、さらにハウザー、やブーシェさんのギターを目標に作ると、
それ以上のものは出来ないように私は思います。

そして、ギターにしてもヴァイオリンでも楽器を作っている人は、
ほとんどの人が学校で楽器製作を習ったり、製作家のところで楽器製作を修行した人だと思います。

モダンヴァイオリン、を作っている人はモダンヴァイオリンを作ることを勉強して、
モダンスペインギターを作っている人はモダンスペインギターを作ることを勉強して来ていると思います。

言葉を変えれば、モダンヴァイオリンを作るメソッドだけを習ってそこに固執していると言うか、
他の発想がない。
モダンスペインギターを作ることを習った人は、モダンギター製作法しか知らずに、
ギターを作っている、それが最上の方法だと信じて。

そこが一番の問題かな?と私は思います。


ストラッドさんを目標にするなら、なぜストラッドさんが作った楽器を作らないのか?
バロックバイオリン製作家の方はもちろん、ストラッドさんが作ったイメージで作ってられる
と思うのですが、むしろ、モダンヴァイオリンを作っている人にストラッド本人が作ったような、
バロックヴァイオリンを作って欲しいのです。

当時のスタイルで、当時と同じようなガット弦で充分によく鳴る楽器を。
(以前のブログに書かせていただいたように、バロックまで戻らなくても、
20世紀初頭とか、パガニーニさんの頃でも)

そうすると、もっとモダンヴァイオリンも良い楽器が出来ると思います。

ギターの場合でも、トーレスモデルという楽器は、沢山作られていますが、
トーレスさんのコピーは作られていません。(少なくとも私は知りません)

私はモダンヴァイオリンもモダンスペインギターも作る気はまったくありませんので、
ストラッドさんやトーレスさんのコピー楽器は作りませんが。

なぜ、モダンスペインギターを作っていて、トーレスコピーの楽器を作らないのか、
私には分かりません。(その原因の一つにトーレスさんのデータが公に発表されていない
こともあるのでしょうか?あれだけ、いろんなことを書いているロマニさんの本にも
一番肝心な、表板の厚みがブリッジ周りで2.5ミリ周辺部で1.4ミリこれは彼の全ての
ギターに当てはまる。と書かれているだけで、具体的な図面は無いのです)

20世紀初頭にトーレスコピーを作っていた人もいるようですが、
でも、コピーしただけではだめだったようで楽器を大きくしたり、
その人なりの工夫をしているようです。

(例えば、元ギター文化館館長の細川さんの「ギターと名工達 1」
9ページにマヌエル・ラミレスさんの項で、
「トーレスの優秀さを認めたマヌエルはトーレスのスタイルを研究開発し、
型作りを少し大型化して、マヌエル独自のスタイルを確立した」
とあります。トーレスさんを大型化しないと彼は、彼が満足できる楽器は作れなかったのでしょう。

また、最近では、また現代ギターの引用ですが、2008年4月号 34ページに
テオドロ・ペレスさんが作った、「トーレス・レプリカ 2008」のことが書かれています。

――― 当初、テサーノス、ペレス両氏がトーレスのオリジナル設計で製作を始めましたが、
出来た楽器は音量が不足していました。そこでトーレスの設計を残しながら、
ペレス氏の設計を取り入れ、現代の使用に耐えるボリューム豊かな楽器になりました。―――――

とあります。

どこまで、トーレスの設計に忠実に作ったかは分からないのですが、
(横板の厚み表板の削り方など、)トーレスさんの設計では、音量不足ということらしいのです。

私はトーレスさんを評価していないので、トーレスコピーは作る気もないのですが、
トーレスさんのギターがモダンギターの開祖のギターと思っている人は
一度作ってみないといけないのではないかと思っています。

そうすることで、トーレスさんを超える楽器を作れるのではないかと思っています。
(それには、トーレスさんの何台かしかない、名器のデータを自分で作る必要がありますが。)

ヴァイオリンも同じようなことがいえると思うのです。
モダンヴァイオリン、モダンギターを作る方法を学んできて、
これが固定観念になってしまっていることが、
大きな原因だと思います。

ヴァイオリンの本を見ると、ヴァイオリンは今の形で登場したように書いている本もあります。
ですので、作る人も今の形が最高の形なので、今のモダンヴァイオリンを研究すれば、
良い楽器が出来るように勘違いをしているようにも思います。


東京ヴァイオリン製作学校を作られた、無量塔蔵六さんもヴァイオリンを作る人間は、
ガンバやバロックヴァイオリンを作らないといけないと、言われています。

そうする事によって、ヴァイオリンのことが更によく分かると。

でも、私も40年近く前にガンバを始めた頃、無量塔蔵六さんの作られた、
トレブルガンバを使っていました。
でも、この楽器が見事に鳴らないのです。全然と言ってよいほど鳴りませんでした。

私も初心者ですから、腕が悪くて楽器を鳴らせないのかと思っていたのですが、
何年もガンバを弾いてきて少しは上手になったころ、
他の人が使っている無量塔さんの作ったガンバを何台か見せてもらいました。
でも、どの楽器も見事なくらい鳴っていませんでした。
あの有名なヴァイオリン製作家の、無量塔蔵六さんの作られた楽器なのに。

チェロを作っている方がガンバも作られていますが、この方のガンバも鳴っていないのです。
(私にはそう思えます)

これについて、長年 「ヴァイオリンを作っている人のガンバが鳴らないのだな」
と思っていたのですが、最近思いついたことがあります。

それは、ヴァイオリン作りの人が作るガンバが鳴らないのでなく、
ヴァイオリンも鳴らない楽器を作っているのではないか?と。

そして、その無量塔蔵六さんの書かれたヴァイオリンの本を読み返してみると、
「現在あるストラディバリもガルネリも、また、他の名工たちの作も、製作当時の姿ではありません。
音も当時ははるかに貧相なものだったでしょう
産業革命以前に昇天してしまったストラデバリを始めとする名工と名づけられている人たちは、
今日あるがごとき美しい音のヴァイオリンをまったく知らなかったのです

原文どおりです。当時の楽器は貧相で鳴らない楽器だったということで、
鳴らないガンバを作られたのでしょうか?


モダンヴァイオリンを作っている人は、モダンのコンディションが最高のものだという意識があって、
それが良い楽器を作る上で障害になっているように思います。

もっと、原点に立ち返って、素直にストラッドさんの作った楽器を見直せば良いのにな、
と思ったりします。

そして、ヴァイオリンの方たちはすごくプライドが高いのですが、
このことも原因しているのでしょうか?

修理しかしていような方でもすごくプライドが高いので、
謙虚にストラッドの楽器を見直すのは難しいのでしょうか?

九州で素晴らしいフォルテピアノとリュートを作っている、松尾君と話をしている時も、
そんな話が出ました。

リュートを作っているというだけで、かなり見下げた感じで話されるそうです。

でもバロック時代は、リュート作りというのは最高の楽器職人で、最高の扱いだったのです。
ヴァイオリンとかギターを作っている製作家の方のラベルにも時々
ルティエ と書かれているときがありますが、これはリュート作りという意味で、
リュートが作れれば、どんな楽器でも作れるので、ルティエと書いていれば、
最高の楽器製作家というのが本来の意味だったのですが。


私も。数年前に似たような経験があります。

丹波市で 私の作ったチェンバロと、京都の方だったと思うのですが、
その方が作られたヴァイオリンでコンサートがありました。

コンサートが終わって、その方と話しをしました。

「私はチェンバロも作っていますが、ガンバを作ることのほうが多くて、
頼まれてバロックヴァイオリン、も作っています」と言うと、その方は驚かれて
「ヴァイオリンとガンバは違うのですよ!」と言われるのです。

私も「もちろん ヴァイオリンとガンバは違いますから、違うように作っています」
と言いました。さらに、「いくら違うと言っても、リュートとギターほどの違いは無いでしょう」
とも言いました。
そう言うと、「いや、リュートとギター以上に違う」と言われるのです。

最初に話を聞いたときに、「では、あなたはガンバもヴァイリンも作って、
その違いが分かってそういう話をされるのですね」と言おうとも思ったのですが、
もちろん、ガンバを作るどころか、弾いたことも無いと思いますので、
リュートとギターとの例えを持ち出しました。

私はギターもリュートも作っているのでその違いは分かっています。
その上でガンバとヴァイオリンとの違いを話させていただいたのです。
と言おうとも思ったのですが、「いや、リュートとギター以上に違う」
と言われた時点で、話にならなさそうなので、話は辞めました。

もちろんその方が、リュートもギターも作ったことが無いのは明らかです。
弾いたこともないかもしれません。

イメージですが、「ガンバを作っている人間にヴァイオリンのような高級な楽器は作れるわけが無い」
とそんな雰囲気に感じました。

いつも、このような事を言って、素人さんとか他の方を言いくるめている方、だと思いました。

また、ガンバを作り始めた40年近く前、
弦を分けてもらいに大阪の大きなヴァイオリン専門の楽器屋さんに行きました。

私が始めて作った楽器を見て、社長さんは「これだけ良い楽器が出来るのなら、
是非 弦楽器製作者協会に入ってほしい」と言われました。

この3週間で作った楽器は今、広島で、元気に鳴っています。ずっと使ってくれています。

でも、私の友人が行くと、「ガンバなんか箱を作って、弦を張れば出来る簡単な楽器ですよ」
と言っていたそうです。(社長さんではなく、その店の職人さんだと思います)

私は日本のヴァイオリン製作家は一人しかいないと思っていました。でも、私の知らない人で作っている人もいるかもしれませんから、数人かな?と思っています。

私の知っている数少ない、製作家は 高槻の岩井さんです。

彼は修理はせずに、ヴァイオリン製作で生計を成り立たせていると聞いています。

では、沢山いるとされるヴァイオリン製作家の方はどうでしょうか?
修理、調整で生計を立てて、修理の合間にヴァイオリンを作っている方が多いと思います。
その比率は(製作と修理の)人によって違うと思いますが。

売るための楽器を作るより、修理で収入を得ながら、自分で気に入った、
最高の楽器を作ろうとされているのかもしれません。

修理、調整がメインでほとんどヴァイオリンを作っていない方でも、
私はヴァイオリン製作家です、と言う方がいらっしゃいます。

自分が作った楽器ではないが、何億もする楽器、ヴァイオリンを私は作っているのだと、
いうプライドをお持ちなのでしょうね。


長々となってしまいましたが、今まで教えてもらったことや、習ったことに囚われず,
もっと自由に、いろんなことを考えて作ればよいのでは?

そして、原点に発ち返って作ればもっと、ストラッドに近い楽器が出来るのではないかと、
私は思っています。ギターでも。


  1. 2013/06/23(日) 00:00:39|
  2. ギター
  3. | コメント:5

沢山コメントをいただいてありがとうございます。

沢山コメントをいただいてありがとうございます。

ここのところ、ブログの更新が出来ていませんでした。
泊りがけの仕事があって、また、帰ってきても雑用がたまっていたので、
時間が取れませんでした。



楽器のラベル、シリアルナンバー特に、パノルモさんの
ことについては、ものすごく詳しい内容のコメントをいただいて、
私も知らないことが沢山書かれていて、新しい知識をいただきました。

マニアックと言ってしまうと、もったいないような、深い知識と研究の成果の
コメント、いつもありがたく読ませていただいています。

私は楽器を作る立場なのですが、ラベルとかシリアルナンバーには
あまり関心はありませんでした。
自分の楽器にも、シリアルナンバーは付けていませんでしたし、
ラベルも今のように、パソコン、プリンターが普及していなかった頃は、
名刺の英字の部分を切り取って、ラベルに使っていました。

アマチュアの頃は、楽器を作ることが楽しく、作ってしまえば
次の楽器に関心が移っていくので、ラベル自体を付けていない楽器も
結構ありました。(作った楽器がどのように、育っていくかは興味がありましたが)

あと、パノルモさんの楽器は、修理させていただいて、直接中の構造を見た
物は、5台くらいですが、簡単な調整なども含めても、10台くらいしか見ていませんが、
パノルモさんの代名詞の、ファンブレースの楽器は2台くらいで、むしろ
斜めバスバー1本の楽器のほうが多かったようです。

西垣さんも言っておられたように思うのですが、19世紀ギター、ロマンチックギター
として使うなら、斜めバスバー1本のほうが良いようにも思います。

表板の構造がシンプルなだけに、音の立ち上がりや、音色が19世紀ギターのイメージに
合うようです。

パノルモさんのファンブレースは逆に19世紀ギターとしては、特殊なものかもしれません。

ということで、ここで、私のブログらしく19世紀ギター、ロマンチックギターの表板の
というか、バスバーの配置を見てみましょうか。

まず、最初は A のパノルモ斜め1本バーです。
今まで、修理させていただいたパノルモさんで最も多いパターンです。

少し、場所がずれていたり、角度がずれている場合がありますが、
ほとんど同じ場所、角度でした。



img061.jpg


B はシュタウファさんやコントラギターに見られる主にウイーンで使われたパターン。
手元の、ラベルが無いのですが1900年頃のパーラーギターがこのバスバーです。

幾分、音が硬い感じはしますが、減衰が長く、バランスは良いです。

次は ラコートさんの代表的なバスバーです。


img062.jpg


C がそうです。
パノルモさんに比べると、ブジッジの下、お尻側にもう1本バスバーがほとんど、
ブリッジに平行に入っています。

私がパノルモさんが好きなのは、このバスバーの違いです。

ラコートさんのようにここに1本バスバーが入ると、表板の特に低音側の鳴る面積が分割され
倍音が多くなるように思います。

パノルモさんのバスバーだと、低音側の面積も大きく、バスバーによって分割されていないので、
基音の多い低音が鳴るのです。

そして、Dのラコートさんの斜めバスバーをとって、ブリッジ下のバスバーだけのもの。

1900年頃のパーラーギターに見られます。
私が持っているパーラーギターのうち1台がそうです。

次に特殊な例かもしれませんが、


img063.jpg


ブリッジの真下にバーがあるシュタウファーさんのようでなく、少し下がったところにバスバーがあるもの。

そして、パノルモさんのように低音側の面積を増やそうとした、マーチンさんの楽器のバスバーです。

これ以外にも、今回手に入った、スペインのベラスコさんのぎたーや、ガダニーニさんのギターのように
ブリッジ周りにバスバーが全然無いものもあります。

そして、一番独特な構造のラブレボットさん(ヴァイオリン属のようなバスバーが平行に2本)
と、製作家の方によって、様々なバスバーの配置があります。


何故、このような19世紀ギターのバスバーについて、書かせていただいたかと言うと。

私は、自分の作りたい理想のギター、音楽の表現が自由に出来るギターで、なおかつ
弾いている人に、充分満足感のあるギター、もちろん聞いている人に、
弾いている人が伝えたい音楽が、伝わるギターです。

その点から、モダンスペインギターには興味がありませんでしたが、弾いている人の満足感
というのはあります。

19世紀ギターでも、ギター音楽でない、音楽が表現できると思っていますが、
ソルさん、アグアドさん、ジュリアーニさんといった、19世紀ギターが使われていた
当時の作曲家以降の音楽には、少し無理があるのでは、と思っています。


そこで、リュートや、ガンバ、チェンバロ、ハープと言った、ギター以外の楽器から
ヒントを得た、19世紀ギターの延長線上の楽器を作りたいと思ったのです。

19世紀ギターには、興味がありますが、19世紀ギターのコピーを作ることには、
あまり興味はありませんでした。

それは、トーレスさんのコピーや、ブーシェさんや、ハウザーさんのレプリカを作ることと
同じことのように思っていました。

19世紀ギターの実に様々な、スタイルや構造を真似るのでなく、
19世紀ギターを作った製作者が何を考え、どういう楽器を作りたかったを考えることが、
自分の考えるギターに結びつくと、考えていました。


19世紀ギターはまだ、探せばオリジナルは見つかります。
でも、非常に高価であったり、メンテナンスにお金も時間もかかる楽器もあります。

そこで、19世紀ギターの延長線上の、1900年頃のパーラーギターを、集めて
演奏できるようにしていってます。

これらの楽器は、スティール弦が張られていたり、扱いが乱暴で、ほとんどの楽器が
演奏不可能です。
でも、これらの楽器は、100年以上前に作られ、演奏されてきた楽器です。
1台でも、演奏できるように、音楽が表現できる楽器になれば、とチャンスがあれば、
集めるようにしています。

現在、6台ほど手元にありますが、1台はこの間、使えるようになりました。

ラベルは無いのですが、ドイツの楽器かな?と思います。
この楽器も、演奏すると音楽が表現できる楽器ですが、
とにかく弾いていて楽しい楽器です。

コメントをいただいて、そのことに関しての考えを書くつもりでしたが、
話が横に逸れたようで、申し訳ありません。

cabotinさんが書かれていたのですが、トーレスさんが試したことは、
ほとんどパノルモさんが試しているとの事、私もそう思います。
また、アコースティックギターのxブレースとか、ロッドの考え、ほとんどのことが
19世紀ギターで試されていること。

トーレスさんの専売特許のような、ファンブレースは、パノルモさんが。
ドーミングはマドリード派のファン・モレーノさんあたりが始めて、
トーレスさんの頃には、当たり前だったこと。
楽器の大型化はファン・モレーノさんの次世代の作家、フランシスコ・ゴンザレスさんに
よってなされていた、と言うことは、ロマニさんのトーレスさんの本に書かれています。

でも、楽器について出版されている、本の中には

18世紀には今のような単弦のギターが登場するが、(最も古い単弦ギターは1801年か1803年に
作られたと言う記録がありますが、1825年か1825年あたりから作られたと考えるのが自然だと思います)
それ以前のギターと同様、音量の小ささは否めず、人気は衰退していった、とありますが、
フランスを中心にギターは流行しています。
そこで、トーレスが楽器を大きくし、弦長を65センチと決めるなど、画期的な改良を試みた。
(19世紀ギターと呼ばれる)と括弧書きされています。

このような本ですから、トーレスがフレットの位置を現在のように固定した。とか
ファンブレースのついても、トーレスの改良点のひとつとか、
ヴァイオリンのストラッドさんと同じような扱いになっています。
これ以外にも、おかしい記述が満載なのですが、楽器については
おかしな、間違った記述の本が多いですね。


かなり以前に、横板に穴を開けたギターがありますが、
kogakkiさんはどうお考えですか?
というコメントをいただいていると思います。

これも、演奏する人に自分の音が聞きやすくする工夫で、面白いと思いました。
晶ギターなどは、小さいのですが、もっと大きな穴を開けている作家もいます。

音の位相の問題とも関係があるようで、一度試しても良いと思うのですが、
私がするとすれば、リュートのローズのようにすれば、ただ開いている穴より、
楽器として美しく、また、リュートのローズのように裏から補強が出来るので、
構造的にも問題がなくなりそうです。



話がよく、あっちこっちに行きますが、皆さんと一緒にギターの事を
更に深く、考えていけたらと思っています。

これからも、よろしくお願いします。





  1. 2013/06/22(土) 23:17:56|
  2. ギター
  3. | コメント:2

弦は緩めて保管したほうが良いのか?

弦は緩めて保管したほうが良いのか?

これは、難しい問題だと思います。

ギター製作家の方でも、はっきりその根拠を示して、答えられる人は少ないかな?
と思います。

製作家の方で、緩めたほうが良い、緩めなくて良い、と答えられても、その理由が
「・・・・のほうが良いと、先生に習った」とか、「そう言われている」と言う理由だったりしますから。

私の考えですが、長期間でなければ弦を緩める必要は無いと思います。
半年も,1年も弾かないなら、半音か1音くらいは下げていても良いかな?と思います。
(その場合でも1弦だけかハナバッハのスパーハイなら 4,5,6弦も)

このブログに関心を持って見て下さっている方は、ほとんどの方がモダンスペインギターを
使ってられる方だと思います。

普通に作られたギターでしたら、毎日使っているとか,1週間に一度使っている程度だと、
緩める必要は無いかと思います。

この理由を書かせていただく前に、ギターの弦の張力を調べておきましょうか。


img059.jpg


また、現代ギター誌からの引用ですが、2011年 6月号 11pからの引用です。


昔から使っていた オーガスチンの黒で 37.6キロ
プロアルテ EJ-45 ノーマルで 38.1キロ
サバレス アリアンススタンダード で 39.7キロ
それ以外は ハイテンションでも42キロ程度です。
特別 張力の大きいハナバッハ シルバースペシャル スーパーハイ で45.4キロです。

ということで、ギターの弦の張力は 40キロ程度としておいても良さそうです。
大きくて 40数キロくらいと。

他の楽器、リュートなどはまず弦を緩めることはありません。

ルネサンスのリュートでも、10コースだと19本 合計すれば 40キロほどだと思います。
この張力を受けているのが、表板1.5ミリ程度で,バスバーの補強も無く、ブリッジもギターの
3分の一程度です。

リュートはギターと違って、チェンバロのように表板が弦のテンションによって、S字カーブ
になります。というか、S字カーブになることによって鳴るともいえます。

そのS字カーブを保つためにも、弦は張りっぱなしのほうが良いのです。

ガンバは、弦がガットのため,弦を長持ちさせると言う意味から,弦をそれも
1弦,2弦くらいを半音ほど下げます。

ギターは40キロほどのテンションで表板の厚みも 薄い楽器で2ミリ程度、
厚いと2.8ミリくらいでしょうか?
それに、沢山のバスバーも入っています。

モダンスペインギターの場合は表板がドーム形状になっていますが、これも強度を保つためには
有効です。

この丈夫な、構造のギターだと、緩める必要は無いかと思います。

逆に緩めたり,張ったりを繰り返すと表板のテンションがしょっちゅう変わるので、
バスバーの剥がれや、音の安定のためには不利かもしれません。

ただ、トーレスさんによって、楽器が大きくなり、更に後の人が大きくしたので、
ブーシェさんや古い楽器だとマヌエル・ラミレス、サントス・エルナンデスさんたちのように
表板が薄い楽器だと、そして40年,50年それ以上経った楽器だと、1週間も弾かないとなると
弦にもよりますが、1弦くらいは緩めたほうが良さそうです。

あまり沢山楽器を見たわけではないのですが、1930年くらいの,シンプリシオさんの楽器とか
ゴメス・ラミレスさんの楽器、サントス・エルナンデスさんの楽器を見ると、経年変化以上に
楽器が古くなっている感じはします。

こんな楽器を見ると、弦は緩めておいたほうが,楽器は長持ちするのかな?とも考えたりしますが
弦を張りっぱなしにしていることで、経年変化の効果を早く出させているのかな?とも考えます。

ということで、特別、表板が薄く作られている楽器で無ければ、弦は緩めなくても良いと思います。
表板以外は,モダンの楽器はものすごく丈夫に作られていますので、心配はありません。

弦を張りっぱなしにしていることで、ネックが曲がったり,ブリッジが外れると言うことは、
無いと思います。材料とか仕事が悪いのが原因だと思います。

(アコ-スティックギターだと弦は緩めたほうが良さそうです。)

以上はあくまで,私の考えです。違う考えの方もいらっしゃると思いますが。
 


  1. 2013/06/09(日) 18:07:29|
  2. ギター
  3. | コメント:2

コメントのお返事

いつも、真剣な、また深いお考えのコメントをいただきありがとうございます。

まず、気にされている方もいらっしゃるかもしれませんが。

1880年当時のギター2本です。

スペインのベラスコのギターは当分持っておこうと思っています。
経年変化の実証として、もう少しいろんな方に見ていただきたいし、何故この楽器がこんな音がするのか?
もう少し考えてみたいと思っています。

もう一台の、マーチン系のギターは、作られたときの音、また、現在の音がどうして生まれたのか?
少しは分かるのですが、しばらく弾いてみて、同じような楽器が出来るきっかけがつかめれば、
手放しても良いかな?とも思っています。



このように、素晴らしいロマンチックギター、19世紀ギターをコンクールに使わないのは、何故?
というコメントをいただきました。

手元にたまたまあった、現代ギターで 2008年1月号で第50回 東京国際ギターコンクールの結果が
発表されています。

1位はオーストラリアのミン・レ・ホーンさん、2位が日本の熊谷さん、3位が同点でロシア/在 ドイツ
のパベル・クボウシキーさん。
このパベルさんが、1865年のゴットリー・シェルツアー のオリジナルロマンティックギターで出場されていました。
1位のミンさんはスモールマンです。

結果同点の3位と言うことで、ロマンティックギターを使った、マイナス要素は少ないように思えます。

審査結果を見ると、ギタリストでない,審査委員長の 野田さんは最高点,ギタリストの鈴木一郎さん、
兼子さんは最高点を、福田さん,小原さん,荘村さんはそれぞれ、4位5位の点です。

もちろん、楽器だけから来る点差ではないと思いますが。

コンクール評などを見ると、予選でビラロボスや、本選で武満、ロドリーゴなどを弾いているのですが、
これらの曲は楽器に合ってなかった、これらの曲だけはモダン楽器で弾けばよかったのでは?
と書かれています。

私もコンクールは聞いていませんが、同じようなことを考えました。
後の曲、バッハやレニアーニ、タレガの曲は楽器に合った曲なので、演奏もそうだったのでしょうが、
とても良い評価です。

ここでギターから離れますが、30年ほど前の話です。

とても頭の良いチェンバリストと仕事を良くしていました。
沢山の演奏会のひとつに、サティの曲を、チェンバロ2台と歌で演奏すると言うのがありました。
サティはもちろんピアノで作曲していますが、スタンウエイのフルコンでは作曲していません。
もっと小さな、アップライトのようなピアノで作曲していたようです。

そこで、チェンバロを使うことによって,和音の変化や、音楽の構造が良く分かります。
彼が作曲したイメージに近いかもしれません。
ペダルが無いので、曲によっては2台のチェンバロを使ってられました。
私には,ピアノのサティより良いように思いました。
歌ももちろん、オペラのようなベルカントでなく、バロック歌唱のような歌い方です。

ギターでも、ビラ・ロボスなどは,19世紀ギターで弾いても、新しい魅力が発見できるかもしれません。
普通に良く弾かれるイメージでは無いと思いますが。

そういえば、ビラ・ロボスさんの指揮した有名な「ブラジル風バッハ」もかなり、アップテンポで
前へ前へと言う演奏でした。19世紀ギターで弾くロボスさんの曲のほうが,本人のイメージした曲に
近いかもしれませんね。



西垣さんも19世紀ギターはタレガくらいまでかな?と言ってられました。
(西垣さんの持ってられるパノルモは例外的な脅威の奇跡の楽器なので、何でも弾けると思いますが)

ビラ・ロボスやロドリーゴなどは、モダンのドスンと言うか,ボンというかボワンとした,低音の響き
を聞きたいと思っている人も多いようですし、そのほうが、曲にあっていると言う人が多いでしょう。

古くからの友人の有名ギタリストからは 「19世紀ギターは弾かない、楽器を持ってきれくれるのなら、
モダンにして」と言われています。

演奏会で、コンクールで、音が良く通る,と言っても,モダンスペインギターとは響きも音色も
違うので、モダンギターを聞きに来た人には,違和感を感じるのかもしれません。

以前にも書かせていただきましたが、私の作るギターで、特に楓のギターは、ギター以外の人には
「なんと、綺麗な音のギター」と言われますが、ギタリストの評価は
そうでない場合が多かったです。(19世紀ギターを弾いている人は、ギターリスト以外の音楽家と
同じ評価です)

日本だけかどうか分かりませんが、モダンギターとモダンギターを弾いているギタリストと、
19世紀ギターを弾いている、ギタリストの間には溝があるように思います。
むしろ、これが問題かな?とも思います。

コンクールでなくても、ソル以前の曲などは普通に演奏会で,19世紀ギター,ロマンティックギターを
使って欲しいとは思いますが、どうでしょうか?
でも、何人かの方は19世紀ギターとモダンギターの持ち替えで,演奏会をされていますが、
持ち替えは難しいようです。

今,一番名の知られている,福田進一さんが ラコートやガダニーニといった楽器を弾かれているので、
少しずつ、モダンとロマンチックの溝が埋まってくるくれることを願っています。

私も,モダンとロマンチックの間の楽器を作ることによって、溝が少しでも埋まれば,と思っています。


弦は張りっぱなしでよいのか?と言う問題は次回に。









  1. 2013/06/09(日) 13:54:36|
  2. ギター
  3. | コメント:2

61センチギターと新発見の弦

ここのところ、ヴァイオリンの話題が続いています。
今日は、ギターの話です。

以前、図面でお知らせしていた、弦長 61センチのギターが出来ました。
といっても私が作ったのではなく、お弟子さんに図面を渡して、材料も指定して
作ってもらったものです。
私が作れば、私の考えた楽器ですので、良い物が出来ると思っています。
ですが、私の設計、考えだと誰が作っても、良い楽器になるということも、試してみたかったのです。

ヴィオラ・ダ・ガンバは私の考えで作っている方、指導させていただいた方の作ったガンバ
は素晴らしい楽器ばかりです。

ギターでもそうでありたいと、思っていました。


という事で、その61センチの楽器です。


UNI_0113.jpg

右から、私のブログで良く登場する、1968年の田村満さんのギターです。弦長 65センチ

そして、私のスタンダードの弦長64センチのギター、トーレスさんの1期の楽器に近い大きさです。
次が、61センチのギターです。
64センチのギターを、95%縮小しています。
一番左が、弦長59センチのギターです。これは、64センチのギターの92%縮小。



現代ギター誌 2008年5月号 13pにあります、ドイツのギタリスト、ギター教育者の
ミハエル・コッホさんの

最適な弦長=現在の身長X0.36  



という公式から、165センチの身長だと、約59センチになりますので、
最初に59センチのギターを作りました。

左手は、何のストレスも無く、指を拡げれば和音が押さえられ、左に使う神経を
右手に全て使える、と言う感覚でした。

でも、やはりボディは少し小さく、響きも、音の強さももう少し欲しい感じでした。

そこで、今回61センチの設計をしました。
61センチだと、身長はほぼ170センチとなります。

結果は、最高でした!!1

音の響きも、締まり具合も、低音、高音のバランスも完璧です。

今回、出来てから少し様子を見ようと、5月26日の酒心館のコンサートで
ガンバと合わせるために、A = 415 にしました。
もともと、65センチの弦長の楽器に比べると、1フレット分短い弦長です。

それを、半音下げると言うことは、65センチの弦長の普通の楽器を全音下げる
ことになります。

半音下げても弦の感触や音も65センチのモダンスペインギターよりもしっかりしているのです!

61センチの弦長の左手の操作性の良さは、リュートで確信していましたので、
予想通りですが、音の密度や和音の分離どれをとっても、素晴らしいのです。

もちろん、楽器を構える体への負担も小さく、59センチで少し小さすぎて、
持ちにくかったのが、体にぴったりです。

もう一枚、一般的なモダン楽器と比べやすいように、田村さんの楽器の横に並べました。
もちろん、右の楽器です。


UNI_0114.jpg

かなりコンパクトです。
以前書かせていただいたブログの、マヌエル・ベラスコのギターとほぼ同じ大きさです。

このサイズが、一般的な日本人にとって、最適な大きさではないかと思います。
もちろん、音も私の目指していた音に最も近いと思います。

実は,もう一台 ラブレボットをベースにしたギターも作ってもらいました。
こちらも、減衰が長く音も魅力的な音の楽器です。少し、19世紀ギターに近い響きがします。
これはこれで、素晴らしい楽器です。作った本人はこちらが気に入っているようでした。

61センチの弦長、ボディサイズが良い方向に作用しているのは事実だと思います。

先日プチジャンの修理で来られた、プロのギタリストの方も、10弦ギターの次に
気に入られたようです。そして、マーチンタイプのギターも。



次にこのギターに張っている弦です。

フロロカーボンの弦なのですが、「ソフトフロロカーボン」です。

img058.jpg


カーボンなので、ナイロンのように湿った音でなく、ガットに近い音なのですが、
普通のカーボンに比べて、柔らかく、暖かい音がするのです。

私のが探していた、理想に近い弦です。

最初は太い、3弦用くらいしか、売っていなかったのですが、やっと細いゲージまで売っている
会社を見つけました。


1弦は12号の 0.57ミリしか選択の余地はありませんが、
2弦用に 18号の0.702ミリ 3弦用に 28号の0.875ミリ
を張っています。

また現代ギター誌の記事ですが、2011年6月号に主要ギター弦のテンション1覧
が載っています。

1弦はサバレスのアリアンスなど 7.9キロとか8.5キロのものがあるのですが、
2弦3弦は サバレス アリアンス、カンティーガ ハイで6.3キロ、6.1キロです。

最も、テンションが高いハナバッハのスーパーハイで 6.5,6.8キロです。

アリアンスなどは、1弦と2弦のテンションの差が2.2キロもあります。

モダンスペインギターは、2弦3弦が鳴らない、特に3弦はハイポジションが鳴らない、
ぼけている楽器が多いのに、テンションが低いのです。

テンションが上がると、減衰が短くなるので、テンションは低めなのでしょうか?

それが、ソフトフロロカーボンだと、弦長64センチで、1弦は 8.3キロ、
2弦は7.06キロ、3弦は7.03キロです。

ギター弦では存在しない、7キロ以上のテンションが得られます。

当然音もしっかりしますし,1弦との音のバランス,音色のバランスも取れます。


一般的なテンション配分で行くと、2弦は16号の0.662ミリ、3弦は26号の
0.843ミリとなるのでしょう。

でも、今回は弦長が 61センチなので、A=440 で
1弦は 7.54キロ 2弦は 6.41キロ 3弦は 6.3キロ となります

(A=415では それぞれ、 6.72キロ、5,71キロ、5,69キロとなって
サバレスやダダリオのノーマル弦に近い値です )

ゲージやテンションが選べて、音もガットに近い暖かさの弦ですので、私は当分この弦を
使ってみようと思っています。

ガットやシルク芯の巻き線 と合わせてみようとは思いますが。


ただ、今のところ、手に入れる方法が、限られた会社で買うしかなく、また100メーター
単位になりますので、興味のある方にはこちらから送らせて頂だこうかと、考えています。




  1. 2013/06/04(火) 21:52:35|
  2. ギター
  3. | コメント:17

ヴァイオリンの弦について


弦楽器ですから、弦が非常に大切な要素だということは、もちろん分かっていることなのですが、
現在使われている弦が、普通にに使われているので、
昔から使われているように感じてしまいますが、どうなのでしょう?

少し考えて見ます。(少し現代に近い時代の話です)

カール・フレッシュさんのヴァイオリン演奏の技法 第1巻 第2版(1929年)
を読み直してみました。

1929年の時点では、E線はスティール弦がガット弦を次第に駆逐しそうである。
と書かれていて、そして20年前には厳禁されていた、と書かれています。

スティール弦への転換は、スティールE線に始まり、そして次にアルミニュウムD線がこれに続き、
スティールA線が最近この転換を完了するように思われる。と書かれています。
(でも、カールフレッシュさんはスティールA線には当分まだ反対すると書いています)
ということは、G線(4弦目、最低音)はしばらくの間はガット芯の巻き線が
使われていたということでしょうか。

無量塔蔵六さんの書かれた、「ヴァイオリン」の45ページによると。

それまでに使われていた、裸のガット弦に比べて、18世紀後半にイギリスに始まった、
産業革命は良い音を得られる丈夫な弦を安価に供給出来るようになった。
そして、ベートーベンを始め、ブラームス、チャイコフスキーのヴァオリン協奏曲、
ヴァイオリンの性能を心憎いほどにフルに生かして作曲されたパガニーニのヴァイオリン協奏曲、
これらはヴァイオリンの性能を充分に発揮できる弦が発明されたからこそ、
生まれたと言っても決して過言ではないでしょう。{原文のまま}

と書かれていますが、無量塔蔵六さんが生まれた頃に
(無量塔蔵六さんが生まれたのは1927年です)書かれた本で、
少なくとも1909年頃には厳禁されていたと書かれているので、
パガニーニさんやベートーベンさん達がスティール弦を使っていることはありえないと思います。

(無量塔蔵六さんの本にはスティール弦とは書かれていませんがスティール弦のことかと思われます、私には)

さらにそれを裏付けることが書かれています。

カール・フレッシュさんの本の4ページに
「30年ほど前、パガニーニさんの手紙の中に彼が使っていた弦が入っていて、
パガニーニの筆で、同封の見本の弦と同じ弦を作って欲しいと」とあって、
その弦を測ってみると、驚くなかれ(と書かれています
線は今日使われているA線と同じ、A線はE線と同じ、
E線は強いより糸と同じようなものであることを、発見した。と書かれています。
そして、更に驚くことがあります。

1929年当時使われていた弦の記述があって、E線はガットが43/100mm
A 62/100mm となっているのです。
(スティール弦は不思議なことに26/100となっていて、ほとんど現代の弦と同じゲージです)

これは、現在使われている弦がムジカ・アンティカ湘南さんが扱っている
トロ社の弦のゲージ表ではヴァイオリン E線は 56/100mmから 
68/100mmとなっています。これはカールフレッシュさんの頃のA線と同じです。

現在手に入る、ガットE線では、ピラストロ社のコルダが0.61から0.62ミリくらい、
バロックヴァイオリン用としているサバレス社のE線は0.51ミリくらいです。

最も、トロ社の0.64ミリ、0,68ミリの弦は寺神戸さんたちのハイテンション弦
のリクエストを聞いて、作られたものと聞いています。

ということは、パガニーニさんはピッチが高かったという話は聞いているのですが、
今使われている、ガット弦の1弦を3弦に張っていたということになります。

この細い弦で、テンションが無い弦で、パガニーニさんはあの超絶技巧曲を弾いていたのです。
逆に言えば、この細い弦で充分楽器が鳴っていた、鳴っている楽器を使っていた、
鳴る楽器を作っていた、ということになります。

(もちろん、スティール弦などは使っていません)

現在作られているヴァイオリンで3弦に(D線に)1弦(E線)を張って鳴る楽器はあるのでしょうか?
この細い弦で鳴る楽器を作ることが、ストラディバリさんに追いつき、追い越す
ことが出来るヒントになるかもしれません。

ギターも私の作る、リュート、ガンバにヒントを得た19世紀ギターの延長線上の楽器では、
全音どころか、2音、3音下げても鳴ります。

更に、ヴァイオリンの弦では、モーツアルトのお父さんレオポルド・モーツアルトさんの
「ヴァイオリン奏法」によると、4本の弦は同じテンションでなければならい、と書かれています。

現代 使われている弦は、ヴァイオリンに限らず、ギターでも、ガンバでも
1弦のテンションが高く、2弦3弦は低い弦が一般的というか、そのような弦しか作られていません。

そして、ガンバやヴァイオリンを弾いている人にとって、とても馴染みの深い、
ドイツのピラストロ社は、弦の袋を見ると、since 1798と書かれているのを、
何気なく見ていましたが、パガニーニさんは1828年頃にはピラストロ社の弦を使っていたようです。
そして、このことがピラストロの名前が世界に広まった理由だったようです。

スティール弦に関しては、1919年にトマスティーク・インフィルド社が作った、
ドミナント弦が最初のヴァイオリン用のスティール弦だと言われています。

現在も沢山のヴァイオリニストに使われているように、このドミナント弦の出現が、
スティール弦がガット弦に取って代わるようになった要因だと言われているようです。


ギターを主に書いているブログなのに、ヴァイオリンの弦のことを書いてしまいましたが、
今では当たり前のことが、少し昔はそうではなかったということが、
ギターでもありそうなので書かせていただきました。



 
  1. 2013/06/04(火) 02:15:38|
  2. ギター
  3. | コメント:1

コメントをいただいて

コメントをいただいて、私の表現がまずくて、少し誤解がありそうなので、
少し書かせていただきます。

ストラッドさんの楽器をバロックの状態に戻しても、ストラッドさんが作った当時の
音はしないと書かせていただいたのですが、これは、あくまで、ストラッドさんが作った当時
の音を再現したい、と考えた場合のことです。

今、モダンの楽器として使われている、ストラッドさんの楽器をバロックの状態に戻すと、
ストラッドさんの作ったときより、はるかに楽器としても性能は上がっていると思います。
音色、音の立ち上がり、響き、どれを取っても、ストラッドさんが作った当時より優れていると思います。

ですから、ストラッドさんは無理としても、(現時点では)モダン楽器として、
コンチェルトに使えるほどではなくなった、室内楽や小さなアンサンブルでは使えると
言われている、アマティさんや同時代の名器をバロックのコンディションにして、
バロックヴァイオリン奏者に使ってもらえれば、良いのになあ!と以前から思っています。

モダンとしては寿命が来ていても、バロックの楽器とすれば、まだまだ現役で活躍して
くれると思うのですが。
  1. 2013/06/04(火) 02:01:48|
  2. ギター
  3. | コメント:0

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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