古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

演奏会のお知らせ

今回はギターから離れるのですが、リコーダーの演奏会のお知らせです。

友人で、リコーダーの普及活動をしている、リコーダーJPの 石田さんが主催の演奏会です。

古楽ファンならだけでもご存知のフランス・ブリュッヘンのお弟子さんと、
日本とヨーロッパで活躍されている若手の演奏会です。

友人の主催と言う事で、お客さんは入ってくれるのだろうか、気になります。
ギターでもバッハとか、ヴァイスなどバロックの曲も演奏されますが、古楽器を
使ったギター以外の音楽を聴くと、勉強になると思います。
と言う事でお知らせです。

      img696.jpg

       img697.jpg


次も古くからの友人たちの演奏会です。

        img698.jpg


さまざまなリコーダーが出てきますし、さまざまな曲が演奏されます。
興味のある方はどうぞお越しください。

今日は、練習ですが久しぶりにテナーガンバを演奏しました。
ここの所、トレブルガンバを弾く事が多かったので、テナーチューニングに
慣れるのに少し時間がかかりました。


  1. 2012/06/27(水) 22:55:56|
  2. 演奏会
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燻煙熱処理された材料でギターを作り始めました


燻煙熱処理された材料でギターを作り始めています。

チェンバロの大修理や、アルペジオーネ、スピネットその他の仕事は、8月にまわさせていただきました。


違いが分かるように、3年日に干した材料でも同時に作っています。
もちろん、両方とも、30年ほど前に ドイツの佐藤一夫さんから分けてもらった板です。

確か、以前のブログで 「楽器は1台ずつしか作らない」と言っていたのではないか?
と言われそうですが、今回は、処理の違う材料の違いを見るために、あえて、同時に
2台作っています。時期が違うと、楽器に対する考えも変ってきます。
また、微妙に作り方が違ってきます。
大手メーカーのように、コンスタントに同じレベルの楽器を作り続けるのとは、
違って、常に考えて良い物を作ろうとしていますので。

2週間かけて、1台作って次にもう1台作るよりは、同じ条件、同じコンディションで作ったほうが
比較できると思ったのです。特に今は、梅雨ですので、晴れたときの工程と、雨の日の工程、作業では
内容が違ってきますので。

でも、比較すると言っても、同じ厚みとか同じ構造では作りません。
それぞれの板に合った、最もその材料が良く鳴ってくれる、厚みその他で作ります。

と言う事で、今回の表板です。

     UNI_0981.jpg


        燻煙熱処理された表板です。


     UNI_0982.jpg

      こちらは3年日に干していたほうです。

写真では分かりにくいかもしれませんが、冬目の太さ、間隔、曲がり具合などほとんど同じです。
日に干したほうが、少し柾目に出る斑の量が多いです。その代わり、燻煙熱処理されたほうは、
少し、とんびが飛んでいます。


次に裏板です。

        UNI_0983.jpg


  こちらは、ほぼ同じ木目、比重の木が使えました。

横板は、写真に撮っていませんが、曲げたときに横板の厚みを実感していただくように
写真を撮りました。

燻煙熱処理されたほうは、1.2ミリの厚み。日に干したほうは1.3ミリにしています。

それは、余分な長さを切ろうとした時に、考えられないのですが、新品のレーザーソーの
胴付きの鋸で切ったのですが、材が堅くて鋸が負けたのです。切れなかったのです。
鋸の不良品かと思いましたが、他の木は切れるので、不良品ではなさそうです。
結局 0.6ミリの厚みのレーザーソーで切りました。

やはり燻煙熱処理されると木材は硬くなるようです。
ということで、0.1ミリ燻煙熱処理されていない材料より薄くしています。

比較するローズウッドを探したのですが、一般的な横板の厚みの2.0ミリから2、2ミリくらい
のものがなかったので、1.9ミリのものと燻煙熱処理されていない、1.3ミリと比べてみました。

    UNI_0988.jpg


        1.2ミリと1.9ミリも写真を撮っていたのですが、分かりにくい写真でしたので
こちらを使いました。

これで見ると、1,9ミリでも充分分厚い事がよく分かります。

1.2ミリ1.3ミリだと、アイロンをそんなに高温にしなくても曲がります。
2ミリだと、水に長時間漬けたり、アイロンを高温にして曲げます。そうすると、ローズウッドの中から
油が出てきます。熱によって材質が変化しているのではないかと思ってしまうほどです。

無理に曲げないほうが、木にストレスも与えず、音も自然な響きがするように感じました。
まず、第一に2ミリでは、楽器が鳴りませんし。

いつも思うのですが、なぜ、2ミリの横板が常識になったのか、不思議に思います。



  1. 2012/06/27(水) 01:21:27|
  2. ギター
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ギター材料を燻煙熱処理していただきました

5月23日の 「野村隆哉先生と燻煙熱処理」のブログに書かせていただいた、
ギター材料の燻煙熱処理が終わりました。

野村先生から、「燻煙熱処理が終わったよ」と電話を頂き、すぐに材料を取りに行きました。

野村先生のところでも、タッピングと言って、材料をたたいて、音の響きを聞きました。
そして、燻煙熱処理していない材料も持って行きましたので、その違いなども
音を聞いていただいて、少し説明させていただきました。

燻煙熱処理後の状態です。(写真が何度撮ってもピントが合わないのです、
                       ピンボケですみません)

        UNI_0977.jpg
 
   

次に、留めていた針金とか、ベルトをはずして材料の写真です。
これも、同じようにピンボケですみません。

         UNI_0978.jpg


では、燻煙熱処理してもらって、材料がどのように変わったでしょうか?

燻煙熱処理すると、まず、比重が小さくなる、強度が上がる、燻煙熱処理後の変形が無い、
と言うことを聞いています。そして、これらの条件は表板にぴったり合う条件です。
そして、ネック材にもとても良い条件です。

ただ、ギターでよく使われる、裏板、横板用のローズウッドなどは、軽くなると言うのは
一般的な、モダンスペインギターには、良くないように思っていました。
ギター用材で、裏板、横板にはもっと比重の大きい、ハカランダ(ジャカランダ)などが
用いられるので、ハカランダに比べて、比重の小さいローズウッドがさらに軽くなると、
モダンスペインギターの音を作るのに、合っていないのではないかと思っていたのです。

でも、私はギターを、楓で作ることもありますし、モダンスペインギターとは違うギターの
音を作っていますので、ローズウッドが軽くなっても、音の輪郭とか、立ち上がりなどは
良くなるのではないかと思っていました。また、そのほうが私の作るギターには有利に働く
と考えていました。

実際に燻煙熱処理してもらう前の材料の重さと、燻煙熱処理後の重さを比べてみましょう。

表板は 40年ほど乾燥させている、ドイツの佐藤一夫さんから分けてもらったものですが、
一番軽くなったもので、215gが211gに、4g減っていますので、2.4%の減。
少ないものは、202gが201g、203gが202gと1g減っていますので、0.5%
の減です。

横板のローズウッドは 大きい変化のものは、437gから431gに、6g減っていますから
1.4%。小さいものは、390gが388gなので、2gの減で0.5%です。
裏板のローズウッドは 大きい変化のもので、465gが453gで12gの減、2.6%です。
同じように、小さいものは510gが505gで5g減、1%です。

ネック材は、大きいもので 647gが630gに17gの減で、2.6%
小さいもので、740gが736gに4gの減で、0.5%です。

材料によって、軽くなった%は違いますが、少ないものは約0.5%軽くなっています。
変化の大きいもので2.4%から2.6%です。
そんなに大きな数字ではないように思えます。

私が3年ほど前から、日に干している表板は、同じ佐藤さんから譲ってもらった、表板で
大きい変化のものは、20g、小さいものでも5gは軽くなっています。

野村先生は含水率は問題ではないとおっしゃっていましたが、私もそう思います。

この、3年、日に干して、軽くなった材料と、干していない材料(もちろん同じ佐藤さんから
譲ってもらったものです)そして、 燻煙熱処理していただいた材料を比べました。

もちろん、日に干してない材料がタッピングすると音も暗く、響きも悪く聞こえます。

日に干している材料と比べると、燻煙熱処理された材料のほうが、明るく、カンカンと鳴ります。
良い材料の音です。軽くて、強度があって、充分に乾燥された音です。

そして、もっとも大切なことが下図の A の所を持って、タッピングしても良く鳴るのです。
音は、冬目、年輪方向に走りますので、A の部分を持つと、振動が抑えられるので、普通は
鳴らないのです。

         
img684.jpg


B の所を持つと、振動を妨げられないので、一番よく鳴ります。

そして、C の場所を持っても、音が広がるのを邪魔しないので、表板は良く鳴ります。

良い材料で、完全に柾目に製材すると、年輪と直角方向に「斑」が出ますが、この斑がはっきり出て、
軽くて、良い材料だと、 A を持っても、鳴ることがあります。

ところが、 燻煙熱処理された材料だと、A の部分を持っても、C の部分を持っても同じように
鳴るのです。今まで、このような木は見たことがありません。

と言うことは、音が年輪方向だけでなく、直角方向にも広がっているということです。
板が、均質化されているのでしょう。

これが、実際の楽器に使うと、どのような結果になるか、楽しみです。

そして、木は南向きの斜面で生えている木は、使わないほうが良い、日が当たらない北斜面で、
長い年月をかけて大きくなった木が良いとされています。

それは、日が当たる場所では、どうしても木が日に当たろうとして、曲がるからです。
曲がると言うことは、ねじれて内部に歪が生じます。内部ストレスがあるのです。

今回、私は3年、日に干した材料と、燻煙熱処理された材料で、同じ設計で、2台ギターを作ります。
もちろん、木目や比重もほぼ同じ材料を使います。

裏板、横板の材料も大きめの材料から、切り出して設計の大きさにするのですが、今までは、
鋸で切っていくと、内部ストレスによって、鋸の刃が挟まれて、動きにくかったり、逆に切っていくと、
切っている所が広がったりすることが多かったのです。
今回も、40年近く寝かして、3年、日に干していたのですが、やはり内部ストレスによって、
鋸の刃が挟まれました。

でも、燻煙熱処理されたほうは、それが無く、スムーズに切ることが出来ました。
燻煙熱処理することによって、内部ストレスが無くなり、処理後の材の安定や、割れ歪が
無いと言う事は聞いていましたので、それを実感できました。

そして、強度が上がると聞いていますが、サンプルをとって実験はしていませんが、
スティフネスというあまりなじみの無い事で、強度が上がっているのを実感しました。
スティフネスというのは、剛性とか堅さとか言われますが、楽器の場合、材料や、
作りかけの表板や裏板を、両手で持って、ねじってこの剛性を見ます。

燻煙熱処理された、表板、裏板はとても剛性がスティフネスが上がっているのです。
実際に楽器にする場合は、このことも考慮に入れないといけません。

タッピングの話に戻りますが、材料を同じ条件にしようと、薄くしていくと、
A の部分を持っても、少しづつ鳴ってきます。
やはり、エッジは薄いほうが良いようです。

後、1ヶ月で2台ギターが出来上がる予定です。

日に干した材料のほうは、4月に作りましたので、予想は出来ますが、
燻煙熱処理された材料で作るのは、初めてです。
どんな音がしてくれるのか、今から楽しみです。





  1. 2012/06/20(水) 03:13:50|
  2. ギター
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経年変化での板厚の痩せかた

6月8日の ブログ 読み物 神様はつらいよ ② にコメントいただいたので、
楽器のコピーについては、コメントさせていただきましたが、経年変化の肉痩せについては
コメントさせていただいていませんでした。

私だけでは、このことについて考えてみることがなかったので、ブログで
コメントをいただいて、考えさせていただきました。
そして、コメントでなく新しくブログを書かせていただくことにしました。

100年、200年、300年と経った、楽器をコピーする時は、当然、経年変化で
肉厚は痩せていると思います。
では、どの程度痩せているのでしょうか?
あまり大きな数字ではないと思って、考えたこともなかったのですが。

手元の、木材工学辞典 で調べると、ドイツトウヒの(ヴァイオリンやギターの表板の
材料です)平均収縮率は 接線方向 0.32% 半径方向 0.16% とあります。

平均収縮率は この本では、含水率の減少と体積収縮率が比例関係にある範囲において、
含水率1%あたりの収縮率を言うそうです。でもこれでは、何のことか分かりにくいのですが、
とりあえず、伐採したての生木でもなく、また何百年も経って、含水率が一桁になっている
状態でなければ、含水率が1%変化したときの収縮率と考えてよさそうです。
切ったばかりの生木を寝かせて、空気中の水蒸気圧と含有水分が吸湿、乾燥を繰り返して
同じになることを、平衝含水率というそうです。この数字が、一般的な材木で10%から
15%と言われていますので、楽器に使う材料はこの程度で、作られていると思います。

そうすると、何百年も経った、楽器の木材では、含水率は何%くらいになっているのでしょうか?
これもあまりデータはないのですが、燻煙を実際にやっている、松下さんのデータでは、
何年も寝かせても、平衝含水率程度の、16%くらいだったのが、燻煙すると、6%くらいになると
言われていました。何百年も経った、経年変化と同じくらいの音の変化があるとおっしゃっていますので、
10%程度は、含水率が下がると考えてもよいでしょうか?

でもここでは、何%下がるかは、問題ではないので、燻煙での含水率の低下を参考にさせていただきました。

実際には、どの程度痩せるかですが、

含水率が 10%下がった場合で

楽器の表板の肉厚の変化は、楽器の場合柾目にとっているので、これは接線方向
(年輪に対してこう呼んでいますので)の変化ですから、含水率1% で 0.32%
です。含水率が10%下がると、収縮率は 3.2% でもこれは、体積での率なので、
厚みの場合は 1.055%となります。( 1.032の3分の1乗です。関数電卓で出すと、
1.010554869 です)
たとえば、ヴァイオリンの表板の分厚い部分で、5ミリとすると  

5ミリx 0.01055=0.053ミリ

このくらいでしたら、測定誤差ともいえるくらいの数字です。
また、10%も含水率が下がっている、楽器をコピーすることもあまりないかもしれませんし。

でも、この考えは私が考えたことですので、おかしいかもしれません。
間違っていましたら、また、コメントいただけますでしょうか。

ちなみに、収縮率は、年輪の接線方向に対して、年輪の半径方向、楽器だと表板の
収縮率は半分、年輪方向は10分の一といわれています。

感覚的には、反対のような気がしますが、すし桶とか、風呂桶は楽器と同じように
柾目に使っています。この方が収縮率が小さいので、理にかなっているようです。

野村先生の燻煙熱処理による、含水率の低下は聞いていないのですが、
比重は100年以上経った、ドイツ松でも軽くなっているそうです。
でも、寸法は同じだった、つまり収縮はしていなかったそうです。

楽器を作っていると、少し湿度が高くなるだけで、木は年輪方の直角方向にすぐ延びることを実感します。
これは、薄い表板などを、テーブルの上に置いておくと、テーブルに接したところは、
乾燥しないのに、上面は乾燥するので、簡単に反ってしまうことがよくあるからです。

逆の例が、私がやっているように、南向きの窓に、表板など薄い板を干していると、
太陽に当たったほうは、乾燥してすぐに反ります。
それが、何年も干していると、簡単に反ってはきません。
反ってしまったので、逆の日に当たっていないほうを日に当てても、曲がってこないのです。
同じように、経年変化で、100年ほど経った板は、同じようにテーブルの上に置いても、
湿度の影響は受けにくくなっています。

この湿度に簡単に影響される延び縮みと、何年、何百年とかかって乾燥する木の内部
の違いは何なんでしょうか?

こうなってくると、専門家の方の意見を聞いたほうがよさそうですが、少しだけ調べました。


木材辞典によると、収縮するのはミセル間に(ミセルとはセルロースの微細組織のことだそうです)
入っていた水(結合水)が蒸発する量だけ、ミセル間隔が狭くなり、収縮するのだそうです。

何年も日に干したり、何百年のあいだに、また、燻煙熱処理によって含水率が下がる。
比重が小さくなるのに体積は変わらないのは、細胞内腔に入っていた水(自由水)がなくなっても
収縮しないからなのだそうです。
木材辞典のたとえは、細胞壁の一番厚い二次壁中層を内層と外層とが、おけのたがのように
締め付けているので、中層が収縮しても内腔の大きさはほとんど変わらないのだそうです。

もっと、専門的に続きが書かれているのですが、木材の中の水に2種類あるので、(水が2種類の場所に
あるといったほうがよいでしょうか)この違いが起こるということのようです。

専門的な記述がなされている文章を、素人の私が読んで判断したことなので、違ったように
解釈しているかもしれません。
この方面に詳しい方がいらっしゃいましたら、なるべく分かりやすく教えていただくと
ありがたいのですが。

よろしくお願いします。

(一度あわてて 書かせていただいたのですが、中途半端でしたので書き加えさせていただきました)








  1. 2012/06/10(日) 19:31:03|
  2. ギター
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6月5日の 構造、設計⑩ アンダーバー、ブロックについての追加図面です

6月5日のブログを読み直してみると、文字ばかりで、数字ばかりが並んでいて、
感覚的に分かりにくいと思いますので、図面を追加します。

平面図は 私の楽器以外は、いずれも Master Making Guitars より取らせていただいています。

縮尺は 2分の1です。

まず、このアンダーブロック(エンドブロック)が小さいほうの ハウザーさんです

         img678.jpg
                            (60mmx10mm)
         

       

 次に ロマニロスさん

         img679.jpg 
                              (90mmx10mm)


       


       次に一般的な大きさと思われるブーシェさん。トーレスさんも同じくらいです。

       img680.jpg
                              (60mmx20mm)

 
       

        次は比較的大きな フレータさんです

      img681.jpg
                              (約60mmx30mm)


       



      最後に私のエンドブロックです。同じ縮尺です。


             img682.jpg
                               (55mmx5mm)


図面が手抜きですが、ライニングも小さいので、こんな図面になってしまいます。
そして、断面図です。縮尺は 1分の1 です。

もともと小さなブロックですが、一番上は、ライニングの大きさに合わせて、1.5ミリほど残して
削っています。

 img683.jpg


このくらいの大きさだと、ブリッジに振動が伝わり、表板を振動させたエネルギーを、
ブロックで止めてしまわない。と私は考えています。

エッジをフリーにして、基音をしっかり出す。特に低音域の基音は広い面積でないと、
出ませんから、表板の有効面積を増やしているのです。
そして、このエンドブロックはほぼ、ブリッジの真下というかブリッジの延長線上に
来ていますので、その大きさは重要だと思います。
でも、これは低音などは鳴らなくてよい、と考える製作家にとっては,どうでもよい事かも知れません。

  1. 2012/06/09(土) 00:01:42|
  2. ギター
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読み物 神様はつらいよ ② ギターの神様

ここの所、新しいギターの話や構造、設計の話ばかりが続いていますので、
このあたりで、読み物です。

と言っても、ギターのブログなので今回は、ギターの神様 トーレスさんのことです。
トーレスさんのことについては、もちろんロマニさんの本で、詳しく分かります。
いつ生まれたとか、どこで育ったとかは私のブログでは書きません。
そういうことはネットでも調べることが出来ますので。
主に彼が作ったギターと、現代のトーレスモデル、トーレスコピーと言われる楽器の違いの話しです。

 
トーレスさんは、ストラッドさんに比べると彼の楽器が後の時代に大きく改造されたりはしていませんが、
彼の考えていることを無視して、彼が作ったギターを復元、再現、コピーしたと言われているようです。
いわゆる、トーレスモデルと言われる楽器です。

トーレスモデルと銘うっていなくても、トーレスさんの考えで作っていると言う楽器でも、
トーレスさんの考えていることは守られていないようです。
(これから書かせていただくことは主にロマニロスさんのトーレスさんの本からと、
実際にトーレスさんの楽器を修理した製作家の方の話を基に書かせていただいています)

まず、ギターの表面版についてです

表面版の厚みは、ロマニさんの本によれば、サウンドホールの周りは2.5ミリ程度、
そして響板の周りは1.5ミリ程度だと書かれています。そしてその誤差は10分の数ミリだと。

でも、モダンギターの製作家で、このような表板の削り方をしている製作家はロマニさん
くらいかな?と思っています。
もちろん、全ての製作家のデータが分かっているわけではありませんし、
主に本から調べたものですから。
実際に弾いて見るとどんな削り方をしているかは大体分かりますので。

そして、ギターの表板の設計で、ひとつの考えとして、表板はほぼ厚みを一定にして、
バスバーで音を作っていくという作り方があるそうです。
いろんな考えで作れば良いとおもいますが、もっと先人の考えを取り入れても良いのでは?
と思います。

それと、一番不思議で、彼の考えが守られていないのが、今作られている楽器はほとんど全て、
例外なくブックマッチになっていることです。

ブックマッチとは同じ板から、作られたと言うか、一枚の板を割り開いて、
使っている左右同じ板を使っていることです。

トーレスさんはあまり良い板を手に入れられる環境に無かったから、
そうしなかっただけだと考えられているようです。

彼の楽器はほとんどブックマッチの楽器はありません。
現存している楽器では数台ではないかと思います。
そして、ブックマッチどころか、左右2枚で作られたギターでなく、
3枚4枚の表板を接ぎ合せて使っています。

良い材料が無かったということもあるのでしょうが、
彼は完全に柾目の良いところだけを使ってギターを作っているのです。

4枚接ぎという、現在作られているギターでは考えられないギターを彼は沢山作っています。
私もこの考えは大賛成ですし、今まで作ったギターの半分は、ブックマッチでもなく、4枚接ぎの楽器です。

それは、お前が良い材料を持っていないからだろうと言われそうですが、表板の材料は、
あまりこんなところで発表するものではないのですが、
30年以上乾燥させたとても良い材料を百台分以上は持っています。
でも、音のために4枚接ぎで作っているのです。


そして、次に横板の厚みです。

これもロマニさんの本によれば、材質に関係なくほとんど1ミリの厚さだということです。
これを守っている製作家もいないように思います。
バイブルのようになってしまった、「Making Master Guitars」でも、
245pに2ミリと書いていますし、
ネジメさんの本でも、58pに2ミリから2.2ミリ程度と書かれています。
最近は表板だけを鳴らそうと、もっと分厚い横板の楽器も出てきています。

私が知らないだけで、1ミリの横板で作っている製作家をどなたかご存知の方がいらっしゃったら、
教えていただけませんでしょうか?

では、トーレスさんのギターを基に作っている製作家はどうでしょうか?
古いところでは、元ギター文化館館長の(現アルカンヘル・フェルナンデスギター館館長)
細川鋼一氏の著書「ギターと名工達 1」にマヌエル・ラミレスがトーレスを研究したが、
トーレスのギターを大型化しマヌエル独自のスタイルでトーレスを超えようと、
音に迫力と深みを加えた。とあります。

最近では、現代ギター誌によると、テオドロ・ペレス氏は最初トーレスをコピーしてみたが、
やはり音量不足で設計を変え、音量不足その他を補ったとあります。

私はトーレスさんのコピー楽器は絶対に作りませんが、トーレスさんを神様扱いにするのなら、
トーレスさんの作った楽器をなぜ、そのままコピーしないのか。私には不思議です。

結局トーレスさんオリジナルの楽器は手に入らないから、トーレスモデル、
トーレスコピーとしていると言うと、売れるからでしょうか?と言うとは言い過ぎでしょうか?

トーレスさんの仕事として、大切な事はモダンギターのデザイン、形としてのデザイン、
を決めたことにあると思います。

それ以外は、ほとんどの人が無視している、表板の削りかた(厚みの取り方)
表板の使い方(ブックマッチを大切な事とせず、2枚接ぎにこだわらず、良い所だけを使うこと)
横板の厚み、などはトーレスさんの優れた所だと思います。

逆に ほとんどの人が採用していることですが、私が考える トーレスさんがやっていること、
考案した事で私がやりたくないこと、私は良くないと考えることは。

弦長を650ミリとした事。
ネックの継ぎ方を、スペイン式としたこと。
表板をドーム形状にしたこと。
大きなライニングにしたこと。
下部膨らみ部の2本の斜めバスバーを付けたこと。
ハーモニックバーをトンネル構造にしたこと。
たこ足(ファンブレース)に軸を設けた事。
ウエスト部分のカーブをきつくした事。
パフリング、バインディングを必ず付けたこと。 
ブリッジのウイング部分を大きくしたこと。
大きいエンドブロックを付けたこと。

他にも、裏板のカーブがきつい事や、アンダーバーを重い、大きな物にしていることなど、
小さなことはありますが、大体このようなところだと思います。

でも、これは、あくまで私が考えるギター、作りたいギターにとって良くないことなので、
トーレスさんの考えている事がいけないといっているのではありません
そこの所をよく理解していただきたいのです。

でも、私がトーレスさんの優れている所、見習いたいところは、無視されて、
私が見習いたくないところを、取り入れてモダンギターが作られているのは、
なぜなのでしょうね?


長文で、字ばっかりですみません。


  1. 2012/06/08(金) 00:25:45|
  2. ギター
  3. | コメント:2

構造、設計 ⑨-2 ブリッジについての追加です 

構造、設計 ⑨ ブリッジのところで、少し書き忘れていることがありますので、
ここで書かせていただきます。

それは、ブリッジの弦を留めている中央部でなく、よくウイングと呼ばれている
薄い部分です。

  img676.jpg

   この図で,B の部分です。

この場所は、音を伝える役目はほとんど無く、ブリッジが持ち上がるのを少し防ぐ役目が
あるかな?と思っている部分です。

ですから、デザイン上で必要な所以外はなるべく小さいほうが良いと思っています。

では、一般的にモダンスペインギターはどの程度の大きさなのでしょうか?

比較的この部分が小さい ロマニさんで A=87ミリ B=51.5ミリでBはAの59%
トーレスさんは A=82ミリ B=51.5ミリ 63.8%
ブーシェさんは A=81.5ミリ B=53.8ミリ 66%

ブーシェさんだと、両側のウイング部分を足すと,Aの107.5%になります。

それに対して、私の楽器は

        img672.jpg

のように、弦を留めている直線部分では A=86ミリ B=42ミリで 48.8%ですが
<>で書いている数字のように、弦の力を受け止めている、音を広げている部分で考えると
A=110ミリ B=30ミリですが、曲線になっているので、実際は27ミリと考えられます。
そうすると、このウイング部分は24.5%になります。そして、この部分の私の楽器は
ほとんどのモダンスペインギターが厚みを、4㎜にとっていますが、私は3ミリ程度です。
音を伝える部分は大きく、必要の無い部分は少なく、薄くしています。

これについては、ホセ・ラミレス 3世が作った10弦ギターでも、
同じような事を考えられているようです。

イエペスさんと一緒に作ったと言われる10弦ギターですが、
初期の頃はこのウイング部分が大きかったのが、
後になると、小さくなっているそうです。(私が直接測ったわけではありませんが、
調べた人いますので)

ただでさえ大きな、10弦ギターのブリッジですから、ウイング部分は小さいほうが
楽器は鳴ると思います。

でも、イエペスさんが考案した、この10弦ギターはネックがあまりにも大きく
まだモダンスペインギターの構造ですから、低音は鳴りません。
よく10弦が鳴らないという話を聞きますが、私が見た楽器では、8.9.10弦
が鳴っていない楽器が多く、よく鳴っている楽器でも、9,10弦が鳴っていませんでした。
これだけ、低音が鳴っていない楽器を作って、そしてそれを売って、またその鳴らない楽器を
使っている人がいるということを、不思議に思います。
でも、これはギターに限らず、チェンバロでも低音が全然鳴っていない楽器を使っている人も
沢山いますので、不思議な事ではないかもしれません。

話がそれましたが、では19世紀ギターではどのようなブリッジのスタイルだったのでしょう。

   img673.jpg
私の好きなパノルモさんのブリッジです。

   img675.jpg
   次は、ラコートさん

    img674.jpg
 
そして、ファブリカトーレさんです。
(出典は The Century That Shaped The Guitar James  Westbrook 著 です) 

それぞれデザインは違いますが、弦を留めている、音を伝えている部分以外は小さく作られています。

私もこの考えで作っています。デザインはモダンですが。

  1. 2012/06/05(火) 11:06:37|
  2. ギター
  3. | コメント:6

構造、設計  ⑩アンダーバーの形、ブロック材について

裏板のところでも書かせていただきましたが、裏板を曲げるのは(膨らませるのは)真っ
直ぐだと、凹んで見えるので、膨らませているだけです。(と私は考えています)
またその膨らませる量は、少ないほど楽器は鳴ります。
横板でカーブを緩やかにしているのと同じ理由です。
楽器をより鳴らせたい、そのためには余分なものは付けたくないと考えている、
私の考えるアンダーバーの形です。

           img671.jpg

材質は軽くて、強度のある松を使うのは、材料のところで書かせていただきました。

よく見る形は、下図のような形です。私には余分な部分が多いように思えます。

           img670.jpg
              Master Making Guitars 222p より

次にアンダーブロックまたはエンドブロック(ギター内部の一番下、お尻の部分のブロックです。
基本的には横板同士を接合するものですが、裏板と横板、表板を接着する目的もあります)
の大きさです。

比較的小さなブロックを採用している、製作家でも

ハウザーさん  幅 10ミリ   長さ 60ミリ
ロマニロスさん 幅 10ミリ   長さ 90ミリ

一般的な大きさの、ブーシェさんで 60x18ミリ、トーレスさんは 60x20ミリ、
大きいほうの、フレータさんなどは 60x30ミリもあります。

私は、幅 5ミリ 長さ 55ミリ で作っています。薄い部材なので、
どの方向にも力が働く、広葉樹の朴で作っています。
さらに、表面板に接しているところは、ほとんど、
表板にブロックが接していないくらいに削っています。
横板も鳴りますし、表板の振動を邪魔しないようにしているのです。

テオルボやアーチリュート、バロックギターのようにエンドピンを付けて、
帯やベルト、バンドで楽器を持ったとしても、これで充分構造的には持ちます。

リュートなどはもっと薄い部材、鉢巻のような薄い木で補強してあるだけです。
ヴァイオリンや、チェロはエンドピンを付けて弦の張力を受け持つ必要がありますが、
ギターはブリッジで弦のテンションを支えていますので、小さくて、薄くて充分です。

この薄い、エンドブロックにして、なおかつ表板に接触する所は、ほとんど削っているのには、
当然理由があります。

楽器製作で、材料を見るとき、また製作中の楽器や、板などを見るとき、
タッピングと言って、よく叩きます。指の腹であったり、指の代2関節で叩いたりします。

材料や作っている途中の板の厚みのチェックなどは、叩いて、音の延びや、
響き、当然音量とか、音質も見ます。
表板のところで書かせていただきましたが、音は基本的に、冬目で広がります。
そこで、表板の材料の時でも、表板を切り出して楽器の形になった、表板でも良いのですが、
アンダーブロック(エンドブロック)が大きい物と仮定して、しっかりと2センチほど左手で持って、
(ブロックの大きさくらいに)叩いてみると、音は保持している左手に邪魔されて、
ほとんど音は鳴りません。
ただ、叩いたところで、「ゴンゴン」と言ってるだけです。

これは、表板の振動が大きなブロックによって、止められている状況と同じだと思います。

でも、これを、ブロックが小さくて、ほとんど無いという状況と同じように、
少しの面積を左手で持つと、叩いても大きな音で、よく響きます。

楽器の場合、バスバーなどがありますので、単純には考えられませんが、
一番大切な表板が鳴るほうが良いと思われませんか?

少なくとも私はそう考えて、小さくしています。




  1. 2012/06/05(火) 02:15:38|
  2. ギター
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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