古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

新しいギター ③ ローズウッドを使ったことについて

新しいギターについて書かせていただいていますが、うっかりすると、
こんな良い楽器ができました、と言う自慢みたいになりかねないので、
そうならないように気をつけないといけないと思っています。
あくまで、このブログに書かせていただいたような事柄をもとに、ギターを実際に作った結果は
こうなりました、と言う客観的な報告にしないといけないと感じています。

14日の、札幌での催しについては、私のブログのリンク先に書かせていただいています。
今回のギターの依頼主の田中さんのブログ「やわらかな音と過ごす」に14日のブログに
詳しく書いていただいていますので(たくさんの写真もアップされています)この田中さんのブログも
ご覧ください。

ということで、裏板、横板のローズウッドについてですが、今まで私が作ってきたギターは、
19世紀ギターを使ってられるギタリストの方が、19世紀ギターでは、弾きにくい、音楽を
作りにくい、近代、現代の曲を弾くために注文されることが多かったのです。
それで、19世紀ギターの延長線上にある、楓のギターを選んでくださいました。

でも、今回注文してくださった、ギタリストの田中さんは、モダンスペインギターの数々の名器を
弾いてこられて、伝統的なモダンスペインギターではない方向の、モダンギターとして私のギターを
選んでくださいました。
そこで、メールで何回もやり取りして、ローズを使わせていただきました。それは、
音の密度、音の輪郭、音の響き等が演奏される目的に合っていると考えたのです。

あくまで、私の感想、感覚ですが、楓で作ると、ピアノ的、ハープ的な一般音楽に合った、
楽器が出来る。楽器本体は良く鳴ります。粘りのある音も出来ます。
一方、ローズだとギター音楽にあった楽器が出来るように感じていました。

モダンスペインギターの一番不思議なところが、横板だと以前にも書かせていただきましたが、
「Master Making Guitars]でも他のギター製作の本を見ても横板は2ミリと書かれています。
友人のブログを読ませていただくと、有名なギター製作家のロマニロスさんの講習会で
「横板は2ミリの指定」と書かれていました。
私なら、「なぜ2ミリにするのか?」と聞いたと思うのですが、他の部分のぺネオス(独立した
ライニング)についても、大小組み合わせなさい、という指示なのですが、その理由は説明されて
いないようです。

人には絶対に教えてもらわない、という考えの私ですから、講習会などにも参加はしないのですが、
もし参加をすれば、万が一参加すれば、なぜそうするのか?いちいち理由を聞いて、
それに対する自分の意見を言って、うるさがられる、嫌われる。そうして、それなら、講習会に
参加する意味がないから、と追い出される。
ということになりそうです。

でも、同じ音楽の土俵ですが、演奏の場合だと、(私の友人たちはそうですが)
レッスンを受ける音楽家が自分の意見、考えを持たず、先生の言うことだけを、学んで
帰るということは、ありえないと思うのですが。

少し話が横道にそれましたが、今回のギターは横板は約1.2ミリです。
楓のギターは、横板が1.5ミリ程度でしたから、比重の差と、硬さから1.2ミリにしました。
1.4ミリ、1.3ミリと削っていって、木の硬さとか、叩いて音の反応等を見ましたが、
1.3ミリでも少し厚く、楽器にすると鳴らない感じでした。

ましてや、2ミリというのは、考えられない数字です。

現代のギター製作家が神のように尊敬している、トーレスさんは材質の違いは無視して、
すべて横板は1.0ミリであったと、ロマニさんの本では書かれています。

では、いつ頃から2ミリの横板になったのでしょうか?
手元に、詳しく計測された、セゴビアさんが使っていた、マニエル・ラミレスさんとハウザー
さんの楽器の図面があります。それによると、ラミレスさんは 1.68ミリから2.00ミリ
ハウザーさんは1.8ミリから2.0ミリとなっています。
2ミリの横板を曲げて、波打ったところを削れば、このような数字になります。

それぞれ、1912年と1937年の楽器です。これ以前の楽器はどうだったのでしょう?
時代的には、トーレスさんより遅い、フランシスコ・ゴンザレスさんはトーレスさんとは違う
マドリッド派の作り方ですから、ビセンテ・アリアスさんの楽器の横板の厚みがわかれば
少しは、2ミリになったいきさつが分かるかもしれません。

あるいは、ロマニさんの本では木の密度に関係なく、トーレスさんの楽器はおよそ
1.0ミリとあるのが、当然すべての楽器の横板を測ったわけでもなく、
また、後期の大きくなった楽器の横板すべてがそうであったかどうかは、
疑問に思っても良いかもしれません。
ロマニさんの楽器の横板の厚みがどのくらいなのかも知らないので、わからないところ
なのですが、ロマニさんの楽器の横板の厚みが、1.0ミリだと、面白いのですが。

ネットで色んな、ギター製作に関するHPを見せていただくと、アマチュアの方なのですが、
ブーシェタイプのギターを作られた、製作記がありました。
とても、文章も面白いHPでした。
横板を曲げるところで、熱を加えて曲げても、「ばびょーん」
と板が戻ってしまうので、大変で、上下のブロックを付けて、少しは落ち着くが、
まだ、安心はできない、裏板、表板を付けてやっと、暴れるのを押さえ込んだような
文章でした。

他のアマチュアの方のブログを見せていただいても、かなり大規模な横板曲げ機や
曲げたあとの型枠等を作られているのを、不思議に見ていましたが、厚み2ミリだと
このような物が必要だろうな、と理解しました。

楽器でなく、丈夫な箱を作るのなら、2ミリでも良いと思いますが、楽器ですので
楽器が箱として鳴ってくれなくては、困ると考えると薄いほうが良いと思われませんか?

1.2ミリ、1.3ミリだと、簡単に曲がります。ということは、振動もしてくれると
言うことに繋がると思います。

ここで、また私の専門分野のガンバの話です。
ヴィオラ・ダ・ガンバのガンバはサッカーで有名になりましたが、「ガンバ大阪」のガンバと同じで
イタリア語の足、膝という意味です。小さな楽器でも足で挟んで(膝で挟んで)弾きます。

そうすると、良く鳴っている楽器は足に楽器の振動が伝わります。
あまり鳴っていない楽器は、当然横板は振動していないので、足には振動は
伝わってきません。
表板だけでなく、裏板も、横板も鳴っているガンバは良い楽器です。

(たまたま、4月22日に、アンサンブル・シュシュの演奏会がありました。メンバーの
ひとり、久保田さんが、リュートもガンバも作られているのですが、ギターの横板が
2ミリもあると話すと、1.6ミリほどのトレブルガンバの横板でも曲げるときに折れるから
2ミリもあったら、曲げるのは大変だな、と話されていました。ギター以外の製作家の
普通の反応だと思います。)


同じように、横板を1,2,1.3ミリで作ってるギターは、横板も振動しています。
今回の楽器もそうです。表板も、横板も、裏板も鳴ってくれています。

それは、私が作ったギターだからというのでなく、横板が1.2ミリ程度にすると
どんな楽器でも鳴ると思います。(ライニングやバスバーの問題はありますが)

逆に私の楽器を、他は同じ条件にして、横板だけを2ミリにすると、びっくりするほど
鳴らない楽器になると考えています。

裏板については、本に書かれたことから、考えるしかないのですが、あのハウザーさんの
楽器でも、2.4ミリから2.7ミリ。
アグアドさんで2.0ミリ、ブーシェさんで2.1ミリ、ロマニさんで2.0から2.3ミリ
と、ちょっと薄いかな?という程度で、これなら,鳴りそうな厚みに思えるのですが。

横板の2ミリ、面積も小さく、曲げて物凄く強度の出ている、横板に比べて、いくらアンダーバー
を付けても、裏板は薄すぎて、弱いように思います。それは、他の楽器、例えば、ヴァイオリンとかチェロ
ヴァイオラ・ダ・ガンバ等の楽器を作っているとそう感じます。

この他の楽器から見ると、アンバランスなところが、
モダンスペインギターの音を作っているのでしょうか?

また 長くなってしまいましたが、もう少し今回のギターについて書かせていただきますので
よろしくお願いします。 





  1. 2012/04/26(木) 02:30:53|
  2. ギター
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新しいギター ② 表板について

今回の楽器の表板は、35年以上寝かした材料(ドイツの佐藤さんから譲ってもらった物で、
実際はそれ以上寝かしていると思います)を使っています。

表板については、むしろこれが一般的だと思います。

今まで私が作ったギターは、普通ではない事なのですが、100年以上弾きこまれた
名器のピアノの響板を使っていることが多かったのです。
120年ほど前に作られたベヒシュタイインとか、ドイツで一番古いメーカーとされている
シードマイヤーの100年以上弾きこまれたピアノの響板とか。

これは、私が作ったギターは、一台目からいつも出来てすぐ、私が尊敬するギタリストの西垣正信さん
が演奏会で使ってくださいました。そして、その感想は「出来たばかりなのに、何十年か弾いているような
感じ。とても弾きやすい」と言ってくださいました。(表板は普通に30年ほど寝かした材料で、
この頃はまだ日に干していません)

使えるギターだから、プロが仕事として演奏する場で使っていただいたと思っています。

そして、西垣さんは私が沢山見てきた、オリジナルのパノルモのなかでも、
最高の(私は奇跡のパノルモと呼んでいます)パノルモや、ギターだけでなく楽器の中でも
最高の楽器と思っています、コッフのギターなどを使われています。

その西垣さんが「とても良く出来ている楽器です。でも、後、オリジナル楽器にあるような
妖艶さ というものが加われば、さらに良いのですが」と言われるのです。

でも、この妖艶さというのは、いくら頑張っても作れません。唯一、作る方法は100年以上
それも、上手な人に弾きこまれた、名器のピアノ響板を使うしかないと考えました。
名器でなければ、下手な人が使っていた可能性があります。また、年数がたっていても
使われていなかった可能性もあります。
その点、名器のピアノだと、物凄く値段も高い楽器ですし、下手な素人が弾いていないと考えたのです。

これは、ヴァイオリンの神様のところで書かせていただいたと思うのですが、
ストラッドが良い楽器になったのは、ストラッド自身の素晴らしい楽器とその楽器を弾き込んで来た、
ヴァイオリニストの両方の力だと思っています。

同じように、ピアノでも良いコンデション(湿度とかも)で弾きこんだ楽器の響板を使わせていただく
しか方法は無いと考えました。
トーレスさんの本を読んで、ゴメス・ラミレスさんが同じように、使い込まれたピアノの響板を
使っていたのを知る、3年ほど前の事です。

その結果は、出来たばかりで、100年以上弾きこんだ音がしましたし、妖艶さというものも出ました。

でも、今回はピアノの名器とそれらを弾き込んで来たピアニストの力を借りずに、作りました。
35年以上、日本の気候に慣らして、3年以上日に干したので、太陽の力は借りましたが。

ここで同じような、経験がありましたので、書かせていただきます。

10年近く前の事ですが、長く付き合せていただいている、プロのガンバ奏者からトレブルガンバ
の製作依頼がありました。最高の楽器を作ろうと、最高の材料を使って楽器を作りました。
その材料とは、35年ほど前に、「150年以上寝かせている、ヴァイオリンの表板があるが
買わないか?」という話があったのです。材質自体はそんなに良くは無いのですが、
鋸で切っていなくて、割った材料で100年以上は経っていると思い、かなり高かったのですが、
買いました。

その材料を使ったのです。

たまたま出来てすぐに、市の文化祭のような催しで、大きなホールで演奏をされました。
同じ頃、オリジナルのバスガンバを手に入れられたので、バスガンバはオリジナル、
トレブルガンバは私の新作でした。
私のガンバは、大きなホールの最後列でもとても大きな音で聞こえました。
やはり、150年以上は経っていたようです。

でも、この楽器でも出来てすぐに良く鳴っていましたが、弾きこまれた音はしていません。
150年は経っている音の立ち上がり、延達性はあるのですが。

こんな経験があって、古い名器のピアノ響板を使うことを考え付いたのです。
こんなことを考えるギター製作家はいないだろうと思っていたら、私の一番好きな
製作家のゴメス・ラミレスさんが同じ事を考えていたようです。

ゴメス・ラミレスさんはスペイン人ですが、パリでギターを作れらていて、20世紀はじめの
フランスの香りがする楽器を作られていました。
彼の楽器を好きになったのは、最も好きなギタリスト、イダ・プレスティさんが使っていたから
。そして、彼女の演奏も好きですが、LPで聞く彼女の音が好きだったのです。

彼女はご主人のラゴヤさんと同じように、ブーシェさんの楽器を使っていたと言われますが、
録音の音を聞くと、違うように感じます。私にはプレスティさんの音は、ゴメスさんの音のように
感じるのです。そして、その音が好きでした。芯のある、骨のあるというか、骨太い音で、
骨太い音楽、決してスペインの音でないその音、音楽が好きでした。

こんなことを感じたり、思ったりするのは、ギターと少し距離を置いて、そして仕事で
次々ギターを作らないといけない環境になかったからかもしれません。

古くからの、友人で有名なギター製作家は、何十年と材料を寝かせているのですが、
箪笥の中で、もちろん日にも当てず、工房の中で一番温度湿度の変化の無い所で、
室内の外気にも当てずに保管されていました。表板の変色などが無いように
考慮されていたようです。

私は、夏は暑く、梅雨は湿度が高く、冬は寒くて隙間風のあるような、日本の気候
そのものの場所に30年以上寝かせています。ヨーロッパの木が日本の気候に慣れる事が
一番大事だと考えていました。

今回の楽器は、ギターとして初めて北海道に行きます。
古いピアノの響板を使って、何かトラブルがあってもいけない、と考えたことも
考えのひとつですが、このブログで今までの考えをまとめさせていただいて、
自分の考え、設計で作るほうが、今の段階でベストではないかと思ったのです。

音のまろやかさ、音の霧のようなきめ細かさ、特に1弦開放弦の、音の丸さ、全弦全音が
きちっと鳴ってくれること等。そして、どんな小さな力で弾いても鳴ってくれること。
今回の紀伊国屋さんでの演奏も、田中さんは普段の3割程度の力で弾かれていたそうです。
そんなに大きなな会場ではないとは言え、大きな本屋さんの一角です。
結構雑音もするところで後ろで聞いていた人には充分音が届いていたようです。
むしろ、横で弾いている私には少し小さく感じました。

このギターは、私の考えが間違っていなかったことを実際の楽器で示してくれました。

でも、弾きこまれた音はしていません。これも、普通の楽器よりかなり早いスピードで
弾きこまれた音は、表板の質量、楽器の軽さ、反応の良さなどからしてくれると思っています。

表板についても、色々書かせていただきましたが、つくづく、私が今までギターだけを作って
来ていたら、こんなことは分からなかっただろうな?と思いました。

いろんな楽器を作ってきて、いろんな音楽を聴いてきて、沢山の音楽家と付き合せて頂いた
おかげだと思っています。

このブログを読んで下さっている、皆様のおかげでいろんな考えをまとめさせていただいています。
これからも、よろしくお願いします。











  1. 2012/04/19(木) 11:16:55|
  2. ギター
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新しいギター ① 木ペグについて

今回のギターで、一見して分かる、一般的なギターとの違う箇所です。

製作を依頼された、札幌のプロギタリスト 田中薫さんから、「軽く楽器が鳴るように
そして、楽器が鳴っているという感触が伝わるので、糸巻きを木ペグにして欲しい」と依頼がありました。

楽器として、木ペグのほうが優れていることは、明らかなので、一番の問題点、操作性さえ
解決できれば、採用したい方式と私も考えていました。後は、一般的でないので使っている人が、
何故「木ペグ使っているのですか?」とよく聞かれると思うので、
そのたびに答える必要があるということくらいが問題でしょうか?

操作性の問題もあって、田中さんには手元にあった、初心者用のリュートを使っていただいて、
実際に木ペグを使っていただきました。そして、その結果は調弦に問題はありません、ということでした
ので、いよいよ、木ペグ採用となりました。

よく調整された木ペグは、バロックリュートでは24本あっても問題なく調弦出来ています。
リュートの調弦が難しいといわれるのは、昔はガット弦で、少しの温度、湿度の変化に
影響を受けるので、難しかったのです。今は、普通にナイロン弦、フロロカーボン弦、
アキュラ社のナイルガットなどが使われているので、湿度の影響はほとんどありませんので、
調弦は楽になりました。

お勧めできない、私の実例ですが、リュートの演奏を頼まれて、練習する時間がなく
本番、ステージに立ってケースからリュートを取り出して、調弦も狂っていなかったので、
そのまま演奏したことが何度かありました。もちろん、何ヶ月もケースに入ったままです。
そういえば、今までほとんどステージ上で調弦したことがなかったですね。
今回の札幌でもそうでしたが。

あと問題となるのは、リュートに比べて弦のテンションが大きいので、どうかということですが、
もっとテンションの大きいバスガンバでも、何の問題もありません。
私自身、ガンバを沢山作っていますので、木ペグの調整は沢山やっています。
ギターのテンションだと、どの程度の摩擦にすれば良いのか分かっていますから、
問題はなさそうです。

もし、ギターがスチール弦を張っていれば、ギヤーの細かい調弦が出来るペグでないと、
難しいと思いますが、クラッシクギターなのでナイロン弦ですので、問題はありません。

話は変わりますが、今回 札幌でもう一人たずねたい方がいました。

かなり以前、アルペジオーネを弾きたいので
作りたいという方が、札幌にいらっしゃいました。
その作られた楽器を見せていただくのも、楽しみにしていました。

見せていただくと、とても良い楽器でした。
ですが、ガット弦はすぐに切れると言う事で、スチール弦を張ってられたのです。
実際に調弦すると、もちろん木ペグですので微調整が大変でした。
やはり、アジャスターが必要だな、と感じました。
なかなか、スチール弦のアルペジオーネを調弦する機会はないので、良い経験をさせていただきました。
(解決法として、ヴァイオリン用のアジャスターとか、代用弦の話はさせていただいていますので。)

ヴァイオリン属、ガンバ属と違って、片持ちの構造なので、最初は馴染みのよい柘植を考えていたのですが、
弦の支え、強度の点からローズウッドのペグにしました。本体もローズウッドなので、見た目にも合います。
(実はフラメンコ用の黒檀のペグも取り寄せていて、試したのですが、固くてもろい黒檀のペグでは、
しなやかで、バネのある私の楽器には合いませんでした)

ペグの直径も、かなり考えました。
細くすれば、微調整が可能なのですが、弦の支えが弱くなり、音も弱くなります。
約7ミリとしましたが、例えばこれを6ミリとすると(音的には限界だと思います)
6ミリだと、円周は18.84ミリ、7ミリだと21.98ミリ
沢山ですが、30分の一を回すと(角度にして12度)6ミリで0.628ミリ
7ミリで0.733ミリ その差、0.105ミリです。

この程度の差なら、音の事を考えて7ミリ程度が良いのでは?と考えました。


次に今でも、フラメンコギターなどは木ペグが使われますし、19世紀初頭の19世紀ギターでも
木ペグは使われていました。もちろん、ルネサンスギター、バロックギターは木ペグです。

そしてこれらの、配置を見ると例外なく下図の A のようになっています。

           img634.jpg

1弦、6弦は逆の方向に巻くか、無理やり同じ方向に巻いているのが、一般的です。

それを、C のように、1,6弦のペグを1ミリだけ外に、3,4弦のペグを1ミリだけ
内側にすると、同じ方向に回す事が出来、演奏会本番で間違う事が少なくなるのです。
そして、上から見た弦の角度もあまり変わりません。
もちろん、機械式の糸巻きに比べて、横から見た角度が変わらないのは、
以前のブログで書かせていただいたとおりです。

この事も、今回の楽器は1弦の開放弦から6弦の12フレットまでの、ほとんどの弦が同じように
鳴ることのひとつの原因ではないかと思います。

   UNI_0937.jpg

デザイン的な処理として、ネックに近いペグボックスは、かなり角を取って
上の部分が大きく見えるようにしています。

それとこれは、田中さんにお伝えしていなかったのですが、
ペグも、かなり改造しています。

  img637.jpg


左側の図のように、取り寄せたペグは、つまみの部分が狭く、厚いのでしっかり
つまむ事が出来ませんでした。
既製品のペグではよくある事なのですが、これでは調弦が大変です。
そこで、つまむ部分のアールを大きくして、つまむ場所を広げ、挟む部分も
薄くして、力が入るようにしました。
そして、角も取りすぎると、力が入らないので、残しているのですが、残り過ぎていると
手が痛いので、私の感触ですが、ちょうど良いように仕上げています。
また表面も、あまり磨くと、指がすべるので、すこし粗く仕上げています。
さらに、塗装も厚くすると、本番で汗をかいた時にすべるので、ほんの少しだけ
セラックニスで塗装しています。

このペグに関しては、普段ガンバやリュートでペグの調整している私でなければ
出来ないことだと思って、今までの経験を生かして、調整しました。

音がいいけど、弾きにくい楽器。
音はいいけど、壊れやすい楽器。

というのは、使うほうとしては安心して使えない代物です。

木ペグひとつにも、製作期間が短くても手間と時間をかけていますので。


     




  1. 2012/04/18(水) 01:16:42|
  2. ギター
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新しいギターが出来ました。

新しいギターが出来ました。

UNI_0935.jpg


UNI_0943.jpg


そして、札幌に持って行き、早速 4月14日のイベントで使っていただきました。
イベントも、札幌紀伊国屋さんの今までのイベントで最高の入場者だったそうです。
80席用意していて、100名程度のお客さんでした。それも、非常に熱心に聞いてくださる方ばかりでした。
終わってからも、沢山の人が楽器について、質問があったり、楽器を見てくださったりと、
遅くまで多くの皆さんが関心を持って残ってられました。
翌日の朝日新聞にも写真入で記事になっていました。

肝心の楽器ですが、詳しく報告させていただこうと思っています。

今回のギターは、今までと少し違う条件がありました。

まず、製作期間が2週間足らずだったこと。

そして、今までのギターをはるかに越える、良いギターを作ることが条件でした。

(この条件については、このようなブログを書かせていただいていて、お粗末な楽器を
作ることは出来ない、もしお粗末な楽器だったら、ブログを辞めないといけませんので)
また、今回の楽器を製作依頼された、ギタリストの方に、手元にあった以前作ったギターを、
とりあえず使っていただいていたのですが、その楽器よりはるかに良いギターを作りますから、
と約束していましたこともあって、必ず良い楽器を作ることが条件でした。

出来た楽器は、これらの条件を満たしていました。

まず、これまでに作った楽器と違う点、一般的なギターと違う点、を揚げさせていただきます。

① 糸巻きを木ペグにしたこと。
② 35年ほど前にドイツの佐藤一夫さんから分けていただいた、
 ドイツ松を3年ほど日に干してから使ったこと。
③今までは、楓の裏、横ネックで作ることが多かったのですが、今回はローズウッドに
ネックはセドロにしました。
④表面板のバスバーについて、このブログに書かせていただいたように、
ブリッジの転倒モ-メントに抵抗するような、ファンブレース(たこ足バスバー)にした事。

今までのギターはブリッジ周りで、2.7ミリ2.8ミリくらいでしたが、今回は2.3ミリ程度として
その代わり、振動を伝える役目の、ブリッジ下の3本のバスバーを幅3.5ミリ高さ8ミリ程度としたこと。
そして,ヴァイオリンやチェロのバスバーと同じように、端を浮かして、成型した後、接着してプレテンション
を与える構造にした事。もちろん、中央のバスバーは斜めです。
⑤ブリッジの形のさらに必要のない部分は小さくしました。
⑥フレットは樹脂フレットです。そして、フレッチングはナイトハルトの音律です。
⑦ペグボックスに近いほうのナットは、象牙でなく木(スネークウッド)です。
⑧表板のバインディング、裏板のパフリング、バインディングは使っていません。
⑨横板はローズウッドを使ったため、1.2ミリ程度としました。
⑩塗装その他
 
大体以上のようなことです。

ひとつ大事な事を忘れていました。
それは、裏板も少し厚くして、音の深みを増して、指板も少し厚くして音の支えをしっかりさせたのですが、
重さは私の家のキッチンスケールで測って990グラムでした。

少しだけ個別に説明させていだきます。

が、その前に何故2週間でギターを作らないといけなくなったのか、
また何故、その結果良い楽器が出来たのか?を、まず書かせていただきます。

本当はもう少し長い期間で作る予定でしたが、私のギターを北海道に届けるなら、
ちょうど本も出版された事だし(私も載せていただいている「一生つきあえる 木の家具と器」です)
札幌で講演とか何かイベントをしませんか?との事で、
イベントが先に決まって2週間ほどで作ることになったのです。

でも、私はこの2週間という条件を、絶対に失敗は出来ない。
手を抜いては今までの楽器をはるかに越えた、良いものが出来ない。

というプレッシャーとスリリングな状況を楽しみながら作りました。
これが、逆に集中して良い物を作ろうと頑張れたのかもしれません。

いつも、このような状況で作っていては疲れてしまい、良いものが作れないと思いますが、
今回は、今一番興味を持っているギターだから良かったと思っています。

沢山時間があるほうが良いものが出来るとは限りません。

時間が沢山あって、良いものが出来なければ、また作り直せば良い、と考えてしまうと、
その繰り返しになって、ずーーーっと 良いものが出来ないと考えてしまいます。

ということで、個別の事については次回以降書かせていただきますので、
よろしくお願いします。














  1. 2012/04/17(火) 00:41:50|
  2. ギター
  3. | コメント:0

出発です

もうすぐ、フェリーに乗るため出発します。
ギターは依頼者の方に渡してから、詳しく報告します。

17日までブログは更新出来ませんが、よろしくお願いします。
  1. 2012/04/11(水) 21:35:11|
  2. その他
  3. | コメント:0

お知らせ

また、宣伝で申し訳ないのですが、

4月15日(日) 午後6時から30分、TBS系列で放送されている番組、
「世界遺産」で私が一昨年作った、竹のパイプオルガンが紹介されるそうです。

「マカオから伝わった南蛮文化」 がこの15日の放送テーマなのですが、
マカオ経由で伝わった物の一つとして、パイプオルガンがあります。
私の作ったオルガンは400年以上も前に日本人が作ったであろうという
パイプオルガンを復元製作したものなので、
マカオから伝わった物ではないのですが、
紹介してくれるそうです。

何分?あるいは何秒か?分かりませんが、パイプが竹のオルガンが
出てくれば、それが私の作ったオルガンですので。

今年は、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラを作って、
ひょっとすると、バリトンとかアルペジオーネも作るかもしれません。

出来れば、また写真とともに紹介させていただきます。



  1. 2012/04/08(日) 22:46:21|
  2. その他
  3. | コメント:1

楽器の経年変化、弾きこみについて

コメントで、楽器の経年変化や、弾きこみについていただいたので、
少しだけ、私の考えを書かせていただきます。

楽器の経年変化ですが、私の若い頃から、ヴァイオリンや、ギターの表板に使われる、
ドイツ松は切ってから250年が最高の強度になり、その後250年かかって、
切ったときの強度に戻ると言われていました。

ちょうどそれは、ヴァイオリンの最も輝く年代とほぼ一致します。
今は、ストラッド、デル・ジュスが最高とされますが、19世紀の頃は
好みも違うのでしょうが、むしろシュタイナーのほうが高値だったようです。
そして、アマティもストラッド以上に人気があったようです。

それは、その楽器がちょうど250年を迎える頃に、もっとも評価が高くなるということで、
経年変化で表面板の木の強度がMAXになる時期に合っています。

40年ほど前ですが、大阪の楽器屋さんで、楽器関係の人間が集まって話していたことがあります。
その当時、ストラッドは1億を越えていましたが、デル・ジュスは2000万円から3000万円
だったと思います。
その時、一人の楽器屋さんが「もしお金があって、いまデル・ジュスを買っていたら、40年50年経つと
250年のピークが来るから、ストラッドよりもっと高く売れるかもしれない」という話が出ました。
確かに、今ではデル・ジュスは7億くらいはしているようです。

何故、このようなことを書くかといいますと、
前回のブログでさんざんストラッドの楽器が改造されたと書きました。
それは、弦長が伸びて、弦高が上がり、楽器に圧力がどんどん増えていったことになります。

ストラッドの楽器のひとつの幸運は、ドイツ松の経年変化によって木に強度が上がるにつれ、
楽器に対する圧力、が増えていったということです。

ですから、今ストラッドモデルで作っている人でも、ストラッドと同じ厚みで作ると、
木の経年変化による強度が出ていないので、壊れる事を心配して、
分厚い、重い楽器を作っているのだと思います。

ですから、これから何年、何百年持つ楽器を作るということでなければ、
古い家具とか、建具を探して、200年くらい経った、ドイツ松を探せば、
ストラッドを同じ厚みで楽器を作れるかもしれません。

特に、ストラッドは、冬目のしっかりした表板を好んで使っていました。
このことも、すでに250年は過ぎている、彼の楽器がまだ、充分
現役で使われる要素かもしれません。
アマティはストラッドと違って、細かい表板を好んだようです。

ちなみに、同じ楽器に使われる、楓は経年変化のピークが50年だという話を聞いたことがあります。
某有名ヴァイオリニストの持っている、ストラッドは表板がオリジナルで、横板は違うという話を
聞いたことがありますが、無理して経年変化のピークをはるかに過ぎた楓なら、オリジナルでなくても
良いのでは?と思ったことがあります。

経年変化といえば、日本の桧は世界的に見ても、脅威の木です。
日本の楓は、学者によって差はありますが、一般的に切ってから、200年から300年で強度の
ピークを迎えます。それは、切った時の強度の1.3倍から1.4倍の曲げ強度、圧縮強度になるそうです。
そして、1000年経って、切った時の強度に戻ると言われています。

ですから、法隆寺の五重の塔が存在するのです。
逆に欅は、切った時の強度は桧の2倍くらいあるのですが、200年から300年経つと
桧のほうが強度は上がるそうです。

次に弾きこみについてですが、私は弾きこみによって音は良くなると思っています。
それは、わずか1時間でも起きます。

40年以上も前の話ですが、私が習っていた植木先生はとても耳が良い先生で、
もちろん音も綺麗でした。
レッスンの時に、先生が使っているハウザー2世を私が借りて弾いて、
私の楽器を先生が弾くのです。
レッスンのわずか1時間で私の楽器の音はどんどん良くなっていくのです。
その代わり、私が弾いたハウザーは音がどんどん悪くなっていくのです。
それは、多分誰の耳にでも、その差が分かるほどだったと思います。

ストラッドのもうひとつの幸運は、名人が作った名器だったので、名手がストラッドの
楽器を弾き続けた事だと思います。

でも、たまにオークションでストラッドが売りに出て、落札後そんなに日が経たずに
その楽器が売りに出たことがあります。
それは、ストラッドでもあまり弾かれず、弾いてもそんなに上手な人が弾かなかった楽器
だったと思います。

管楽器でも、今から30年ほど前だったと思うのですが、フランスのお城でトラベルソの名器が
発見されたというニュースがありました。
でも、それらの楽器は全然使われた形跡がなかったそうです。そして、その音はつい最近作った楽器の音、
今作られている、コピー楽器の音と同じだったという話を聞きました。

ついでに、もうひとつフルートの話です。
よく、楽器の修理を頼まれる、(フルートの修理までしているのか!と言われそうですが、
木で作られたフルートの象牙部分の修理です)
オーケストラのフルート奏者で、19世紀初頭の 木管のフルートの名器
「ルイ・リオット」をモダンオケでも使っていて(1820年頃に A = 442.3 
のピッチも使われていて、当時の楽器そのままでオケで使えるのです)、
梅雨などでコンディションが悪い時は、
中学生が使うような、真鍮の安いフルートを使っているのです。
テクニックも音楽性も日本ではトップの人なので、横で純金のフルートとか使っていても、
安物フルートで充分勝っているのです。
これも、彼がこの安いフルートを吹き込んできたからだと思います。

ついでに、ギターの話です。

私が古いピアノの響板を使ったギターを、トーレスやらハウザーやロマニと言った名器を山ほど持っている
コレクターが弾いた時、「これだったら、トーレスはいらないな」と彼が言いました。

私は、皆さんがトーレスの音と思っている音は、半分以上経年変化で出来た音だと思っています。
作られた時は、今のような音は絶対していないはずです。
それは、150年経ったモダンギターはトーレスしかないので、それがトーレスの音なのか、
経年変化で引き込まれた音なのか分からないのです。ギターしか見ていない人にとっては。
でも、ヴァイオリンや数は少ないですが、ガンバなどで古い楽器を見ていると、
その音が、その楽器の音なのか、経年変化プラス弾き込まれた音なのか分かります。

ロマニさんがトーレスの本に書いている、ゴメス・ラミレスが古いピアノの響板を使った
数台のギター云々という話がありますが、日本にあるゴメス・ラミレスの楽器で明らかに、
この古いピアノ響板を使ったと思われる楽器があります。

弾いてみると、20世紀の音はしていませんでした。明らかに200年は経っている音でした。
(私はトーレスさんの本を読む以前から、古いピアノの響板でギターを作っていましたが。)

チェンバロという楽器は、演奏者に音が返ってこない構造の楽器なので、タッチの悪い
演奏者がいらっしゃいます。(ここだけの話ですが)
出来たときは、こんな音ではなかっただろうと行く楽器も良く見かけます。

良い音で、大きな音で楽器を弾いてください。
楽器を作る立場の人間としては、高く楽器を買ってくれる人より、
よく楽器を弾いてくれる人がうれしいのです。

ギターを作らないと、とあせっているので、思いつくままに書かせていただきました。
また時間を見つけて、この問題は書かせていただこうかな?と思っています。







  1. 2012/04/06(金) 22:05:26|
  2. ギター
  3. | コメント:0

読み物 < 神様はつらいよ > その① ヴァイオリンの神様

 このブログを読んでいただいているのは、ギター関係の方が多いと思います。

ヴァイオリンのことについてご存知のことも多いとは思いますが、
あまり知られていないヴァイオリンのことについて書かせていただきます。
それは、ヴァイオリンの神様とされている、ストラディバリさんのことです。

現在、私たちがストラディバリが作ったとされるヴァイオリンは
彼が作ったヴァイオリンとはかなり違っているのです。

(よくストラディバリウスと言われますが、これはラテン語読みで、
本名は アントニオ・ストラディバリです。
当時ラテン語で読むのがはやっていたようで、ストラディバリもそうしたようです。
そのほうがかっこ良かったのでしょう。)

彼が作っていたヴァイオリンは今で言う、バロックヴァイオリンです。
時代からいって、20世紀風のモダンヴァイオリンを作ったとは考えないほうが自然でしょう。

彼が作ったバロックヴァイオリンをどのようにして、
今彼が作ったとされるヴァイオリンに改造されたか、少し簡単に書いてみましょう。

まず、ストラッドさんが(ヴァイオリン関係者はストラディバリ、
ストラディバリウスと呼ぶのは、少し長いので よくストラッドと呼んでいますので、
これからはストラッドと呼ばせていただきます)作ったヴァイオリンをまず、
ネックをペグボックスの下で切って、新しく作った少し長いネックを取り付けます。
もちろんストラッドさんが作ったものではありません。
ネックを長くして、テンションを上げるためです。

さらにこれだけでは、足らずにネックの角度をつけて、
(そのためには、当然一度ネックを本体から外して、もう一度ネックを作り替えます)
表板にかかる圧力を増やしました。

そのために、駒は高くしないといけないので、当然ストラッドさんの作った駒は外して、
違う人が作った駒をつけます。

こうすると、表板にかかる圧力は大きくなり、表板が割れる恐れもあります。
そこで、バスバーを大きいものに替えます。ストラッドのものは、高さ6,7ミリです。
現在のバスバーは15ミリ程度とかなり高くなっています。
そして、幅も長さも大きくなっています。

そして、私もやっている、いも継ぎをやめ、ほぞを組んでネックを取り付けます。
そのためには、ストラッドさんが作った、ヴァイオリン本体にほぞを組むために、
ストラッドさんオリジナルのボディを切ってほぞの加工をします。

この状態でも、かなり楽器はストラッドさんが作った姿とは変わっています。

さらに、大きな見た目の変化があります。それは、指板が長くなったのです。
バロック時代はそんなにハイポジションは使いませんでしたが、時代が進むにつれて、
ヴァイオリンのテクニックも進んで、ハイポジションを使うようになると,
指板が短いと音が足りないので、長くなりました。

そして、弦が20世紀半ばに弦がガットから、スティールに代わったことから、
指板が軽いものから、ムクの黒檀になりました。
これは、見た目は変わらないのですが、楽器に与える影響はとても大きいものでした。
特にテンションはものすごく上がりました。

また、スティール弦を支えるために、テルピース(弦を留めている、
三味線の撥のような形をしたものです)が黒檀に、また形も変わり、
スティール弦は調整が微妙なので、アジャスターが付けられました。
また、もうひとつ、見た目にとても変わる大きなものがヴァイオリンに付きます。
それは、顎当て、そして肩当です。

肩当は使っていない人もいると思いますが、
顎当てはモダンヴァイオリンだと使っていない人はいません。

改造、修理のたびに何度も塗装は塗り替えられたり、上から塗り足したりされています。
現在、ストラッド、ガルネリクラスの楽器で、オリジナルの塗装が残っている楽器は、
大阪音大音楽博物館のガルネリが作ったピッコロヴァイオリンだけです。
(ピッコロヴァイオリンは後の時代には使われなかったので、そのまま残りました。
同じ大阪音大楽器博物館のストラッドのピッコロヴァイオリンは
モダン分数ヴァイオリンに改造されています。もちろんニスはオリジナルではありません。

今ヴァイオリンを作っている人は、ストラッド本人が作った楽器を散々、
後の時代に改造された慣れの果ての楽器を、ストラッドが作った楽器として、
その形で作っているのです。

最近だと、バロック音楽の演奏会も多く開かれます。
当時のオリジナルの楽器を使った演奏会、またそれのコピー楽器を使った演奏会も多くなりました。
ストラッドさんが作ったヴァイオリンを見ようと思えば、そんな演奏会に行くと見ることが出来ます。


長々と書いてしまって、分かりにくくなってしまいました。
ギターに置き換えると、分かりやすいかな?と思って、ギターに置き換えて書いてみました。

貴重な トーレスさんの楽器をまず音を大きくするために、ネックを切って、
新しく作ったネックで、弦長を伸ばします。
さらに、ネックの角度を付け音を大きくするために、駒も高くします。
当然トーレスさんが作った駒は、取り外します。

こうすると、表板がもたないので、バスバーを大きく長いものに取り替えます。
そして、指板を長くします。

極めつけは、弦をガット弦から(ナイロン弦から)スティール弦に替えられていることです。
さらに、演奏しやすくするために、ギターレストのようなものをギター本体に取り付けます。
このギターレストのようなものが取り付いた状態の楽器を、
トーレスさんが作ったギターだと言っているようなものです。
もちろん、何度も塗装は塗り替えられています。 

実際のストラッドさんのヴァイオリンはもっと改造されていますが。
なぜ、このように改造されまくって、形も変えられた楽器が神様ストラッドさんが
作った楽器と世間では言われているのでしょうか?

それは、狭いヴァイオリンの世界、それもモダンヴァイオリンしかないと思っている
ヴァイオリン専門家が多いからでしょうか。

ヴァイオリンに付いては本当に沢山の本が出版されています。
これらの本のほとんどが、改造された現在の形のヴァイオリンを
ストラッドが作ったヴァイオリンとして書かれています。

少しは後の時代に改造されたと書かれてはいますが、あまり改造については触れていないようです。
そして、300年ほど前にヴァイオリンが生まれてから、
その姿を変えていない唯一の楽器だと説明されています。

現存している最古のヴァイオリンは1564年に作られた、ニコロ・アマティのものです。
450年ほど前のものです。

そして、ヴァイオリンはそれまで無かった姿の楽器が突如完璧な姿で現れたと表現されています。
でも、それまでにリラ・ダ・ブラチォやフイーデルなど、ヴァイオリンに繋がるデザインの楽器はありました。

これらの楽器が少しずつ形を変え、ヴァイオリンの形になったと思います。
モダンヴァイオリンの専門家は、中世、ルネサンスの時代の楽器は興味がないのでしょう。
私にはこのヴァイオリンが生まれた頃の楽器、またストラッドが作ったオリジナルの形のほうが
はるかに美しく見えます。今のモダンヴァイオリンはどう見ても美しく見えません。

神様と奉って、本当は大事にされていないので、
「神様はつらいよ」とタイトルを付けさせていただきました。
次は、ギターの神様トーレスさんの話です。


  1. 2012/04/04(水) 22:57:59|
  2. ギター
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プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

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