古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

やっと、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラが出来ました。

やっと、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラが出来ました。
日曜日に、名古屋まで届けました。
写真を撮るのを忘れていましたが、姿、形は10分の1のチェロそのものです。
今回の楽器は5弦でしたが、見た目は分数チェロです。
この小さな楽器で、本来の CC の音を出すのが、一番苦労した所ですが、
思ったような音は出てくれました。

今まで、新しい楽器を作っても、初めての楽器でも試作品は作ったことがなかったのです。
今回のスパッラも、初めて作る楽器で、使える物を、良いものを作りたいと、思い作り始めました。
設計もそうですが、材料、削り方、厚みいろんな要素を、これまで作った楽器から得た知識で作りました。
ですから、考えて削って、削ってから考えて、組み立てる前にまた考えて、組み立てた後も考えて、
今、出来る限りの事をやろうとしました。
塗装も、一般的なヴァイオリン的にやっていたのですが、塗り重ねる回数が、20回を越えたころから
楽器が鳴らなくなってきて、後10回重ねれば、さらに鳴らなくなると思い、塗装を全部はがして
やり換えた事もありました。組み立ててから、さらに音を聞きながら、削ったりと。

でも、このスパッラを作っていて思ったことがあります。
スパッラは、チェロのように表板、裏板は横板から少し出ているのですが、
その分、ガンバや、ギターのようには、簡単に作業が出来ず、結構手間をかけました。
でも、この手間が、何十年か、何百年か経って、修理をする時は表板なり裏板なりを外して修理しても、
少しくらいなら、横板とずれても、気にならないようにしてくれるのです。

その点、ギターは作るのは、パフリングやバインディングはありますが、そんなに手間をかけずに
作れます。でも、いざ修理となるとバインディングやパフリングが邪魔になってとても手間がかかります。
ですから、私は見た目の、パフリングは付けていますが、バインディングは付けていません。
ギターを作っている人、使う人はバインディングがあるのが当たり前と思っているようですが、
ないほうが良いとは思いませんか?(私は裏板にはパフリングも付けていませんが)

それと、一昨日若い人たちの演奏会がありました。
モダン楽器でのバロックの演奏会です。
そこで、気が付いた事、(普段思っていること名のですが)ありました。
最近のヴァイリンやチェロの調整の事です。

ここ10年くらいの流行なのでしょうが、魂柱と駒がとても近く調整されているのです。
その結果、楽器は鳴っていなくて、倍音の多い、溶け合わない音。
溶け合わないから、聞こえてくるのですがまるで、ハーモニカやソプラノサックスのような、
チェロの音がするのです。
何故このような、調整にするのか、聞いたことがあるのですが、「この方が、演奏者が良いというから」
「最近は、皆こうしているから」という返事。
演奏会で聞けば、良くないというのが判ると思うのですが、調整を仕事としている人達には、
それぞれの、その世界の常識があるのでしょう。

その世界に、どっぷりはまってしまうと、見えないことが沢山あるということを、再確認
させてくれました。


  1. 2012/03/29(木) 15:55:22|
  2. その他
  3. | コメント:2

構造設計 ⑧ ヘッドの大きさ、形、角度など


ヘッドデザインはギター製作家のこだわりの箇所のひとつだと思います。
形については、好みもあって、音にも関係があまり無いので問題は無いと思います。
ここで問題にしたいのは、その大きさです。(と言いながら、少しは関係があるようです。
三味線はヘッドの部分から多くの音が出ると言われていますが、実感はあまり無く、
むしろ形によって音色が違うほうが実感できます。
ギターではスペインギターでよく見かけるとがったデザインはとがった音がするように感じます。
ブーシェさんのデザインだと、とがった音は出ないように思います。
ブーシェさんは音色を考えてあのデザインにしたのかな?と思うことがありました)

特に私の作る楽器はほとんど、1050グラムから1100グラムで作っています。
(一般的なモダンスペインギターは1500グラム程度です)
ヘッドを大きくするとバランスが悪くなって持ちにくいだけでなく、楽器本体も鳴りません。

19世紀ギターのパノルモのヘッドデザインは、余分な部分が無く、好きなデザインです。
でも、このデザインをモダンギターに使うと、イメージが合わないので
(19世紀ギター、それもパノルモのイメージになってしまいます)
私はなるべく小さく出来るデザインで作っています。そして、全体のバランスを取るようにしています。

私のことはさておいて、ここでまた、ギター以外の楽器、ガンバの話をさせていただきます。
ガンバは一般的にスクロール(ヘッドの渦巻き部分です)をオープンスクロールと言って、
渦巻き部分をくり抜いています。

                img621.jpg


一方、ヴァイオリン属の楽器はクローズドスクロールと言って、くり抜いてはいません。
ガンバのほうが軽く、響きのある音を出したいので、オープンスクロールにしています。
どの程度、オープンとクローズとの差があるかというと、そんなには無いのですが、
音色、響きはオープンのほうがガンバには合っているようです。

ガンバも、ヘッド部分もライオンヘッド(ライオンの頭を彫っています)とか人物の頭
(女性が多いです)を彫ったものがあります。これはスクロールに比べて
マッシブなので、音質はしっかりします。
製作依頼された方の好みで頭を彫ることもありますが、
大きさによって音色をコントロールすることあります。
(軽く響きのある楽器には小さめの、しっかりした音で作りたいときは大きめにします)

ギターも本来の設計、製作法にあった大きさのヘッドにするのが良いと考えます。
デザインを重視して、楽器本体とヘッドが合っていないような楽器も見かけます。
(音の面からです)

また、私の場合ですが、私の楽器は本体がとても軽いために、ヘッドもなるべく質量を落として、
見た目も貧弱にならない様にデザインを考えています。
そのために、下図のように外側のラインが曲線なので、ペグの入る、内側は直線にしています。
この方が、質量的に落とせて、デザイン的にも納まるのです。

               img620.jpg

ここでも、モダンギターの不思議のひとつですが、この内側が直線の楽器はほとんどありません。
ギター製作の本で、まずドリルでこの部分をくり抜くことが、書いてあるのが、
そうさせているのでしょうか?
私の知る限りではジョン・ギルバートさんの楽器だけくらいです。

次に、ヘッドの角度です。

ギターはもともと、ルネサンスギター、バロックギター、そして19世紀ギターの初期までは、
機械式のギアーでなく、ヴァイオリンや、フラメンコギターのようにペグが使われていました。
このペグ方式だと、ヘッドの上の部分に弦が載ります。今使われている、機械式の糸巻きに比べて、
弦が折れ曲がる角度が緩やかです。そして、ほとんどの弦の角度が同じです
多くのギターを比べてみると、この19世紀ギターまでのヘッドの角度とそんなに違いがなく、
モダンギターでもほぼ同じ角度のようです。(トーレスさんが同じ15度です)
ということで、私がここで問題にしたいのは、1弦の弦の角度と,3弦の角度の違いです。
弦の張りのきつい1弦が最も角度がきつく、張りのゆるい3弦の角度がゆるいのです。
            img633.jpg



なぜ、ここでこれを問題にするかと言うと、チェンバロで同じようなことがあるからです。
下図の様な、2種類のようなことが、3弦と1弦で起こっています。
               img618.jpg



ブリッジでなく、ただ、単に弦を留めているナット部分なのですが、
A のように、弦の角度が付いていない状態で、音がはっきりしていない、
なんとなく鳴っていない場合は、B のように角度を付けると、音に張りが出て、少しはっきりします。

同じようなことがギターでも、言えると思います。
もともと、ギターの弦はどのメーカーの弦でも、1弦のテンションがきつく、
3弦がゆるく作られているようです。

参考にダダリオの弦のテンションを書いておきます。(プロアルテ コンポジット ハード)
1弦 7.8kg
2弦 6.0kg
3弦 6.2kg
4弦 8.1kg
5弦 7.6kg
6弦 7.5kg

そして、私のギターの弦の角度は上の図で書いたように
1弦、6弦 25度
3弦、4弦 16度
です。

その結果、どの楽器を弾いても、1弦の張りがきつく、音もきつく、
3弦の張りが弱くてて音にも張りが無いように思います。
(楽器が鳴っている、とか鳴ってないの問題でなく)
特に3弦の7フレットから上のハイポジションではっきりした音で鳴っている楽器、
1弦、2弦と音色のあまり違わない楽器はあまり見たことが見たことがありません。

これを解決する方法のヒントがチェンバロでの場合にあります。
(もちろん、完全に解決するわけではありませんが)

それは、下図のように1弦と3弦を張り替えることです
お金もかからず、少しの手間で結果が分かります。
            
                  img623.jpg
   

楽器にもよりますが、私が試した楽器では、1弦の張りが緩やかになり、
音が延びるように感じました。そして、3弦の音が少しはっきりします。
そして弾いた手ごたえが増えるように感じます。今まで、試した楽器では全て良い結果でした。

でも、あまり良い楽器ではなく、3弦はかなり使い物にならない楽器が
良くなると言うことではないのかな?
とも思っていましたが、今回、九州でとても良い楽器で試させていただきました。
1弦は少し硬めで、3弦は少しボリュームは小さいのですが、比較的音色はしっかりした、
ドイツの名器です。この楽器の1弦、3弦を張り替えると、明らかに1弦の硬さが取れ、
音が延びて歌うようになり、3弦は音がはっきりして、ボリュームもアップしました。
何より、1弦、2弦、3弦の音色の違いがかなり無くなったのです。
良くない楽器も、良い楽器も良い結果が出ることが分かりました。

慣れるのに時間がかかるかもしれませんが、4,5,6弦と同じ配置なので、
慣れれば、使い勝手は良いと思います。
4,5,6弦は弦のテンションと角度がよい方向なので通常の張り方で良いわけです。

(試していただいた楽器にはなれるまで、つまみの部分に1弦、3弦と
書いたこと紙を貼ったこともありました。)

そして、今、九州にオペラの仕事で来ていますが、福岡にギターの専門店があり、
沢山のギターを見せていただきました。百万とか、うん百万とかの楽器も。
でもそのほとんどの楽器が、1弦と2弦3弦の音色の違い、響きの違うものでした。
ギターはそんなもの、と言うことで作っているのでしょうか?と思うほど。

でも、これでは、例えば1弦の開放弦のミから2弦6フレットのファに移ったときに音色の違いから、
音楽が繋がりません。まして、3弦の10フレットなどに移ると、もう不可能です。
(今までも幾つかの楽器はそこを考えて作っている楽器も見ました。
一台は岡本一郎先生のブーシェさんのギターです。1弦の開放弦のミも、
2弦5フレットのミも3弦9フレットのミもほとんど同じ音です。
岡本先生はどのポジション同じ音が出るから、とても音楽を作りやすいと話されていました。
残念ながら私が見たほかのブーシェさんの楽器はそうではありませんでしたが。)

笑い話のようですが、今まで同じようなことを山ほど経験してきました。
それは、「何を考えてこうしているの?作っているの?」と聞くと、
「何も考えていません」いう答えが返ってきたことを。
また、話がそれたようです。すみません。

今まで、1弦と3弦を逆に張っている楽器は見たことがありませんが、費用もかかりませんし、
一度試していただいても良いのでは?と思っています。

でも、私の楽器はそうしてはいません。
私の楽器は、そうしなくても、1弦2弦3弦の音色、響きが違わないように作っているから、
と言うこともあるのですが、1弦3弦を逆に張っていると、
「逆に張っているから、そんな音がする」と言われないように、同じ条件にしています。

同じようなことが、以前作った10弦ギターでもありました。
7弦まで、指板の上に載せて、8,9,10弦は番外線にしています。
その番外弦の糸巻きは重い機械式にしています。

これをバンジョーやウクレレのネジで調整の出来るペグや、
ヴァイオリンのペグのような軽いものにすれば、私の楽器は本体がかなり軽いので、
さらに鳴ることは分かっていました。
でも、条件の悪い重い機械式にしても楽器が鳴ることを見てもらいたいと考えたのです。

本体だと、およそ500グラムの違いがあります。
(一般的な楽器は1500グラム。私の楽器は1000グラム)
この軽いボディだと、普通のギターに比べて重い機械式のギアーを付けるとかなり不利になります。

そんなことをせずに、軽いペグをつけて鳴るように作ったほうが、楽で普通なのですが。
でも、わざわざそんな不利な条件で作っていると、思ってくれる方はなかなかいないだろうな、
と思いながら作ってました。



  1. 2012/03/19(月) 01:06:10|
  2. ギター
  3. | コメント:2

お知らせ、お礼その他

やっと、長いツアーから帰ってきました。
普通のブログでしたら、ここでいろいろオペラの事、
スタッフの事など書かせていただくのでしょうが、
とりあえず、錦織健さんが元気だった事、ギターが上手だったことくらいで、
お茶を濁していて、また何か関連する事が出てきましたら、話させていただきます。

CABOTIN さんにコメントをいただいてありがとうございました。
私は長い間、ギターには岡目八目の関係で、外から見ていました。
外から見ないと分からない事、中に入ってしまうと周りが見えなくなってしまう事など。
でも、CABOTINさんはギターの中でしっかり見てこられたので、コメントありがたいです。
ギター以外のことも物凄くご存知で、ギターを見てられるので、また、コメントよろしくお願いします。

コメントのトルナボスについてですが、自分ではもちろん作ったことはありませんので、
数人の日本の方が作られた楽器を見ての、弾いての感想から書かせていただいたことです。
CABOTIN さんのように良いトルナボスを見てこられた方の感想、意見はありがたいです。

そして、沢山のトルナボスを見てこられたCABOTIN の群遅延という言葉、感覚的には分かります。
単純にバスレフで片付けましたが、当然楽器とスピーカーとは違うので、ヴォルフの遅れが
トルナボスのイメージかな?思ったりします。あまり良くないトルナボスは、逆にヴォルフを
作ってしまっているような感じも受けました。楽器製作家が,それを無くそうとしてして必死になっている
ヴォルフを発生させている、トルナボスはいらないのでは?と思ったりしていました。
小型の分数ギターには良い、効果的なトルナボスは必要なので、
また実際に作って報告させていただきます。

隙間のフィルターという考えも、低音ほど音に指向性が無いので、群遅延という考えと合わせると、
これも実際に試してみようと思います。

サウンドホール周りの話も、私はあまり重要でないと考えていました。
でも、端での倍音の処理が、しっかりしたトルナボスを付けることによって、
改善されるかな?とも考えたりしました。

よくチェンバロやヴァージナルのサウンドホールの役目を聞かれます。
リュートのように、ロゼッタがあるのが普通ですが、このロゼッタから音が出ているように、
聞かれますが、大きな表面板で鳴っていますので、ロゼッタから音は出ていません。と答えています。
その役目は、装飾と、なかには、鋳物でこのロゼッタを作る場合もあります。
この場合は、ここに重さを加えて、鳴らないようにして、ブリッジ周りを鳴らしている事もあります。
後は、フリーになっている、サウンドホールの強化でしょうか。
これが、トルナボスの役目に近いと考える面もあるようです。

ネックのロッドについても、こんな話もあります。

20年ほど前に作ったフォルテ・ピアノでミュートのようなストップを付けたとき、
4ミリほどのブラスロッドをストップに付けました。
そうすると、ロッド周りの3音ほどがどうしても、金属的な音がするのです。
そこで、ロッドを木に換えました。
そうすると、金属的な音は無くなりました。

必要が無ければ、アコースティックな楽器には金属は使わないほうが良いと思いました。

ネックの中に入ってしまうロッドですが、それが入った楽器の音がよければ良いのですが。


それと、肝心のお知らせです。

4月14日のチラシです。


                3.jpg

北海道で遠いのですが、北海道の方はいかがでしょうか?
トレブルガンバとリュートを弾きますので。

著者の西川さんが木育という活動もされています。
そちらの案内です。
http://www.mokuiku.net/4_katsudou/4_katsudou_new.htm

また、次回は本題に戻って、ヘッドについて書かせていただきます。






  1. 2012/03/17(土) 18:44:34|
  2. その他
  3. | コメント:2

ヴィオラ・ダ・ガンバ フェスタのお知らせ

かなり日が迫っていますが、ヴィオラ・ダ・ガンバ フェスタ が3月31日に行われます。

       img616.jpg
       img617.jpg


神戸の東灘にある、御影公会堂で開かれます。 

今回はコンソート、ガンバの合奏を楽しみましょう!という企画です。

楽器の展示や、演奏する人だけでなく、聞くだけの方も大歓迎ですので。


それと、明日早くから、錦織健さんプロデュースのオペラの仕事で、10日足らず
広島、山口、九州に行きます。ついでに楽器のメンテナンスで 九州を回ってきますので、
ブログを10日ほど更新できません。

よろしくお願いします。 
  1. 2012/03/08(木) 11:50:35|
  2. 演奏会
  3. | コメント:1

ネックについて、その3 そしてその他

ネックについて,DOLPHYさんのコメントいただきました。

よく、音楽関係、楽器関係の本を読んでいると、本を書くほどですから、その分野では詳しい方
なのですが、少し自分の専門分野から外れると、かなり間違った事を書かれていることを目にします。
私も、気をつけないといけないな、と思っています。

ギターについても、クラッシクギターについて、いろいろ関心を持って、調べたり、
作ったりしてきましたが、アコースティックギターや、エレキギターの事はそんなに、
知識はありません。
クラッシクギターに繫がると思い、調べたりしますが、充分でない場合もあります。
また、間違った事を書くこともあると思います。
そんな時は、ご存知の方は教えていただくと、ありがたく思います。

ただ、2チャンネルのように、自分の考え、主張だけを、押し付けてこられるのは、困りますが。
幸い、このブログではそんな方は、いらっしゃらないし、私も自分の考えは書かせていただきますが、
それを、どう考えるかは、お読みいただく皆さんのほうですので。

また、一方的に私の考えを、発表して、分からない事があれば、これもまた、一方的に
お答えするという形だと、なんか学校の授業のようです。
皆さんのお考えを聞かせていただくと、さらに良いブログ、良いギターについての考えが
まとまりそうです。よろしくお願いします。

ということで、コメント内容から、思いっきりずれてしまいましたが、

ギターネックのロッドについてです。
ギターメーカー『タカミネ』のクラッシクギターにロッドが入っているとのことですが、
私などは、昔「現代ギター」の広告で、タカミネのギターを知っているくらいで、実際に見たことは
ないのですが、タカミネはそのほとんどが、アコースティックギターかエレアコを作っている会社
なので、クラッシクギターにもロッドを入れているのではないでしょうか。
当然、ロッドを入れたアコースティックギターの優れている点は知っているから、他のメーカー
でやっていなくても、やっていると思います。

音の事を考えているか?と言うと、これは考え方によるかと、思います。

私は比較的しっかりした、ネック材を使います。
近くて素晴らしいギターを作っている、友人は軽い材を使い、バランスだけでなく
音の点からも、彼の作るギターの完成形を目指しています。

軽いネックを使いたい製作家、またそのような楽器を演奏したい、演奏家にはロッドは、
使いたくないと考えると思います。

ネックに密度のあるものをもとめて、音に密度を出そうとしている人には良いかもしれません。

DOLPHYさんも、ギターだけを弾いてきて、ギターを作りたいと思った方でなく、チェロも
ベースも弾かれるという事で、面白い、音楽的なギターを作られると思います。
また、そのような方だから、私のブログを読んでいただいていると思っているのですが。

チェロや、特にコントラバスについては、ガンバ属のコントラバスが、ヴァイオリン属の
オーケストラやアンサンブルで使われているので、色々面白い話もありますので、
また、ギターに関連することが在れば、書かせていただきます。

とまた、横道にそれましたが、ただアルミが芯に入っているだけでは、あまり意味が無いように
思います。

ラミレスあたりが始めた、ネックに黒檀を挟む方法は、ただ黒檀が固いから、補強用に
黒檀を挟み込んだというより、バイメタルで反る事を、防ごうと思ったからでは、
ないかと思います。その点では、優れた考えだと思います。
ただ、これを模倣して、細い黒檀を何本か入れている楽器を見ますが、これはデザイン的な
要素が強いように思います。

ロッドだけでなく、19世紀ギターのシュタウファーや、モダンギターのスモールマン
のように、ネックの取り付け角度が調整できるだけでも、充分ではないかと思います。

シュランメルンで使われる、コントラギターは15弦以上もある楽器ですが、ネジ一本で
ネックが付いていて、それで角度も調整します。

私も古いコントラギターは何台か修理しましたが、ネックが反っている物は見ませんでした。

良く乾燥されたネック材、黒檀を使うと、15弦あっても、16弦あっても、100年以上経っても
ネックは反らないようです。
  1. 2012/03/06(火) 09:23:30|
  2. ギター
  3. | コメント:3

ネックの厚み、ネックの反りについて

前回のネックの話で、コメントをいただきました。

少し紛らわしいことを書いてしまったかな?と思っています。

今、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの仕上げで、そっちの方に頭が行っているのですが、
ブログも書いて置かないと、と思って急いでいたようです。

ネックの厚みについて、ネックがどこまで薄くなると曲がってきたり、反ってくるか?
方程式のような物があれば、と言う事でしたが、このような公式は多分無いと思いますし、
あっても、構造力学とか、応用力学、物理学といった専門家に考えていただかないと、私には分かりません。

私は、ネックの反り、曲がりの一番大きな原因は、指板とネック材の収縮率の違いによる事と考えています。
バイメタルの原理です。

ネックが起きて来る、つまり弦高が高くなるという故障だけが、(順反り)存在するのなら、
弦のテンションによる原因と考えてもいいいかもしれません。

でも、現実には逆反りも多く起きています。
クラシックギターだと、逆反りが起きても修理は大変ですが、アコーステックギターやエレキギター
だと、グラスロッドが入っていて、比較的簡単に修理というか調整が出来るので、楽器屋さん
リペアマンの所に持ち込むようです。

そして、リペアマンのお話しでは、逆反りは冬が多いと聞きます。
バイメタルの原理のネック側の材料が乾燥して、逆反りするのでしょうか?



いろんな要素を今回も考えますが、とりあえず弦のテンションを調べてみましょう。

沢山メーカーがありますが、ダダリオというメーカーはゲージだけでなくテンションも
出してくれていますので、ダダリオの弦で考えてみましょう。

まず、最も大きい アコースティックギターです。

エキストラライト 61.23キロ
ライト 75.3キロ
メディウム 85.63キロ
ヘヴィー 98,87キロ

とへヴィーになると100キロ近いテンションです。

これに比べると、エレキギターは

ライト 35,4キロ
メディウム 37.92キロ
ヘヴィー 39,41キロ
エキストラ へヴィー 40.68キロ

とアコースティックギターの半分以下です。

このエレキギターでも、ネックの反りの故障が起きているのです。

クラッシクギターでは、ダダリオのプロアルテ コンポジット ハードで 43.2キロです。

では、どの程度のネックを曲げる、起こす力が働いてるのでしょうか?

昔習ったベクトルとか力の合成ということなので、仮定や考え方がおかしい所があると思います、
気が付いた方は、どうぞ指摘してください。

ギターのテンション全てがネックを曲げる力になっていないのは、考えてみなくても分かる事ですが、
では、ギターのテンションのうちどのくらいの力が曲げる力になっているのでしょうか?ギターの弦と指板の
関係は簡単にすれば下図のように(汚い図面ですみません)なるでしょうか?
ナットや、1フレットではほとんど弦とフレットのクリアランスはゼロで、
12フレットで3ミリから4ミリくらいでしょう。

         img580.jpg


力関係の図面にしたのが3番目の図面です。(ネックが曲がるのはネックの直線部分でしょうから
図面に描いてあるように、1フレットから10フレットくらいでしょが、分かりやすいように
ナットから12フレットで考えています)

12フレットつまり弦長の半分では、一般的なギターでは325ミリです。
それに対して、12フレットで4ミリ上がっていますので、数式のように、43,2キロの弦の張力のうち
ネックを起こす力は、0.53キロつまり、500ミリリットルのペットボトルくらいでしょうか。
でも、これはナットのところで弦を留めているという仮定です。
弦の溝がぴったりで、弦のテンションをナットの所で全て受けている、という状況もあるでしょうが、
現実的には、調弦もするわけですから、ほとんど無視して良い数字だと思います。

では、弦のテンションが、ペグボックスの糸巻きを伝って、ネックを圧縮している力はどうなのでしょうか?
これは、ほとんど43.2キロそのもので考えてもいいと思います。
それに対して、ギターのネックの強度はどんな物でしょうか?

ネックの断面も、メーカーによってかなり違います。
たとえば、比較的細いネックの、ハウザーは
ネック厚 20ミリから25ミリ ネック幅 51ミリから62ミリ

ブーシェは ネック厚 23.4ミリから25,2ミリ 幅 52.5から62.5ミリ

ロマニロスはネック厚 21.5ミリから25.8ミリ 幅 52.から63.5ミリです。

ハウザーで考えて、ネックの中央部分の幅 56.5ミリ 厚さ 22.5ミリとすると
断面積は ほぼ 9.5平方センチです。マホガニーの圧縮強度は 490キロ/平方センチ
なので、9.5x490=4630キロになります。

それに、指板の黒檀もフレットで溝とフレットが合っていない場合もあるので、7ミリ程度の
指板部分が圧縮に対抗するとして、 56.5x790=3124キロ(黒檀の圧縮強度は 790キロ/平方センチ)両方足すと7750キロくらいですが、これは破壊される寸前の強度なので、実用的にはもう少し低いですが、43.2キロくらい圧縮する力が働いても全然問題はなさそうです。

念のため、ネックの曲げ強度を出してみましょう。

ネック部分マホガニー 9.5x1100=10450キロ
(マホガニーの曲げ強度は 1100キロ/平方センチ)
黒檀 曲げに対してはフレットの足で切られている部分は除いて、
5.65x0.35x1800=3600キロ (黒檀の曲げ強度は 1800キロ/平方センチ)
両方あわせると、曲がって折れてしまう時の強度ですが 14000キロにもなります。

これら強度計算の元になった数字は、『原色木材大図鑑』と35年ほど前に当時28000円もしたのですが、
木材の事を知ろうと手に入れた「木材工学辞典」から取っています。

それよりも大きな数字が考えられるのは、ネックではなくペグボックスのようです。
下図のように、43,2キロの力が 水平方向に 41.63キロ垂直方向、ペグボックスを
起こす力は11.56キロにもなります。(計算、考え方は合っていますか?)
古いギターでペグボックスが起きてきている楽器の修理を何度かした事がありますが、故障するのも
分かりますね。

img582.jpg




次に良く引き合いに出す、チェロの話しです。
チェロは70キロくらいのテンションです。そのネックの断面は下図のようです。
     
       img581.jpg

平均的な断面、ネックの中央部分の断面です。
楓のネックの部分が計算すると、5.37平方センチ、黒檀の指板部分が 3.12平方センチ です。
これも、ギターのネックと同じように計算すると曲げ強度は

楓 5.37x1100=5907キロ 黒檀 3.12x1800=5616キロ です。

それに対して、チェロのネックを曲げる力は?


img583.jpg

相変わらずの汚い図面ですが、チェロの製作の教科書で指板と駒との関係がこのように書かれています。
計算用の図面にすると、



img584.jpg

弦長が一般的なチェロで69.5センチから70センチなので、テンションの70キロと同じです。
そうすると、ネックを曲げる力は
1.9キロとギターよりかなり大きな数字です。
この数字も、ナットで弦が固定されているという前提、
仮定ですので実際はかなり小さな数字と思われます。
でも、チェロでも普通に作っていればネックは曲がってきません。



曲がってくる大きな原因と考えられているバイメタルの原理を数字的に表そうとしたのですが、
私の持っている本とか、ネットで調べても、黒檀の収縮率が出てきません。

ほとんど、収縮しそうに無い木なので、データがないのでしょうか?
比べる黒檀の、収縮率が無いと、マホガニーとの収縮率の差が出てきません。

どなたか、ご存知の方がいらっしゃったら、お教え願えませんでしょうか?

でも、ネックが楓で作られているエレキギターや、アコースティックギターが
冬場に逆反りが多いという話を聞くと、また、感覚的にマホガニー系統の木と
黒檀の収縮率は違うと感じるので、両方の木の収縮率の差が反りの原因と考えるのは
自然な事ではないでしょうか?

では、それを防ぐ方法は?また、予防する方法は?ないのでしょうか?

それは、ガンバやリュートでは考えられているのです。

ガンバは私も沢山作っていますが、一見するとネックの楓で弦のテンションを支えているようですが、
指板を外すと、ネックは非常に頼りないのです。楽器によっては(私の楽器でない場合もあります)
指で簡単に曲がる楽器もあるほどです。もちろん、大きなバスガンバの話しです。

指板とネックが両方強いと、どちらも押し合って結果的に反るようです。
それに対して、ガンバはネックは指板より弱く、指板の収縮に付いて行っているようです。

チェロもその傾向があります。そして、リュートは逆に指板が薄くて、
ネックのほうが主導権を握っていて反らないようです。

ということで、私のギターは指板が薄いのです。

古いギター、(特に19世紀終わり、20世紀始めのパーラーギターがスティール弦
を張っていたこともあって)を見ると、確かにネックの反りもありますが、
どちらかというと、ネックの付け根で起きてきている楽器や、ネックのかかとの接着不良によって、
故障している楽器も良く見かけます。

パーラーギターなどは、ネックが非常に細いので、曲がりやすいのですが、ネックの反りより
ネックの付け根のトラブルが多いと言うことは、良く乾燥された材料を使うと、少々薄くしても大丈夫
ということになるのでしょうか。

でも木の事ですから、個体差がありますので、良い材料を選ぶ必要はあるようです。


いつも、字だらけのブログに汚い絵ですので、ここら辺で美しい絵を。
    前回のネックを削ったガンバを描いた絵です。作者は日展審査員の
    永田英右さんです。
    2010年の日展出品作品。  
    タイトルは「ミル・ルグレ-千々の悲しみ -」です。

          img588.jpg
     
本当は、もの凄く細かい所まで描かれている、美しい絵なのですが、
      スキャンして 500KB まで落とすと、画質が荒れてしまいます。
      永田さん、ご覧の皆様申し訳ありません。



<参考>

木材工学辞典に載っている材質の平均値に対する変動幅

比重 針葉樹  19% 広葉樹 20%

半径収縮率 針葉樹  38% 広葉樹 37%

縦圧縮強さ 針葉樹  27% 広葉樹 24%

曲げ強さ 針葉樹  25% 広葉樹 31%

それぞれ プラス、マイナスです。




  1. 2012/03/04(日) 01:41:58|
  2. ギター
  3. | コメント:1

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

最新記事

最新コメント

月別の記事です

カテゴリ

ギター (337)
演奏会 (10)
その他 (21)

私へのメールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

訪れてくださった方々

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR