古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

構造、設計 ⑦ ネックの厚さ、指板の厚さなど


ネックの厚さ、形状はモダンギターの音色を決めている大きな要素だと思います。

ギター製作家に聞くと、ネックの厚さ、質量は弾き易さというより、音色の点で、決めているようです。

薄くしたり、質量を落とすとモダンスペインギターらしい音色が薄れると言う事を聞きました。
確かに、モダンギターの音色は分厚いネックから来ている要素が大きいかもしれません。

逆に私の求めているギターの音は、ネックが薄く、質量が少ないほうが出しやすいように考えています。

ここでまた、ギターから離れますが、ガンバのネックの話です。

数年前、画題としてガンバを手に入れたいと言う、日展系の画家の方がいらっしゃいました。
私が一から作ると高いものについて、画材用としては無理がありますので、
コントラバスやチェロを作っている会社に本体を作ってもらって、
こちらで仕上げることにしました。
指板やテルピースに象牙で、インレイで装飾したりもしますので。

このメーカーの楽器はもともと少しネックが厚く、大きいので、
薄く作ってもらうようお願いしていたのですが、やはり少し厚かったのです。
少し薄くして(普通に、充分楽器として使える状態です)お渡ししました。

そうすると、楽器としても良い楽器だったので、この絵描きさんが自分でも、
ガンバを弾きたいと連絡がありました。

それなら、「以前少し、おはなしさせていただきましたが、ネックをもう少し削ったほうが、
私の好きな音になるのですが。」とお話しました。
そうすると、「そのほうが、平山さんの作りたい楽器の音になるのなら、削ってください。
どう変わるのかも見たいし」と言うことでしたので、画家さんのアトリエに行き、
少しづつ削っていきました。

それまでも、普通に鳴っていた楽器なのですが、削るたびに少しづつ、音がクリアーになり、
基音が少ししっかりしてきました。そして、楽器が鳴ってきたのです。
音楽家ではない画家の方ですが、仕事しているときは、いつも音楽を聴きながら絵を描かれています。
音楽家より音楽を聴いている時間は長い方かもしれません。
その絵描きさんが、音が変わっていくのに驚かれていました。確実に音は変わりました。
(それなら、始めからそうしろ、と言われそうですが、あくまで画材用ということと、
最初にもう少しネックを削ることがあるかもしれないということは、伝えていましたので。
それに、こんな機会で無ければ試すことの出来ませんので)

ギターでも、同じようなことがありました。
2010年8月に作った10弦ギターがそうです。初めての10弦ということもあって、
ネックを少し厚く作りました。削るのはいつでも出来ますので、念のため、厚めにしたのです。
ネックも楓で作っています。個体差が大きい楓を使ったことも、安全側に考える要素でした。

実際に弦を張って、音が落ち着くのを待って、弾いてみました。
楽器は鳴っているのですが、音が丸く、よく言えば柔らかい、悪く言えばぼけている音。
弦鳴りの感じも少ししました。
もう少し薄いネックのほうが良いかもしれないと考えていましたが、念のため厚くしたので、
始めに考えている程度にネックを削りました。

そうすると、基音がはっきりし、楽器本体が鳴ってきました。
私の作りたいギターの音に近くなりました。

ギターの本体、ボディが鳴らない、モダンギターでは大きな差は無いかも知れませんが、
軽く作られていて、楽器本体が鳴るように作られている楽器では、ネックを少し薄くしてやると、
立ち上がりも良くなり、響きも基音も付いてくるようです。

削ると言っても、2ミリ3ミリです。
私の作る楽器は、ほとんど普通の体格の日本人の方が弾いてくださる楽器だと思っています。
普通の長さの指と、力の方が弾かれて、弾きやすい楽器を作りたいと思っています。

調べると、イギリスの楽器にネックの厚い楽器が多いようです。
日本で作られた楽器でも、日本人が弾くことの多い楽器でも、ネックが厚い楽器を良く見かけます。
製作家がその音を出したいために、厚くしている場合もありますので、一概に言えませんが、
ネックを薄くすると、とても左手が楽になり、押さえ易くなります。

最初から2ミリ3ミリ削らなくても、0.5ミリ、1.0ミリづつ削っていって、
音が良いところ、弾きやすいところで止めれば良いのです。
そんなに高い楽器でなければ、自分でやってみるのも、面白いかもしれません。

ただ、2ミリ3ミリ削ると、ネックが起きてきたり、曲がってくるかもしれません。
(良い材料の楽器とか、乾燥が充分な楽器では問題ないと思います)
削って、ネックが起きてきたから責任を取れと言われても、困りますし。
ということで、弦高の低い楽器やブリッジの骨棒が高い楽器では、もし万が一ネックが起きても、
対処できるので、対処できる楽器で試してみてください。と逃げておきましょうか。


次に指板の問題です。モダンスペインギターを見ると、低いポジションで、
つまりネックに近いところでものすごく、黒檀の指板が分厚い楽器を見かけます。

ネックのマホガニー系統の木でも、少し削れば音が変わってくるのですから、
質量の大きい黒檀では、楽器のバランス、音に大きな影響があると思いませんか?

ここで、また、ギター以外の話です。それは、バロックチェロ、バロックヴァイオリンの場合です。
最近、持っている古いヴァイオリン、チェロをバロックに改造したいけど大きな改造は無理なので、
とりあえずガット弦を張ってみたのだけれど、あまり鳴らないのです。と言う話をよく聞きます。
(つい、先日もありました)
そして、私のところに持って来られます。

それで、一番最初に楽器に手を入れるのは、バロックではハイポジションはあまり使いませんので、
と言うかモダンほど、指板は長くなくて良いので、ヴァイオリンで2,3センチ、
チェロで4,5センチ短くすると、びっくりするほど鳴ってくる楽器があります。
びっくりしなくても、普通に鳴ってきます。
以前指板、ネックの材料のところでかかせていただきましたが、
ガット弦が使われていた頃のヴァイオリンでは、もともと今見られるような黒檀の塊の指板は
ありませんでした。もっと軽い構造の指板でした。

指板を丸ごと軽いものに変えなくても、余分な黒檀を切って、
質量を小さくすることで鳴ってくるのです。

ギターでも同じことが起こると考えられます。
ギターでは、ヴァイオリンやチェロのように、余分な指板を切ってしまうわけにはいきませんので、
最初から指板の厚さを考えて作る必要があります。


なぜ、糸倉に近いほうが分厚い指板が作られたのでしょうか?

それは、リュート属の、アーチリュートやテオルボと呼ばれる、
ペグボックスが折れ曲がっていない楽器では、ネックが必ず起きてくるのです。
そして、起きてくれば、製作家のところに持って行って、削ってもらうのです。
3度ほど製作家のところに持って行きなさい、と昔の本には書いてあるそうです。
フレットがガットフレットで巻いているだけですから、簡単に外して削ることが出来るのです。
この、アーチリュート属の考えがギターに伝わっているのでしょうか?

ネックが起きてくれば、ギターはフレットが打ち込んであるし,そんなに簡単には削れませんし、
ネックが起きてくるのは材料が悪いから?あるいは、仕事が悪いからと言う理由のほうが大きいと思います。

起きてくる心配をして、楽器が鳴らない状態、ネック側が重くてバランスが悪い楽器、
(バランスが悪いと弾きにくいものです)
ネックが分厚くて、押さえにくい楽器を作るほうが、私は問題だと思います。

と言う事で、私の楽器は指板も、ネックも弾きやすい厚み、形になっています。
  1. 2012/02/29(水) 08:40:31|
  2. ギター
  3. | コメント:2

構造、設計 ⑥ トルナボス

Dolphy さんからのコメントで、トルナボスについてどう思っているか?
とのことで、ここで書かせていただきます。

ギターに詳しい方ならご存知だと思うのですが、サウンドホールの中に、トルナボス
と呼ばれる、円錐形の筒を付けて、低音を出そうとした物です。

このトルナボスは、トーレスさんの発明ということになっているようです。
私はこのトルナボスをそのまま使うことには、抵抗があります。

オリジナルのトーレスさんの楽器は弾いた事がありませんが、コピー楽器で何度か弾きました。
弾いた感想は、反応が鈍く、低音というか、中低音の特定の音が、大きくなり不自然な響きで
良くはありませんでした。少なくとも、私は作りたくない音でした。

その原因は、トルナボスの形状にあると思います。
トルナボスは、スピーカーで言う、バスレフそのものです。
スピーカーと、ギターは違うようですが、バスレフの考えでいくと、
単純なコーン紙の振動ではありませんが、響板の表から音が出て行き、
裏側にも、響板が振動するので、当然音は出ます。
ちょうど、スピーカーのように。

バスレフはスピーカーの設計の中でも、スピーカーの性能、能力に関係なく
使える方式です。ギターに置き換えても、良さそうです。

実は、25年ほど前にスピーカー作りに凝った時期がありました。
私のHPにスピーカーが20台ほど写った写真があります。
この写真以降もさらに数が増え、最後にムクの楓でホーンスピーカーを
作って終わりにしました。
もちろん、教科書は 長岡鉄男さんの本です。

その長岡さんの本の中に、バスレフの計算式がたくさんあるのですが、
最も分かりやすくて、使いやすい式が下の式です。
この式は、ネットで調べると、実際にスピーカーを作って、長さ形の
違うダクトを作り、実測したデータも出てきますが、ほぼ公式どおりの
結果が出ています。

img574.jpg

fと言うのが、バスレフで最も強く出る、周波数と思ってください。
この実証済みの公式にトーレスさんのトルナボスを当てはめてみましょう。

img575.jpg


結果、134.4hzという周波数が出てきます。汚い字で書いていますが、
これは、ドとド#の音の中間です。つまり、ギターの5弦の3フレットと4フレット
の間の音になります。

これは、トルナボス付きのトーレスコピーを弾いた時の感触に似ています。
鳴って欲しい低音の6弦でなく、5弦当たりにピークが来て、変な感じなのです。
モダンギターでも5弦くらいの低音は出ています。その5弦にさらにピークが来ると、
6弦が物足らなくなります。

この計算は、トルナボスに格子の穴が開いているので、格子の穴が開いている、部分は
バスレフのポートとして働いていませんので、長さ4.3センチとしました。
こんな少しの穴なら、無視できるのではないか?と言われそうですが、ここでオルガンの話しです。

オルガンのパイプは、大きく分けると、開管と閉管、リード管に分かれますが、開管は字のとおり、
リコーダーや、フルートのように端が開いている管です。
この開管の調律は、金属パイプだと、パイプの端、をハンマーで叩いたり、専用の金具で広げて
調律します。
とても大変です。そこで、良く使われるのが、パイプの端にスリットを入れ、そのスリットにスライド
する板を取り付け、その板を上下させると、調律が出来ます。
パイプ全体の長さを変えなくても、スリットの長さで調律できるのです。
このスリットと同じような、事がこの格子の穴によって起こると考えたのです。

もし、コピー楽器で、同じ大きさで、スリットが入っていないとどうなるでしょうか?

img576.jpg


少しは下がりますが、あまり変わりません。
これは、下に広がっているトルナボスの形状に問題があります。
バスレフは、円錐形や出口と入り口で大きさの変わっているポートでは、入り口の大きさが周波数
を決めてしまうので、トーレスさんの形だと、低音が出にくいのです。

ここで、少しギターの音域というか、最低音の確認です。
ギターはピアノの楽譜のように、2段譜にはなっていません。
その関係で、記譜はオクターブ上げて書いています。
ギターを弾いている人はご存知の事なのですが。
5線譜で見てみましょう。

           img573.jpg


実音で書くと、一段譜だと、物凄い下線が必要です。
2段譜でもかなり低い音です。
ちなみに、ギターの最低音 ミ の周波数は 82.40hz。
チェロは65.4hzの ド です。

この低い音を出すために、トルナボスはどうしたら良いのでしょう?

ポートを長くする(トルナボスを長くする)、トルナボスを細くする。
どちらも、現実的には大変です。そこで、スピーカーの下図のような構造の
トルナボスを作ればよいのです。

img578.jpg


つまり、トーレスさんと逆の形のトルナボスに。

img577.jpg


6弦1フレットのファとファ#の間です。
ピークがここの音ですから、その付近は良く出るようになるので、
最低音の ミ や 6弦 3フレットの ソ くらいまで、バスレフ効果が期待できそうです。

長岡さんの本によると、材質はつるっとしたほうが、バスレフは良く働くが、
ピークの山がきついのだそうです。

これでは、楽器としてまずいので、表面はあまりきれいに仕上げないほうが良さそうです。

そして、私の考えている、トルナボスの形は、サウンドホールの補強用のバスバーを延ばして
、またハーモニックバーに付ける四角い形です。
底の部分は直径6センチの穴をあけることを考えています。
変形のポートは、ピークが少し上がるので、ちょうど良いし、
ピークがなだらかになりそうで、ギターには良いとおもいます。


もちろん、スピーカーとギターは違いますから、実際に作って付けてみて、
いろいろ試す事が必要です。

トーレスさんが生きていた頃は、まだスピーカーが存在していなかったので、
理論的なことは分からなかったと思いますが、21世紀の私達は、スピーカーの理論
を応用しても良いと思っています。昔の製作家のコピーだけが全てでないように思います。


  1. 2012/02/24(金) 02:03:18|
  2. ギター
  3. | コメント:2

お知らせ

4月に札幌のギタリストのために、ギターを作って持って行くことになりました。
それならと、札幌で何かイベントを、ということで私も載っている本も出版された事もあって、
下記のような日時、場所で楽器の演奏とお話しがあります。
演奏お話しは、もちろん私です。リュートやガンバを演奏する予定です。

4月14日(土)15時~16時30分
紀伊國屋書店札幌本店1階エントランスホール

お近くの方はどうぞお越し下さい。

北海道ではどうも、という方のために
これは、私が作ったチェンバロを使うオペラの案内です。

img571.jpg

3月9日  広島大学 サタケメモリアルホール 19時から

3月11日 シンフォニア岩国コンサートホール 14時から

3月13日 福岡シンフォニーホール 18:30から

これ以外でも、関西でしたら

 img572.jpg


西宮で 3月27日に

そして、3月31日は 神戸市東灘区にある
御影公会堂で ガンバコンソートの会があります。
昨年も開かれましたが、ガンバを見てみたい、聞いてみたい方はどうぞお越し下さい。
詳細はまたお知らせします。ガンバの演奏だけでなく展示もありますので。

  1. 2012/02/22(水) 19:03:41|
  2. 演奏会
  3. | コメント:0

構造、設計 ⑤ 横板、裏板

もっと早く、この横板について書こうと思っていたのですが、やっと書く順番が来ました。

モダンスペインギターの不思議な、最も不思議なところが横板です。

まず、その厚みです。また、チェロやガンバの話を持ち出しますが、
あのテンションの大きいモダンチェロでさえ、一般的な教科書で1.6ミリが標準となっています。

標準と書いたのは、実際にたくさんのチェロを修理していると、
カーブのゆるいところは,1.6ミリ程度でしたが、
カーブのきついところは1.3ミリくらいのものが多かったのです。

もちろん、カーブのゆるいところでも、1.4ミリ、1.5ミリの楽器も多かったのです。
それに比べて、モダンギターはどうでしょうか?

もう、ギター製作のバイブルのようになってしまった、「Making Master Guitars」では、
2.0ミリと書かれています。そして、ほかの本でも2.0ミリと書かれています。

実際に作られた楽器でも、2ミリくらいが多いようです。

ギターでは、ローズウッドや中にはハカランダも使われています。
これらの比重は0.9くらいでしょうか?なかには、1.0に近いものもあります。

楓は、まざに個体差が多いのですが、0.65から0.7くらいでしょう。
単位面積当たりの質量を出して見ましょう。

ギターの場合、2.0x0.9=1.8(軽いローズだと2.0x0.8=1.6)

チェロは 1.6x0.65=1.04 大きく(0.7)とっても 1.12 です。

あのテンションの大きいチェロの1.5倍以上の質量です。
いかに、ギターの横板が厚すぎるか分かる数字です。

また、ここでガンバの実際のデータです。
実際に経験したことを書くのが最も分かっていただけると思っていますので。

私がガンバを作り始めたころ、参考になるようなデータもありませんので、
感覚的に厚みを自分で決めて、実際に作ってみて決めていきました。

バスガンバですから、3/4 のチェロと同じくらいの楽器で、
1.7ミリ1.8ミリの横板を試したことがあります。
1.7ミリに削ってアイロンで曲げました。
そうすると、硬くて、硬くて曲がりません。

アイロンの温度を上げ、無理やり曲げました。曲げた横板を持って、硬さを確かめました。
とても、楽器にして、鳴るような硬さではありません。

せっかく削って、曲げた横板ですが、1.6ミリの板に作り替えました。

もちろん個体差がありますから、1.7ミリでも、1.8ミリでも、
比重の軽い板を選べば、もっと柔らかくて、楽器に使えそうなのですが、
質量が落ちても、板の厚みから、しなやかさは求められません。

しなやかで、振動しなければ私の作りたい楽器は出来ないのです。横板でも。

最近、横板をもっと厚く作る作家もいます。中には4ミリとか5ミリとか。

さらに、スピーカーのように横板を鳴らさないように、横桟が入っているギターもあります。

でも、私は楓で1.4ミリ、1.5ミリ程度で作っています。
そうすると、「そんなに薄くすると、割れやすいのでは?250年も持たないのでは」
との、声が聞こえそうです。

以前にも書かせていただきましたが、私の楽器はなぜか壊れません。
その理由は、一見軽くて、薄い楽器は華奢な感じですが、
落としたり、ショックを与えても、ショックを吸収してくれて、壊れにくいのです。

あの薄くて、軽いルネサンスリュートや、ルネサンスギターは400年以上壊れずに、
素晴らしい音がしているのがその証明でしょうか?

逆に頑丈に作りすぎると、少しのショックで、そのショックを吸収できずに、
また、温度変化、湿度変化についていけず、壊れるようです。

さらに、壊れる大きな原因が他にもあります。それは、強度差です。
丈夫なところと、弱いところがあると、弱いところが壊れるのでなく、その境が壊れるのです。
当たり前のことですが、楽器は大きなテンションがかかっています。

ですから、ショックを与えるとか、温度差、湿度差がなくても、
丈夫過ぎるところと弱いところを作ってはいけないと思います。
その点でも、モダンギターの横板は厚すぎると思っています。


楽器ではありませんが、最近の建築物でも同じようなことを感じることがあります。
超高層のビルや、特に最近、気になった建築物は、シンガポール空港の、
第3ターミナルに見られる、巨大なガラス壁です。
こんな巨大なガラス壁は今までありませんでしたから、今までのデータや経験でなく、
しっかりと設計し、実験し検証して作られています。

この壁は、少しの風でも変形します。でも、どんな強風にも耐えるのだそうです。
 もっと、ポピュラーな建物では、東京スカイツリーでも同じように、
しなやかな強さが見られます。
このスカイツリーでは、この高さでの、気象条件も分からず、
気象ゾンデをあげるところからはじめたそうです。
そして、構造の参考になったのは、日本の木造の塔だったそうです。

親柱をセンターに持っていく構造です。


ここで厚みだけを比較するのはおかしいのでは?との声が聞こえそうです。
(そんな声は聞こえてこないと言う人も、もう少し読み進めてください)

ヴィオラ・ダ・ガンバやチェロは、コーナーブロックがあって、
構造的に丈夫になっているので、板厚だけで比べるのはおかしいと。

ガンバのコーナーブロックの構造を、書いて見ました。実寸です。

               img568.jpg


外からは分からないのですが、私の楽器はなるべくコーナーを固めないように、
削れるだけ削っています。
これは私だけの考えでなく、古い楽器を見るとほとんどの楽器はそうしています。

その進化系がコーナーブロックを使わず、羊皮紙のパーチメントを使っている楽器です。
これは、コーナーブロックだけでなく、裏板と横板の接着部分にも、
ライニングを使わず羊皮紙のパーチメントで補強しているのです。

この構造だと、コーナーがあっても、ほとんどギターと同じくらいの強度になると思いませんか?
その結果、チェロと同じくらいの厚みでも良いのでは?と。

ここで、もうひとつの計算です。

チェロと同じくらいの厚みでも良いのでは?と考えると、
ギターでよく使われるローズウッドでは、どのような厚みになるのでしょうか?

本当に木材は個体差があって、比重が決めにくいのですが、
ローズウッドを0.8、楓を0.65とすると、

1.6ミリx0.65÷0.8=1.3ミリ

となります。1.2ミリでも良いかもしれません。

そんなに薄くしても大丈夫?との声が何処からともなく聞こえそうです。

そのうち、読み物「神様はつらいよ」で書かせていただこうと思っているのですが、
トーレスさんは1.0ミリで横板を作っています。
それは、ローズでも比重のとても軽い、サイプレス(糸杉)でも同じ厚みです。

この厚みだと、ハーモニックバーの端が大きいままでも、ライニングが大きくても、
楽器が鳴るかもしれません。でもそれでは、横板が不自然に振動してしまうことになりそうで、
私の方法ではありません。

トーレスさんを神様に祭り上げているのですが、彼がやっていることのうち、
自分に都合の良いことだけを、取り入れている製作家が多いように私は思います。


話は長くなりますが、次はトーレスさんと違う私の設計です。

それは、横板のカーブです。

実際のカーブを比べて見ます。それは、ウエスト部分のカーブです。


               img570.jpg

モダンギターの代表として、手元にあった田村満さんのギターを使わせていただきます。
モダンギターはウエスト部分のカーブがきつく、そこから比較的直線に近い横板が続いています。
A の部分が短く、カーブがきついです。B も直線に近いのが分かります。

それに比べて、私の楽器はA の部分が少し広く、カーブが緩やかで、B の部分は少しカーブしています。
カーブがきついと、その部分は丈夫になります。でも、それに続く直線に近い長い部分は、
とても弱いのです。それは、厚くなればなるほど、強い部分と弱い部分に別れるのです。

それに比べて、私の楽器は、ウエスト部分のカーブが緩やかで、
それに続く部分も、緩やかなカーブで形成されています。

このことによって、横板の強度の差がなくなるよう考えているのです。
そして、私は私の楽器のカーブが美しいと思っています。
私の楽器を使ってくださっているギタリストも美しいカーブだと言ってくれました。
それを聞いたときは嬉しかったです。

トーレスモデルで作るとか、ブーシェモデルで作るとかを、
考えずに自分でベストのものを作ることを考えたいと私は思っています。

裏板に行くまでに時間がかかってしまいましたが、裏板については、
極端に厚くする必要も、薄くする必要もないと思います。

「アントニオ・デ・トーレス」によると(83p)トーレスさんは2.5ミリから3.0ミリ。
しかし 「Making master guitars」35pを見ると、1.2ミリから2.2ミリとなっています。

モダンスペインギターのアグアドさんは2.0ミリ、ブーシェさんは2.1ミリ
サントス エルナンデスさんは2.1ミリと全体に薄いようです。

厚さが問題でなく、問題はそのカーブです。
アンダーバーの項でも触れていますが、裏板を真っ直ぐに作ると、
人の目には凹んで見えるので、膨らませています。

ですが、カーブをつけすぎると,強度が付きすぎて、裏板が振動しません。
私の楽器はそういう理由で、沢山のカーブ、膨らみは付けていません。

厚みは、材質、同じ材質でもその比重、また、柾目か板目かなどによって厚みは変わってきますので、
厚みはいくらにしているかと聞かれると、返事が難しいところですが、
およそ2.0ミリから2.5ミリです。面積が大きいだけに材料の資質の差が大きいのです。

トーレスさんは横板は材質の違いによって厚みを変えていませんが、
裏板は材質によって厚みを0.5ミリほど変えているようです。
  1. 2012/02/21(火) 00:11:38|
  2. ギター
  3. | コメント:4

構造、設計 ④ バスバー (ハーモニックバー)


しばらくブログの更新が出来ていませんでした。
ここの所 夜中の12時か1時に帰って、
それから仕事という日が続きましたのですみません。

せっかく読んでいただいて、記事が新しくなければ申し訳ないので、
このあたりで本題の、ギター作りで書かせていただきます。

今回は、少しマニアックなハーモニックバーについてです。

ハーモニックバーは下図の中のサウンドホールの上下についている比較的大きな
バスバーのことです。


img557.jpg
「アントニオ・デ・トーレス」ホセ・ロマニリョス著 より

常々書かせていただいているように、楽器のコーナーは固めると、
楽器全体を振動させにくくするだけでなく、表面板や横板、裏板も鳴りにくくなります。
このコーナーを固めるのに、一番大きな要素はライニングですが、
このハーモニックバーの影響も大きいと思います。

ここで、ギターに近しい関係のリュートのバスバーについて書かせていただきます。

リュートのバスバーは、2月2日のブログ 「構造、設計 ③ 表板」の最後のほうに
リュートのバスバーの配置の図面があります。
この図のように、ギターのたこ足バスバーは、バロックリュートなどのような、
後期の楽器には小さな物が見られますが、ほとんどギターのハーモニックバーのような、
平行バーがほとんどです。

このリュートの平行バーは一般的なリュートでは、横板に接着されていません。
横板に突き合わせているだけです。作るときに、うっかり膠が回ってしまって、
横板とバスバーが接着されてしまうと、楽器があまり鳴りません。鳴りが悪くなるのです。

もちろん、接着しても鳴る楽器もあるかもしれませんが、比べると接着しないほうが鳴ります。
(ギターのブログなのに、リュートの事を書かれても、
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ここが私のブログの特徴です。
ギター以外の楽器のことで、ギターに関係するような事を知っていただいて、
ギターを見直していただくきっかけになればとこのブログを作っていますので)

もちろん形はほとんど下図のような形です。


img553.jpg


中には、リュート、ヴィオラ・ダ・ガンバ、ヴァイオリンその他沢山の楽器を作った、ヨアヒム・ティールケさんのジャーマンテオルボのバスバーで下図のような形の物があります。

img554.jpg


私の同じ形のバスバーを考えていて、使っていたことがあり、
ティールケさんの図面を見て、同じ事を考えている製作家がいた。と思いました。

低音側は、通常の形にして、低音が出やすく、(エッジが振動して広い面積が鳴るように)
そして、高音側は音が延びるように、バスバーを使っているのです。

次に大きな楽器、チェンバロ、スピネットではどうでしょうか。
大きな表面板を持つ、チェンバロでもバスバーは、横板やライニング
(チェンバロではライナーと言ってます)に届かない形で作られています。

img555.jpg


でも、この形だと、図に示した、箇所でせん断が起こり、響板が割れることがあります。
普通に考えると分かる事ですが、このライナーと木目の方向が同じ方向なので、
割れやすいのです。

これを解消しようと考えられたのが、下図の様な形です。(上から見ています)


img556.jpg


同じような構造は、もっと弦の数も増え、テンションももっと大きな1850年
くらいまでのフォルテピアノでも見られます。
実際に友人でフォルテピアノ、リュート製作家の家で、見ました。

ピアノですから、ギターやリュートなどに比べてはるかに大きな響板です。
響板の接着は作業も早く行う必要があります。
そうなると、ついうっかり、バスバーとライナーを接着してしまう可能性があります。
これを防止するため、もし、膠が回っても接着出来ないよう、
沢山の油を塗っているのです。ライナーのバスバーが当たる箇所に。

このような、処置をしているということは、あの大きなピアノでさえ、
響板の周りはなるべくフリーにしておきたいと昔の人は考えたのでしょう。

これまで書かせていただいた、チェンバロやフォルテピアノと比べて、ギターはどうでしょうか?

私がギターの製作写真や、図面を見て驚いたのは、
横板とバスバーが接着されている事は、想像していましたが、
下図のような、長方形の断面のままの、ハーモニックバーが使われていたことです。
他の楽器ではまず見ることが出来ない形です。コーナーを固めてしまうだけでなく、
横板も固めて、鳴らなくしてしまいます。

                img559.jpg
                Making Master Guitars より

このハーモニックバーの役割は何でしょう?

響板の中で大きな面積を占める、サウンドホールの補強が一番の役割だと思います。

同じような役割の物を探すと、チェンバロの4フィートヒッチピンレールや
カットオフバー(4フィートヒッチピンレールが無いチェンバロ。
つまり、4フィートを呼ばれる、オクターブ上の弦が無いチェンバロの場合は、
4フィートヒッチピンレールの代わりに大きなカットオフバーが付いています)
が近いと思います。

                   img562.jpg

                   img563.jpg
                  Three Centuries of Harpsichord Making より  

カットオフバーは名前から想像できるように、ブリッジが付いている部分と、
そうでない部分を分けて、鳴る場所と鳴らない場所を分けている部材だと考えられます。

楽器というか、響板は全体が鳴ったほうが良さそうですが、
大きな響板が同じ動きで振動する事は、ありえないし、そうなると、高音も低音も出ません。
振動の節、振動しない箇所を作って、様々な音が出ると思います。

このカットオフバーや4フィートヒッチピンレールでも、
大きなチェンバロ全体から比べると小さな物です。

そして、この4フィートヒッチピンレールで、
非常にユニークで素晴らしい構造のものがあります。
1728年に作られた、クリスチャン・ツェルのチェンバロです。
下図のように、4フィートヒッチピンレールが横板というか、
ライナーに達していないのです。これだけではせん断が起こるので、
小さなバスバーをライナーを切り欠いて付けています。

低音の響板を大きな面積で鳴らすための工夫です。実際作ってみると、
非常にゆったりとした、低音が出ます。
これも、響板をフリーに、特に響板の端はフリーにしたいという考えの現れだと思います。

              img566.jpg
                Jerome Prager より

普段、このような、楽器を作っているので、ギターのハーモニックバーの大きさ、
また横板への接着を考えると、楽器を固めすぎているのでは?と思ってしまいます。

そして、さらにモダンスペインギターの不思議な所が、このハーモニックバーにあります。
スペインギター製作の神様、トーレスさんがやっていなければ、
あまり使われることがなかったかもしれない構造です。

それは、下の写真と図面のように、ハーモニックバーがトンネルになっている事です。

                   img560.jpg
                   Making Master Guitars より     

                    img558.jpg
                  
              「アントニオ・デ・トーレス」ホセロマニロス著より
 



大きなチェンバロでも、端はツェルの楽器のように、
フリーな状態にしている楽器もありますが、カットオフバー的な、
ヒッチピンレールは中央部はしっかりした構造です。

モダンギターで良く見られる、ハーモニックバーのトンネルでは問題がもうひとつあります。
このトンネルにバスバーが延びてきている事です。

ヴァイオリンやガンバのように、駒の下の音を伝えているバスバーが、
延びてきているのなら、音を広げる意味で理解出来ますが、
駒からかなり離れたバスバーが延びてきているのです。
音を広げる意味合い、効果が無ければ、逆に楽器の振動を抑えていると考えても良いと思います。

ハーモニックバーは、サウンドホールの大きな穴の構造的な補強が一番大事な目的だと思います。
表板に使われている針葉樹は、年輪方向には強度がありますが、
直角方向にはほとんど強度がありません。これをカバーしているのが、
ハーモニックバーだと私は考えています。また、そう考えるのが一般的でしょう。

そのハーモニックバーが表板に接着されていない、トンネル部分があるということは、
接着されている箇所は固定され、接着されていないトンネル部分は表板の木が自由に動くということです。
針葉樹では一般的に、年輪方向に比べて、直角方向には約20倍の伸縮があると言われています。
固定されている箇所と、固定されていない箇所の境目でかなりのストレスが起こると考えられます。

最低250年は使える楽器を作りたい私は、
このような構造のハーモニックバーは使いたくありません。
音的にも、構造的にも問題があると考えるからです。

  1. 2012/02/18(土) 00:49:24|
  2. ギター
  3. | コメント:0

読み物 その2 考えるということ

考える、頭を使うということで、またあまり面白くない話しになるかもしれませんが、

よろしくお願いします。

歴史上の人物で物凄く頭を使ったという人はそれこそ、沢山いると思いますが、


今回は私の好きなエジソンさんの話です。

エジソンさんは格言をたくさん残しました。

一番有名な格言は、『発明は99%の努力と、1%のインスピレーションである』でしょう。

99%の努力、つまり努力が大切で、インスピレーションは1%あればよいというふうに、
昔、教わりました。あのエジソンさんでさえ、それだけ努力をしたのだから、
凡人の私達は、もっと努力をしないといけないと。

最近は、質問した新聞記者が、エジソンさんの言っている真の意味が理解できずに、
努力が大切という意味に取ってしまって広まってしまった。
本当の意味は違うと言われています。
原文です。

Genius is one percent inspiration and ninety- nine percent perspiration.

これだと、努力は99パーセントなので、努力は大切だということになりますね。
でも、エジソンさんが言いたかったことは、99パーセント努力をしても、
1パーセントのインスピレーションがなければ、発明は出来ない。
いくら努力をしても、インスピレーションがなければ、駄目だと言いたかったそうです。
これは、沢山の楽器作りの友人、知人達を見ていてもそう思います。

次に、私の好きな格言は、考えるということ、頭を使うということです。
これは、日本語で。

『 考えて、考えて、もうこれ以上もうこれ以上考えられないという所から、
考えるのが考えるということだ』

言い換えて、『ほとんどの人は、もこれ以上考えるのは、不可能だというところまで行き着き、
そこであきらめてしまう、やる気をなくしてしまう。いよいよこれからだと言うのに』

とも言ってます。これは、本当にそう思います。

楽器作りで一番大切な、表板の厚み、削り方など、いくら考えても分かりません。
ただ考えるだけでは、上に書いた、ただの努力です。何年考えても分かりません。
いろんなアプローチ、ヒント、他の楽器を調べるなど、そして、実際に作ってみること。
他の人に聞いても、それは他の人のデータであって、自分のものではありません。

これは、本人から実際に、昔聞いた話しです。有名なギター製作家の話です。

修行中に、先生が作る楽器のデータを全て調べて、取っておいたとの事でした。
でも、それは、先生のデータだったので、自分には何の役ににも立たなかったという話です。

無駄な努力ということで、いつも思い出す落語があります。『『崇徳院』という落語です。

知ってられる方も多いと思いますが、
若旦那の一目ぼれの相手を探す熊五郎が大阪中を探すくだりです。
最初の日も、次の日も朝から晩まで、脚を棒のようにして探すのですが、見つかりません。
どのようにして探しているかと聞かれて、ただ闇雲に探しているだけ、
ただ走り回っているだけとこたえました。
それで、きっかけになった「瀬をはやみ~」と叫ばんかいな!と言われて、
「瀬をはやみ~」と叫びながら探すと、探す事が出来たのです。

何も考えず、努力している人を見ると、いつも、この熊五郎を思い出します。
(そういえば、40年近く前に、神戸三宮に「熊五郎」というおいしいラーメンやさんがありましたね)

私は、自慢ではありませんが、頭は良くはありません。
でも、ひとつの事を何年でも、朝から晩まで考え続ける事が出来ます。
頭が他の人の半分しかなければ、倍、その倍、いや10倍考えれば、
普通の人より、もっと先のことが考えられると、今までやってきました。

ギターについても、岡目八目の感じで、20年、30年、40年と考えてきました。
やっと、最近、少しは、ギターについて考えがまとまってきた、と思うようになりました。

もうひとつ、エジソンさんの話です。 これは原文で。

We don’t know one million of one percent about anything.

『我々は、何事についても1パーセントの百万分の一も知らない』という格言。

少しでも、ギターの事が分かるように努力したいと思っています。

今回も堅い話になったようで、すみません。

根が、真面目なんでしょうね。



  1. 2012/02/06(月) 12:38:26|
  2. ギター
  3. | コメント:2

追記です。1月29日の分数ギターについて 

1月29日の、分数ギターについての、ブログに図面と、説明を加えさせていただきました。

文章と数字だらけだったので、目で見て分かりやすいように、追記させていただいています。

興味を持っていただいた方は、どうぞ、ご覧下さい。

このブログおご覧の方はもうご存知かと思いますが念のため、書かせていただきます。

小さな、図面、写真は クリックしていただくと、大きくなりますので。

よろしくお願いします。

  1. 2012/02/04(土) 12:38:43|
  2. ギター
  3. | コメント:0

構造、設計 ③ 表板ー4 表板の膨らみ、ドームについて

表板についての話もそろそろ終わりです。

以前から、不思議に思っていた、『モダンスペインギター7不思議』のひとつの、
表板のカーブ、と言うか、ドーム、むくり、クラウンと言うか 
とにかく、表板のふくらみについてです。

知っている人は知っているのでしょうが、モダンスペインギターは、
表板が膨らんでいるのです。
また、膨らむように作っているのです。

スペイン式のギター製作の本等を見ると、まず、ソレアという型枠を作ります。
そのソレアに、くぼみを作って、このくぼみを利用して、表板が膨らむように作るのです。

具体的には、以前紹介したHPなどで調べてみてください。

この、膨らみがあることによって、ブリッジの接着など、とても作業が難しくなります。
また、長い間使っていると、問題が出てきそうです。

スペイン式のギター製作法では、ソレアを使って、表板に膨らみを付けることが、
当たり前というか、前提条件のようです。
ソレアを使わないと、スペイン式ではないと言っているみたいです。
でも、この膨らみ、ドームは必要なのでしょうか?

私は必要ないと思っています。必要性を感じないのです。

以前、リュートを作っていた時に、材料の関係で少し変形してしまった事があります。
この変形をそのまま使うとどうなるだろうと、思って仕上げたことがあるのです。

その結果は、自然に脱力して弾くより、力を入れて弾くほうが良い音がする楽器になりました。

あの大きなピアノでさえ、名人は完全に脱力して弾くのです。
自然な力で鳴る楽器を、私は作りたいのです。

そのためには、膨らみ、ドームはないほうが良いと思っています。

それでは、何故、トーレスさんは、ドームを思いついたのでしょうか?
(19世紀ギターでは、ドームという構造はありませんでしたから)

同時代のピアノからヒントを得たのでしょうか?
表板が大きくなったための、強度不足を解消するために考えたのでしょうか?
時期的には、ピアノがむくり、クラウンを採用した時期とほぼ同じです。


少し、ピアノの話しになります。

ピアノも、モーツアルトやベートーベンの初期の頃の楽器は、
フォルテ・ピアノと呼ばれる、鉄骨の入っていない、ピアノでした。

この頃の楽器は、弦のテンションも低く、音域もほぼ5オクターブでした。

モーツアルトの使っていたアントン・ヴァルターのピアノで、
高音部は8キロ、中音部で10キロ、低音部で15キロくらいです。
( A Handbook of Historical Stringing Practice for Keyboard Instrument Malcom Rose and David Low 著 より)

この後、5オクターブ半、6オクターブと楽器が大きくなり、
弦のテンションも上がりますが、今のピアノに比べると、低いものでした。

この頃の楽器は楽器によってかなり弦のテンションが違っていました。
楽器の過渡期でしょうし、10年経てば、楽器の形体もかなり違っていましたので。
高音部で、20キロから30キロ、中音部で25キロから35キロ、
低音部で30キロから45キロ、もっと低いテンションの楽器もありましたし、
高い物もありました。
( A Handbook of Historical Stringing Practice for Keyboard Instrument Malcom Rose and David Low 著 より)

このピアノのテンションが非常に上がるきっかけが出来ました。
それは、19世紀半ばに、鉄骨のフレームが採用されるようになったからです。
(弦も1853年にスチール弦が開発され、弦自体もテンションが上がっても切れなくなりました)

この、鉄骨の採用によって、一気に弦のテンションが上がりました。

――― 現代のピアノでは、約80キロ(70キロから90キロ)のテンションで、
200本ほどの弦です。トータル約20トンになるそうです。
もちろん、ピアノの大きさや、メーカーによってテンションは違います。
有名なスタンウエイ社のピアノはテンションが低く、
ベーゼンドルファー社のピアノはテンションが高い事が知られています。――― 

そうなると、弦の響板を押さえつける、力も大きくなります。
そこで、響板をあらかじめ、ドーム形状にしておく事が考えられました。
この、ドームの事を、日本では、「むくり」英語では、「クラウン」と呼んでいます。

この、ドームによって、上からの力に対抗できるようになったのです。
そして、この「むくり」が無くなると、モダンピアノでは、寿命が来たと考えられています。


                   img549.jpg
              福島琢朗著 「ピアノの構造・調律・修理」より

話はそれますが、この「むくり」はどのようにして作られているのでしょう。
福島琢朗著 「ピアノの構造・調律・修理」によれば、(22ページから23ページ)

はぎ合わせた、響板を24時間80度の熱室に入れ、響板を乾燥させて、
響棒を接着すると、響板は普通の部屋に戻すと膨らみますが、
響棒によって、響棒側は固定されているので、その結果、響板は膨らんで、
「むくり」が付くのです。

さらに、楽器に響板を付けるときも、同じように乾燥させ、一旦平面にして、
楽器本体に付けると、室温、室内の湿度によって、また、「むくり」が付くのだそうです。
ここで、少し説明です。木は乾燥すると、年輪と直角方向に収縮します。
その量は一般的に年輪方向に比べて、20倍程度だと言われます。
響板と響棒は下図のように、直角に接着されますので、
温度湿度を利用して、むくりが付けられるのです。

                   img548.jpg


はぎ合わせした、響板を80度の熱室に入れると、
接着された個所が剥がれるのではないか?とか、疑問はありますが。
専門家の本にはそう書いています。

違う本 『ピアノの構造とその関連技術』 U.Laible著 畠 俊太郎 訳には 
響板の製造には4種類の方法があるといってます。

翻訳された文章で、理解しにくい所もありますが、こんな事が書かれていると思います。

1) 平らな台の上で、真っすぐな響棒の接着。
 両方とも、真っすぐだと、膨らまないのですが、福島さんの書かれた方法で、
 接着するようです。この方法の欠 点は、場所によって膨らみ方が違うということです。
 木の収縮を利用しますから、木によって変わってくるのは、当然でしょう。

2) 平らな台の上で、反らせた響棒を接着
 響棒は接着された後、元の状態に戻ろうとして、響板が膨らむ。
 その力で弦の荷重に抵抗する方法。後で、書かせていただく、チェロなどの方法とほぼ同じ。

3) くぼんだ台の上で、真っすぐな響棒を接着
 これが、スペイン式のギター製作で用いられている方法です。
 響棒と、響板両方にストレスがかかり、応力に対応するわけです。

4) くぼんだ台の上で、反らせた響棒の接着
 接着後の、状態は最も安定していて、膨らみ(むくり)の量を計算しやすい。
 総応力は3の方法より響棒自身はストレスを与えられていないので小さい。


ここで、私がガンバで採用している、バスバーの接着方法を説明しておきます。
ピアノの2)に近い方法です。
  
               img546.jpg
 
              
図のように、隙間を作っておいて、接着する方法です。
こうすると、接着後はバスバーのプレテンションによって、響板が持ち上がる、
駒の圧力に抵抗する力が出ますし、音もはっきりします。
人によっては、輝かしい音になるという人もいます。

でもこれらは、単純に上からの力に対抗して、下から強度を出している場合です。
でも、ギターは単純に上から荷重はかかっていません。
ブリッジで弦によって、回転モーメントが発生しています。

言い換えると、ブリッジのサウンドホールよりの表板には、ブリッジによって、
押さえられる力が働くのです。逆にブリッジよりお尻に近いほうは盛り上がります。
この力に対抗しないといけないのです。

私の考える、この力に対抗する方法は、後で述べますが、
モダンスペインギターのドームを付けるという、方法は、
ピアノの響棒の3)でもわかりますが、最も大きな応力が発生する方法です。
ギターの弦に与えるエネルギーはそう大きなものではありません。
これに対して、大きなストレスを響板、バスバーに与えると、強度は増しますが、
逆に振動しにくくなります。

エネルギーによっては、楽器全体を鳴らすことが出来ない。
小さな場合は部分振動しかしないことも考えられます。
そして、楽器全体を鳴らすにはある程度以上ののエネルギーを与えないと、
鳴らない楽器になる可能性があります。

そして、それが側鳴りというか、小さな空間ではよく鳴るけれど、
大きな会場では使えないという、モダンスペインギターのひとつの要素ではないかと、
私は考えています。


余分なストレスを与えていない、リュートでの実話です。

某関西の大学で、昔、2700人の大きなホールと言うか講堂で、
チェンバロ、ガンバ、リュートを使う演奏会がありました。
リュートは私の作った楽器を私が弾いていました。
大きなホールですが、たまたま、このホールの下が、食堂で座席が階段状になっていました。
音は上に上がるので、音響などあまり考えていないホールというか講堂でしたが、
音響的にはとても良いホールでした。

そこで、リュートは大きな音で鳴っていたのです。
逆に1000万円近いチェンバロはマイクを通しました。

マイクテストの時に、「リュートは音が大きいから、もっとボリュームをしぼって」
と会場の端で聞いていた、スタッフが言いました。
それに対して、音響の人が「リュートはマイクが入っていないのですけど」の返事です。

リュートは、音響が良いと大きな会場でも使えるのだ。と私も実感しました。
松本市のハーモニーホールも、座席が階段状で素晴らしいホールです。
800人ほどのホールだったと思うのですが、ここでも、座席の端まで良く聞こえたそうです。

普段から、古楽器を作っているのだから、そう思うのだろうと言われそうですが、やはり
あまりストレスを掛けず、自然な状態のほうが良さそうです。
と言うことで、ここで私のモダンギターのバスバーについての、提案というか考えです。
それは、下図のようにブリッジとサウンドホールのたこ足バスバーを、
ちょうどチェロのバスバーのように、隙間を作って接着する方法です。


                  img545.jpg


そうすると、ブリッジによる回転モーメントというか、
下に押さえつける力に対抗する力が出来ます。プレテンションが生じます。
これだと、そんなに響板にストレスを与えなくて、
ブリッジの曲げに対する力には対抗できるので、ドームにするよりは良い方法だと思います。
こんな方法をとっている製作家は多分いないと思いますが、
これを読まれた方は、どう判断されますか?

これで、一応、響板に対する私の考えを終わります。
響板は一番大切なところだと思いますので、続けて書かせていただきました。
ここで一休みです。

次回は響板の話ばかり続きましたので、お話しその2<考えるということ> 
を書かせていただきます。
  1. 2012/02/03(金) 13:46:17|
  2. ギター
  3. | コメント:0

構造、設計 ③-3 響板の厚みについて

ヴィオラ・ダ・ガンバやバロックヴァイオリン、バロックチェロを作っていると、
表板の厚みというのが、一番難しく、考えないといけない個所です。
何百万円の楽器と数万円の楽器の差は、もちろん材質、材料の差もありますが、
表板の削り方、厚みが一番大きい要素だと思います。

ギターやリュートと違って、バスバーが1本しかなく、バスバーで調整など出来ませんので、
表板のカーブと削り方(厚み)次第で楽器の出来不出来が決まってきます。

その点、ギターは沢山のバスバーがあって、経験の積み重ね、データの積み重ねも、
ヴァイオリン属や、ガンバ属に比べると、楽なように思います。

でも、バスバーのほうに気を取られて、表板の厚み等については、
考えが少し少ないような気がします。
そこで、私はどうしているか、お話しして、参考にしていただけたら、と思います。

ギターの表板の厚さについて書かれている物を探すと。
禰寝孝次郎さんの『スペイン式クラシックギター製作法』
49ページに「スパニッシュギターを目指しているので、
やや薄めの 2.1ミリで製作」とあります。

『Master Making Guitars』 では、中央部、ブリッジがの乗る部分は2.5ミリそれ以外の
 any area は2.0ミリで。と書かれています。

そして、名工たちの紹介ページで、トーレスさんは2.5ミリから1.4ミリ
(これはロマニさんの本からのデータだそうです)
サントス・エルナンデスさんは 2.1ミリ。
アグアドさんは 2.0ミリ。
フレータさんは2.6ミリから2.1ミリ。
ブーシェさんは2.1から2.0ミリ。
フレドリッシュさんは2.5ミリから2.1ミリ。
ロマニさんは 2.5~2.7ミリから 1.9~2.2ミリ。
とガイドライン的には示してくれています。
ハウザーさんについては数字はありません。

でも、ネットで探せば、手に入る。1912年製のマヌエル・ラミレスのギターは
(もともと、11弦のギターを、サントス・エルナンデスさんが6弦に改造した物を、
セゴヴィアが使っていた物として、有名な楽器)ブリッジあたりで、1.8ミリ。
高音部分で一部、2.18ミリの所もありますが、
低音側のサウンドホールでは、1.5ミリから1.6ミリです。
1.8ミリから1.6ミリの感じで、とても薄いイメージです。

この当時の録音も簡単に手に入りますが、音が薄い感じです。
やはり表板の薄さが音に出ているのかな?とも思います。

この楽器はもともと、11弦の楽器ですので、低音を出すために、
低音側は薄くしているとも考えられますが、ブリッジ周り、高音側の厚みは、
むしろ11本の弦を支えるために、厚くしているのではないかとも考えられます。

(この手に入れた図面では、17箇所で厚みを測定しています。)
--- GAL Instrument Plan #38 by R.E.Brune より。

そして、この、ラミレスの楽器の次に、セゴヴィアが使った楽器が、1937年に作られた、
ハウザー1世の 楽器です。
セゴヴィアが『これ以上の楽器は作らなくて良い』と言った楽器です。

この楽器の図面も手に入ります。同じくGAL Instrument Plan #33 by R.E.Brune 
によると、約40箇所ほど、表板の厚みを測っています。

その厚みは、実に様々ですが、ブリッジ周りは 2.68ミリから2.95ミリ。
低音側のエッジで、2.21ミリとか2.31ミリという数字も見ますが、
全体は2.6ミリから2.8ミリくらいの感じです。

特筆する所は、ブリッジの1弦あたりからお尻にかけて、
2.97ミリ 3.24ミリという数字があるのです。表板の周りは薄くするのが、
弦楽器の基本のように思いますが、楽器の周り、
端のところで3.24ミリ、3.08ミリ、3.01ミリという数字があるのです。

このあたりが、ハウザーは弾き込みに時間がかかる、
鳴ってくるまで時間がかかるといわれる、一つの原因でしょうか?

このハウザーの音も、セゴヴィアの録音で聞くことが出来ます。
ラミレスに比べて、響きも豊かで、ふくよかです。
もちろん、録音も年代が違えば、違うでしょうが、
明らかにラミレスとは違います。その違いは、板の厚みの差によるところも多いと思います。

ギターの表板の作りかた、考え方に大きく分けて、二通りあると思います。
ひとつは、表板をほぼ同じ厚みに仕上げ、バスバーで音を作っていく方法。
結構この方法で作っている人も多いです。

もうひとつは、他の弦楽器と同じように、表板自身を中央部は厚く、端は薄くして、
バスバーでも音作りをする方法。私はこの方法です。
この方法でないと、私の音は作れないと思っています。

次に、この二つ目の方法に関連して、ヴァイオラ・ダ・ガンバの話しです。

楽器のことですし、木によっても違いますが、チェロに近い、バスガンバで、
駒の乗る中央部で5~6ミリ(人によっては3~4ミリ)
周辺部で2、5ミリから3ミリ(人によっては2ミリから3ミリ)
(私も最初は中央部で4ミリほどでした。)ですが、ガンバは弦の振動をこまで受けて、
表板に伝わります。そのため、受ける表板の部分は、厚いほうがより広い範囲で、鳴ってくれます。

薄くすると、反応も良く、軽く鳴ってくれるのですが、軽い低音に成ってしまいます。
そして、スピーカーと同じで周辺部を厚くすると、低音は出てくれません。

ここで、ひとつ実例を。

私のお弟子さんで、遅く楽器つくりを始めたのですが、丁寧に素晴らしい楽器を作る人がいます。
最初は、少し小型のディヴィジョンタイプのバスガンバばかりを作っていました。

そして、初めて、大きいバスガンバを作ったときのことです。

それまで、小型のガンバの場合は、板に合わせて、この板だったら、何ミリに削れば良いから、
と教えていました。もう、何台も作っているので、初めての大きなガンバですが、
自分で考えて作ってもらうようにしました。

楽器が出来て、弦を張って音を出します。
大きい楽器の割には、低音が出ません。楽器全体も鳴りが悪いです。
「この楽器はどう考えてつくったの?」と聞くと、
「一回り大きいので全体を0.5ミリ厚くした」との返事です。
楽器が大きくなっても、端は厚くすると低音が出にくいのです。
完成した楽器なのですが、勉強と思って少しづつ、端を落としてみるよう言いました。
彼もひたすら、良い楽器を作りたいと思っている、熱心な人なので、
端を削って、少し薄くして、指板を取り付け、音を出して、
また、指板を外して、削って音を出して、を繰り返したそうです。
3回目に気に入った音になったので、仕上げて持ってきました。

結果的に、小型のバスガンバと変わらない、周辺部の厚みになりました。

大きい楽器でもエッジが硬いと、低音も出ないし、楽器も鳴らないということを、
実証してくれました。
このように、楽器の表板のエッジ、端は、周辺部は大切なところです。
ギターも、ですから同じように中央は厚く、周辺部は薄く、私は作っています。
こうするほうが、私の考えるギターの音に近いのです。
そうです、基音がしっかり出るのです。

ここで少し、構造力学の簡単な話しです。
下図のように、モーメント(単純に回転させる力と考えていただいて結構です)
は、中央部に荷重がかかると、中央で最も大きくなります。
端では、小さいのです。
ですから、もともと、端は強度がなくても、応力的にはOKなのです。

             img547.jpg
            『ピアノの構造とその関連技術』 U.Laible著 畠 俊太郎 訳 より

このように、中央部で大きな力に対抗しないといけないのですが、
同じ厚みで作られ、バスバーで操作しても、古くなると、ブリッジとサウンドホールとの間の
表板が凹んでいる楽器を見かけます。
やはり、中央部分は厚いほうが、良さそうです。

もっとも、この例は、同じライニングで同じ木を使った場合です。
ライニングが変わると、条件は大きく変わります。

もう少しだけ、表板の厚みの話です。

私の楽器を弾いた方が、よくロマニロスさんの楽器に良く似ていると言ってくれます。
表板を中央部が厚く、端を薄くしていることから来ることが大きいと思います。
そして、この、表板の削り方以外でも、ロマニさんの考えている事は良く分かります。
ブリッジの寸法など。

でも、彼は今息子さんがギターを作っていて、表板だけはロマニさんが作って、
息子さんに送っている、という話を聞いた事があります。
表板の秘密は、息子にも教えないのか。と思う人と、
私は、息子に、一番大事な表板の作り方は自分で考えて、
自分の方法を自分で見つけさせようとしているのかな?と思いました。
貴方は、どう思われますか?

それと、ロマニさんはフラメンコも好きで、
1台だけフラメンコギターを作ったことがあるそうです。
でもフラメンコギターとしては、全然駄目だったそうで、
それ以来フラメンコギターは作らないそうです。
フラメンコギターということで、彼の考えている事を、全部忘れて、
作れば良かったのかもしれません。

次に、ギターと言えば避けて通れない、トーレスさんの話で終わりにします。

昔、ギター製作家の M さんが、先生のブーシェさんに習い始めの頃、
「板の厚みは何ミリにすれば良いのですか?」聞けば、ブーシェ先生は
「M よ。楽器は数字で作る物ではない。自分の感覚、感性を生かして、音を聞きなさい」
と言われたような事を、記憶しています。
少なくとも、『数字では作るな』とは、言われたようです。

でも、ロマニさんのトーレスさんの本 日本語訳の110ページに、
「中心線ならびにサウンドホール上部で、約2.5ミリ、
周辺部は1.4ミリ厚である事が分かっている。
このパターンは、調査した彼のギター全てに当てはまり、
偏差は1ミリの10分の数ミリにすぎない」との記述があります。

何十年も、楽器を叩いて、材料を叩いて、曲げて、
統計を取るような作業も必要だと思いますが、
もっとデータ、数字も活用してギターを作れば、良いかな?とも思っています。

最後に、では私のギターはどのような、厚みか?と聞かれましたら、
ブリッジ周りで2.8ミリから3ミリ、
周辺部で2.0ミリから2,2ミリを標準として作っています。と答えています。

  1. 2012/02/02(木) 22:52:20|
  2. ギター
  3. | コメント:0

構造、設計 ③ 表板ー 2 バスバーの配置について

最近は少なくなったのですが、演奏会などで、知り合いのギター製作家に会うと、
いつも、バスバーの話をしていました。

何処のバスバーをどう変えたか、場所をどうしたとか、大きくした、小さくしたとか、
いつも、どこか変えていたようです。
本人は、いろいろ研究して、良い楽器を作ろうと、考え、実践しているのでしょう。

それほど、バスバーは、ギター作りの中で、一番こだわれる場所でしょうし、
いろんな形、配置が考えられます。

また、沢山の書物、図面、情報が溢れていて、いろんなパターンや、ヒントがあるようです。

こだわれる所ですが、迷う所です。
でも、いつもそんな話を聞いていて、
「そんなに、しょっちゅう変えていたら、自分のものが見つからないでしょ。
同じ構造、同じ考えで5台10台作って初めて自分のものとなることが、あるのでは?」と。
昔から思っていました。

確かに、表板は一枚一枚違うわけですし、同じに作っていては、違う物が出来ます。
量産メーカーが同じ規格、サイズ、設計で作っていると、違う物が出来るのと同じです。
そこが難しい所です。

でも、こんな話もあります。ギターではよく何々モデルというのがあります。
他の楽器ではありえない事ですがギターでは当たり前なのでしょう。
私には不思議な事です。

昔の名器のコピーは、どの楽器でもやっています。
ヴァイオリンでも、ストラッドモデルとか、アマティモデルとか。
でも、現代の名工の、サコーニモデルとか、私の好きなポルトガルの、
アントニオ・カペラモデルとかは聞いた事がありません。

ギターでは、トーレスモデルはあるとしても、
ハウザーモデル、ブーシェモデル、フレータモデル、ロマニロスモデルとか。
当たり前に作られています。

その、名前の付いた楽器は手に入らないから、そして、すこしでも、
モデルとなった楽器に近い音がしてくれれば、ということで、買われるのでしょうか。

ピアノでも、スタンウエイモデルとか、ベーゼンドルファーモデルとかは、ありませんし。

ここで、これが問題だというのではありません。

モデルにされるほど、良い楽器を私は作っているのだ。
ということで、モデルになった製作家は思っているのでしょう。

問題は、なになにモデルで作っても、作った人の音がすることです。
楽器の大きさや、形を変えても、バスバーの配置をそのモデルと同じにしても、
元に楽器の音に近くはなるかもしれませんが、やはり作った人の音がするのです。

その作る人が、情熱を持って、良い楽器を作ろうとすればするほど、その人の音がすると思います。

ということで、バスバーの配置も、作る人の音のイメージ、楽器のイメージがはっきりしていて、
その音の楽器を作るためには、どの配置が良いのか、
どのように削れば良いかを考えることが大切だと思います。

少しは、他の楽器をヒントにしても良いでしょうが。

いつもの、事ですが、前置きが長くなってしまって申し訳ありません。本題です。

下の図面のようなバスバーの配置が、私が使っているものです。

                   UNI_0863 の補正

                  
                  
かなり一般的な、配置と違うと思います。

一番の違いは、ブリッジ、弦の下にバスバーが3本来ていること
他のギターは、1本だけブリッジの下に来ています。

これは、ヴァイオリン属でも、ガンバ属でも同じ事なのですが、
バスバーとは、名前のごとく、擦弦楽器では、バス、低音を延ばすため、
低音の音をしっかりさせるため、また、構造上強くするために付いています。

ヴァイオリン属でもガンバ属でも、弦をこまで受けて、その駒の脚の下に必ず、
バスバーは付いています。少しずれても、大きく音が変わります。悪くなります。

そのために、私は、弦の振動を受け止めて、響板に伝えている、
ブリッジの下にバスバーを、3本付けています。

同じ考えの楽器は、世界中の、全ての今まで作られたギターを見たわけではないのですが、
私の知る限りでは、ルイス・パノルモだけです。

それも、ブリッジピンで弦を留めるため苦労しながら。

トーレスさんの本で、トーレスさんを持ち上げないといけないからでしょうが、
日本語訳の112ページにパノルモさんのギターの配置が対称的システムではないと、
とうとうと説明されているが、何処をどう見ても、パノルモさんのバスバーは、
対称にしか私には見えません。

そして、いろいろ、パノルモさんのバスバーが、外側の2本が角度が違うとか、
共通の軸を持っていないとか、私にすれば、本当にどうでもよい事をあげて、
トーレスさんの素晴らしさをアピールされています。

モダンスペインギターの代名詞の様な、たこ足のバスバーを、
トーレス以前にトーレス以外の人が使っていてはいけないようです。

私には、どうでも良いと書きましたが、実際ギターを作っている人から、
「共通の軸は何処から始まっていますか?」と聞かれて、
私は「そんな、どうでもいいことは考えてもいないので、そんな物はありません」と答えました。

ここで、良く知られている、名工のバスバーの配置を、
「MAKING MASTER GUITARS」より転記させていただきます。
             

             最初はやはりトーレスさんです。
           一般的な大きさの楽器と小さな楽器です。     
            

               img534.jpg
               

               img535.jpg
      

                次はサントス・エルナンデスさん。

               img536.jpg



                 次はハウザー1世さん


                img537.jpg


               次はエルナンデス・イ・アグアドさん


                img538.jpg


                  そして、ブーシェさん


                 img539.jpg


                   ロマニロスさんです。

                 img540.jpg


ここで、お願いです。

このブログを読んでらっしゃる方でご存知の方は、
このようにブログでたの書物の図面とか写真を使う場合、出典をはっきりさせていれば、
使うことは、問題ないのかどうか、教えてくださいませんか?

という事で、本題です。「MAKING MASTER GUITARS」では、書いていない部分を書き込んでいます。
私にとって、一番大事なブリッジの位置と弦の位置です。

① とか ⑥ とか書いているのが、弦の位置です。
そして、四角く書いているのが、ブリッジの位置、形。
斜線の部分はブリッジの横の薄くなっている部分です。

これを見ていただくと、ブリッジの下には、センターのバスバーが1本通っているだけです。
他の楽器もそうです。

トーレスさんとハウザーさん達は、少しだけブリッジの厚みのある部分にかかっていますが、
音を伝えるという役目はなさそうです。

私も昔、よく誰もが見るこの本に、弦の位置を書いてみて、「え!」と思いました。

何故、バスバーは等間隔でなければいけないのか。

そして、たこ足のバスバーの軸を持たないといけないのか。不思議でした。

そして、下から受けている、2本の斜めバスバーも、「これでは楽器が鳴らない」と思いました。
また、大きなエンドブロックにも。

私の図面を見ていただけば、分かるように、たこ足は、それぞれ、の役目を果たすように、
長さ、角度を変えています。
エンドブロックも小さくしています。
フォークギターのようにエンドピンを付けても、問題ありません。

そこで、一番私の楽器が、他の楽器と違っていることに、気づかれましたか?
そう、たこ足の、センターのバスバーが曲がっているのです、角度が付いているのです。

これは、パノルモさんも、誰もやっていません。
この、ヒントはチェロやヴァイオリンにありました。

ヴァイオリン属のバスバーは、低音側に1本入っているだけです。
楽器を作らない人は気が付かないと思うのですが、
このバスバーは少し斜めになっているのです。
音が走る、冬目を斜めに走っているのです。

これは、駒から伝わった、振動を少しでも広い面積に伝えたいからなのです。
木目、冬目に平行なら、バスバーの幅分だけしか、音は広がりません。

しかし斜めにすると、斜めになった分だけ、音が広がるからです。
こんなことは、ギターのバスバーは、必ず左右対称にしないといけない。
収束する軸を持たないといけないと思っている、ギター製作家には思っても見ない事でしょう。

これは、演奏する人も良く感じていることだと思いますが、
ギターでは3弦が特に鳴らなくて、3弦7フレット以上の音が、ぼける事を。
3弦が鳴らないはずだと思っていませんか?

他の弦は、まだ、表板で振動して鳴るけれど、3弦の下(4弦との間ですが)だけ、
大きな質量のバスバーが真っすぐ付いていては、鳴らないと。

そして、ギターの3弦は1弦2弦に比べて、テンションが低くて、
もともとボリュームが小さいのです。

太くすると、今でも充分に太いので、太くすると、音程も悪くなり、
太い分だけ他の弦より、押さえにくくなります。
それに対しては、フロロカーボンなど比重の大きい弦を使うとか、対処方法はあるようですが。

これらの、問題が斜めにする事によって、全て解決するとは思いませんが、かなり良くなります。
そして、1弦2弦の下、3弦4弦の下、5弦6弦の下にバスバーが入ることによって、
音色も揃いますし、何より、私が作りたい、基音のしっかりした音が作れます。

あと、サウンドホールの下についている、ハーモニックバーも斜めになっています。
これは、見ていただいたら、分かるとおりです。低音は広い面積で鳴らしたい。
高音は狭い面積で、より高音を出しやすくしたい、と考えたからです。

アグアドさんの楽器で、高音側にもう1本バスバーを増やして、
高音側の面積を小さくしている物もあります。
ほかの人でも、やっているようですが、これだと、低音側の面積は増えませんし、
余分なバスバーが1本増えることで、表板が鳴らなくなるように思います。
シンプルに斜めにするだけで、良いと私は考えます。


まだまだ、書きたいことはありますが、今日はこの辺で。

次回は、表板のアーチ、ドームについて書かせていただきます。
これも、私には不思議なこですので。

そして、その後、表板の厚みなどについて書かせていただきます。

まだ、表板、先が長そうです。

でも、他の製作家が書いていないことばかりだと思いますので、長くなりますが、
よろしくお願いします。


  1. 2012/02/02(木) 10:35:31|
  2. ギター
  3. | コメント:0

構造、設計 ③ 表板 

お待たせしました。表板の構造、設計です。

少し長くなりそうですが、よろしくお願いします。

いろんな,本、HP、ブログなどを見せていただいて、製作法、製作工程などは、
わかりますが、何故そうするのか、考え方など説明されている物は、
ほとんどありませんでした。

そんな事は、お弟子さんや、生徒にすれば良い事かも知れません。
でも、ここでは、私の考えている設計、や構造について、私の考えを書かせていただきます。
何故、そうするのか書いてあって、それが分かれば、これを読んでいただいた方に、
その方自身の考えが出来てくる、また、考えるヒントになればと思って、書かせていただきます。

昔から「習ったことは、身に付かん」と言われていました。

職人さんでも、若い職人が失敗する事は分かっていても、やらせてみて、
若い職人に経験させ、その失敗から学ぶような事をしていたように思います。

私のブログは、こうすれば良いとか、こうしないさい、とは書かないつもりですし、
書いていないと思います、多分。

文章を読んで、理解して、自分なりに解釈して、自分の方法を見つけるのは、
教えてもらった事ではありませんから、その人のものです。

秘伝とか、門外不出とか良く言われます。
ほんの少し、他の誰も考えないような隠し味を加えるとか、一工程加えるとか、
ということだけで、また、それをそのままやれば、誰でも、同じ味の物が作れる。

同じ物が作れるから、秘密にしている、門外不出にしていると、いう話を聞きます。
最初にそれを、作った、考え出した方は尊敬しますが、それだけを守って、
伝統とか老舗というのは、私には合いません。

京都の和菓子も、永い間作られ続け、お茶席での定番となっているお菓子も最初は新しい物でした。
お茶席に使われるには、それまでに無かった、その店、その職人でなければ、作れない物しか、
そして、新しい味、新しいお菓子でなければ、お茶席には使われることはなかった、と聞いています。

それが、何代にもわたって作られ、同じ味を守ることが伝統のようになってしまっただけです。
初代になりませんか?貴方のギターの。

と、最初から横道にそれてしまってすみません。

まず最初に、私の作っているギターは小型ですが、どの程度小さいのか、
実際に目で見ていただきましょう。下図がそうです。

              UNI_0874 の補正

比較のため、手元にあった、ベテランギター製作家Tさんの1968年に作られたギターを実際に、
鉛筆でなぞって、型を取りました。

寸法で比べてみましょう。Tさんの楽器は 上部膨らみ部 283mm 
腰部 240mm 下部膨らみ部 370mm 胴体長 490mm で、

私の楽器は、上部膨らみ部 264mm 腰部 216mm 下部膨らみ部 336mm 
胴体長 477mm です。

数字ばかりが続くと、分かりにくいですが、Tさんの楽器に比べて、
胴の上部分の膨らんだところで19ミリ、最も膨らんだ下部分では34ミリ小さくなっています。
次に、また、数字になりますが、面積比で比べます。

ギターの表面板の面積の出し方は、下のようになります。

             img544.jpg
                     相変わらず、汚い字ですみません。


「アントニオ・デ・トーレス」日本語訳 293ページ
この計算式でいくと、Tさんの楽器は 1400.2平方センチで、
私の楽器は、1245.5平方センチです。

私の楽器は、Tさんの楽器の89%の面積。
Tさんは私の楽器の12%大きい面積を持っています。

ですが、ライニングの所で書かせていただいたように、Tさんのギターを台の上に置いて、
表板のどの部分が鳴っているかを試すと、周りから、2.5センチくらいは鳴っていない部分でした。

Tさんの楽器は、比較的軽く、良く鳴っている楽器です。
ライニングも見たところ、3.5mmか4mmくらいの厚みで、
カーブのきつい所だけ、鋸目を入れている、モダンにしては小さいほうでした。

でも、サウンドホール下のハーモニックバーより上の部分はほとんど振動していませんでした。
ライニングが、もっと大きな楽器では、胴体の縁ではもっと鳴っていません。

これは、いろんな楽器を見せていただいて、確認しました。
(ライニングだけの話でないのですが、詳しいことは、
パフリング、バインディングの所で話をさせていただきます)

Tさんの楽器との比較では、楽器が一番鳴っている胴下部の膨らみ部で、
37ミリの差があります。(両側で37ミリですから、楽器の一端では約19ミリ)

私の楽器は、ライニングが小さいので、表板の端から、5ミリくらいまでは鳴っています。
そうすると、私の楽器は19ミリ小さくて、5ミリ鳴らない部分があると、合計して24ミリ、
Tさんの楽器に置き換えると、鳴らない部分と同じ幅です。
これは、Tさんの楽器の鳴らない部分の25ミリとほぼ同じ数字です。

これは、実際に試した数字です。そして、私の楽器はサウンドホール周りでも振動しています。
サウンドホールまわりで鳴っていますので、Tさんの楽器より、広い面積で鳴っていると言えます。

その結果、Tさんの楽器はよく鳴っているのですが、モダン楽器にありがちな、
低音の基音が少なく、ぼやけた低音になっています。

これは、後で書きますが、私の楽器は同じ面積でも、ブリッジ周りを厚くして、
広い面積で鳴るようにしていることも基音がしっかり出て、はっきりした低音が出る一因ですが。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次にトーレスさんがなぜ、大きなライニングを採用したか、考えてみましょう。

トーレスさんが最初に、大きなギターを作ったときに、それまで無かった
(スペインには無かったと言われています。イタリアには、
ガダニーニとか大きなサイズのギターは、作られていました。
スペインにもそれまでに大きなギターも作られていたという話もありますが)サイズなので、
この楽器が、何十年も弾き続けられるか?ということを考えたでしょう。

私でも、10年20年でつぶれるような楽器は作りたくありませんから。

でも、音のため、響きのためには、このサイズが必要だと思ったから、
彼の前期の大きさの楽器が生まれたと思います。
(トーレスさんは一時期ギター製作をやめて瀬戸物屋さんをやっていました。
この楽器製作を一時中断する前を前期、後を後期と言っています)

表板の強度不足と音色のために、今、使われているようなモダンスペインギターの
構造の基礎が考え出されたのでしょう。


まず、どの程度大きくなったものか、比較しましょう。
19世紀ギターは、私の好きなパノルモで代表させていただきます。

                 UNI_0872.jpg


図で見るとおりですが、寸法的に 私の640ミリのギターが、トーレスさんの代1期
に一番良く作られたギターに近い寸法なので、比較のために書きました。

ちなみに、寸法は京都の木曾尾さん所有の、FE21Dは(
現存しているトーレスさんのギターにはそれぞれ、番号が付けられています。
FEは前期の、SEは後期の楽器です。有名な物は、固有の名前も付いています)

上部膨らみ部 263mm 腰部 217mm 下部膨らみ部 348mm 
胴体長 476mm、
私の弦長640mmの楽器は、上部膨らみ部 264mm 腰部 216mm 
下部膨らみ部 336mm 胴体長 477mm とかなり近い数字です。最初に作った、
1号機、2号機は下部膨らみは346mmでした。これだともっと近い数字です。

これを面積で比べると、トーレスさんは 1261.2平方cm。
私の楽器は1245.5平方cm です。(ギターの表面積の算出方法は、前出のとおり)

これは結果的に、ほぼ同じになったので、トーレスさんを参考にしたわけではありません。
私の作っている、パノルモモデルを拡大した物です。図面を見ていただければ、わかるでしょうか?

パノルモの寸法がまだでした。

パノルモも、今まで修理した楽器は、皆それぞれ寸法が違います。
(大量生産の楽器ではありませんので、当たり前の事ですが)
実際に弾いてみて、気に入ったパノルモを元に私のデザインのギターです。
 
トーレスさんと比べると、表面積は78.2% になります。
(逆に言うと、トーレスさんの楽器が27.8%大きい)

上部膨らみ部 230mm 腰部 173mm 下部膨らみ部 290mm 
表面積は986.8平方cm です。

パノルモの、19世紀ギターに比べて、約28%表面板が大きくなっているので、
強度不足を解決する方法のひとつとして、トーレスさんはライニングを大きくした。
と私は考えます。
すると、表板の周りが、2センチから3センチほど補強されてしまって、
振動しない丈夫な場所が出来ます。

そうなると、パノルモとほぼ同じ表面板の面積しか鳴っていない事になりますが、
面積が広がって、強度不足の解消になります。

文章だと分かりにくいのですが、図を見てもらって、パノルモの外側、
私の640ミリの楽器との間が、振動しなければ、パノルモとほぼ、
同じ面積しか鳴っていないと、分かってもらえると思います。でも、丈夫になります。

このような事をトーレスさんも考えたのだと思います。


Tさんの楽器の時と同じような話しですが、ギターを台の上に置いて、
表板のどの部分が鳴っているか、試した結果、私が見せていただいた多くのモダンギターは、
(大きなライニングの楽器は)周りから、3センチくらいは鳴っていない部分でした。

パノルモが表面板の端まで鳴っていなくても、ほぼ、同じ面積しか鳴っていないことになります。
そして、モダンのほとんどは、ブリッジ周りしか鳴っていませんし。

次に、トーレスさんの考えた事は(あくまで、私の想像です)下図 で見られる、
下部膨らみ部分の2本の斜めバスバーだと思います。


                     img534.jpg

年輪に平行に強度が出るので、この斜めバスバーは、私は絶対に必要が無いものと思っています。
ただ、音は年輪の冬目に走るので、この斜めバスバーで、逆に広い面積を鳴らなくしようとした。
その方が、トーレスさんの考えるギターの音に近かったのでしょう。

私の場合は、楽器を小型にしたいので、広い面積を鳴らしたい、
そのために、障害となるものは、付けたくないのです。この、2本の斜めバスバーはその最たる物です。

ルネサンスリュートにも、Jバーといって、低音を抑える、バスバーが必ず付いています。
ルネサンスリュートの、低音の響きには、このJバーが必要です。
(バスバーといっても、低音を鳴らすための物でなく、響きを押さえる役目です)

でも、低音が大切で、低音が鳴らないと、
音楽が作ることが出来ないないバロックリュートにはありません。

                   img543.jpg
                 ルネサンスリュートのJバーです


                       img542.jpg
                バロックリュートのバスバーの例です。
               ヨアヒム・ティールケ の1700年頃の楽器です。
               <へルビッヒさんのリュート論文より>
              
              この小さな、バスバーがたこ足に繫がったと思っています。                


今回は、主に表板のライニングが与える、影響について書かせていただきました。

小さな楽器でも、大きな楽器と同じような面積で鳴らせること、理解していただくために、

長くなってしまいました。

今回の話でも、あくまで、私が見た楽器、私が感じたことを書いています。

数字についても、私の感じ、感覚ですので。

次回は、これもモダンスペインギターで疑問に感じていることですが、
少し書きかけた、バスバーの配置についてです。

  1. 2012/02/02(木) 09:40:20|
  2. ギター
  3. | コメント:0

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

最新記事

最新コメント

月別の記事です

カテゴリ

ギター (331)
演奏会 (10)
その他 (20)

私へのメールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

訪れてくださった方々

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR