古楽器製作家の思うこと いろいろ

昔の楽器製作家がそうであったように、様々な楽器を製作しています。そうすると、いろんな楽器の事が良く分かってきます。特にモダンギターについて考えていることを書かせていただこうと、思っています。

製作法 ⑥ 接着剤 その2 膠

膠については、あまり資料がありません。

というか、私には探せませんでした。
月刊誌の『室内』に金沢宏さんが書かれている程度です。

と言う事で、貴重な文献だと思います。

私の古くからの、職人仲間で、日本のピアノ製作の草分けの人がいます。
忙しい時は、鍵盤を作るのを頼んだりしていました。
ピアノのフレーム作りから、全ての工程を一人で出来る方です。
多分、こんな素晴らしいピアノ職人は他には、いないだろうと思います。

そんな彼ですから、接着剤は当然 膠です。何十年と膠を扱ってきて、
自分の、今までの経験で自由に取り扱うことが出来るようになったそうです。
その彼に、この文献を見せると、「今まで自分で考えてやってきて、
一番良いと思う事が裏づけされた。」と言ってました。その方法とは。


1) 2.5倍の水で膨化させる。
 
 下図は清水良雄氏 静岡県工業試験場 報告 No6(1962年)の実験結果です。

   img532.jpg
    私はこの記事を読んで、それまで使っていた、棒膠をやめ、粒膠にしました。

 水と膠との配合比率によって接着力に大きな差があります。
 2.5倍の水で溶解するのが最も良い結果です。
 手順として、使用前日から2.5倍の水に浸した状態で使うこと。
 古い膠駅に直接膠を放り込み使うと、接着力は半分以下に落ちるそうです。


②溶解温度は 60度から70度
 
 高音で加熱を続けると、接着性能が著しく落ちます。H・Meeb氏は 
 膠を98度で5時間加熱すると、接着性能は半分になると、報告しているそうです。


③ 長時間の加熱は性能を低下させる
 
 前出の清水良雄氏の実験で、80度の加熱でも、20時間すると、
 当初の接着力より、10~15パーセント低い値になるようです。
 その日に溶解して加熱した物は、その日のうちに使い切るのが良さそうです。


④ 塗布量は30センチ四方に対し、30グラムが適当。
 
 もちろん、小口などは多めに必要です。


⑤ 作業温度に注意
 
 膠は温度が下がると、すぐにゲル化して硬化してしまいます。
 特に冬季は温度に注意して、接着する物の加熱とか、作業所の温度に注意します。


⑥ 圧締圧力は 3キログラム/平方センチ以上 比重の高い木材は7~8キロ以上
 実験によれば、8キログラム/平方センチの圧締圧力を加えた、
 試験片の接着力は手で押さえただけの試験片の2倍の接着力があったそうです。


⑦ 圧締時間は数分から1時間
 
 膠は、温度が下がると、硬化するので、瞬間接着剤のように思ってしまいますが。
 軟材の薄い板だと数分、硬い材の場合は1時間以上必要です。


⑧ 耐水性、耐湿性の向上にはホルマリンを使う。
 
 下表をご覧下さい。これも、清水良雄氏 静岡県工業試験場 報告 No6(1962年)からです。

             img531.jpg


ホルマリンの濃度で少しの差はありますが、耐湿、耐水性能は2倍くらいになっています。
これを、前にお話しした、ピアノの職人さんに見せると、彼もホルマリン原液では、
高くつくので、3倍ほどに薄めて使っていたらしいです。
ホルマリンを使うと、ホルムアルデヒドが蛋白質と反応して、
分子間を架橋結合させるために、耐水性、耐湿性が向上するのだそうです。

使用法は、片面にホルマリンの水溶液を塗り、他面に膠液を塗布して、両者を接着、
直ちに圧締します。
この場合、接着と同時にホルマリンと反応するので、すばやく圧締する必要があります。


膠は充填性がありますから、修理の場合など、ともすれば、
圧力をかけずに隙間などを埋める場合がありますが、圧締しないと、強度は出ません。
短時間のうちに圧締出来るよう、手順を考える必要があります。

お待たせしました。いよいよ、次回は表板の構造、設計です。



  1. 2012/01/31(火) 09:42:28|
  2. ギター
  3. | コメント:1

製作法 ⑥ 接着剤

ここで、本当はもっと後ろで、書こうと思っていた事を、先に書かせていただきます。

表板の話は次回に。

接着、接着剤の話しです。

昔、本とかテレビで、「接着剤は作れるが、どうして接着するのかが、
まだ、分かっていない」と言う話を聞いたことがあります。
厳密な、科学での話でしょうが、分子間引力、投錨力とか化学結合、
極性を利用しているとか、いろんなことは分かっているようです。
でないと、接着剤は作れませんから。

ここで、接着について基本的なことを書いても、これを読んでくださっている方には、
科学的な興味はあっても、ギター製作に関するブログでは、横道にそれそうです。
最近でしたら、ネットでも充分調べる事が出来ますので、そちらでよろしくお願いします。

といっても、ギターは木で作っていますので、木に関係する接着の話はさせていただきます。


――― 今回、お話しさせていただく内容は、35年ほど前に月刊誌の特集で書かれた物を中心に、
自分で調べたことを書かせていただいています。
接着に関して、特に「膠」に関しての、文献等は少なく、
実用的な内容のものは少ないようです。

この月刊誌は 『室内』と言う、本来インテリアの雑誌です。
月刊誌 『室内』は著述家として有名な、山本夏彦さんが創刊し、50年続いた月刊誌です。
インテリア雑誌とはいえ、山本夏彦さんらしく、執筆人も豪華で、変わっている人が多く、
実用書でありながら、面白い本でした。

この、月刊誌『室内』で25回ほどにわたり、当時使われていた、
接着剤について特集が組まれていました。
いくつかの号は持っていたのですが、バックナンバー全てを持っている、
建築家に頼んでコピーをさせてもらったのが、私の接着に関するバイブルとなりました。

この接着剤の項の著者は その当時、静岡県工業試験場 工芸部長 農博 金沢宏さんです。―――――


ギターの接着剤といえば、「膠」アメリカ、フランクリン社の「タイトボンド」
そして、木工ボンドでおなじみの、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤が主な物でしょう。

これらの、接着剤がどうして、接着できるのか?ひとつの理論として、
古くから、投錨力が言われていました。
これは、船が錨を使って、停泊するように、接着剤が木の導管等の孔のなかに入り込み、
そこで固まる結果、接着剤がちょうど錨のように、剥がれなくなる。と言う理論です。

これを、実証したのが、島根大学の後藤研究室の、接着した木材の木材部分だけ、
科学的に完全に溶かして、接着剤だけ取り出した実験です。

取り出した、接着剤はギザギザの形状で、木の孔の中に根を張っていたそうです。
そして、すぐに考えられる、大きな木の導管孔の中だけでなく、
木材繊維を構成している、細胞膜の微細な穴にまで無数に入り込んでいたそうです。

ここで少しだけ、理論的なことを。
木材は何故、接着できるかと言うと、極性を持つ物ほど、接着しやすいと言う事。そして、
木材と接着剤のそれぞれの分子が引き合う力で接着されると言う事です。
分子の中には,OH基やCOOH基などの極性基を持つ分子と、そうでない分子があるそうです。
木材は、その主成分がセルロースで、そのセルロースが極性を持っていて、
極性を持っている接着剤を使うと接着できると言う事らしいのです。

次に、もう少し、実用的なことを。

接着の研究をしている人たちの言葉で、「濡れやすい材料ほど接着しやすい」
と言う言葉があるそうです。

これは感覚的に分かります。接着剤を塗って、染み込んで行き易い材料は接着しやすい、と。
それ以外にも、木の成分が接着剤の硬化反応を阻害する事があります。

モダンギターで良く使われる、ローズウッドは濡れの悪い木で接着力も弱い材料として知られています。

下図はユリア樹脂接着剤で54種類の南洋材を接着した結果です。

一般的に、比重が高いほど接着力は強いのですが、ローズウッドは、
その比重の割りに弱いと結果が出ています。

特にチークが悪いのですが、これは、チークを触ると、いかにも脂分が多く、
接着には向かない材料と言うのが良く分かります。

それ以外にも、接着力の弱い木としては、黒檀、紫檀など、ギターでも使う木があります。

                     img529.jpg
                    月刊 室内 接着の基本から

接着力の判断に使う濡れを感覚でなく、数字で表すのは、下図のような接触角があります。


                    img530.jpg
                   月刊 室内 接着の基本から

厳密に測るのは、難しいので、モダンギターのライニング、アンダーバーで良く使われる、
マホガニーと私がライニング、アンダーバーに使っている、ドイツ松に水滴を落としてみて、
どの程度吸い込み、濡れの差があるのか、調べました。
下の写真のようにかなりの差があります。
この差が、私がライニングで柔らかい木を使う、ひとつの根拠にもなります。
ギター本体のローズウッドが接着しにくい木なので、ライニングの必要性が増すからです。

                    UNI_0857.jpg
                   ドイツ松に水滴を落とした写真


                    UNI_0859.jpg
                   マホガニーに水滴を落とした写真

私は、35年以上前から、アメリカ フランクリン社の「タイト・ボンド・グリュー」
を使っています。
外す可能性があり、なおかつ、外しにくい(他に材料に比べて、柔らかいので)
表板などは、膠を使っていますが、ほとんど、「タイト・ボンド・グリュー」を使っています。

「グリュー」とは膠の事で、この、タイト・ボンドは本当に、膠の良い所はそのままで、
耐熱温度が10度から20度は高いような気がします。

例えば、薄い突き板を接着するのに、薄い広い物は、圧力をかけ難いので、
部分的に接着不良のところがあると、接着剤は足さずに、
(突き板の下なので、ほとんど足す事は出来ませんが)アイロンで加熱すると、
再接着出来ます。

フォルテピアノのハンマーなども、何の調整機能が付いていないので、過熱して、
何度でも角度や、長さを調節しました。

そして、酢酸エマルジョン系と違って、膠のように、硬化してもぬらしたタオルなどで、
余分にはみ出た、部分は拭くことが出来ます。
これは、使い勝手の良い理由の最たる物です。


昔、私達が古楽器を始めたころは、外国からの輸入品を使わざるを得ませんでした。
でも、結構、故障とかトラブルが多かったのです。
ところが、数年経つとほとんどトラブルも無くなってきました。当然、理由を聞きます。
そうすると、『最近、ヨーロッパでも、アメリカのフランクリン社のタイト・ボンド
を使うようになったから』との返事でした。
もちろんこれだけの理由でなく、日本の湿度、温度のことも調べたのだと思います。

この事があって、私は楽器を作り始めた頃から、フランクリン社のタイト・ボンドを使っています。
当然、日本では売っていませんので、今のようにネットで簡単に買える時代ではありませんから、
大きなガロン缶でアメリカから買っていました。

このタイトボンドでは、こんな話もあります。ドイツに行ったときのお世話になった、
佐藤一夫さんから、「ドイツ国内で、タイトボンドが手に入らないから、
日本から送ってくれないか?」と頼まれた事があります。
もちろん、すぐに取り寄せ送りました。
ドイツでも、同じような接着剤は開発されていて、ドイツの方は、
ドイツの物が良いと言うことで、タイト・ボンドは輸入されていないと言う事でした。

ここで、自慢ではないのですが、事実をひとつ。
関西の大学で、30年近く前から、古楽の授業が始まり、ガンバも30台ほど持っている大学があります。
予算の関係もあって、そのうち半分は私の作った物、半分は私以外の人が作った楽器です。

この私以外の方が作った楽器は、2年に一度くらい、5台6台と大修理をしました。
全ての楽器を。一番多いのが、裏板と横板のはがれ、裏板の剥ぎ部分の剥がれ、
表板と横板の剥がれ、それに、横板がエンドブロックや、コーナーブロックから剥がれて、
バラバラに近い状態とか。
学校の教務の方が、『こんな楽器修理可能ですか?』と聞くほど、剥がれて、
横板、裏板が曲がってしまっている楽器も。延べにすると、50台くらい修理しています。
同じ箇所の修理があれば、それは、修理が悪いのですが、同じ箇所の修理でなく、
50台くらいは修理しています。
この修理の楽器の中に、私の楽器は1台もありません。
私の楽器は15台ほど、30年近く、一度も修理をしたことが無いのです。
やはり、自慢ですか?

これは、材料や、構造、製作技術もあると思うのですが、タイトボンドを使っていたから、
というのもその理由のひとつだと思います。まだ、他の人が使っていない頃から使っていましたので。


横道にそれてしまいましたが、良い接着の条件として、

1)接着材料の水分は10パーセント以内に。
 
 これは、楽器の場合クリアーしていると思います。


2)塗布量は多めに
 
 よく修理の際に、見かけるのが、小口(例えば、ネックの接着)で接着剤が吸われて、
 ほとんど、接着剤が無い状態で、接着されている例です。吸い込みやすい、
 材料は注意する必要があります。


3)塗ったらすぐ圧着する。
 
 これも、楽器でしたら、気をつけていることだと思います。ただ、
 チェンバロの響板など、広い面積の物は、一人で作業していると、
 時間が経ってから、圧着することもあります。
 こんな場合、作業工程を見直して、早く作業するのが一番ですが、タイトボンドだと、
 膠ほどあわてなくても作業出来ます。
 もし、接着がうまく行ってない箇所があれば、アイロンで過熱してから、
 圧着することが出来ます。
 タイトボンドや膠では。


4)しっかり圧力をかける
 
 これが、唯一問題かもしれません。ギターの製作方法を見ると、表板のたこ足と呼ばれる、
 バスバーは、ほとんど、竹や木材、外国では中にスプリングを仕込んだ、
 パイプのような物で、圧力をかけています。
 でも、これでは、圧力が足らないと思って、私はクランプで時間がかかりますが、
 圧力をかけています。
 竹や木を使う方法では、一度に全てのバスバーが接着できるので、
 採用している人がほとんどです。

 また、古くなれば、故障の一番多い箇所。最も荷重がかかる場所。
 ブリッジの接着も、一般的には胴体が出来て、最後にサウンドホールから、
 クランプを3個ほど使って接着しています。
 でも、私は、表板を作るときに、クランプ8個ほど使って、これでもか!
 と言うほど、圧力をかけています。200年でも300年でも持つように。


接着剤の接着層は 0.02ミリが理想だと言われているそうです。
このためには、むくの木で、比重の大きいものなら 1cm平方に 
10キロから15キロは必要だと言われます。
膠だと8キロくらいだそうです。

小さいほうの膠で、例えば、トーレスさんのブリッジは 17.1×2.7センチなので 
面積は 46.17平方cm ですから、トータルの圧力は約370キロ。
そして、モダンの標準 ブーシェさんのブリッジは 18.9cm×2.85cmなので、
8kg/平方cmをかけると 538.65kgです。 

前に書いたように、ブリッジに良く使われる、ローズウッドは接着しにくい木です。
500キロほどの圧力は小さな3個のクランプでは、難しいと思います。
ただ、一方がドイツ松の比重が軽い木なので、半分くらいでも良いと思います。
でも、270キロは必要です。

逆に、私はバスガンバのエッジを、固めたくなくて、表板をマスキングテープだけで、
接着した事があります。20年ほど経ちますが、もちろん故障、剥がれなどは一切ありません。

こんな事を考えるのは、皆がやっているから、私もやってみようとか
先生に習った方法だからやっている。と言う事が無い私ですので、
常に何が一番良い方法なのか考えているからでしょう。

つくづく、教えてもらったり、先生につかなくて良かったと思っています。


すみません。また、長くなってしまったので、膠については次回に。


仕事も し な く っ ち ゃ !





  1. 2012/01/30(月) 16:10:35|
  2. ギター
  3. | コメント:1

構造、設計 ③ ライニングの大きさ、形

普通だと、ここでギター作りに、最も大切な表板について書くのが一般的だと思います。
でも、昔から、モダンギターの一番不思議な、なぜそうするのか、分からなかった所、
ライニングについて書かせていただきます。

モダンスペインギターで最も、疑問、不思議に思うのが、ライニングの異様な大きさです。

大きさについては比較する物があれば、良く分かっていただけると思いますので、
チェロの一般的なライニングの大きさとギターの一般的なライニングの大きさを
図示させていただきます。分かりやすいように、2倍の縮尺で書いています。

img527.jpg



① はコートナルさんの 「メイキング マスター ギター」 より
② は ① のような加工は手間がかかるので、モダンギターで良く見る一般的なライニング
③ は 禰寝さんの「スペイン式クラシックギター製作法」から
④ は Henry A Strobel さんの「Cello Making step by step」より、チェロのライニング
⑤ は 私のギター、ヴィオラ・ダ・ガンバに使われている、ライニング     

それぞれ下に、断面積を書いています。
モダンチェロは、約70キロのテンションがかかっています。
そのチェロのライニングの断面積は 約 21mm平方、それに比べて
 小さい禰寝さんのライニングでも、チェロの倍以上、他のギターだと、3倍から4倍です。
何故、こんなに大きいライニングが使われているのでしょう?
ギター製作家に聞いても、答えはありません。

私の考えです。あくまでも、私の。
19世紀ギター、特にスペインの19世紀ギターは「アントニオ・デ・トーレス」
日本語訳の53ページ、1816年の ファン・ミュノアのギター、
54ページ、1830年のファン・モレーノのギター、
そして55ページ、1833年のマヌエル・ナルシソ・ゴンザレス 
のギターなどを見ると、他の国の楽器に比べて、非常に細身です。
サウンドホールの横などは、響板がほとんど無いのでは?と思うほど、スリムです。

これらは、いずれも、6単弦のギターです。このスリムなギターから、トーレスさんが
表板を大きくした時に、音色、音の響きからもそうしたのでしょうが、
強度不足を解消するために、大きなライニングを考え出したのでしょう。

『いい音を選ぶ』という、共同通信社の「MOOK 21」の雑誌に、
鶴田誠さんが 19世紀ギターの 記事を書いておられます。

その中、114ページに、1898年の Salvador
Ibanez 作のギターの内部写真があります。
とても、粗雑な大きなペネオスが見えます。
大きな楽器ではないのですが、他の国の楽器に比べて、大きなライニングです。

スペインでは、大きなペネオスが小さな楽器でも使われていたと言う事は、
十分考えられます。その延長線上で、
トーレスさんが大きなライニングを採用したとも考えられます。

この大きなライニングが、表板の周りを固め、表板の中央部分しか鳴っていない、
モダンギターの特徴の大きな要素を作ったと考えます。

これをお読みの方で、ギターを弾いている方は、モダンスペインギターがほとんどだと思います。
お持ちのギターを、クッション、毛布などを机の上に敷いて、
その上においてください。
6弦とか5弦の振動エネルギーの大きい弦を、大きな音で弾いてみてください。
そして、音を出しながら、表面板を軽く触りながら、どの範囲で表面板が振動しているか、
チェックしてみてください。

表面板の中央部分、駒のあたりしか振動していない楽器が多いと思います。
表面板の周辺部は振動していない事が分かると思います。

リュートをお持ちの方は少ないと思いますが、リュートで、
同じ事をすると表板の大きな面積で鳴っているのが分かります。
こんな事をしなくても、リュートを弾いていると、
表板に接触している、腕に響板の端まで、振動しているのが伝わります。

リュートは1ミリのライニングを付けても、鳴りにくくなります。
リュートはライニングが無いのです。
(バスバーも表板全体が鳴る要素のひとつですが)


身近な例として、スピーカーがあります。
特に、低音を出す、ウーハーで考えると、良く分かると思います。
大きな、直径30センチ38センチのウーハーでも、周りのエッジは非常に薄く、フリーな状態です。
このように、スピーカーの周りが、固めていなくて、柔らかいので、低音が出るのです。
周りを固めてしまうと、スピーカーの中央部分しか振動しなくなって、
低音は出ないと考えられませんか?


同じ事を、ギターに応用すれば良いのです。
ギターもエッジ部分をフリーにすれば、低音が出やすいはずです。リュートがそうなのですから。

周辺を固めた、30センチのウーハーより、中、高音を受け持つ、
20センチのスコーカーのほうが、低音は出やすい(スコーカーですから、中音、高音も出ています)

同じように、少し小型のギターで、エッジを固めずに作ると、
低音も高音も出ると、考えるのは、自然な事ではないでしょうか?


少し極端な話しかもしれませんが、構造力学、構造計算の世界です。

端がフリーなギターは、構造力学上、単純梁に近い構造です。
(単純梁とは、ちょうど水路などの上にかかっている、板で単純に、
両端は両岸に乗っているだけの、板の状態です)

逆に、ライニングが大きいギターは、固定梁に近い構造だと考えられます。
(水路にかかっている、板が両端がコンクリートで固められている状態)


この単純梁と固定梁の中央に同じ荷重を上からかけた場合の、たわみ、下がる量は、
              
      img528.jpg
            

字が汚いですが無視してください。記号もヤング係数やなんやらありますが、
無視してください。同じ項目を消してゆくと、単純梁は 48 固定梁は 192 の数字が残ります。
この数字が、同じ荷重をかけて、たわむ、つまり動く量なのです。
192を48で割ると、4です。つまり、単純梁が固定梁の4倍動くのです。

単純梁が、ライニングの小さなギターの表板、固定梁が、
ライニングの大きなギターに近いと思います。

もちろん、純粋な単純梁、固定梁ではありませんので、
4倍の差は無いのですが、かなり大きな差はあると思いませんか?

実例ですが、私がたまたま手に入れた、安いスペインギターは、
少し小型で、おそらく手を抜くため
(大きいと部材も大きくなり、材料費がかかる。曲げるにも、
大きいと普通のギターのように、鋸で鋸目を入れて作るか、時間をかけて曲げる必要があります)
小さなライニングで、ハーモニックバー、アンダーバーも横板まで届いていませんでした。
とても、良く鳴っていましたし、音楽的な表現の出来る楽器でした。

国産の、古い安いギターも、良く鳴っているギターは、
手を抜くためでしょうが、ライニングが小さい楽器でした。


話しがギターから逸れますが、ガンバの話しです。

ヴィオラ・ダ・ガンバの古い楽器で、ライニングをつけずに、
羊皮紙で補強してある楽器があります。
バスガンバも7弦になると、1本あたり8キロとすると、単純に計算して、
56キロのテンションです。
そして、ギターと違って、魂柱が立っているので裏板を押し下げる力が働いています。
このガンバでさえも、ライニングが無い楽器もあるのです。
やはり、フリーなエッジを作るためです。

そして、ライニングは材料の所で書かせていただいたように、
大きさだけでなく、材質で、柔らかい材料を使うことも大切だと考えています。

また、この柔らかい材料は、エッジのフリー化に役立っているだけでなく、
次に書かせていただく接着の話しにもつながります。
(大切な事なので、後のほうで書かせていただこうと思っていたのですが、次に書きます)

もともと、ローズウッドは接着しにくい木なのです。
横板と裏板は、ローズウッドの横板と裏板同士が接着され、ライニングで補強されるわけです。
このライニングが、松とか柳とか柔らかい木だと、接着力が大きいのです。その、理由は次回で。


少し、横道にそれますが、これも私の考えですので、違うとおっしゃる方のほうが多いと思います。
それは、トーレスさんの作ったギターについてです。

浜田滋郎さんの 『絵でたどるギターのあゆみ』と言う本の、
35ページに タレガさんが ギターを弾いている絵があります。
サロンで、聴衆は彼を囲んですぐ近くで聞いています。8人が聞いています。
他にも、タレガさんの演奏をしている写真は、このように、
狭い場所で少ない人数で演奏しているものが多いのです。

この当時、大きなコンサートホールでギターを弾く事はほとんど無かったのでしょう。

19世紀ギターもサロンの楽器でした。でも、現在19世紀ギターは、
大きなホールでも、充分音が通りますし、しっかりした音で、聞く人に伝わります。

トーレスさんのギターはどうでしょうか?沢山の経験はありませんが、
200,300人程度のホールで、オリジナルのトーレスさんのギターを聞く機会は何度かありました。

その私の感想は、『 19世紀ギターのパノルモ、ラコートに比べて 
3分の1か、5分の1ほどしか聞こえてこなかった。
もちろん、現代のモダンギター程度には聞こえてきましたが』
と言う事です。あくまで、私の感想です。

しかし、狭い空間、近くで聞くと、物凄く良いのです。
イタリアのグロンドーナさんが講師の講習会で、目の前で弾いてくれたのを、
聞くと音も響きもボリュームも素晴らしかったです。


トーレスさんが、自分の楽器が100年後150年後には、
大きなホールで演奏されるから、それを見越して、作ったとは考えにくいのです。
大変な時代でしたし、一時は生活のため、ギター製作をやめ、瀬戸物屋を開いたほどでしたから。

そして、ギター製作の主な収入源の、ギタリストへの販売も、
ギタリスト自身が収入があまり無いと言う状況では、
難しかった時代と言う事もあるのでしょう。

となると、需要のある楽器を作ったと、考えるのが自然ではないのでしょうか?

サロンで使える、近くで聞いてとても素晴らしい楽器を、作ることに。
このことの、ひとつの原因が、ライニングにあると思っているのです。

ギターの神様 トーレスさんですから、反論も沢山あると思いますが、これはあくまで、
私の経験、感想です。トーレスさんのギターについては、
また、後で書かせていただこうと思っています。
普通に知られる、トーレスギターとはかなり違った姿のトーレスギターが見えてくると思います。

  1. 2012/01/29(日) 15:27:15|
  2. ギター
  3. | コメント:3

構造、設計 ② 分数ギター(ショートスケールギター)

分数ギターとは、あまりなじみが無い言葉ですが、
ヴィオリンなどでは、一般的に使われている言葉です。
(もちろん分数ヴァイオリン、分数チェロと言っています)

ヴァイオリンは、ギターより小さい時から始める人が多く、
分数サイズのヴァイオリンが必要なのでしょう。
2分の1,4分の1と言う小さなヴァイオリンは、小さな子供のために必要でしょうが、
4分の3と言った、ほとんどフルサイズのヴァイオリンまで用意されています。
( 4分の4のフルサイズで、弦長が33センチ、4分の3だと31,5センチくらいです)
体に合った楽器が選べるようになっているのです。

また、楽器のランクもいろいろ選べます。

オールドの骨董品的価値の付いたものは別にしても、
イタリアの巨匠クラスで、200万円とか250万円。
これは、例外としても、80万円から100万円。40~50万円、20~30万円クラスと。
この20~30万円クラスでも、沢山作られ、良い楽器もあります。

これに比べて、ギターはどうでしょうか?
私の知っている範囲では、アリアのぺぺギターが定価 52、500円で、
弦長 48センチ、53センチ、58センチです。

小平ギターは、定価63000円で、弦長 55センチ、59センチ、61センチです。
これ以外は、ヤマハなどで、安い楽器も見かけますが、クラッシクの入門用としては、
問題があるかな?と言うところです。

学生ギターコンクールなどで、小学生の低学年でも、
弦長65センチの大きなモダンギターを弾いているのを、よく見かけます。
小学生の高学年でも、大きなサイズのギターを器用に弾いている姿もよく見ます。
楽器として、5,6万円の子供用のギターを弾くなら、数十万円の大人用のギターのほうが、
少し無理をしてでも、音が良いほうが良い。と言う事で選んでいるのでしょうか。

私でも、普通のモダンギターは弾いていて、体に負担がかかりますので、
いくら体の柔らかい小学生でも、かなりきつくて、無理があるのではないかと思います。

ヴァイオリンだと、分数サイズの楽器の適応身長、とか年齢が大体決まっています。
ギターだとどうなのでしょうか?日本ではあまり研究されていないようですが、
ドイツの、ギター研究家、教育者のミハエル・コッホ氏が具体的な数字でこれを示してくれています。

  ――― 現代ギター 2008年5月号 No525号 13p ―――――

     現在の身長×0.36=最適な弦長 と言う公式です。

これは、脚も手も長い、ヨーロッパ人のプロポーションでの話ですが、この式のまま計算しました。

身長 180センチ 最適な弦長 64.8センチ

身長 170センチ 最適な弦長 61.2センチ

身長 165センチ 最適な弦長 59,4センチ

身長 160センチ 最適な弦長 57.6センチ

身長 155センチ 最適な弦長 55.8センチ

そして、この弦長の割合で、楽器全体のプロポーションも小さくするのです。

弦長が短いので、胴を厚くしたり、ボディだけ大きくして低音を出そうとしてはいけません。
ボディの大きさ、厚みが弾き易さに繫がるからです。

この結果、弦長65センチの現在標準のモダンギターは、身長が180センチは必要です。
小柄な男性だと、59センチか60センチ、小柄な女性だと55センチか56センチ、
と言う事で、私は55センチと、59センチで設計しています。

ここまで話を進めてくると、良く研究はしているかもしれないが、
一学者の研究で全てを推し量ってはいけないのでは?と言われそうなので、
リュートの話をさせていただきます。

私達がリュートを始めた、40年近く前は、弦長が63センチが標準でした。
(ルネサンスリュートの場合)でも、最近は59センチ、60センチが標準です。
63センチで弾いていて、苦労した和音が59センチだと、楽に弾けるのです。
ギターとリュートは違いますが、私の身長だと、(167センチ)
59センチの弦長が非常に弾きやすいのです。

私以外のリュート奏者も、59センチくらいが弾きやすいので、
今では59センチ、60センチがスタンダードになったと思います。
ですから、ギターも59センチで良いのではないかと考えました。

そして、もうひとつの反論。弦長の短いギターの利点は分かった。
でも、現実的に、使える59センチのギターが無いではないか、との反論が出てきそうですね。
いくら値段の高い楽器を作っても、モダンスペインギターの構造では、
レキントギター、アルトギターのような、低音が出なくて、響きも少ない楽器になってしまいます。

そこで、私の考える、ライニングが小さくて、表面板が大きい面積で鳴る楽器。
横板、裏板も薄くして、楽器全体で鳴る楽器が必要となってくるのです。

この楽器だと、低音の基音がはっきりしていますので、小さくても、
音楽を作ることが出来るギターになります。

響きや音色のため、これらの小型の分数ギターは、少し比重の大きい、
重い材料で作ろうと考えています。

次回、小型でもしっかり低音が鳴る楽器を作るために、
とても重要な部材、ライニングについて書かせていただきます。

追加で分かりやすいように、図面を作りました。

手元にあった、田村満さんのギターが一番外側です。
次に、私の弦長640ミリの楽器です。私の標準サイズです。
次の内側に書いているのが、私の弦長590ミリの楽器です。
一番内側は当然一番小さい、弦長550ミリの楽器です。

                UNI_0865 の補正


比較のために、表面板の面積を求めました。

550ミリ ---  928.9平方cm  (私の640ミリの楽器の 74.6%)
590ミリ --- 1096.9平方cm  (      〃     88.1%)

ちなみに、パノルモは 弦長 630ミリ 986.8 平方cm、
私の640ミリの楽器の 79,2% です。

偶然ではないのですが、下図を見ていただくと、パノルモと、私の550ミリの楽器とは、
上部膨らみ部分と、下部膨らみ部分はほぼ一緒です。

                 UNI_0873.jpg


パノルモより少し胴長が短く、面積も少し小さいですが、このサイズで、
パノルモより、響きのある低音を出そうと考えています。
  1. 2012/01/29(日) 00:15:04|
  2. ギター
  3. | コメント:0

構造、設計 ① その2

続きです。

もう少し、極端に大きさの違う楽器で考えましょう。

バスガンバのオクターブ上が、トレブルガンバです。弦長もほぼ半分です。
同じテンションで良ければ、同じ弦を張れば良いのですが、ちょうど、
バスガンバの1弦がトレブルの2弦と同じゲージです。
考え方を変えれば、バスガンバの1弦を4度下の音まで下げたときのテンションが、
トレブルガンバのテンションだと言えます。

ガンバは一般的な楽器ではないので、ヴァイオリン属で考えてみましょう。

チェロのオクターブ上がヴィオラです。弦長もほぼ半分ですが、
チェロもヴィオラも同じ弦は張っていないと思われるでしょう。
ヴィオラの方が細いと。

楽器が小さいと、質量も小さくなり、軽くなった分だけ反応もよくなり、
また、使われている部材も薄くなるので、細い弦で充分鳴ることは、考えられますね。

これと同じ事が、ギターでも考えられると思いませんか?

ちょうど、バスガンバの2種類の楽器の差と同じような事が、
ギターでは、19世紀ギターと、モダンギターで起こっています。

19世紀ギターは63センチの弦長のものが多く楽器全体も小さいのです。
モダンギターはご存知のように、65センチの弦長がほとんどです。

この19世紀ギターにモダンギターと同じ弦を張ると、非常にしっかりした手ごたえと、
弦の張りを感じます。
テンションが下がるのですが、細い弦を張ったほうが鳴る楽器もあります。

モダンの楽器と19世紀ギターを比べると、バスガンバのディヴィジョンと
フルサイズの大きなバスガンバ以上の差があるように感じます。
ですから、同じ弦を張ると、19世紀ギターの方が張りがきつく感じられても、当然だと思います。

ここで、私の考えるギターです。作っているギターです。

私のモダンギターは、63センチから64センチの弦長です。
弦長64センチの楓のギターを3台作りましたが、一般的なオーガスティンの黒で、
感覚的なテンションは充分ありますし、むしろ半音下げて 
(A=415)で弾いた方が鳴るような感じです。
もちろんボディはモダンに比べて小さくなっています。

逆の例が、大きなボデイのままで弦長を短くすると、
見事に張りの無い、寝ぼけた楽器になります。

私ではありませんが、弦長を短くしてくれと、頼まれて製作したのですが、
ボディを小さくすると、型枠からいろんな物を作らないといけないので、
弦長だけ短く作ったギターを実際に見たことがあります。

私が作りたい小型のギターの良さと正反対の楽器でした。

最初に書きましたが、これは楽器の大きさだけでなく、
ライニングや表板の設計にもその理由があります。

実際、64センチの楓のギターを作って弾いてみると、物理的なテンションは低いので、
左手は楽に押さえる事が出来ます。(弦長が少し短いだけで楽な所もありますが。)
右手も、力を入れなくても鳴ります。

前にも書きましたが、これは、特にアマチュアの方で、
人前で演奏される機会のある人には良い話です。

人前に出ると、右手に力が入りミスタッチが増えるという人にとって、
普段の練習で右手に力が入らない状態だと、人前に出たときにも、
少しは緊張で力が入るけれど、もともと普段は力が入っていないので、
普段の力が出るのではないかと思います。

これは、私がリュートとギターを弾いているから分かる事かもしれません。

リュートは右手に力が入ると、音がつぶれるので、普段から力を抜いて弾いています。
ですから、人前で弾いても、力が抜けているので、右手に力が入って、
ミスをする確率はかなり低いです。
曲が簡単だからだろうと言われそうですが、本当に申し訳ないのですが、
ほとんど練習もせずに、人前でリュートを弾かせてもらっています。
それでも、いつも「良い演奏でした。良い音でした」と言われます。
リュートがそういう楽器なのでしょう。

ところが、ギターはリュートに比べて右手に力を入れて、弾いていますので人前だと、
さらに力が入り、ミスタッチが増えます。
64センチの少しテンションの低い楽器を使うようになってから、
右手の力も少しは抜け、多少ミスも少なくなったように思います。

「本番でミスをするのは、練習が足りないだけ」と付き合いの長いギタリストには言われます
。ほとんど、練習もしていないのですから、ミスは当たり前かもしれませんが。

私にとって、モダンスペインギターは大きすぎ、少し弾いても腰が痛くなるし、左手もきつい。
そして、なにより、重くて、ネックも大きくて、私には合いません。

小型のモダンギターを作ろうとしたのは、まず自分が弾いて楽な、
音の良いギターを作ろうとしたことが始まりです。

私は今の日本人の平均的な身長に比べて、少し低いかもしれません。
(167センチくらいです)
でも、私が弾きやすいモダンギターのサイズが多くの日本人にとって、
弾きやすいサイズではないかと思っています。

私の記憶違いではないと思うのですが、有名なギタリストの鈴木大介さんも、
胴の薄いギターを弾かれています。日本人の二の腕の短さとか理由を挙げられて、
胴は薄い方が良いと、言われていたと思います。

今回は、いわゆるレディースサイズと言われる程度の、モダンギターの少し小型のギターの話でした。次回はもっと、進んで、さらに弦長の短い、弦長59センチ、55センチと言った、モダンギターではあまり見かけない、分数ギターについて書かせていただきます。
 
  1. 2012/01/27(金) 01:31:19|
  2. ギター
  3. | コメント:0

構造、設計 ① 楽器全体の大きさ、弦長など


 ここでは、一般に使われている、弦長650ミリの、
モダンスペインギターと比べての話をさせていただきます。

最適な楽器の大きさ、弦長などは ② の分数ギターの項でも書かせていただきますので。


まず楽器の大きさですが、今使われている、モダンスペインギターは日本人にとって、
大きすぎると思います。
小さくすれば、たくさんのメリットが出てきます。
そして、表面板の面積だけでなく、
胴の厚さなども弾き易さに影響が出てきます。


楽器を小型にするのは、反対だ。いや問題があると考えてられる方も、
多いと思います。
後で、書かせていただく、ライニングや表板の構造などで、
実際に鳴っている表面版の面積を考えると、私の作っている、
小型のギターの方が低音も出ます。

その理由も書いていきますので、もう少し先まで、読み進めていただけますでしょうか。

確かに、今の一般的なモダンスペインギターの構造のままで、
小さくすると、低音は出にくくなります。(アルトギターやレキントギターのように。)
モダンスペインギターの構造では、あの大きさが必要だと思います。

小さくして低音を出すには、構造を変える必要があります。
そして、構造を変えて、弦長を短くすれば、演奏しやすく、
テンションも下がるので、左手も楽になります。
左手が楽になれば、右手の力も抜け、余分な力が入らない分、演奏が楽になります。
そうすれば、緊張もしなくなり、人前での演奏が上手になる。
力が抜ければ、音に延達性が出て、大きな会場でも演奏が出来る。
と、良いこと尽くめです。

ここで、弦長を短くすると、弦のテンションが低くなり、楽器も鳴らなくなり、
右手の手ごたえもなく、頼りない楽器になってしまうのでは?との声が聞こえそうです。

このことについて、面白い話しがあります。
少し長くなりますが、大切な事なので、ここで書かせていただきます。

ヴィオラ・ダ・ガンバを作っている製作家でなければ、また、演奏もしている、
製作家でなければ分からない事ですので、どうぞ、お読み下さい。

ヴィオラ・ダ・ガンバは、ルネサンス、バロック時代に良く使われた擦弦楽器で、
ギターのように、フレットがあり(リュートのようにガットフレットです)
6弦で、4度調弦が中心の、ギターに近い楽器です。

トレブル(ディスキャント、ソプラノとも言われます)ガンバはヴァイオリンに相当し、
コンソートで高音部のパートを受け持ちます。テ
ナーはヴィオラに、バスガンバはチェロに相当すると思ってもらえばよいでしょうか。

ガンバはイタリア語で、膝の事を意味しますから、一番小さなトレブルでも、
膝の上に乗せて弾きますので、この名前が付いています。

そして、たまにヴァイオリンとかチェロの先祖がガンバ属という、
間違った事が書かれた本などを見ますが、
ヴァイオリン属とガンバ属は平行して使われていました。
どちらかと言うと、弦の数も多く、メンテナンスにお金のかかること、
そして、女性がヴァイオリンのように腕を掲げて演奏するのははしたないとされていた時代ですので、
ガンバ属のほうが、上流階級で用いられたようです。

主に用いられた、3種類の楽器のうち、バスガンバがソロ楽器になります。
(ちなみにリコーダーはアルトが、リュートはテナーがソロ楽器になっています)

このバスガンバは大きく分けて、2種類あります。
弦長が少し短い、(66センチ前後)小型のディヴィジョンガンバと呼ばれるバスガンバと。
本来のバスガンバの大きさで、弦長69センチ、70センチのガンバが。
弦長に比例して、楽器も大きくなりますので、同じバスガンバでもかなり大きさが違います。
チェロのフルサイズの4/4と3/4の差、違いと良く似ています。

ここからが、本来のお話しです。

面白いことに、同じ弦を張ると、弦長の短い(66センチ)ディヴィジョンの方が、
張りがきつく、弾いても、左手で押さえても、弦も硬く、テンションもきつく感じます。

逆に 同じ弦を 弦長 70センチの大きなバスガンバに張ると、
張りが緩く感じ、楽器がなんとなく、鳴っていない感じがするのです。

物理的には、70センチの弦長のほうが、66センチの弦長の楽器よりテンションは高いはずです。
でも、感覚的には逆なのです。これは、私の感覚だけでなく、
ギター弦としても、おなじみのフランスのサバレス社のガンバ用の弦は、
66センチ程度のディヴィジョンガンバには1本当たり、6キロのテンションの弦を。
(弦のゲージで言うと、1弦には0.66ミリの、2弦には0.89ミリの弦です)
70センチの大きなガンバ用には8キロのテンションの弦が
(ゲージでは1弦に 0.74ミリ 2弦には 0.94ミリ)用意されています。
大きい楽器では、太い弦が必要なのです。

長くなりますので、続きは次回に。
  1. 2012/01/27(金) 01:18:32|
  2. ギター
  3. | コメント:0

設計、構造に入る前に

いよいよ本題の設計、構造に入ります。

本題に入る前に、このブログを読んでいただいている方が、
一般的なモダンスペインギターの製作方法や設計をご存知だろうかと、考えました。

ギターを製作している方は、もちろんご存知だと思います。
また、ギター製作に興味をもっていて、いろいろ調べている方も。

でも、ギターが好きで、演奏はするけど、どのようにギターが作られているのか、
また、どのように設計されているのかは、分からないという方も多いと思います。

そのような方に、理解していただく方法は何が一番良いのか、考えましたが、
なかなか難しいことです。

一般的な、モダンスペインギターの製作方法は、本では、「Making master guitars」
Roy Coutnall 著 が日本語版でも 「メイキング・マスター・ギター」として、
現代ギター社から 4800円で出版されています。

日本でも、「スペイン式クラッシクギター製作法」と言う本が 
禰寝 孝次郎 さんによって出版されています。
2800円です。これも現代ギター社から。

でも、こんな本を皆さんに買っていただいたり、図書館で探していただくのは無理があります。
このブログを読んでいただいているのは、ネットを通してですので、
ギター製作家のホームページやブログを探していただくのが良いかと思いました。

こちらでも探してみました。「野辺ギター製作工程」 「ギター工房 SHOJI 製工程」
 Arai Guitar(荒井勝巳 手工ギター工房) →製作工程 
など、皆さんベテランの製作家の方々です。

そして、遅くして、ギター製作を始められた、松谷さんのHPも参考になると思います。
非常に丁寧に、素晴らしい楽器を作っておられます。
http://web1.kcn.jp/bienvenidos/index.html

これらの方々のホームページである程度の、製作工程は分かっていただけるのでは、
ないかと思います。

さらに、細かく 製作工程を公開していただいている製作家が 佐久間悟さんです。
ブログですが、http://www.wb.commufa.jp/lagrima/sakuma.html 
のホームページから見ていただくのが良さそうです。
直接佐久間さんのブログでしたら、製作工程のところを探さないといけませんので。
非常に丁寧に様々な工程を公開していただいています。

そして、この『クラッシクギター便利帳』と言うホームページは、
ギターに関する全ての事を親切にまとめてくれています。
ギターの事をもっと知りたいと言う人には、ぴったりのホームページです。

もちろん、この方たちの製作工程を見て、すぐにギターの製作工程が理解していただけとは、
思っていません。
本文中も、一般的な製作法になっている、スペイン式による製作法と私の製作法の違いも説明しながら書かせていただきます。

でも、私達が若い頃、ちょうど40年から50年前のギターブームの頃は、
今言われている、スペイン式のギター製作方法でなく、
もっと自由にギターを作っていたように思います。

ネックもいわゆる、スペインネックでなく、
ギターでいうところのドイツ式が多かったように思います。

最近、スペイン式によってギターを作っている人が増えてきた理由のひとつに、
コートナルさんの「Making master guitars」が出版され、
この本がとても良く出来た本だったので、また、活字の力もあって、
この本に書かれている方法が、本来のスペインギターの製作方法であると思われたからでしょう。

また、直接スペインに行って、ギター製作を学んできた人も増えてきたからだと思います。
スペイン式のギター製作方法の主な特徴は、表面版がカーブしてると言うか、
ドーム状になっていること。
ソレアという型を使って製作すること。ネックがスペインネックと言う事でしょうか。

本文に入るまでに、少し長くなったので、本文は次回から書かせていただきます。
  1. 2012/01/27(金) 00:04:08|
  2. ギター
  3. | コメント:0

糸巻き その2

前回の、糸巻きのブログを読んでいると、少し誤解を招きそうな所がありましたので、
訂正せずに、こちらで説明させていただきます。

材料と言う事ではないのですが、価格の安い糸巻きを使っていると書きましたが、
私は、ギターショップ『アウラ』さんの,HPで紹介されている、ドイツのシャーラー1万円くらいの物より
少し良いもの。後は、スローンさんの5万円くらいの物まで使っています。

国産では、1社くらいしかないのですが、私にはデザインが合わないのです。
デザインが悪いと言っているのでは、ありません。私には合わないのです。
唯一、私の楽器に合いそうで、軽い中級品は、軸を象牙に換えて使っています。
これは1万円はしません。
私には合わない理由が、もうひとつあります。

            
                   img523.jpg
         現代ギター社刊 クラッシクギター名器コレクション 2008 より


上の写真のように、中級品でも沢山のリングを使われています。
メーカーの技術屋さんの、創意工夫の賜物なのでしょう。
素晴らしい、技術だと思いますが、私の感覚には合いません。
くれぐれも、言いますが良くないとは言ってませんので。


でも、私にとって、最高の糸巻きは19世紀ギターのパノルモに付いている、ベーカー社の物です。
当時の糸巻きは、職人が手でネジをやすりで削って作っていたといいます。
軽くつまみも回って、抵抗がなく弦のテンションを直接感じます。
私達が見るベーカーの糸巻きは200年近く使われてきた物ですが、
それでも、スムーズに回ります。
もちろん、リングとか最低限の部品以外はなにもありません。

同じような、糸巻きが最近使い始めた,RUBNERというドイツのメーカーの物です。
メーカーは、有名ではありませんが、1864年からのメーカーで、
同じドイツの有名なメーカー(ライシェルのことでしょう)
よりいい物を作っていると言っています。
このメーカーの物も、リングなどは無く、最低限の部品だけです。

今の、工作技術で、普及品だから精度を落として作って、
高級品は精度を上げて作るとかするより、
同じ精度で数を作った方が、効率は良いとおもいます。

一番大事な、ウオームギヤとウオームホイルが同じなら、
部品数の少ないシンプルな物を選んでいるのです。

実は、私は自分の楽器に合った、軽くて性能の良い糸巻きを作ろうとしたことがあります。
ベーカー社の糸巻きのような。

何故、ベーカー社の糸巻きはスムーズに回るのか、ネジの専門家に聞きました。

一番の差は、ウオームホイルにあたるウオームギヤの数が現代のものは、2枚に当たっているが、
ベーカー社の物は3枚当たっている。
つまり、3分の2の力で回っていると、教えられました。

                        UNI_0848.jpg

写真の物は、ベーカー社の物ではありませんが、フランスの19世紀ギターについていたものです。
これは、ウオームホイルを大きくすることによって、3枚当たるように工夫されています。
ベーカー社の物は、ウオームギヤの直径を細くすることによって、3枚当てています。
その細いウオームギヤは、手で作らないと作れないそうです。

最終確認はしていませんが、もう一人のネジの専門家は、当時の機械だったら、
作れるだろうとの事でした。
当時の機械とは、種子島に鉄砲伝来とともに、ネジを切る機械も入ってきていて、
その機械だったら、切れるだろうということでした。

でも、当時の機械はありません。現代の技術で作れないかと、
ネジを作っている友人から、ネジを切る機械を作っている会社を紹介してもらい、
詳しく調べました。

専用の刃物を作れば、現代の機械でも作れる。私の会社は自分のところで、刃物も作っているから、
他社に比べて、安く作れます。との事でした。
その安い、刃物を作るだけで、100万円はかかるとの事でした。
そして、実際ネジを切って、作ってもらうと、1個1万5000円くらいにはなるとのこと。
数が沢山だったら、もっと安くなるそうですが、同じような糸巻きを欲しいと言ってくれる、
製作家もいないだろうし、原価で10万円以上かかります。
あきらめました。
でもこんな事をしている、ギター製作家はいないだろうな、と思いながら、いろんなネジ関係の
技術屋さんと会いました。面白いことが分かったり、勉強にはなりました。

これも、自分が作りたいギターのためでした。

こんな事をして来て、今の糸巻きを選んで使っています。
装飾がきれいとか、素材にお金がかかっているとか、そんな事は関係なく、
スムーズに回ってくれて、止まってくれる糸巻きが良いのです。
出来れば、軽くて。
そんな、糸巻きを付けたギターを、私のギターを選んでくれた方は、
気に入ってくれると期待しているのですが。


         
  1. 2012/01/26(木) 15:41:58|
  2. ギター
  3. | コメント:3

材料 ⑪ 糸巻き

糸巻きなど、どのメーカーの物を選ぶか、どのランクの物を選ぶかくらいしか、
考えようがなさそうですが、材質的に見直すとすれば、
弦を受けて、留めている軸(巻き軸)の部分です。

糸巻きにとって、ウオームギヤとウオームホイルとの遊びや、
巻き軸の芯(金属、スチールが多い)とプレートとの遊び、など工作精度の良いものとか、
選ぶ基準はいろいろあると思います。

でも、材質として考え直す必要のある部品は軸(巻き軸)です。
19世紀ギターの、音に芯があって、延達性に優れている原因のひとつには、
この軸に象牙や牛骨を使っていたからではないかと考えています。
また、19世紀の終わりから20世紀初頭にかけて作られた、
パーラーギターは金属の軸です。
この金属軸のパーラーギターも、音に芯があって、延達性に優れています。

現在、一般的に使われている、軸は芯が金属ですが、周りはプラスチック、樹脂です。
この樹脂がかなり柔らかいのです。
ギター作って、糸巻きを付けるとき、
余分な軸を切ると、あまりにも柔らかいのでびっくりします。
巻線の弦のあとがこの軸についていることがあるように、かなり柔らかい樹脂です。

ナットである程度、弦は保持されていますが、やはり糸巻きで弦は留められています。
この部分が柔らかいものだと、音が吸われるような気がしませんか?
吸われるほど、ひどくなくても、しっかり留まっていないイメージはありませんか?

私は、楽器本体が軽いので、価格的には安い、糸巻きを使って、(安い糸巻きが軽いのです)
軸を象牙や牛骨に替えています。
実際、軸を替えてみると、私にはかなり音がしまり、音の芯が出るように聞こえました。

最近は軸にアルミニュームを使った糸巻きもあるようですが、
表面硬度は牛骨のほうがはるかにあると思います。
樹脂よりは良いかも知れませんが。


以上で、ギターに使われる材料はほとんど、検討したと思います。
昔から使っているから(と言っても、モダンスペインギターでの場合が多いので、150年ほどの事ですが)
皆が使っているから、と言う理由でなく、
ヴァイオリン属、リュート、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロ、バロックギター、19世紀ギター
などの伝統楽器から、ヒントをもらって考えて、見直しました。

あくまで、私の考え、思いですので、一般的ではありませんし、
これが一番良い、普遍的なこととは考えていません。


これを読んでいただいた皆様が、
ギターについて考えるきっかけになれば、
幸いと思っています。


次回からは、いよいよ設計や構造の話しになります。
材料以上に一般的に考えられている、構造とはかなり違っていると思いますので、
なるべく分かりやすく書かせていただこうと思っています。

よろしくお願い致します。


  1. 2012/01/24(火) 11:00:44|
  2. ギター
  3. | コメント:0

読み物 その1 楽器を作るのに頭の良さは必要?

今までも、充分に分かりにくい事や、専門的な話が出ていましたが、これから、さらに
分かりにくい話が続きそうです。ここらあたりで、気分転換の読み物をひとつ。
と言っても少しは楽器作りに、関係してくることなのですが。


たまたま、テレビをつけて見ていると、(30年ほど前の話です)今は人間国宝になられた、
桂米朝さんが出てられました。

ある人が米朝さんに「落語家になるには、沢山、話も覚えないといけないし、
頭が良くなくてはなれませんか?」と聞いたそうです。
それに対して、米朝さんは「それは、話も沢山覚えないといけないし、
アホでは出来ませんな。しかし、頭が良すぎてもいけません。私ぐらいがちょうど
ええんですな」と、答えたそうです。

まさに、楽器作りもそうだと思うのです。
古い話ですが、こんな経験があります。

有名なチェンバリストで、沢山の楽器(オリジナルのチェンバロです)を弾き、資料も沢山
持ってられる方がいました。
彼が、初期フレンチの素晴らしい図面を持っていらっしゃいました。全体の大きさ、バランス、
構造どれをとっても、とても良さそうな楽器です。
この方向で作れば、良い楽器が出来そうでした。
ただ、初期の楽器なので、そのまま作ると、音域が狭く、使い勝手が悪いのです。

その後、すぐに有名なチェンバロ製作家に会いました。(とても、高学歴な)
「初期フレンチで素晴らしい楽器があって、少しだけ音域を広げると、とても良い楽器
が出来る」と某有名チェンバリストが言ってましたよ。と言うと、
即座に「これだから、素人は困る。1音変えたら、全然別の楽器になってしまう。
バランスも悪くなる」
とたちどころに、否定されました。
私だったら、この楽器の良さを考え、1音増やすことのメリット、デメリットを考えます。
頭の良い人は、判断が早いのでしょう。

逆に、そんな事はするまでもなく、分かっているだろう、と言う事をやっている人がいます。
結果はどう考えても、見えてるし、材料、時間の無駄と思われることを、やり続けている人が。
例えば、ギターの表板を4ミリ5ミリにすればどうなるか?やってみよう。
ギターの横板を5ミリにしてみたらどうなるのか?やってみよう。(これは実際にやっている人がいますが)
裏板をヴァイオリンのように削りだしで、作ればどうなるだろう?とか。
もっと、あっと驚くようなことを。

もうすでに、過去の沢山の製作家が試していることや、
調べればすぐに分かる事を何年もかかってやっている人がいます。
何百年も千年も生きることが出来て、いろんな無駄な事をやってもいい環境
(物凄いお金持ちで、いくらでも、楽器作りにお金がかけられる人)
だったら、そのうち、良い楽器が出来るかもしれませんが、人生には限りがあります。
長い年月かけて育ってくれた、材料にも悪いです。
実際に、そんな人がいました。出来てはすぐに壊し、また、作ってはこわしている人が。
一番材料がかわいそうでした。

桂米朝さんの話ではありませんが、「楽器を作るには、私くらいの頭がちょうど良い。
良くも悪くもない頭が」とつくづく思います。




  1. 2012/01/23(月) 23:56:17|
  2. ギター
  3. | コメント:0

材料 ⑩ フレット

フレットについても、一般的な洋白(洋銀、ジャーマンシルバーとも言われます)
か銀くらいしかなさそうです。

ところが、最近、樹脂でフレットを作って下さる方が出てきました。
実際に樹脂フレットを使ったギターを弾くと、リュートのガットフレットのように、
音の立ち上がりが良く、金属フレットのように音の頭がつぶれる事はありません。

これは、リュートやギターを弾いている人だと、感覚的に分かっていただけることかもしれません。
樹脂フレットのギターを弾き始めると、CDの上手なプロの演奏を聞いても、
テクニックや音楽性でなく、音の立ち上がりの雑音が気になって、聞けなくなってしまいました。

リュート奏者に弾いてもらうと、ギターはもう弾けない、と言っていた人が、
この樹脂フレットのギターだと、リュートのように弾けるのです。
音とか立ち上がりはもともと良い楽器だったのですが、一番の差はフレットだったようです。

私が樹脂フレットにすぐ飛びついたのは、リュートのガットフレットの良さを感じていたからです。
ただ、巻線部分では磨耗が激しく、(演奏する人によっても、かなり違います。
力を入れて押さえる人はもちろんだと思うのですが、
フレット上で弦が安定して押さえられない人も磨耗が激しいようです。
逆に大きな力で押さえず、弦を安定して押さえる事の出来る人は、
ほとんど磨耗する事はなさそうです。)
フレットを簡単に、交換できるように考えておく必要があるようです。





  1. 2012/01/21(土) 18:25:17|
  2. ギター
  3. | コメント:0

材料 ⑨ ブロック材

ブロック材も私は楽器を軽くしたい、楽器を鳴らしたい、と言う事で松を使っています。
ヴァイオリン属、ガンバ属も必ずと言ってよいほど、松を使っています。

スペインネックだと、ネックと同じ木を使うので、選択の余地はありません。
ドイツ式だと(このスペイン式、ドイツ式という呼び方に、私は違和感と言うか、
疑問を持っています。私が持っていた、1815年のドイツで作られたチェロは、
いわゆるスペイン式でした。修理で分解しましたので、間違いはありません。
そして、これも私が持っていた、ヴィオローネおそらく250年以上は経っていると
思われる楽器ですが、これもスペインネックでした。
スペインネックと呼ばれる、ギターが現れるもっと以前に、
スペイン以外の国で使われていた方法ですので、
スペイン式と呼ぶのはギターだけのことでしょうか?)
ネック材のマホガニー系統の木以外の木も使えます。

ただ、これも一般的なモダンスペインギターでは、
ドイツ式の楽器でもマホガニー系統の木が使われています。
でも、強度、粘り、軽さの点からも私は松、ドイツ松を使いたいと思います。

<注>
モダンスペインギター製作でのスペイン式ネックとは、
ネックと楽器の胴体内部のネックブロックと呼ばれる、補強材を
一体の木で作っている方法です。
それに対して、ドイツ式というのは、楽器の胴体内部に、ネックが付く場所に
ブロックを付けて、ネックを取り付ける方法です。
現代では、このブロックにほぞを組んで、ネックを取り付けるのが一般的です。






  1. 2012/01/21(土) 16:44:44|
  2. ギター
  3. | コメント:0

材料 ⑧ バスバー材 アンダーバー材

表面板のバスバーについては、バロックギターでも、19世紀ギターでも、
リュートでも、ヴァイオリンでも松が使われています。
当然私も松を使っていますし、これ以上のものは無いと思います。

問題は、アンダーバーと言われる、裏板のバスバーです。

裏板のアンダーバーは何故付いているのでしょうか?
表板のバスバーは、強度保持のためと、音を広げたり、しっかりさせるための物です。
それに反して裏板のバスバーの目的のひとつは裏板が平面だと、
人間の目には凹んで見えるため、膨らませるためです。

そして、もうひとつの目的は裏板の補強です。
裏板をカーブさせる事によっても、強度が出ますし、
バスバー、アンダーバーを付けることにより、さらに強度が増します。
私の考えですが、アンダーバーを付ける目的のためなら、
なるべく裏板に余分な質量を付けないでカーブさせたり、強度を上げたいのです。

楽器全体を鳴らそうとすると、当然裏板も鳴らないといけません。
そのためには、なるべく軽く、強度のあるものを選びたいのです。
と言う事は、裏板のバスバー、アンダーバーも松が一番だと思います。

一般的には、裏板にはライニングと同じように、
マホガニー系統の木が使われていますが、軽くて丈夫と言う事から、
また、軽く振動したり振動を伝えやすいという理由からも、
松を使いたいと思います。
  1. 2012/01/21(土) 15:15:39|
  2. ギター
  3. | コメント:0

材料 ⑦ ナット

材料 ⑦ ナット

ギターを製作されている方でも、全ての材料を一から見直すといっても、
「ナットは、象牙か牛骨しかないでしょう」と言われそうですが、
私はナットにスネークウッドや黒檀を使っています。

ナットに木を使うことによって、1弦、2弦の開放弦と弦を押さえて作る音の
差が無い、ほとんど変わらないように思います。
特に、象牙のナットのギターでは、1弦の開放弦から2弦の3フレットとか、
2フレットに移動すると、音色が違うので、2弦の5フレットの ミ
を使いたくなることがあります。(私には)
このようなことが、ナットを木に、換えることによって少なくなります。

また、ヴァイオリン、チェロなどヴァイオリン属の話ですが、
モダンヴァイオリン、バロックヴァイオリンでもほとんど、
99パーセントと言ってよいほど、黒檀が使われています。
弦の質が、スチールでもガットでも同じように黒檀が使われています。

ヴァイオリン属が昔から、黒檀を使い続けているのは、
黒檀が最も、良い材料だからだと思います。
その理由は、私がギターで感じているように、開放弦と押さえて作る音の差が無いと
言う事も、大きいと思います。

稀に、象牙の楽器もありますが、ガット弦を使うと、ナットの溝で弦が痛みやすいようです。
ギターは、古くはリュートと共存していた頃、リュートはペグボックスの角度がついているため、
摩擦を少なくするため、象牙を使っていました。
リュートが象牙を使っていたため、ギターもそうなったのかもしれません。

でも、スネークウッドとか黒檀を使うと、デメリットもあります。
やはり摩擦が少し大きいのです。
人によっては、音の差があまり感じられない、ほんの少しの差なら、摩擦の少ない
調弦のしやすさを取りたい、という方もいらっしゃいます。
そんな方には、象牙でナットを作ることもあります。

何事も、これがベスト、全てと言うわけではありませんので。

  1. 2012/01/20(金) 08:54:58|
  2. ギター
  3. | コメント:0

私を含めて、関西の木工家26人が紹介されている本が出版されました。

私を含めて、関西の木工家26人が紹介されている本が出版されました。

西川栄明さんの新刊です。

img520.jpg




著者 西川さんの案内文です。

・タイトル:『一生つきあえる木の家具と器  関西の木工家26人の工房から』
・著者:西川栄明
・発行:誠文堂新光社
・発売:2012年1月20日ごろより、全国主要書店やアマゾンなどのネット書店で発売
・定価:1890円(税込)
・体裁など:B5判変型、本文176p(オールカラー)
・内容:
関西地方に在住し、木を素材にしてものづくりしている人たち(木工作家、木漆工芸家、クラフト作家、木のおもちゃ作家、楽器製作者など)の、作品への思い、人となり、ものづくりの考え方などを紹介。
・掲載者(掲載順):
徳永順男、山極博史、窪田謙二、宇納正幸、西良顕行、岡田光司、建田良策、朝倉亨・玲奈、北島庸行、永野智士、古谷禎朗、戸田直美、桧皮奉庸、坂田卓也、
藤嵜一正、森口信一、宮本貞治、佃眞吾、新宮州三、富井貴志、
川端健夫、難波行秀、加藤良行、上原雅子、平山照秋、松島洋一

私のページは6ページほどですが、カラーの写真も沢山載せていただいています。

img521.jpg

  1. 2012/01/19(木) 19:25:27|
  2. その他
  3. | コメント:0

材料 ⑥ ブリッジ(駒)

一般的にローズウッドやハカランダが使われていますが、音作りの方向として、
19世紀ギターのような側鳴りせず、密度のある音を作るなら、
黒檀も考えてよいのではないかと思います。
(19世紀ギターではよく黒檀が使われていました)

リュートでは、昔から洋ナシなどのように実のなる木が使われていました。
実のなる木は一般的に粘りがあるので、リュートのような楽器には良かったのでしょう。
また、本体に使われていたので、楓のブリッジも多いようです。
でも、これらはリュートの話であって、ギターの話ではありません。
知識として知っておいていただくことですので。

ローズ、ハカランダにしても、長年使っていると、特に巻線の4,5,6弦
のブリッジの穴は、大きくなり、弦を留めているところが痛んできます。
私はバロックの弓に良く使われる、スネークウッドで補強しています。


              img516.jpg


よく象牙や貝で、装飾を兼ね補強用にしている楽器を見かけます。
これは、あくまで、私の感想、考えですが。

ギターは、音を弦で振動させ、それをブリッジ(駒)で受け、
表板に振動を伝えます。
この大切な部分に、異質な硬い象牙や貝などを付けてしまうと、
音も硬くなるように思います。私には硬く聞こえます。

19世紀ギターなどに比べると、もともとの音がはっきりしないモダンギターでは、
モダンスペインギターの音を作るため、固い象牙、貝などを使って音を固めにするとか、
音の輪郭を作って、はっきりさせたり、高次倍音を増やすとか、
と言う意図があるのなら、それはそれで良いと思います。

でも、私の作るギターは19世紀ギターに近い、音色なので、
これらの必要はありません。スネークウッドは硬くても木です。
黒檀以上に硬く、また美しいので、音色を変えずに補強になるので、
私はスネークウッドを使っています。

次にブリッジで問題と思うのが、骨棒(サドル)の材料です。

普通に象牙、牛骨が使われていますが、楽器によっては、
黒檀、スネークウッドを使っても良い場合があります。

前にも書かせていただきましたが、弦の振動を本体に伝える最初の部分がブリッジ、
それも骨棒(サドル)です。
この部分を象牙のような硬いもので受けると、バランスなどは良くなると思いますが、
楽器が鳴らないように思います。

実際、何台もの楽器で試してみましたが、黒檀に替えると、
楽器が鳴ってきます。明らかに鳴ってくる楽器もありました。
(倍音ばかりで鳴っている楽器では、あまり差はありませんでしたが、
基音の多い楽器だと、劇的に鳴ってくる楽器もありました。)


ヴァイオリンの場合ですが、駒のE線(一番高音の細い弦です)
が駒に食い込まないように、下図のように、小さな3角の象牙が付けられた、駒があります。

                 img517.jpg


しっかり作られた、新作のモダンヴァイオリンでも、
この小さな象牙が付けられた駒を使うと、音が硬くなりますし、楽器が鳴らないのです。
わずかに倍音が増える感じはありますが。
この小さな三角の象牙でも音にかなりの影響を与えますので、
ギターのように大きく、使うことはどうでしょうか?

ただ、もともとよく鳴るように、作ってある楽器の場合、象牙を使うと、
音の輪郭が出たり、高次倍音が出ることが、良い方向に働く場合もありますので、
楽器によって何を使うか考えても良いと思います。

一般的に牛骨をそして高級な場合は象牙を使っているから、
象牙で良いのではないかと、簡単に決めてしまわずに、よく考えてもいい部品ではないかと思います。

ローズとかハカランダで作られたモダンギターと弾いている人にとって、
楓のギターを弾く場合は、象牙でも良いように思います。
象牙の方が、ローズなどで作られた楽器に近い感触になるようです。


黒檀より硬い(個体差はありますが)スネークウッドは、
少し油気があり、骨棒には合わないように思いました。

  1. 2012/01/19(木) 08:41:11|
  2. ギター
  3. | コメント:0

材料 ⑤ 指板

指板は一般的に使われている黒檀が良いと思います。

ただ、多弦ギターでネックの幅が広く、指板も広い楽器などはローズウッドなど、
少し比重の軽い木を使ったほうが良い場合もあるように思います。
長年使うと指板の減りが心配ですが、ローズウッドの上に薄い黒檀を張るという手もあります。
これも、指板を軽くして、楽器を鳴らそうという発想でそうするのですが、
この必要がない(楽器を軽くしたり、指板を軽くしてバランスを取ろうとか考えていない方)
と思っている製作家には関係ない話かもしれませんが。・・・・

ここで。すこしヴァイオリンの話をさせていただきます。
現在はムクの黒檀を使っている指板ですが、
1940年くらいまでの楽器はガット弦が使われていました。
ガット弦で良く鳴るように、楽器を軽くしたい、
楽器のバランスを良くしたいとのことから、
一見すると全部黒檀のように見えますが、
ガンバの指板やバロックヴァイオリンの指板のように、
松などの針葉樹の木に薄い黒檀を巻いている指板をたくさん見ました。
ガット弦に近いナイロン弦のギターでも同じように考えてもいいのではないでしょうか?

                img512.jpg


同じような例が、リュートのネックです。
リュートも本体が軽く(私のルネサンスリュートでは 650グラムくらいです)
ネックが重いとバランスが取れなくなり、演奏も難しくなります。
それを解消するために、ガンバやクラッシクまでのヴァイオリンのように
針葉樹などの軽い木の周りに、ローズウッドや、楓、黒檀のような硬い木を巻いて
ネック自体を作っていました。

19世紀ギターにも同じような構造の楽器を見ることがあります。
昔の人は、バランスを取るため、軽くするための努力をしていたようです。


  1. 2012/01/16(月) 19:08:39|
  2. ギター
  3. | コメント:0

習うと言う事 その2 楽器製作

いよいよ本題です。

楽器製作に関しては、私は誰にも習っていません。
楽器製作に必要であろうと思われる、木工についても誰にも習っていません。

初めて、楽器を作ったのは、17歳の時、45年前です。
そろそろ、ギターを始めようかと、思っていたときです。
現代ギターと言う雑誌があって、その通信販売で、ギターキットがあったので
このキットを使って作りました。
その頃は、今からギターを、演奏を、音楽を習っても、たいしたことは出来ないと、
思っていましたので。

小学校の時に、近くに日本画を書いている人がいて、遊びに行って手ほどきはしてもらいました。
中学に入り、美術部でデッサン、油絵、版画、木彫などを、そして、高専では引き続き、
油絵、陶芸などもやりました。

音楽は全然やっていなかったので、演奏より作る方が合っているのではないかと思ったのです。
キットも自分で作り、自分で楽しんでしました。
後で、この楽器は12弦に弦を増やして、指板を張替え、フレットを巻きつけ、ヴィウエラ
として使っていました。

そんな頃、植木先生と出会い、演奏が面白くなって、製作は興味と時間がなくなりました。
その後、公務員となり、月100時間ほどの残業が毎月続き、音楽も、結局一番自分が好きな音楽は
バロック、ルネサンスだったので、ギターの次にガンバを、そして、リュートを始めました。

仕事が忙しいから、逆に音楽は続けたいと思いました。仕事だけの毎日ではいやになりますから。
そのうち、残業が月200時間くらいになってきて、プロの方と演奏会をする程度になっていたのですが、
練習する時間も無くなり、プロの方の脚をひっぱている状況になりました。

でも、仕事だけでは嫌だったので、1日10分でも20分でも形に残る事を、と言うわけで
楽器つくりを始めたのです。

最も、その頃はリュートを弾いていて、ガンバのレッスンを受けたくなったのですが、
楽器が無かったので、ガンバを作らないといけない状況だったのです。

初めてのガンバは仕事をしながら、3週間で作りました。
この楽器は今、広島で元気に何のトラブルも無く演奏されています。
2台目の楽器は、プロの合奏団からの依頼で4週間で作った、フィーデルです。
これも、今香港で元気にしていると聞いています。
(4週間で確か、78時間残業して、通勤に往復2時間かけていましたから、
寝る時間はあったのでしょうか?)

当然、周りにガンバもフィーデルも作っている人がいなかったので、
誰にも教えてもらわず、自分で勉強しないといけなかったので、
ヴァイオリンの製作に関する本は、集められるだけ集めて、段ボール箱
一杯になりました。
ガンバなどの製作に関する本はありませんから。

近くに楽器製作の先生がいたら、習っていたでしょうか?
絶対に習っていなかったと思います。

私は音に弾かれて、ギターを、そしてリュートをガンバを始めたのです。
自分が弾きたい楽器を、自分が出したい音が出る楽器を作りたいと思って、
楽器つくりを始めたのです。
誰かに習うと言う事は、その人の音が入ってしまうと考えたのです。

誰かに習うと、確かに早く手順とか技術は身に付くように思いますが、
教えてもらう事は、その教える人の手順、技術であって、教えられる人の物ではないのです。
借り物の技術なのです。
借り物の技術、知識を離れて、自分の物を確立する時に、逆に邪魔になり、
遠回りになると考えました。

実際、うっかり聞いてしまったことがあって、(親切に教えてくれるので、つい聞いてしまいました)
その時、なるほどと思ってしまって、(その人は何十年と作っているのですから)
その事について考える事を辞めてしまいました。
簡単に考えても、その人が何十年かかかって、身に付けたことですから、それ以上のことは
思いつきません。
20年ほど経った時、そのやり方は、その人のやり方で、私のではない。
私の方法はこうだと、思ったのです。
教えてもらっていなければ、そのことについて考えるので、もっと早く自分の方法、
メソッドを見つけていただろうと思います。
回り道でした。

先生につかないということは、全て自分で考え決めなくてはいけません。
いろんな楽器の製作方法を、本で調べたり、昔の製作家の仕事を調べたり
楽器を見たり、弾いたりしなくてはいけません。

でも、この自分で調べて、自分の知識とした事は、自分の物です。
自分の武器です。応用が利きます。

教えてもらった事は、応用が利きません。

また、いろんな楽器を作ることが、勉強でした。
リュートから、ギターが。ガンバからギターが。
チェンバロからギターが。分かるのです。

一般的に知られていないのですが、ヴァイオリンで有名な
ストラディバリは、ヴァイオリンの他に、ヴィオラ、チェロ
はもちろんの事、ギター(10台以上は現存していると聞いています)
リュート、ハープ(それぞれ1台現存しています)
マンドリン、ガンバ、弓、ヴァオラ・ダ・モーレ
なども作っていました。
アマティと言う先生はいましたが、彼のようにいろんな楽器は作っていませんでした。

昔の職人さんは、師匠が教えてくれるのでなく、むしろ仕事を見せてもらえずに、
技を盗むようにして、技術を身に付けたといいます。
このほうが、自分で考え、自分の応用の技術が身につくと
昔の師匠は考えたのでしょう。
こうしていても、仏像、陶芸などは時代が下がると(現代に近づくと)
品下がると言われて、昔の物の方が素晴らしいと言われます。
まして、手取り、足取り教えられると、自分の物を作るまでに大きな回り道を
することになると思います。

幸い、私が住む、丹波には今の丹波市氷上町に達身寺と言うお寺があります。運慶がここで修行した
と言われているお寺です。
田舎の小さなお寺なのですが、沢山の仏像が残されていて、仏師の里ではなかったかと、
言われています。
ここで、古い時代の仏像から新しい仏像が、一度に見られます。
確かに、古い仏像の方が絶対にいいのです。

同じように、陶芸でも篠山市に古陶館ということろがあって、古いものから順に展示してあります。
面白い物は、桃山くらいで、なんとか江戸中期くらいまでの物が、面白いです。

後期の物になると、デザイン、形が定型化されていって、面白みに欠けます。

楽器も同じような事が言えると思います。

私には、弟子がいません。と言うか、いるのですが、皆私より年上で、
指導させていただいているという感じです。

遅く楽器製作を始めた人が多く、すべての事を教えています。
ですから、1台目、2台目の楽器が10年20年作っている人より
良い楽器を作ります。

もし若い弟子がいたら(絶対にいないのですが)
何も教えず、その弟子が自分で気が付いて、自分の力となるように
ヒントを与えるようにすると思います。

一番親しかった画家の話です(お互い忙しいはずなのに、1週間のうち、4日ほどは明け方まで
酒を飲んで、いろんな話をしていました。良くこれだけ、話をすることがあるなあ、
と自分でも感心するほどでした)
歌舞伎の絵の「まねき」は、彼が日本中の劇場の9割以上は描いています。

絵の教室をも持っていて、指導もしているのですが、女性や年配の
生徒には、詳しく丁寧に教えているのです。
でも、将来作家になる、若い男性の生徒には、技術的なことは一切教えず、
作家として生きていくには、絵描きとはどうあるべきなのか?
と言った話しかしていませんでした。

楽器製作もこれでいいと思います。
作るのは、そのお弟子さん本人なのですから。

ですから、よく楽器製作家が、いろんな製作家のところに行って、
いろんな教えを受けたり、アドヴァイスをもらっていると言う話を
聞くと、(特にギターに多いように思います)
行って何をするの、何を聞いてくるの?と思います。

ブーシェさんの楽器が好きで、同じような楽器を作りたい。
トーレスさんの楽器が好きで、同じような楽器を作りたい。
ハウザーさんの楽器が好きで、同じような楽器を作りたい。

と言う出発点なら、なんとなく話は分かるように思います。
でも、私は自分が作りたい楽器を、作りたいのです。
でも、その楽器は私でなければ、作ることが出来ません。
そして、その楽器は今までの楽器とは、違うのです。
それで、どのような楽器なのか、分かっていただくように、
このブログを作りました。

長くなってすみません。私も仕事をしないといけないのですが、
つい伝えたい事があると、長くなってしまいます。

少しづつ、書かせていただきますので、これからもよろしくお願い致します。










  1. 2012/01/15(日) 15:45:04|
  2. ギター
  3. | コメント:1

習うということ その1 音楽のレッスン

気分転換ついでに、私の楽器製作にも関連してきますので、
習うと言う事を、私はどう考えているのか、
また、長くなりますが、お時間のある時にどうぞ 

仕事柄、いろんな方のレッスンを見せていただきます。そんなレッスンの様子を。

「私は音大を出て、音楽は分かっています。ですから、楽器の奏法だけを教えてくれればいい」
と最初に言っているかのような、音楽はそっちのけ、と言うレッスン。
反対に、この生徒の段階で、プロの奏者でもそんな事はしていないだろうと、
思わず突っ込みたくなるような、細かい事までレッスンしているとか。

何か、金儲け主義のお医者さんのような。
長く患者でいてくれるほうが、儲かるので。完全に直さなくて、
長年病院通いをするように、治療しているような。

全然うまくならなくても、辞められるし、あまりすぐに上手になっても、
自分の手から離れるし、そこそこ少しずつうまくなるように、教えているのかな?
と思うことが。

私の最初のギターの植木先生は、出来の良い生徒は高校生の時に、
1年と少しでプロが出るコンクールに(日本ギターコンクールだったと思うのですが、)優勝。
社会人だった先輩は2位に。
そして、出来の良くなかった、私でも、1年目でギター教室の先生を出来るくらいに、
してくださいました。

でも、この素晴らしい先生に出会うまで、何軒もギター教室を回りました。
ほとんどが、何年も習っていても下手な生徒の教室がほとんどでした。
最後に家から歩いて3分の所に一番良い先生が見つかりました。
習い始めて半年もしていない生徒が、他の教室だと、
5年も6年も習っている人より上手だったのです。

居合いでも、そうでした。私は54歳から習い始めて、
6年後の60歳の時に、最高位の7段(宗家が8段なので、私達は7段までです)
そして、他の流派の免許皆伝に相当する免状をもらいました。
他の流派でしたら、30年以上かかると思います。
これも私の力でなく、先生の力でそうしてくださったのです。


医療の世界でも、セカンドオピニオンというのが、当たり前になりつつ
(そうでもないですか?)あると思うのですが、
学校でないのですから、他の先生のレッスンを見せてもらって、
いい先生を探してもいいのではないでしょうか? 

それと、私と同じ世代で、まだまだ忙しくしていて、
練習の時間が取れない方も多いと思います。
そんな時は、簡単な曲でもいいですから、曲を弾きましょう。
音階練習や、アルペジオなどは、時間がたっぷりあるプロに任せましょう。
いや、プロなら、毎日2時間以上は音階、
アルペジオ他の基礎練習をしなくてはいけないと思います。

時間の無いアマチュアは、一番基礎となる、音楽の大切な事、
音楽性とテクニック、同時に時間を使うべきだと思います。
テクニックは音楽性をより高めるために必要な物で、音楽が伴わない、
テクニックの練習は時間を半分しか使っていないのではないかと思います。

簡単な曲でも、好きで長年弾いている曲でも、その曲を音楽的に完成させるためには、
どのようなテクニックが必要か考えて、その練習をするのなら、意味があると思います。

楽器の演奏が上手になるためには、テクニックが上達する事も大切ですが、
それ以上に、耳がよくなることが大切だと思います。
よく、音楽を習っている人から、全然上手にならない。
と聞かされることがあります。
でも、聞いている私達には、物凄く上手になっていることが。
これは、武道でもよくあることです。テクニックより先に耳が進歩していて、
出来ていない所や、あらばかり聞こえてくるのです。

耳とテクニックが同じ速度で進歩すると良いのですが、これは難しいことです。
逆に、耳の進歩が遅くて、テクニックが先に行くと、一番悲惨です。
いずれは、壁に当たって音楽をやめると言う事になりかねません。

こんな時は良い先生に習っていると、その先生を信頼していると、
間違った方向には行かないのですが。

こんな経験を音楽をされている方はありませんか?仕事が忙しくて、
音楽を聴く時間も練習もする時間が無くて、長い間楽器を弾いていないのに、
上手に弾けることが。
これは耳の方が退化して、音楽を聞くことが出来ないため、
上手に弾けていると勘違いしているのです。 

音楽は美術と違って、基本的なテクニックが無いと表現しにくい芸術です。
美術でも、毎日何時間もデッサンしていないと、思った線が描けないという作家もいます。
この作家と、基礎のレッスンをしていない作家の作品を見極める事の難しさに比べたら、
音楽は分かりやすいと思います。
音楽を、自分の音楽を表現するためには、ある程度のテクニックは必要だと思います。
その上で、その人の人間性、今まで習ってきたこと、やってきた事が出ると思います。

よく分かった楽器製作家と話をしていると、
「音楽はまだ、レッスンをしたりして、習ってよくなることがあるが、
楽器は作っている人間性を変えないと変わらないから、大変だ」と言う話が出ます。

もちろんきれいな楽器を作ったり、
バランスのよい楽器を作ったりは習っても少しはよくなるとは思いますが、
それは枝葉のような気がします。
もっと、音楽の事を知ったり、よい音楽を聴いたり、
よい音楽家と付き合うことのほうが、大きいように思います。

そして、その延長線上に絵画や陶芸でも工芸でも、
能でも狂言でもお茶でもお花なども、あるような気がします。

 最近、ギターでも、ピアノでも、ヴァイオリンでも武道でも、
最初から間違ったことはせず、
基本をしっかり教えてくれる先生の生徒は上達が早いように、
思うことが良くあります。

よく聞く話ですが、独学でやっている人が、
最初に基本をしっかり習っていたら良かった、と言うことを。
でも、なかなか基本をしっかり教えてくれる先生は少ないようです。

でも、よい先生を探すことが出来れば、
貴方も1年でコンクール優勝!!とは行かないでしょうが、
一生、音楽を友にすることが出来ると思います。

見つけることが難しい環境の方は、「録音するのが一番いい先生だ」
と言うことを40年も前からおっしゃてられる、
リコーダーの先駆者の、長い付き合いの音大の教授がいます。
録音すれば、自分の悪い所が山のように出てくると思います。
それを、自分で治せばよいのです。
出来ることなら、悪い所を直すだけでなく、
自分の良いところは延ばしていければ、さらに良いのですが。


今まで書かせていただいたことは、あくまで演奏はプロでない私の考えと、感想です。
そんなことは無いと、思われる方もいらっしゃると思いますが、
こんなことを考えている人間もいるのだな、
と思ってくだされば、それでよいと思うのですが。
いかがでしょうか。


  1. 2012/01/15(日) 12:32:23|
  2. ギター
  3. | コメント:0

友人達の演奏会

いつも、難しい話しばかりで、少し気分転換に友人達の素晴らしい演奏会のお話です。
あまり日が経っても、いけないので、このあたりで。

まず、10月に行われた、芳仲猛 ギターリサイタル
参照のプログラムが演奏曲です。アマチュアですが、立派なプログラムだと思いませんか?
彼は、高校時代にギター三昧の生活を送っていて、大学受験で中断、9年前から再開したのです。
私の作るようなギターにも興味を持っていて、リュート、バロックダンスなども勉強中です。
演奏はミスもありましたが、そんな事は全然気にならない演奏でした。
お客さんも暖かいお客さんで、音楽、彼が作る音楽を楽しんでいたようです。
アマチュアはミスなど気にしなくて、自分が弾きたい音楽を弾けば良い。
と言う見本のような演奏会でした。

バッハのプレリュードは若い頃弾いて、途中で止まってしまって、
演奏をやめた事があるそうです。今回もミスしていましたが、
最後まで行って良かったと、話を交えながらの演奏でした。

学校の先生をやっていて、お話しはプロのギタリストよりはるかに上手で面白かったです。

                        img509.jpg


次は、渡部延男さん。
40年近い付き合いです。が、40年ほど前に一緒にシェーファー先生にリュートを習って、
その後彼は、スペイン、フランスに行ってしまって、たまに会う程度でした。
最近、チェンバロの三和睦子さんにレッスンを彼の生徒さんとか本人も受けるようになって、
よく会うようになりました。

彼は、華々しく活躍していた1984年に左指の原因不明の障害のため、
第一線を退き、後進の指導の当たっていました。

2005年に東京女子医大で手術を受け、障害を克服しましたが、
かなりの時間、リハビリ等が必要で、昨年くらいから少しづつ弾けるようになっていました。
芳仲さんも、渡部さんも今年60歳の還暦と言う事で、頑張ってリサイタルを開いたようです。
著名なギタリストも来られていましたが、彼のお弟子さんの松尾俊介さんとかも。
皆、「これがデビューリサイタルなのだから、良くやったよ」と感想を言ってました。
本当に良く頑張ったと思います。

                       img510.jpg


と言う事で、ギターを弾いたり、ピアノを演奏している皆さん!
ミスをしないように、練習するのはもちろんですし、音楽的な勉強は必要ですが、
人前で弾く時は、良い音楽を、その人の音楽を作ってくれていれば、ミスは気にならないものです。

本人が気にするほど、ミスは気になりません。

どうぞ、リラックスして演奏してください。










  1. 2012/01/15(日) 10:43:48|
  2. 演奏会
  3. | コメント:0

材料 ④ ライニング材

一般的な、ギターの材料として、ライニングなどはほとんど問題にされません。
でも、私にとって、後の構造のところで詳しく述べますが、大切な事です。

ライニングは楽器にとって、構造的にも、音的にも最も重要な部分だと私は思っています。
特にモダンスペインギターと私の考えるギターとの最も大きな違いの箇所です。

一般的にはネック材と同じ、マホガニー系統の木が使われますが、
私は比較的柔らかくて軽い針葉樹系統の木を使います。

これは、構造のときにも述べさせていただきますが、
この部分を固めたくないので、柔らかい材料と、
余分な質量をこの部分に与えたくないという理由から、
軽い材料を使っています。

ストラディヴァリウスもライニング材には柳の木を使っていました。
(今ではあまり使われなくなった柳行李・・やなぎこうり・・
で分かるように非常に柔らかく、粘りもある木です)
彼もこの部分を固めたくなかったのだと思います。

あと、ギターではないのですが、ガンバ、ヴァイオリン属では
8の字型ではないので、コーナーが存在します。
このコーナーには、ブロック材があるのですが、
このブロック材も、軽い針葉樹で作るのが一般的です。
ガンバ属、ヴァイオリン属では。
これも、コーナーを固めることなく、
軽くしたいからです。


  1. 2012/01/14(土) 18:29:40|
  2. ギター
  3. | コメント:0

材料 ③ ネック材

③ ネック材
このネック材も、モダンスペインギターでは、
ほとんど100パーセントマホガニー系統の木で作られています。
(私も横板をローズウッドの時はセドロを使っています)

これも、ヴァイオリン族、ガンバ族で使われているからと言う理由だけでなく,
奏者が直接触れるところですし、
楓の密度と粘りがネック材には適していると思います。
実際に加工するとマホガニー系統の木に比べると、何倍も硬く
(感覚的には、3から5倍くらいでしょうか)粘りがあります。
これも音に影響していると思います。

ただ、他の木材でもそうでしょうが、
(横板、裏板のところでも書かせて頂きましたが、)
特に楓は木によって個体差が非常にあるので、使う場合には注意が必要です。
逆に選ぶことが出来るので、自分が作りたいギターにあったネック材を選ぶことが出来ます。
(ただ、楓のネック材の値段が非常に高く、入手も難しいと言った、難点はありますが)

それと、これは構造の面でも関係があるのですが、
一般的なギターではかかとの部分を何枚かの板を張り合わせて材料を作っていますが、
これも、ヴァイオリンやガンバのように一本の木から削りだしたほうが、
ネックを支える、音の支える最も重要な部分ですので、音的にも有利かなと思います。
かなり古くなった、ギターでこの何枚かで作られた、
ネックのかかと部分で剥がれかけている楽器を見ました。
と言っても、ギター用の材料では、1本の木から作れるような材料はありませんので、
しっかり接着すれば問題は無いと思います。

私の楓のギターは全て、ヘッド部分以外のネックは1本の木から削りだしています。
演奏家の方にとって、楓のネックの感触や音はとても、良いようです。

10弦ギターのネックとかかとです。

10弦ギターのネックとかかとです。

やはり楓はきれいですね。

やはりかえではきれいですね。
  1. 2012/01/13(金) 14:55:26|
  2. ギター
  3. | コメント:0

材料 ② 横板、裏板

② 横板、裏板
私が作りたい、音に粘りがあり、減衰の長い楽器にとって、楓が最も適していると考えています。
比重も軽く(小さくと言わないといけないのでしょうが)立ち上がり、音の明るさなどの点から、
また、木目の美しさも、ヴァイオリン、チェロ、ガンバなどの楽器で、長年使われてきた材料ですから、
一番だと思います。

ただ、長年モダンスペインギターを弾いてきたギタリストの方にとっての、
ギターの音とは違うかもしれません。
確かに、私の作った楓のギターはガンバや、リコーダー、ヴァイオリン、ピアノなどを弾いている人たちは、
「きれいなギターの音ですね」と言ってくれます。

また、良いモダンスペインギターを聞いていないからだと言われそうですが、
音楽を作る素材としての、ギターの音はどうなのでしょうか?
少なくとも、他の楽器をやっている、私の周りの音楽家は一般的なモダンギターよりは、
楓の私のギターを美しい音、音楽的な音と認識してくれています。
ですが、長年モダンスペインギターを弾いてきているギタリストの方に受け入れられやすい音は、
ローズで作ったギターのように思います。
高音域の倍音が楓に比べて多いですし、輪郭のはっきりした、
弾いている人の耳に届きやすい音かもしれません。
今まで、作ってきたギターのうちローズで作ったギターは、モダンギターを弾いている人に、
楓のギターは19世紀ギターを弾いている人のところに行きました。

モダンギターを弾いている人にとっては、やはり自分が弾いているギターの音を、
自分が聞きたいと思われるようです。
また、それを大事にしているギタリストの方も多いようです。

普段19世紀ギターを弾いている人は、ギターが鳴っていれば、自分に帰ってこなくても、
前には出ている、遠くに音が飛んでいる感じは分かってくれていますので、
楓のギターを選ばれるようです。

最近、材料屋に行くと、今まで見たこともないような木がどんどん出て来ています。
中には、ギターに合いそうなものもありますので、充分に乾燥させて使おうと思っています。


昔からアコースティックギターにも使われている、マホガニーは粘りが少ないようですし、
音が少し軽くなるようです。
胡桃の木(ウオールナット)なども、昔から弦楽器に少しは使われていましたが、
これも、少し音が軽いようです。木そのものの比重が小さいからでしょうか。
逆に軽い音を作りたい場合は良いかもしれません。

見た目の、上品さ(楽器としての)センスなどが合えば、もちろん音が一番重要ですが、
新しい材料で自分の求めている音のギターが作れるかもしれないので、
ココボロ、ニューハカランダと呼ばれる材料、シャム柿など、
今も新しい材料は興味を持って探しています。


ギターの裏板、横板の材料で昔から使われている、ハカランダ、(中南米ローズ)については、
私は意見を述べるほどの知識は持っていません。
輸入禁止でもともと製作家が持っていた材料程度が流通しているだけでしょうから、
楽器の材料としてその範疇に入れるのは無理なように思います。
ただ、同じ製作家が作った楽器で比べると、ローズに比べてハカランダで作った楽器のほうが、
音の密度があり、音の分離は良いように思います。


結論ではありませんが、モダンスペインギター的なギターを求める、
ギタリストの方にはローズが。
(といっても、マダガスカル・ローズとかインディアン・ローズとかいろんな種類がありますが、
作りたい音にあったローズを選んで)
楽器がフルに鳴るように弾きたい演奏家。
他の楽器と良くあわせることの多いギタリスト。
19世紀ギターを使っていて、19世紀ギターではカバー出来ないレパートリーを弾くための楽器を探しているギタリストには、楓の裏、横板が良いように思います。

ただ、楓は他の材料、(といってもローズウッドくらいですが、)に比べて、
個体差が非常に大きいので、(ガンバ属、ヴァイオリン属のネックは大きな無垢の木から削りだしますので、本当にいろんな木があるのが、分かります。硬い木、重い木、虎目の削りにくい木、物凄く虎目が出ているのに、軽くて削りやすい木。これらは、当然音も違います)

楓のギターといっても、立ち上がりの良い楓、しっかりした楓、重い楓、硬い楓、軽い楓、
いろんな楓を使うことによって、様々な音のギターを作ることが出来ます。
これも、ガンバやリュートなどで楓を良く使っているから分かる事だと思います。
ですから、いろんな木目の楓の木を見ながら、どんな楽器にこの木を使おうかと、
楽しみながら考えていることがよくあります。
  1. 2012/01/11(水) 00:05:25|
  2. ギター
  3. | コメント:0

材料 ① 表板

楽器の音を決める、最も大切な材料、表板について、材料としての面から書かせていただきます。
少し長くなりますので、お時間のある時にどうぞ。

ヴァイオリン、リュート、チェンバロ、ピアノなどの響板、表板は伝統的に松が使われていました。
ドイツ松、ドイツスプルース、ジャーマンスプルース、ドイツトウヒなどと呼ばれています。
(ドイツの私が取り寄せている楽器専門の材木屋さんは弦楽器の表板に使う材木は全てスプルースと呼んでいますので、混乱することがありますが、材質的にはドイツ松のことです)

なぜ、ドイツ松が使われているかというと、他の材料(スプルース、エゾ松、樅)に比べて、
ヤング係数が高く(ヤング係数とは簡単に言うと、粘り強さ、ばねの強さ、復元力です。材料に力を加えると、
変形します。その変形を元に戻そうとする力を、係数にしたものと言えます。)
これが、音色、音量、音の減衰に大きな影響があり、ヤング係数が高いと、特に減衰の時間が長く、
西洋音楽に必要な(特に多声音楽に)音の持続が長いのです。
そして、もっとも重要なことは、経年変化で伐採してから、250年で最も強度が出ると言われています。
そして、500年経った時に、伐採時の強度に戻ると言われいます。
300年以上経ったリュート、ギター、ヴァイオリンなども、すばらしい音と、音の立ち上がり、響きが豊かな楽器をたくさん見かけます。これも、ドイツ松を使っているからでしょう。

難点は、楽器になってから、鳴ってくるまで、時間がかかることです。
これも、私の方法ですが、30年以上寝かせた表板を、楽器にする数年前から必要な厚みの少し厚めに削って、
南側の窓にぶら下げて、(室内ですが)日光に当てています。
経年変化が少し早くなり、楽器になってから鳴ってくるまでが短いようです。

窓



モーツアルトが絶賛したフォルテピアノ(現代のピアノと違って、鉄骨が入っていなくて、
チェンバロに近い構造、音のピアノです)を作ったアンドレアス・シュタイナーについて、
モーツアルトの手紙の中にシュタイナーの作ったピアノの事、製作法が書かれています。
「彼は楽器に使う表板を外に出して、乾しておいて、日光、雨にもあてて、痛んだ箇所を取り除いて使っていた」と。このことを否定する人もいますが、ヨーロッパの気候だと、私もそうするかもしれません。

ヴァイオリンもホワイトヴァイオリンと言って、塗装前のヴァイオリンを長い間、日に乾して、
人によっては何年も?乾している人がいます。
私の友人のミッテンヴァルトに住んでいる、ヴァイオリン製作家は毎日の日課として、
魂柱用の丸棒と駒を譜面台にぶら下げて、天気の良い日は朝庭に出して、夕方取り込むと言うことを、
毎日していました。

リュートの製作家もローズ(ロゼッタ)を彫った後で、日光に当てて、乾していました。
リュートの場合は表板はほとんど塗装しないので、色をつけるための意味合いもありますが。
そして、最近ではチェンバロの製作家でも同じように日に当てている人がいるようです。
そして、ギターでも昔のスペインの製作家は、日に乾していたようです。
こうして作った楽器は演奏家が「初めて弾くのに、何十年か弾いるみたいだ」と言ってくれます。

・・・・ホセ・ルイス・ロマニリョス著 佐藤忠夫訳 「アントニオ・デ・トーレス」 ギター製作家―その生涯と作品 の90ページに「トーレスが響板をシーズニングしたり、さらに乾燥させるために直射日光に曝している」と書かれています。・・・・

私が材料を買うときは、材料の粘り、腰の強さを見ますが、使うときは厚さ、幅、長さから体積を出して、
重さを量って、比重を出して、軽いものから使っています。
同じ粘り、腰の強さだったら、乾燥の良く進んだ、軽い木のほうが、反応も早く、立ち上がりも良いので。
(個体差はありますので、すべて軽いものから選んでいるわけではありませんが)

ちなみに、私のヴァイオリンの仕事をしている友人は、長年干した駒を使う際は、
駒をガラスのテーブルの上に落として落として、その音を聞き、良く乾燥された、
反応の良いものから使っていました。見た目の材のよしあしとか、値段に関係なく、
音の良いものが、良い駒と言うことで、選んでいました。

ドイツ松に限らず、針葉樹は冬目に直角に製材すると、「ふ」と呼ばれる、模様と言うか、
線のようなものが出ます。音は、冬目(冬の間に育った針葉樹は、成長が遅いので、
しっかり硬い木目になります。これが、一般的に冬目と呼ばれています)の方向に走ります。
しかし、この「ふ」があると、冬目に直角方向にも音が広がることは、一般的に良く知られています。

UNI_0828.jpg


材料を買うとき、製作家は皆「ふ」「ふ」と言って、「ふ」の入った材料を探して買っています。
この「ふ」以外にも「とんびが飛んでる」とか、「フィフテ」とか言われている、
冬目に直角方向とか、斜めに大きな模様(冬目の材質に近い硬い材質ですが)がある材料もあります。
好みもありますが、私は音の広がりも、おもしろく、響きも独特のものがあり、
このような材料があればすぐに買います。


UNI_0829.jpg



少し話がそれますが、30年ほど前の話です。
ドイツに行ってお世話になった、ドイツ在住のギター製作家 佐藤一夫さんから連絡がありました。
(佐藤さんは ホセ・ルビオの工房で、ギターリュートを作っていました。
独立してドイツでギターを作られています)
「昔、沢山材料を買っていたが、自分では使わない表板を譲るが、いらないか?」と。
佐藤さんは、真っすぐ木目が走った表板しか使わないので、私の好きな「フィフテ」の入った板は
手放すだろうと思って、すぐに「欲しい」と連絡しました。
届くと、思ったとおり、私の好な板が沢山ありました。それも、何年も乾燥させた材料です。
でも、それから、さらに30年ほど寝かして、2010年に10弦ギターを作りました。

UNI_0831.jpg
かなり大きな「とんび」です。ギターではあまり見かけない木です。

でも、このような材料は場所によって、木の硬さや、腰の強さ、比重もかなり違いますので、
使うのは難しく、硬い部分が多いので、楽器になってから、鳴ってくるまで、少し時間がかかるようです。


材料としての、表板から話が少しそれた部分もありますが、もう少し表板について、
大事なことを書かせていただきます。
それは、昔の製材方法と現代の製材方法との違いです。
昔の製材方法は、大きな丸太を輪切りにして、大きな鉈のような物で、割って製材していました。
これに対して、現代の製材方法は、バンドソーのようなのこぎりで、
木の木目とか繊維に関係なく切って製材しています。
実際に楽器を作る際、表板を接ぐときに、一方は良いのですが、もう一方は逆目になって
削るのに苦労することがあります。

現代の製材方法で製材すると、上から見ると理想的な材料でも、横方向から見ると、
見てもわからないのですが、繊維が斜めに走っているのです。                      
表から見ると、木目は揃っているし、「ふ」も入っているし、良さそうに思うのですが、
繊維が斜めに切られているため、音が短い距離しか走らないのです。

極端に斜めになっているのは、少ないでしょうと言われそうですが、
あんなに真っ直ぐ成長しているドイツ松がなぜこんなに曲がって製材されるのか、
不思議なくらい真っ直ぐな材料は少ないです。
楽器になってからでも、光の当たる方向によって、
表板の左右で大きく反射や木目の違う楽器が多く見られますが、
このような楽器は(極端な場合ですが)音の広がりが、ほんの少し悪いようです。
木表、木裏で光の反射が違うので、簡単に判断は出来ませんが。

でも、現代の楽器では、ほとんどこのような材料を使って、楽器を作らざるを得ませんし、
音に対する影響は、他の要素に比べて非常に少ないので、気にしている人は少ないと思います。
ただ、昔の楽器と現代の楽器を比べた場合の違いの要素のひとつとして、
このようなことがあると知っていただいたほうが良いと思い書かせていただきました。

ドイツ松も、自然素材なので個体差が非常にありますので、
乾燥だけでなくもともとその木の持っている、素質のなかで良い物を選んでいますが。
選べるだけの良い材料を持っている、
集めることも製作家の仕事だと思います。


次に,シラタ(辺材)についてです。
このシラタについても、ぜんぜん気にしないで使っている製作家、演奏家、
そして、気にしているが、材料の関係で使っている製作家、
さらに進んで、シラタは使わない製作家、シラタが入っていると使わない演奏家など様々です。
辺材と書くこともあるように、木の一番外側です。
シラタにも個体差がありますが、心材に比べると、確かに柔らかく、虫が付くのはこのシラタです。
後で、述べる年輪の幅にも関係するのですが、
ギターのように表板の厚さがそんなに変わることがない楽器では、できれば使わないほうがよいかなと思います。シラタを使わない製作家は、シラタは死んだ部分だから、使わないと言われます。
ヴァイオリンのように、表板の中央部部分がかなり分厚く、端が薄い楽器だと、
シラタは比重も小さいので、厚くとっても、重くならない利点がありますが、
ギターは製作家によっても違いますが、
表板中央部の厚みが端より2ミリも3ミリも厚いギターはないでしょうから、
私は使わない方向で、考えています。


次に、年輪、特に冬目(冬は寒く、木の成長が遅いので、しっかりして、硬い冬目が出来ます)
の幅と言うか、太さそして、木目全体の細かさ,荒さです。
ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバのように、表板がカーブしている、
擦弦楽器では、表板の中央部では、端よりかなり分厚く作ってあります。
これは、弦の振動を駒で受けて、なるべく大きい面積に音を伝えようとすると、
当然駒が載る部分は厚いほうが、より広い面積に音を伝えることが出来ます。
ただ、端まで分厚いと、ちょうどスピーカーでも、分かることなのですが、
端がしっかりしていると、表板は一部分しか振動してくれません。
端が薄くて、初めて中央部の大きな面積が鳴ってくれるのです。
こういう、擦弦楽器の構造が成り立ち、楽器として成立するのは、
端の冬目が太く、しっかりしているからです。

針葉樹の強度は、冬目で出ます。
一般的な、針葉樹では、中央部は成長が早く、年輪の幅も広いです。
この木をみかん割り(みかんを生っている状態で見ると、水平方向に切るとこのみかん割の状態になります。
ホールのケーキを8等分や16等分に切った状態と言うほうが分かりやすいでしょうか)して、
表板に使うと、中央部分が年輪が細かく、端が冬目がしっかりしていて、
(冬目の年輪の幅も広く)端を薄くしても楽器として成り立つのです。

これら、擦弦楽器に比べてギターはどうでしょうか?
同じように中央部が細かく、端が粗い木目だと、かなり端を薄くしないと、鳴らないと思われませんか?
私は端をかなり(特に低音部は)薄くしています。
逆に、表板を選ぶ場合、全体がほぼ同じ幅の冬目の材料を選ぶ場合もあります。
以前に書かせていただいたように、音は冬目に走ります。
これが、一般的に良く見られるギターのように、中央部が冬目の細かい、音を走らせにくい木目だと、楽器全体を鳴らすには不利だと私は考えています。
駒に伝わった振動をいかに表板、楽器全体に伝えるかと言うことを考えると、
もし冬目の細かい材料を中央部に持ってくるときは、中央部の厚みを厚くして、
バスバーも駒の下あたりを高くしています。
細かい材料は繊細な音がしてくれますし。どのような材料を使うかは、音作りで決まってはきますが、
後は、製作家の好み、演奏家の好みでしょうか。
ストラッドはアマティなどに比べて、冬目のしっかりした材料を使っています。
これが、ストラッドの音を作っているのでしょうか。また、寿命も長いですし。


そして、寿命の点から、経年変化の点から、杉、樅の木、
スプルース(アラスカ、シトカなど)は使いたくないと私は思っています。

以上長くなりましたが、お読みいただけましたでしょうか?


  1. 2012/01/10(火) 09:50:42|
  2. ギター
  3. | コメント:1

ギターを製作するに際に考えておかないといけない要素。

ギターを製作するに際に考えておかないといけない要素。

1)材料の面から
 
 ① 表板
 ② 横板、裏板
 ③ ネック材
 ④ ライニング材
 ⑤ 指板
 ⑥ ブリッジ材、骨棒(サドル)
 ⑦ ナット材
 ⑧ バスバー、およびアンダーバー
 ⑨ ブロック材
 ⑩ フレット
 ⑪ 糸巻き

2)構造、設計面から考えると

 ① 楽器全体の大きさ、弦長、など
 ② 分数ギター(ショートスケールギター)
 ③ ライニングの大きさ、形状
 ④-1 表板の厚さ、カーブ(ドーム形状)など
 ④-2 ドイツ松の経年変化について
 ⑤ 横板、裏板の厚さ、カーブなど
 ⑥ 指板、ネックの厚さ、形
 ⑦ ヘッドの形、角度
 ⑧ ブリッジの形
 ⑨ ハーモニックバー、アンダーバーの形、大きさ
 ⑩ フレットの形、大きさ
 ⑪ パーフリンング、バインディンク
 ⑫ 裏板センター接ぎ部、サウンドホール 補強材
 ⑬ ネックの取り付け方法
 

3)製作法から考えておくと
 
 ① ボディ、型枠、ソレア
 ② ネックの成型順序
 ③ 指板、フレット打ちつけの順序
 ④ ブリッジの接着順序、方法
 ⑤ 塗装
 ⑥ 接着剤について

4) その他

 ① 多弦ギター
 ② パーラーギター
 ③ コントラ・ギター
 ④ トーレスギター
 ⑤ ラティスギター、ハニカム構造のギター
 ⑥ 平均律以外のフレッチングギター   
 ⑦ ベーカー社製糸巻きについて
 ⑧ ギターの響きを助けるギター支持具

思いつくままに書き上げましたが、このような要素があるように思います。次回からこれらの要素について、書かせていただきます。
  1. 2012/01/09(月) 23:45:09|
  2. ギター
  3. | コメント:0

もう少し 具体的に作りたいギターの事を

現在、一般的に使われている、また、作られているモダンギターは重く、
楽器全体が鳴っていなくて、倍音の多すぎる楽器というイメージを私は持っています。

私の今まで作ってきたリュート、ヴィオラ・ダ・ガンバ、バロック・ヴァイオリンそして、
鍵盤楽器のチェンバロ、初期のフォルテ・ピアノでさえ、弦,響板だけでなく、
楽器本体、胴も良く鳴っています。

それに比べて、モダンギターは胴、本体が鳴っていなくて、
響板も一部分しか鳴っていない楽器が多いように思います。
(もちろん、どの楽器でも、響板全体が鳴っているわけでなく、
鳴っていない節のような、箇所はありますが)

そして、さらに、最近は側板、裏板も厚く、しっかり作り、
スピーカーのように響板だけを鳴らそうという楽器も見かけます。
(与えられたエネルギーを響板だけに使って、効率よく音にしようという考えなのでしょう。)
スピーカーでなく、人間が使う、演奏する楽器ですので、私は楽器全体を鳴らしたほうが良いと考えます。
重い楽器も重い音を作るうえで有利かもしれませんが、楽器全体で鳴らしたほうが、
深い、本来の音の成分、低い音の成分が出るように私は思っています。

ギターという楽器はかなりの低音楽器です。知っている方は知っている話です。
楽譜のト音記号に惑わされて、音の高い楽器のイメージですが、実音はオクターブ下の音が鳴っているのです。
あの大きなチェロで最低音はギターの最低音の2音下のC、ドです。
ヴィオラ・ダ・ガンバのバスで、最低音はギターの最低音のEの一音下のD、レです。

他の楽器(ヴィオラ・ダ・ガンバ、バロック・チェロなど)と同じように、
ギターを、基音をしっかりと鳴らし、その周りに倍音と響きが付く作り方をすると、
一般的なスペインギターのような楽器に比べて、倍音と響きが少ないため、
弾いている人が物足らないと感じるようです。
このために、側鳴りする、倍音の多い楽器が作られているようです。
また、このような楽器がギターらしい楽器、ギターの音と認識している人が多いように思いますが、
私はこのような楽器は、バロックギター、19世紀ギターから伝わる、本来のギターの音ではないと考えます。

私の楽器を使って下さっているギタリストの方は、「基音がしっかりしていると、タッチで倍音の多い音は作る事が出来るが、基音が少なく倍音の多い楽器だと、音や、音楽を作ることが出来ない」と言ってくださいます。

私が考えるモダンギターは、楽器がまず、鳴るということ。(コンサート会場で充分に使えること)
そのために、楽器の大きさ、表板、横板、裏板の厚さ、削り方、バスバーの形状、大きさ、
ライニングの大きさ、形、ネックの形,厚さ、ヘッドの大きさ、ナット、骨棒の材質、
フレットの材質、糸巻きの軸の材質などあらゆる、部材の大きさ、形状、材質について考えてみました。

そして、弾きやすい楽器である事。これは、楽器の大きさと大きな関係があると思いますが、
後で書かせていただく設計の所で触れますが、楽器を小さくすれば解決する事が多いように思います。

もちろん、ギターだけを作ってられる,製作家の方は、私の何倍も、何十倍もこれらのことについて考えてられると思いますが、40年以上ギター以外の楽器を作り続けてきた私でなければ思いつかないこともあるかと思いますので書かせて頂こうと思います。

そして、ギターも楽器なので、100年200年と、ただ使える楽器でなく、
100年200年と経つにつれて、音が良くなっていく楽器を作りたいと思っています。
200年以上使い続けられた、ヴィオリンとかヴィオラ・ダ・ガンバと同じような、
発想、構造で作れば、可能なことだと思います。

最近のモダンギターでは、20年30年経つと、もう寿命とか、
楽器によっては10年しか持ちませんと、製作家が言っていたりします。
折角長い間育って、楽器になる材料になったのに、100年も使えないような、
楽器では、長い間風雪に耐え育った木に申し訳ないように思います。

ピアノで言えば、今の時代に受け入れられにくい楽器の、エラール、プレイエルと言った、
誰が弾いても鳴るという楽器ではないのですが、深い所でしっかり鳴る楽器。
そして、19世紀ギター(ヨーロッパではロマンチック・ギターと呼ばれていますが)のような音の太さ、
遠鳴り(19世紀ギターのオリジナルは、近くで聞いたり、弾いていると小さな音ですが、
ホールで聞くと、チェロのような、ピアノのようなしっかりして、太い、重い音がします)がして、
モダンギターのような、弾いている人が満足のする、近くでの鳴り、幅のある低音そして響き。
と矛盾することを何とか、解決したいと私なりに考えた事をまとめたのが、このブログです。

このブログが、ギターを弾いている人にとって、ギターのことを考えて下さるきっかけになれば幸いです。

直接ギター作りには関係ない話、ギターの事を考える参考になりそうな話を、
「お話」として書かせていただきます。時間のあるときにでも、お読み下さい

思いつくままに書かせていただいたので、話しがまとまっていなくて、
申し訳ありません。
  1. 2012/01/09(月) 23:36:03|
  2. ギター
  3. | コメント:0

私の考える理想のモダンギターとは

まず最初に、私がどんなギターを作ろうとしているのかを、お話しします。
長くなると思いますが、お時間のある時に、どうぞ。

楽器ですから、音楽が表現出来るギター。ギター音楽でなく、音楽そのものを表現できるギター。
今作られている、又過去に作られたギターを見ても、ギター音楽は作れても、
音楽そのものは作れないようなギターを見かけます。
音楽そのものを作ることの出来るギターとは、どんなギターでしょうか?

ギターのレパートリーは、ルネサンス時代のリュートやルネサンスギター、ヴィウエラの曲から、
現代曲そして中南米の音楽まで、非常に幅広いです。
全てのレパートリーをカバーできるギターは、逆にどの時代の音楽にもぴったり来ないかもしれません。

ギターのレパートリーで重要な、バッハの曲は多声部を明確に引き分ける事が大切になってきます。
特に低音の動きがはっきりしなくてはバロック音楽にはなりません。
ギターと同じように、弦を弾く機構のチェンバロは、左手の楽器と言われているように。
その点、モダンギターはほとんどが、輪郭の無い、良く言えば、柔らかい、悪く言えば、ぼけた音。
に私は思います。響きはあるが、幅があって、バロックの音楽は作りにくいと思います。

逆に、19世紀ギターは音ははっきりしていますし、構造的な音楽は作りやすいです。
ただ、低音の響き、倍音等が少なく、弾き手にも、モダンギターのような手応えというか、
鳴っている感じ、重い低音はありません。

19世紀ギター(ヨーロッパではロマンチックギターと呼ばれています)の主なレパートリーである、
カルリ、モリーノ、キュフナー、ソル、ジュリアーニ、ディアベリ、アグアド、レニアーニ、カルカッシ
などの作曲家だけを弾くのなら、良い楽器だとおもいます。

30年以上、沢山の19世紀ギターを見てきて、又、20台以上は修理してきて、弾いてきて、
奇跡のような、モダンの曲が弾ける、ラコートや、パノルモも見てきましたが、やはり限界があります。
何も、無理して19世紀ギターでモダンの曲を弾く必要は無いのですが、良いモダンと言うのは、あまり
ありませんから。

それは、お前が良いモダンを見ていないからだろうと言われそうですが、今は、超有名になった
福田進一さん、稲垣稔さん、岡本一郎先生、私のギター、リュートを使って下さっている西垣正信さん
皆さん、40年近い付き合いで、いろんな楽器を見せていただきました。
ブーシェさんが作ったギターが多かったですが。
そして、40年以上前になりますが、最初に習った、植木義法先生はハウザー2世を使っていました。
最初の名器はハウザーでした。


レニアーニさんがギターを弾いて、作曲をして、晩年にはギターとヴァイオリンを作っていたと聞いて言います。
自分が作る音楽に合った楽器を作りたかったのだろうと、思います。

私は、作曲も演奏もしませんが(演奏は少しはしますが)私が考える音楽を作ることのギターは
製作家ですから、作る事が出来ます。

19世紀ギターの構造では無く、もちろんモダンギターの構造でもない。
私の今まで作ってきた、リュート、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロなどの構造、
経験を生かして、作りたいのです。

ルイ・パノルモの甥だったと思いますが、ルイの楽器より少しだけ大きく作ったギターも見たことがあります。
形は19世紀ギターだったのですが、19世紀ギターの良い所はありませんでした。
音がぼけてしまうのです。
又、違うパノルモの子孫が(甥だったかもしれません)横板だけ幅を広げて作ったギターも見ました。
音が前に出ていませんでした。
その時は、19世紀ギターはこれで完成した姿、大きさなのだから、大きくして響きを付けるのは無理かな?
と思っていました。名工パノルモの関係者でもそうなのですから。

でも、彼らにはない、他の古楽器を作ってきた経験があります。
どんなギターを考えているのか、次から具体的に書いていきます。



  1. 2012/01/08(日) 18:56:15|
  2. ギター
  3. | コメント:0

初めまして

初めて、ブログを書きます。

一般的に、古楽器と呼ばれる、チェンバロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、
など主にバロック時代、ルネサンス時代の楽器を仕事として、作っています。
最近、近代の楽器にも興味があって、フォルテ・ピアノ、ギターも作っています。

もちろん、現代のモダンスペインギターは作りませんが、19世紀ギター
(ヨーロッパでは、ロマンチックギターと呼ばれています)の延長線上にある、
モダンギターを作っています。

いろんな楽器を作っていると、ギターとは本来どのような楽器が良いのか、
音楽的な表現が出来るギターとは、どんな楽器なのか、分かってくるようです。

そんな私の考えるギター、設計やその製作方法など、少しずつ、書かせていただきます。
  1. 2012/01/04(水) 22:53:04|
  2. その他
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:7

プロフィール

kogakki

Author:kogakki
ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、チェンバロ
と言った、古楽器を仕事として製作して
30年以上になりました。

最近はギターに興味を持っています。
最初に作った楽器は、ギターです。
昭和42年でした。 18歳の時です。

古楽器製作家 平山 照秋 

最新記事

最新コメント

月別の記事です

カテゴリ

ギター (339)
演奏会 (10)
その他 (21)

私へのメールはこちらから

名前:
メール:
件名:
本文:

訪れてくださった方々

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR